ある日の私とまどまど、あるいは身勝手な私

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作者:PBGomwJi0

77 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] 投稿日:2012/04/24(火) 01:34:37.66 ID:PBGomwJi0


とある日曜日。私は飼いまどとともに縁側で昼寝をしていた。
まどまどはとてものんびりした性格で、良く日のあたる暖かい縁側が大好きなようだ。

まどまど「…スー…スー…」

彼女の穏やかな寝顔を見ながら一緒に縁側にいると、私まで眠くなってしまう。
そんなわけで、日曜日の昼間は一緒に昼寝をするのが習慣になってしまっていた。

その日も、私は一緒に寝ていたわけなのだが、まどまどの声が聞こえて、私は目を覚ました。

まどまど「ホムラチャーン、ホムラチャーン」

このホムラチャーンというのは私のことだ。
まどまどに、ほむほむと番いをなすのではなく、私と一緒にいてほしいという私の身勝手な思いから、そうしつけてしまった。
ほむほむのことは、ホムホムと呼ぶようにしつけている。

このまどまどにも発情期はあるが、専用の道具を使って私が相手をしている。
人間でいうところのバイブにあたるのだろうか、とにかくそれでまどまどを刺激することで性欲を発散することができる。
最近は、私が舌でなめてあげたりも……話がそれすぎた。本題に戻ろう。

まどまどは、庭の方をを指さしながら、ホムホム、ホムホムと繰り返している。庭を見ると、確かにほむほむが一匹入り込んでいた。

ほむほむ「ホ…ホムゥ……」 ヨロヨロ

ずいぶん弱っているようだ。彼女ら自慢の髪につやはなく、服にもずいぶん汚れが目立つ。心やさしいまどまどには、見過ごすことができなかったのだろう。

野生と人間とは違う。まどまどにも何度もそうしつけてきて、彼女もそれを十分理解している。
それでも、彼女はホムホム、ホムホムと気遣う声をやめないのだ。種の本能がそうさせるのだろうか。
私のことをようやくパートナーとみてくれはじめたと喜んでいた矢先だったので、少々がっかりしてしまったが、そんな私情にかかわりなく、野生のほむほむを気安く餌付けしてもいいことはないのだ。

いつもと同じように、野生に生きる動物は自然の摂理に従うのだとまどまどに言い聞かせ、もう部屋に戻ろうといってまどまどを抱き上げた。

まどまど「マドー、ホムラチャン、ホムラチャーン、マドドォ!」

今日に限って、彼女はおとなしく引き下がろうとしなかった。それが原因なのだろうか、ほむほむに少しだけ、あくまで少しだけ情が出てきてしまった。私もまだまだ甘い。

「しかたないわね。今日だけよ。ほむほむを少しだけ、うちで休ませてあげましょうか」

そんなことを言って、私はいったんまどまどを置いて、縁側からほむほむの方に向かって歩き出した。

ほむほむを家に入れるとき、最初はちょっと抵抗していたが、敵意がないとわかると大人しくなった。
私はまず、体の汚れが気になったので、お風呂に連れていくことにした。着替えの服が気になったが、まどまどのものを一着使うことになった。まどまどが提案したのだ。
ほむほむは、最初水が出てくるシャワーを怖がったが、まどまどが安心させてやっていた。私はほむほむがまどまどに手を出さないかと少し心配したが、杞憂に終わった。ほむほむは一途な生き物と聞いているから、きっと家族がいるのだろう。
シャワーになれたほむほむは、気持ちよさそうにしていた。どうも、ほむ種はお風呂好きらしい。本能的なものかと思ったが、自然に風呂などあるわけがない。謎だった。

すっかりきれいになったほむほむを、私の部屋に招待する。そこでほむほむフードと水を振る舞った。
ほむほむは最初着なれないまどまど用の服に戸惑っていたが、餌を見ると一心不乱に食らいつき始めた。それはもう、がつがつと。
まどまどはその間、一緒に水を飲みながら(まどまどのために別に用意した)、ほむほむにどこから来たのかや外の話などを聞いていた。いっぺんに食べようとしてむせてしまったたほむほむの背中をさすってあげたりもしている。まどまどは本当に世話好きで優しい子なのだ。

