かくれんぼ
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作者:afAcqIZC0
902 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/07/14(土) 09:49:27.13 ID:afAcqIZC0
「ホムッホムホム!!!」
「…ん?…ほむほむ…か…」
ベンチで昼食を済ませ、考え事をしていると…足元から声が聞こえた。
「ホムホムッ!!!…ホムホムホムー!?」ゴハンチョウダイ!!…キコエテルノ!?
…どうやら私に餌をねだりに来たらしい…。なかなか身の程知らずなほむほむだ…。
…えー…と…今は…足りているな…なら…用はないな…
私はそう考えて、ほむほむを踏み潰してやろうと右足を少し動かした…が、やめた。
…それも…面白いかも知れんな…
私は足元のほむほむを見て…ニコッと笑って見せた。
ほむほむは一瞬、驚いたような顔をしたが…自分の声が聞こえているのが分かったため、さらに喋りかけてきた。
「ホムホムホムッ」ゴハンチョウダイヨッ!!
「ホムーホムー!?」キコエテルンデショッ!?
私は問いかけを無視して…ずっとほむほむに笑いかけている…。
「ホムーッホムホムーッ!!!」ゴハンチョウダイーッ!! ポカポカポカ
とうとうほむほむは痺れを切らせて私の靴を叩き始めてしまった…。
…それでも私は笑顔しか返さない…。やがて…ほむほむは叩くのをやめ、怒りを表しながら私に捨て台詞を吐いて離れて行った。
「…ホムッ!!!」…ケチ!!
…よし…それじゃあ開始しようか…
私はベンチから立ち上がって、離れていくほむほむを視線で追う。…どうやら植え込みに入っていくようだ…。
ほむほむが植え込みに一歩入って、驚いた様子で後ろを振り返る…。ほむほむの瞳には…私が映っていた…。
「ホムッ!?」エッ!?
ほむほむは驚愕の声を出した。それはそうだろう…さっきまで自分を無視し続けた人間が…いつの間にか自分のすぐ後ろに居たのだから…。
「…ホムホムッ!?ホムーッ!?」…ナニ!?ナニカヨウ!?
ほむほむは私に問いかける…しかし、またも私は笑顔で見るだけだ。
「…ホムホム…」…ナンカ…イヤダ…
ほむほむはなにかを感じたのか、植え込みから出て別の方向に早足で歩き出した。
…おそらく植え込みのどこかに巣があって、その場所を知られるのが嫌だったのかも知れない…。今度、探してみるか…。
また私は視線でほむほむを追う。…今度は別のベンチの下に入っていった。
ベンチの下はゴミに紛れて食べ物が落ちている事がある。それを思い出したのだろう。
「…ホムゥ…ホムホム…」…ウーン…ナイナァ…
…ほむほむは一生懸命に砂とゴミを手で払いながら食べ物を探す
…探しながら方向転換した瞬間…ほむほむは視線を上げて…固まった…。
…ほむほむの瞳には…しゃがんで自分を見ながら笑っている…私が、また映し出されている。
「ホムッ!?ホムホムホムーッ!?」!?ナニ!?ナンナノーッ!?」 タタタタッ
今度は叫びながら走って逃げてしまった…。
私はほむほむが逃げてゆく先を確認した…。そこは、使わなくなった物を一時的に置いておく場所だった。
…たしか…廃材とダンボールぐらいしか置いてなかったはずだな…
私はゆっくりとそちらに向かった…いくらほむほむが走っても、人間の脚とは比べ物にならないからだ。
「…ホ…ホム…ホム…」
…かすかにほむほむの声が聞こえる…どうやら逃げ切ったと思って安心している様だ…。
私は…聞き耳を立て…声のする方を探す…あった!
