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その1

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homuhomu_tabetai

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「…ホミュウ…ホミュウ…」

弱々しい声が聞こえてくる…。
それは、交通量のあまり多くない道路の路肩のあたりから聞こえてきた。

「ホミュウ…ホミャア…」

そこには若ほむ…いや、まだ若ほむまでは成長していない仔ほむの姿があった。
仔ほむの前には、恐らく親だったであろうほむまどと、若まどが無残な姿を晒している。
仔ほむには何が起こったのかわからなかった…。
いつもと同じ朝だったはずなのに…。

両親が日課の食べ物探しに出かけて行き、自分と姉の若まどはそれを見送る…そう、そこまでは同じだった。
違ったのは、今日は姉が寝坊して両親に「いってらっしゃい」が言えなかったので、急いで巣を飛び出して声をかけに行った事だ。

その直後に人間の乗り物の音が聞こえて…いつまで経っても姉が帰ってこない事に心配になって…。
どうしたのかと様子を見に巣から出たら…そこにはさっきまで元気だった家族の変わり果てた姿があった…。

仔ほむは泣いた…厳しいが優しかった両親と、ケンカもしたが本当は仲良しだった姉の為に…独りぼっちになった自分の為に…。



…どのくらいの時間泣いていたのだろう? 仔ほむはわからなかった。

「おや? 若…仔ほむじゃないか?」

突然後ろから人間の声がした。

「ホミャアァァ!!??」トテテテ

仔ほむは驚いて、急いで巣の中に走りこんだ…本当は家族の元を離れたくなかったのだが仕方がない。

『人間は自分達にひどいことをする!! 絶対に近づくな!!』

そう両親は口を酸っぱくして自分達に言い聞かせていたからだ。

仔ほむの両親は昔、飼いほむまどだった。
飼い主の人間が油断した隙に、開いていた窓から逃げ出したのだ。
当時のことは話さなかったが、身体に何箇所も治り切らない傷跡や、やけど跡があったので何があったかはわかった。
飼い主は男勝りな女性だったという…。

「…ホミュ…」ブルブル

仔ほむは巣の入り口付近に隠れ、震えながら男と家族の方を見た。


   どうか見つかりませんように!! …ひどい事されませんように!!


「あ!? 逃げちゃったなぁ。まあ仕方ないな。ん!? これは…さっきの仔ほむの家族…か?」
「かわいそうに…。たしか、ほむ種は仲間を大切にするって聞いたな…。
 さっきはここに仔ほむ一匹だけしか居なかった、と言うことは…。」
「もしかしてあの子、一人ぼっちになったんじゃ?」


そう言うと男はハンカチを取り出して仔ほむの家族を丁寧に包みだした。
包み終わると今度は仔ほむの巣がある方に近づいてきた。


   やっぱり見つかってる!? どうしよう!? 奥に逃げなきゃ!! あ、足が動かない!!


「ホ…ホミ…!?」

仔ほむは恐怖でその場に釘付けになってしまった。


   …あぁ…もうお終いだ…


しかし男は意外な行動を取った。

巣は植え込みの木の根元にあるのだが、その木の脇に男は小さな穴を掘り始め…
掘り終るとそこに仔ほむの家族を静かに並べ埋め戻した。

そして…。


「ここなら安心して眠れるだろう…あのままだとかわいそうだったからね。」
「他にも仲間はいるのかな? もしいないなら大変だろうからこれを…。」

そう言って持っていたサンドイッチを巣の前に置いた。

「これしかなくてごめんよ。じゃあね」


「…ホミャア…」


男が去った後、仔ほむは家族が埋葬された場所の前で考えていた。

   あの人間はわたしにひどいことをしなかった…
   それだけじゃない…家族のお墓まで作ってくれて、食べ物までくれた…
   人間は危険な生き物…そうお母さん達は言っていたはず…
   でもぜんぜん危なくなかったな…

   どういうことなんだろ? わからない…


仔ほむは両親の教えと実際体験したことのギャップで頭がいっぱいになった。


「ホミュン!!」


   考えてもわからないや…悲しいけどおなかも減った…
   とりあえずサンドイッチを食べよう!!

   おなかが一杯になったらもう一度考えてみよっと!!


仔ほむは振り返り、自分の何倍もあるサンドイッチを引きずりながら巣の中に入っていった。

サンドイッチにかじり付きながら仔ほむは思い出していた。
同じぐらい大きなサンドイッチを両親が持って帰ってきたときのことを。


   あの時は楽しかったなぁ…お母さん達もとても喜んでたし…
   二人で運んでる時に横取りされそうになって、大急ぎで帰ってきたよって笑いながら話してたっけ…

   お姉ちゃんは自分の分だけじゃ足りなくて大泣きしてたし…あれ!? わたしもだったっけ?ふふふ…
   結局お母さん達が自分の分をわけてくれたんだったな…


…ポロポロポロ…


いつの間にか仔ほむの頬を涙が濡らしていた。
仔ほむは涙をぬぐうと、一心不乱に食べ続けた…何かを忘れようとするように…。

やがて疲れてしまったのか、そのままサンドイッチを枕に眠ってしまった。




チチチ…チュンチュン…


仔ほむはいつもの小鳥の鳴き声で目を覚ました。

…辺りを見る…。


「…ホミューン…」


やはりそこに家族の姿は見あたらない。


   夢だったらよかったのに…

そう思った…しかし夢ではなかった。

仔ほむは昨日のことを思い出した…。


   お母さん達とお姉ちゃんが死んだ…たぶん人間の乗り物に潰されたんだ…
   その後…泣いてるわたしは人間に見つかって…家に逃げたんだったっけ?
   だけど、その人間は怖くなくって、みんなのお墓を作ってくれて…食べ物までくれた…

   なんでだろう? 怖くない人間も居るのかな?


そこまで思い出して仔ほむはまた泣きそうになった。


「ホミュッ!! ホミュホミュホミュッ!!」


   ダメだダメだ!! 泣いちゃダメだ!! これから自分ひとりなんだから!!


自分に言い聞かせるように仔ほむはつぶやいた。


   落ち込んでても仕方ない!! 出来ることからやろう!!

   とりあえず、食べ物は昨日のサンドイッチがあるからしばらく大丈夫!!
   なくなってきたらその時考えればいいや!!
   後は…そうだ!! お墓にお花を飾ろう!! …みんな喜んでくれるかなぁ?


仔ほむはパンパンと気合を入れると巣から出て行った。



巣から程近い花壇に仔ほむはたどり着いた。
いつもたくさんの花が咲いていて、家族とよく来た場所だ。
人間が世話してるんだよ…そう教わったことを思い出す。

さっそく花集めに取り掛かる。仔ほむは紫の小さな花を集めだした。
やがて両手一杯に花を集めると、それを持って家族の墓に供えに向かった。

「ホミュゥ/// ホミュンホミュー///」

   きれいなお花でしょ!?
   みんなとよく行ってたお花畑から摘んできたんだ///
   これから毎日お花持ってくるね!!


…仔ほむはふと母の言葉を思い出した。


『お母さんはね、あのお花が大好きなの』


みんなで花壇に行った時に、ほむほむが自分の背丈よりもずっと高い花を指差して言った言葉を。
たしかさっき咲いてたはずだ。


「ホミュミュッ!!」


仔ほむはもう一度花壇に走っていった。




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