「ほむほむの服が乾いたら、外にもどってもらうわ。あまり長くいてもらっても困るもの」

まどまど「マドッ?」

「しかたがないわ。現実的には、お金が足りないの。あなたを飼うので手いっぱいなのよ」

まどまど「マドォ……」

まどまどは残念そうにしていたが、今度は引き下がった。彼女は普段お利口さんなのだ。
ほむほむはというと、最初はまどまどの話にうなづいたり首を振ったりする程度だったが、徐々におなかが落ち着いて来たのか、まどまどにいろいろと話し始めた。

自分は近くの山に仲間とともに住んでいて、楽しく暮らしていたのだが、最近巣の近くでさやさやとあんあんの声が頻繁に聞こえるようになって、なかなか餌をとりに行くことができなかった。しかし限界が来て、数匹で外に餌取りに出かけることになった。そのうちの一匹が自分だったのだが、途中で案の定さやさやに見つかり、散り散りになって逃げ出した。逃げているうちに山を下りてしまっていて、空腹のままさまよい歩いていた……

大体そんな風なことをほむほむと語ってから、マドカアと、巣に残した家族を心配した声を上げ、話を締めくくった。

まどまどはひどく同情したようで、悲しそうな顔をしていたが、野生で生きるというのはこういうことよ、安易に同情してはだめと、私はたしなめておいた。

「そろそろほむほむの服が乾いたころね。取りに行ってくるわ」

私はそう言って、物干しざおの方へ向かった。ついでに、ほむほむフード数日分も用意しておく。餌を探して出てきたのだから、何か持って帰らないといけないだろう。しかし、その群れの仲間がまだ生きているとは限らないのだ。しかも、生きて戻れるとは限らない。
野生とは残酷だ。つまり今から私がしようとしている行いは、自己満足ということになるのだろう。野生のほむほむに餌をあげたとなるとほめてくれる人さえいるかもしれないが、実際は認識不足と言わざるを得ない。

戻ってくると、ほむほむはまどまどに向かって、「山の生活は楽しいこともあるけど、それ以上に餌がなかったり外敵がいたりとすごく苦労が多く、死を覚悟したこともある。飼われているなら、その生活を楽しみなさい、良い主人もいるようなんだから」と、お説教じみたことを言っていた。
その話には、ついさっき考えたことも合わせて、私も感じるところがあった。

「服を持ってきたわ。着替えなさい」

ほむほむ「ホムッ」

ほむほむはいそいそと服を着替え始めた。ほむほむはまた裸になる。
そういえばお風呂では湯気で良く見えなかったかもしれないが、まどまどがほむほむの裸をはっきりと見るのはこれが初めてだ。私は不安になってまどまどの方に目をやったが、まどまどはほむほむの着替えを手伝ってあげたりしていて、特に意識することもなかったようだ。良かった。
まどまども、飼い始めてからずいぶん経つから、ある程度野生の本能を忘れているのだろう。しかし、生まれ持った優しさは忘れることがないのだ。まどまどは本当に愛らしい生き物だと、私は改めて思った。それと同時に、私はほむほむのことも考えていた。

「それじゃあほむほむを外に連れていくわ。あなたはおとなしく待っていてね」

まどまど「マド……ホムホム、バイバイ」 テフリフリ
ほむほむ「ホムー、ホムホー」

まどまどとほむほむはそれぞれの言葉で別れのあいさつを交わした。
まどまどは日本語と思われる言葉を時々話す。これは別にまどまどに限らず、ほむ種一般にみられる傾向なのだが、とても興味深いことだ。人間と意思疎通しようとしているのだろうか。私はかなりほむ種の言葉がわかるが、それは一般的なことではない。
ともかく、挨拶をした後、私はほむほむを抱いて家の外に出た。



「ごめんなさい。変に期待させるようなことをして」

私は謝った。来たほむほむ全員に餌をやることなんてできないし、飼いほむにすることももちろんできない。
さっきも言ったが、うちはそれほどお金持ちでもない。ほむほむフードも特売で買ったものだ。いつも喜んで食べてくれるまどまどにはすごく申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

それに、さっきも言った通り、これは完全な自己満足なのだ。

ほむほむ「ホムムン」

ほむほむは別に気にしていないという風なそぶりを見せていた。ほむほむフードを持たせてあげると、何度もお礼を言ってきた。
謝らなければいけないのはこっちの方だ。偽善者。責任を一切放棄した、ひどく残酷な行為だというのに。