ちぐはぐにダンボールが積み重ねられ、ほむほむがちょうど入れる隙間ができている…そこから声は出ていた。
静かに近寄り…ダンボールをどける…。
「…!?!?!?…ホッ!!!!!!」
突然明るくなり、驚くほむほむ…。視線の先には…やはり…笑顔の私がいる。
「…ホ…ホムホム…ホム…」ナ…ナンデ…ナンデ…
ほむほむはしりもちをついたまま後ずさりする…。すっかり安心していたのにそれが…アッサリと見つかってしまったのが信じられないという風に…。
私は喋らない…笑顔のままほむほむを見るだけだ…。
「…ホム…ホムッ…ホビャアアアアアァァァァ!!!!!!」ダダダダ゙ーッ
今度はさっきよりも速度を増して私の横をすり抜けて逃げてゆく…。
…やれやれ…どんなに早く走っても無駄なんだがな…今度は………倉庫か…
また私は倉庫に向かって歩き出す…。倉庫といっても、畳二枚にも満たない広さだ。扉があって鍵がかかっているのだが…さて。
倉庫の前に来た…。倉庫は三辺が建物に囲まれ、入り口は正面しかない。…周囲を見る…ほむほむはいない…。やはりこの倉庫の中だろう…。
…どうやって入ったのか?…ん…ここからか?…
倉庫の扉を見ると、鉄製の扉の下が錆びて小さな穴があった…。
…いかんな…塞いでおかないと…またほむほむが入り込むかもしれん…巣にでもされたら厄介だしな…
…私は…ポケットから鍵を取り出すと…ゆっくり鍵穴に差し込んだ…。
ガチャ…ギィイイ…
「…ホッ!?…」
中に入るとまた、かすかに声がした…。間違いなく中に居るようだ…。
聞き耳を立てる…しかし今度は学習したのか、それっきり声は聞こえない…。
扉の横にあるスイッチを入れる…明かりが点いた。
ギィイイ…ガチャン
扉を閉める…。
…おっと…この穴も塞いでおかないとな…これでいいか…
扉を開けっ放しにする時に使うレンガを穴の前に置いた。これでとりあえず…倉庫は密室になった。
…さて…かくれんぼ…か…子どもの時以来だな…
私は倉庫内をぐるっと見渡した…。壁に沿って棚が三段しつらえてあり、それなりに物は置いてあるが、きれいに整頓されている…。
…入るのは久しぶりだが…きちんと使ってくれているな…感心感心…
…棚は…ほむほむが登れるようにはなってないな…という事は…
…一段目の棚の下しか隠れられないということだな…
ちょうど棚の上に懐中電灯が置いてあった…手に取る。スイッチを入れる…懐中電灯が弱い明かりを点す。
…さあ…始めよう…まず…入り口に近いここからだな…
私は左下の箱を手前に引き出した…そこにほむほむは…いない…。
…いきなり見つけてもつまらんからな…
順番に…箱…なにかの器械…紐で束ねられた本などを手前に引き出していく…。
…ガサッ…
…なにかが動く音がした…。懐中電灯を向ける…が…何も居ない…。
…移動したか…そうでなくてはおもしろくない…逃げろ逃げろ…
…作業を続ける…。…笑顔のままで…。
..................
…見つからんな…まさか!?…逃げられたか?
…もう…あのダンボール箱しか残ってないぞ…
入り口の扉を見る…開いていない…レンガもそのままだ…。まだ中に居る…確信する。
…最後の箱を残して、私は一息入れる事にした…。
入り口横に置いてある箱の陰で今…ほむほむは恐怖に耐えているのだろう…息を殺し…縮こまって震えている姿を想像する…。
…身体の一部分に勢い良く血流が流れ込むのが感じられた…。…何年ぶりだろうか…。
…たまにはこういうのも…いいかもしれんな…いつもは…淡白にやりすぎだな…
私はほむ種を捕まえる事がよくある…。半分作業のようになってしまっていたのを反省した…。
…さて…と…覚悟はいいかな?…もう…かくれんぼは…おしまいだ…
おもむろに最後の箱に近づき…手前にゆっくりと引き出した…。
…居ない!? …どういうことだ!?
