ある魔法少女とほむほむ、あるいは平和な時間
最終更新:
homuhomu_tabetai
-
view
include_js plugin Error : このプラグインで利用できない命令または文字列が入っています。
include_js plugin Error : このプラグインで利用できない命令または文字列が入っています。
javascript plugin Error : このプラグインで利用できない命令または文字列が入っています。
javascript plugin Error : このプラグインで利用できない命令または文字列が入っています。
javascript plugin Error : このプラグインで利用できない命令または文字列が入っています。
作者:P0m8Ofo30
132 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] 投稿日:2012/05/01(火) 10:39:11.82 ID:P0m8Ofo30
「ふぅ、今日のパトロールも、これでおしまいね」
私は、魔法少女をやっている。ウソみたいに聞こえるけど、本当の話。
呪いから生まれた、絶望を振りまく魔女と呼ばれる存在を倒すのが、私たちの役目だ。
「今日は特に何もなくて良かったわ」
魔女やその手下である使い魔は、人間に対して危害を加える存在だ。ゆえに、魔女を狩る魔法少女が行動しなくて良いならそれに越したことはない。正義の味方が抱えるジレンマの一種だというのは、少々大げさだろうか。
「さて、すっかり日も落ちたことだし、そろそろうちに帰りましょうか」
平和な町を後にし、私は家路についた。
「ホムー!」
「ただいま、ほむほむ。遅くなってごめんね」
うちに帰ると、ほむほむが出迎えてくれた。うちに帰ると待ってくれている人がいる、というのは嬉しい気分にならないだろうか。私の場合その相手は、ほむほむなのだ。
「ホムーホムー!」
「はいはい、すぐに夕食にするからね」
おおよそいつも通りの、日常の一コマだ。
魔女のパトロールがあるので、夕食の時間がどうしても遅くなってしまう。
ほむほむを飼いはじめた頃はあらかじめほむほむフードを一食分手渡してからパトロールに出ることにしていたのだが、ほむほむはいつもいつも、私が帰ってくるまで口をつけようとしなかった。そして私が帰ってくると、ほむーなんて言いながら嬉しそうに駆け寄ってくるのだ。
そんなほむほむに、私は愛着を感じずにはいられなかった。
私の日常生活の大まかなスケジュールを書いておこう。
私は学生なので、平日は朝から学校がある。しかし、学校が基本的にペットの持ち込みを禁止している以上、どう頑張ってもお昼をほむほむと一緒にとることはできない。なのに、ほむほむは私と一緒に食事をしたがる。ほむほむにいくら言ってもきかないので、私は学校が終わったらすぐに家に帰って、おやつ兼ほむほむの昼食にするという習慣ができてしまった。
そうしてしばらくゆっくりした後、私は魔女退治のパトロールに出かける。その時もやっぱりほむほむは寂しがるので、最初のうちは説得するのが大変だったことを覚えている。しかし今となっては、出かける私を笑顔で見送ってくれる。我慢しなければいけないところでは、ちゃんとわかってくれる。基本的には、ほむほむはいい子だ。
そして前述のとおり私が帰ったあと二人で夕食にして、お風呂に入る。そのあと洗い物や宿題、明日の準備などをして、ベッドに入る。ほむほむと一緒に寝ることが多い、というかほぼ毎日そうだ。ほむほむも一人でいたい時間があるかなと思って、ベッドから何から何まで一式そろった飼いほむ用のおうち、通称ほむホームを用意したのだが、それほど使われていない。仔ほむのころから、私の腕の中で寝るのが好きな子だった。でも、ほむほむを抱いて寝るとよく眠れる私も、あまりほむほむのことは言えない。
休日になると、学校に行かなくてよいから、おやつまでの時間が空く。その間にほむほむと遊んだり、勉強をしたり、買い物に出かけたりする。
この間ほむほむを買い物に連れて行ったら本屋さんに興味を持って、図鑑の前から離れなかったということがあった。きれいなまどまどが載っていただとか、そんな理由でなく、純粋に好奇心からだ。
結局その図鑑は買って帰ったのだが、私がいないときはいつもそれを読んでいるらしく、今ではぼろぼろになってしまっている。
新しいのを買ってこようかといっても、ほむほむは首を振るばかりだった。でも同じ図鑑ばかり読んでいて飽きてしまってもいけないので(今のところそんな気配もないが)、今度の誕生日に別の図鑑を買ってあげようと思っていることはほむほむには秘密だ。
とにかく、休日になるとほむほむといる時間が増えるというのは確かだ。
「ホムフッ」 ケフッ
「はい、お粗末様でした」
ほむほむとの夕食が終わる。ほむほむ用の食事としてほむほむフードが代表的であり、実際ペットショップなどでも与えられているくらい栄養バランスもよく、固形でつかみやすいため便利ではあるのだが、別にほむほむがそれしか食べられないというわけではなく、私たちの食事も好んで食べる。
そんなわけで、私とほむほむは基本的に同じものを食べている。しかしだからと言って私のうちにほむほむフードがないかというとそうではない。
一つ目の理由は、飼い始めのころに夕食として渡すために買ったのが直接のきっかけとなり、保存のきくほむほむフードがまだ残っているということだ。
もう一つ理由があって、それは私が魔法少女であることと関係している。つまり、私が万が一帰れなかったときに、ほむほむがお腹を空かせて死んでしまうようなことがないように、ということだ。
考えるだけでも悲しいが、しかし魔法少女とはそういうものだ。帰れないとは、生きて帰れないという意味さえ含んでいる。
一応私のうちであるマンションの大家さんに、私が何の断りもなく三日家を空けたら、部屋のかぎを開けてほむほむの世話をしてあげて欲しいと頼んではあるのだが、やはり心配は残る。
ちょっと悲観的な話になってしまったが、私はほむほむとご飯が食べられるというだけで幸せであり、それゆえほむほむとの時間を大事にしていると、それだけのことだ。
ほむほむに私がいなくなった時のことを話したこともあったっけ。そのときには、ほむぅと悲しげな声を上げて、私の手に頬をすりすりとさせていた。
すごく不安に感じたのだろう、私は手に滴が落ちるのを感じて、大丈夫だから、安心してなんて言ってあやしたのだった。
以来、私はより一層慎重に魔女と戦うようになった。あんなかわいそうな目に、絶対にあわせてはいけないと感じて。
洗い物をして、お風呂に入る。ほむほむも清潔にするのが好きみたいで、お風呂のときはいつも上機嫌になる。
「ホッムムーホームー♪」
ほむほむの歌を聴きながら、あたたかいお湯に体を包まれて、疲れをいやす。一日のうちで最も幸せな時間の一つだ。
しかし、私があまり長湯しすぎてほむほむがのぼせてしまってもいけない。ほどほどで切り上げて、お風呂からあがった。
今日はこの後特にすることがあるわけでもないので、明日の準備だけして、ベッドに入ることにする。ほむほむも一緒だ。
「お休み、ほむほむ」
「ホミュミュゥ……」
ほむほむはもうすでに眠そうだ。私は電気を消して、ほむほむを抱いて布団をかぶる。しばらくすると、すぅすぅとほむほむの寝息が聞こえてきた。
私はそれに安心して、目をつむる。明日もこんな風な、平和な一日になることを願いながら。