お礼がひと段落すると、ほむほむは一礼して、ほむー とまた感謝の言葉を述べて背中を向けた。そして山の方へ向かって歩き出したと思ったら、また振り返って一礼して、また歩き出していった。私は何も言うことができなかった。
彼女らはこれからも、野生を生きていく。うちのまどまどは、きっとうちで一生を過ごすのだろう。どちらが幸福かなどと考えるのはばかばかしいことだが、差があることも確かなのだ。情に流されて、余計なことをしたような気にすらなる。
私が彼女について行って守りながら行けばよいのだが、それは他のほむ種にとっては生活を脅かす行為になりかねないし、まどまどを長い時間一人にさせたくないとも思うので、そうもいかなかった。彼女らの幸福を願おうとしたが、そんなことをする権利は私にはないと思い直して、私は部屋に戻った。


ほむほむが去ったあと、まどまどはすこし寂しそうにしていた。考えてみたら、外のほむほむと接するのはこれが初めてだった。
ペットショップで彼女を初めて見たとき、生まれたばかりの仔まどだったから、確実だ。彼女の親の姿も、見たことはなかった。
私はまどまどの頭を撫でながら、「ごめんんさい、私が身勝手で」とつぶやいた。まどまどは、よくわからないといった風な顔をした後、気持ちよさそうにして私に身を任せた。

しばらくそうしていると、部屋の中が徐々にオレンジ色に染まってきているのに気付いた。私は、お夕食を作ってくるからと、まどまどから手を放した。同時にまどまどのお腹もくうと鳴った。まどまどはうぇひひと少し恥ずかしそうにして、お腹を押さえた。
すぐに戻ってくるからと私が立ち上がると、まどまどが手を振ってきた。私は手を振りかえして、台所ヘ向かった。



私とまどまどの出会いの話を少ししようと思う。私の身の上話をあまりするのははばかられるが、私とまどまどとの出会いを語る上では外せないことなので、ざっくりと済ます。
私には大切な友達がいたのだが、彼女は理想のためにどこか遠くへ行ってしまったのだ。しばらくの間私はそのことから立ち直れなかったのだが、先輩が気晴らしになればと連れて行ってくれたのが、そのペットショップだった。最初は暗い気分で犬や猫などを見ていたのだが、途中で目を疑うような生き物を見つけた。それがほむ種と私の最初の出会いだった。

「この生き物は、何というの? 見たことがないわ」

「興味が出たのかしら。その子たちはほむ種といって、小さい妖精さんみたいな生き物なのよ。そういえばどことなく私たちに似てるわね。
 髪の色でおおざっぱにいうと、髪が黒い子がほむほむ、ピンクの子がまどまど、青い子がさやさや、赤い子があんあん、金髪の子がまみまみね」

先輩は詳しく分類を教えてくれたが、私は一つのケージに釘づけになっていて、あまり聞こえなかった。だが、まどまどという声は聞き取った。
そのケージの中では、まどまどの、おそらくは子供が、すぅすぅと寝息を立てていたのだ。仔まどという呼び方は、のちに聞いたものだ。

先輩は、よっぽど気に入ったみたいねと言って、私にそのまどまどを買ってくれた。悪いと思ったのだが、強引に押し切られてしまった。
餌を買いにまたこの店に来たとき、ふと値札をみて目を丸くした覚えがある。あの先輩は本当に面倒見がいい、いい人だ。私には真似できない。

さて、なぜ私がそんなにまどまどが気になったのかという話だが、それは簡単で、単純に遠くへ行っってしまった友達にそっくりだったというだけである。
しかし、それだけのことが私にとっては大きな意味を持つ。遠くへ行ってしまって誰からも忘れられてしまった彼女と、また一緒にいられるんだ。そう思うと、寂しさが和らぐような気がした。
彼女からの贈り物かもしれないと思った。それ以前にもリボンをもらっていたのに、情けない話だ。
彼女がいつか戻ってきたとき胸を張ってお返しができるように、この町をずっと守りたいと強く思った。

そのあと、私は元気を取り戻して、また先輩や仲間と集まって日常を過ごすことができるようになった。
ほむ種のこともかなり勉強して、ほむ語検定やほむほむ検定で一級までとってしまった。先輩に、あのときのまどまどのことが大好きなのねと、ちょっとだけあきれたように笑われたのはいい思い出だ。余談だが、その資格のためにもう就職の話が来ていたりもする。さすがに中学生には早すぎると思う。