そこにも…ほむほむの姿はなかった…。
懐中電灯で辺りを探す…引き出された物品があるだけだ…。また扉とレンガを見る…こちらも変わっていない…。
なぜだ!? なぜ居ない!?
私は混乱した。そこに居るべきモノが居ないなら当然だろう…。
…!! この中か!?
最後の箱を開ける…ほこりが舞う…。
…居ない…なぜだ?
私は今まで引き出した全ての箱を開けた。…どれも中に動くモノは居なかった…。すでに笑顔は消えてしまっていた…。
…棚にほむほむが登れるようには、やはりなっていない…最初に声もした…途中に音もした…しかしほむほむは…居ない…
考える…考える…。
…そういえば…この棚は…私が自作したものだ…あの時…たしか…
私は棚を作った時の事を思い出す…もう…二十年近く前である…年を取ったものだ…。
あの時…そうだ!!…材料が少し足りなくなって…最後の部分は別の材料を切って…はめ込んだんだった…
…たしかそれは…中が空洞になっている!!
懐中電灯を最後の箱があった奥の角に向ける…そこには古ぼけた…塩ビパイプが見えた…直径五センチほどで、棚を支えている…。
近くで配管工事をやっていたので…余ったのを貰ったんだ…それで…切りすぎてしまって…
…継ぎ手だったかな?…それをはめ込んだら、いい具合になったんだったな…
パイプの下にはT字型になった部品がはめ込まれている…穴は壁に沿って奥の方を向いている…。
…見つけたぞ…残念だったな…
私は再び笑顔になった…。
周りを見渡して、古い新聞を手に取る…当時の新聞だった。…懐かしさが甦ったが…すぐにそれを丸める。
そっとパイプに近づき、穴に詰め込んだ…。
「……ホッ!?……」
小さく声がした…当りだ…。
再び周りを見回して、パイプの代わりになりそうなものを探す。ちょうどいい角材が目についた…。手に取り、パイプの横に並べて立てる。
少しきついがうまくはまり込んだ…。当時にこの角材があれば…などと愚にもつかないことを思う…。パイプからは声は聞こえない。
…まだ隠れてるつもりらしい…それなら…これでどうだ…
私は両手でパイプを持つと、慎重に手前に引きずり出す。立てたまま床を滑らすように、ゆっくりと…。
「ホムッ!?ホムッホムッ!?」ナニッ!?カベガ…ウゴク!?
おもわずほむほむは、声を出してしまった。その間もパイプは引き出されてゆく…。
棚から完全にパイプが出た…。ぽっかりと上に穴が開いている。私は懐中電灯を穴に照らし…覗き込んだ…笑顔を浮かべて…。
「ホッ!?!? ホムホムッ!!!ホムーッ!!!」…ヤダッ…ヤダヤダヤダッ!!
ほむほむはもう…どうしていいか、わからない様子だった…。
私はようやくほむほむに声をかけた…笑顔のままで…。
「餌が欲しかったんだったな…。もう充分ほむほむは居るんだが…私を楽しませてくれたお礼にお前も連れて行ってやろう…。気に入ると思うぞ…。」
..................
私が倉庫にあった適当な容器にほむほむを入れて出てくると、見慣れた顔が近くにあった。最近知り合った若者だ。
「先生、こんなところでどうされたんですか? なにかあったんですか?」
「なに…ちょっとお楽しみを…ね。」
若者は不思議そうな顔をしたがすぐに元に戻り、こう言った。
「明日の講演に、また僕も出席させてもらいますので…よろしくお願いします。」ペコリ
礼儀正しい若者だ…。さすがあの子が選んだだけはある…。
「こちらこそよろしく頼むよ。T久君。」
そう言って彼と別れた。
さて…こいつは晩酌のつまみにするかな…これだけ恐怖を感じていれば…さぞかし美味いだろう…
「ホムー…ホムー…ホムホムー…」ワタシ…ドウナルノ…コワカッタ…
「マドカァ…ホムホムー…」マドマド…コドモタチ… ポロポロポロ…
…明日は講演前に巣探しでもしようか…
「終わり」