そんな私であるから、当然一般的なほむ種の生態のことなんて知りすぎているくらい知っている。まどまどが通常ほむほむの番になる、ということもだ。

しかし、私の家に来たまどまどは、ほむほむを見たことがなかったのだ。家の前の道を偶然通りかかったほむほむにずいぶんこだわって話を聞きたがったのが、彼女とほむほむとの最初のエピソードだ。
ちょうどそのころだ、彼女に呼び方のことをしつけたのは。

ほむ語の勉強なんて、とっくの前に終わっていて、その言葉を発する意味というのを重々理解していたというのに。




野生のほむほむに餌をやって、自分の身勝手さというものを久しぶりに思い出した。いや、実感したという方が正しいか。
同時に、離れてしまった友達のことを思い出す。あの子はいま、幸せにしているんだろうか。私には分からなかった。でも、あの子に後悔なんてなかっただろうから、きっと私がまださびしいというだけのことなのだ。まどまどがいるというのに。
寂しさを紛らわすために、久しぶりに名前を呼んでみることにした。


「まどかぁ……」


ほむほむみたいだと笑ったはずなのに、目元がうるんでいる。自分の手元を見ると、白菜のお味噌汁が煮立っている。たまねぎは使っていないはずなのに。
まどまどがお腹を空かせて待っていると自分に言い聞かせ、ハンカチで目元を拭いて、料理に戻った。


料理を持って部屋に戻ると、まどまどはくてっと倒れていた。いけない、考え事をしすぎてしまった。私はあわてて料理をテーブルに置くと、まどまどをゆり起こそうとした。とその時、まどまどは起き上がって、ぺろっとかわいく舌を出した。私を驚かせるつもりだったらしい。
料理に気付いてまたおなかを鳴らしてしまい、顔を赤くしている。本当にかわいい子だ。



そんなこんなで、私とまどまどは夕食を取った。
まどまどにはほむほむフードのヨーグルト和えと、お味噌汁を少し。私はご飯とお味噌汁に、お漬物を少々。つつましいものだが、まどまどは美味しそうにぱくぱくと食べてくれた。
私はいま、この子のために生きているのだろうか。
いや、そんなはずはない。自分のために生きているのだ。そうでなければ、なぜこの子の一生を束縛でき、さらにあの子のことに今でも涙するのか。




食事が終わったあと、洗い物を手早く済ませ、一緒にお風呂に入って、それから布団にもぐった。
今日はまどまどを抱きながら寝ることにする。まどまどの体温は、とても温かかった。自分のために生きているとさっきは言ったが、でもこの子がいないと私は生きていけないだろう。まどまどを強く抱きしめた。まどまどは最初ちょっと苦しそうにした。でも、ほむらちゃん、と言ってすぐに笑顔を向けてくれた。その笑顔を見ていたら、いつしか私は眠りに落ちていた。





まどまど「ホムラチャン!ホムラチャン!」

私は、朝に弱い。今日もまどまどに起こされてしまった。時計を見ると、ゆっくりしているひまはなさそうだ。
私が顔を洗って、その後インスタントコーヒーを入れている間に、まどまどが櫛や手鏡を持ってきてくれた。本当にできる子だ。これからも、こんな生活がずっと続くのだろうか。もしそれが許されるのなら、ずっと続いてほしいと、切に思う。
コーヒーを飲み干して、身支度を整える。そして、ほむほむフードを二食分取り出して、まどまどに渡した。

「ごめんなさい、今日からまた学校だから、夕方までそれで我慢してね」

まどまど「マドマドッ」

できるならもっといいものを用意したいし、一緒に食事をしたいのだが、これがお金と時間の限界だ。まどまども、気にしないでと言ってくれている。

「なるべく早く帰ってくるから、それまでいい子にしててね。危ないことはしちゃだめよ。それじゃあ、行って来るわ」

まどまど「ホムラチャン、マドー!」 テフリフリ

まどまどに手を振りかえして、私は家を出た。





後日、山の中で飢えていたほむほむの群れを救助したというニュースを耳にした。ほむほむフードを食べてしばらく生きていた形跡があったという。見つけた人は不思議に思ったかもしれないが、私は密かに喜んだ。これくらいのことは、許してほしい。
まどまどには伝えるかどうかさんざん迷ったが、結局伝えてしまった。まどまども、かわいらしい笑顔で喜んでいた。
身勝手な話ではあるが、私はもうしばらくの間、このかわいらしく愛らしいまどまどと過ごそうと思う。




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