とある真冬のあんさや家族 その3
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仔さや「ヂィェビィィィッ! ヂャヤヂャヤァァァッ!!」ジタバタジタバタ
さやさや「サヤヤヤ!? チャヤカァァーー!」
着いた先ではなんと、樹の枝から垂れている黄色い紐で仔さやが首を吊っているではありませんか。
仔さやの体は地面から1メートル以上は浮いており、どんなに仔さやが足掻いても地面に着くことはありえません。
苦しみ藻掻く仔さやを助けようと、さやさやはすぐに走りよります。
さやさや「シャヤアァッ!」ビュオッ
ズバアッ!
さやさや「サッ!? サヤッサヤッ!?」ブラーン
仔さや「ヂャヤヤヤヤヤヤッ!? バガッ! ビョンドバガァァァァ!!」
さやさや「サッサッサッヤ!? サヤヤヤヤ!」ワサッワサッ
なんと、仔さやの所へ辿り着く前に、さやさやは右足を釣り上げられて宙吊りにされてしまいました。どうやらこの一帯には罠が仕掛けられていたようです。
なんとか足の紐を解こうとするさやさやですが、結び目すら見つけられずびくともしません。紐を切ろうにも、自慢の剣は釣り上げらた上げられた時に落としていました。
わたわたとさやさやがもがいている間にも、仔さやの首を絞める紐は確実に仔さやを死なせようとしています。
仔さや「ヂャビャビャビャビャゥッ!」バタバタバタバタッ!
さやさや「チャヤカァ! チャヤカァァァァァ!!」ユサッユサッ
仔さや「チャッ、チャバ……ッ」バタバタッ――ブラン
さやさや「チャヤカ!? チャヤカァ!」
仔さや「――」キシッ……
さやさや「サヤヤアアアアアアアッ!! サヤァァァァァーーーーッ!!」
さやさやの懸命な抵抗も虚しく、仔さやは動かなくなりました。抵抗と言っても、仔さやからすれば、振り子のようにぶらぶらと自分を揺さぶっていただけでしたでしょうが。
かつて快活に笑っていた仔さやの顔は、死への恐怖と窒息による苦痛から二目と見られぬほど醜く歪んでいました。
くりくりとした目は限界まで見開かれ、力なく開いた口からはだらりと舌が伸びています。さやさやはこれから仔さやの事を思い出す度に、この壮絶な死に顔の事を思い出すことでしょう。
ブリプリビチッ
ボドボドボドッビダッ
プゥ~~ン……
さやさや「アタシッテ……ホントバカ……」グズグズッ
仔さや「――」
窒息した仔さやの筋肉が弛緩したらしく、仔さやから排泄物がひり出されていきます。肉類を食べた後の糞の強烈な匂いはさやさやの元まで漂ってきました。さやさやが流す涙が額を伝って地面に落ちていきます。
あんあんはその命を自分の娘達の為に捧げてくれたのに、仔さやは一日も立たない内に無残に死に、あんあんの体は焦げ茶色の糞になってしまったのです。己の無様さ、無力さにさやさやは絶望していました。
そこへ、何者かがこちらへ近寄ってくる足音が聞こえてきました。
ザッザッザッ……
まみまみ「マミィッ♪」
さやさや「マミサァァァァァンッ!!」グワァッ
まみまみ「ミキサン? マミ? マミマミマミッ♪」カラコロ
さやさや「サヤヤサヤァァァァァ!!」
さやさや達の元へやってきたのはまみまみでした。どうやらこれらの罠はまみまみが仕掛けたものだったようです。
まみまみは自分の巣や狙撃する足場の周囲に簡単な罠を張ります。かくして見事にさやさや達は罠を踏んでしまい、現在の状況に至るのでした。
さやさやを見て鈴の音のように笑うまみまみに、さやさやはありったけの怨嗟の声をぶつけます。
憎しみで相手を殺せるならまみまみはおろか、この森全ての命が根絶やしにされていたかもしれませんが、感情自体に自分以外の何かを傷つける力などありません。所詮負け犬の遠吠えでした。
まみまみ「マッミン」ブチン
仔さや「――」ドサッ
さやさや「マミサン!?」ジタバタッ
まみまみ「マミ~~ン……」アァーーン
さやさや「サヤヤーーーーーッ!?」
まみまみはリボンをちぎって仔さやの亡骸を受け止めると、あーんとはしたなく大口を開けました。
餌が十分に摂れない冬は皆お腹を空かせています。たくさん蓄えをしているまみまみだって同じです。そんなところに罠にかかったさやさやと仔さやは、まみまみにとって絶好の食料でした。
さやさや「マミサァン! サヤヤヤサヤァ! サヤサヤヤヤヤ――」
まみまみ「ティロッ」ジャカッ
バムッ
ボビュン
さやさや「ジャビャッ!?」ビュシャッ
まみまみ「マミマミ。マミマーミー」
さやさや「ビャビュッ……ジャジャジャッ!? ジャァッビャビャァァァァッ!!」ヒュカーヒュカー
まみまみを止めようと吠え続けるさやさやに、まみまみが一発マスケットを放ちます。銃弾はさやさやの両頬を貫き、さやさやを口裂け女に変えました。
鳴き声がおかしくなって顎がガクガクしますが、それでもさやさやはまみまみに吠えるのを止めません。しかしそんな足掻きも虚しく、再度まみまみは仔さやを食べるべく大きく口を開けています。
まみまみ「マッミマミーーン♪」アァ~~ン
さやさや「ビャビビャァァァァァンッ!!」
ガブリッ
モヅッムシャッムシャッ
さやさや「ヂャビャガァァァッァアァァァァ!! アッアッアアアアアアアアアア!!」
まみまみ「♪」
バグバグバグバグッ
クッチャクッチャクッチャクッチャ……
さやさやの声などどこ吹く風で、まみまみは仔さやの亡骸を貪ります。まみまみも肉を食べるのは久しぶりのようで、一心不乱に仔さやに齧りついています。
必死に体を揺さぶり続けているさやさやでしたが、そうしている内に少しずつ紐が緩んできたようです。それに気づくと、さやさやは出来る限り音を立てないように紐を外そうとし続けます。
ユスッ……ユスッ……スポッ
ベシャッ
さやさや「ビャッ……」
まみまみ「マミミ~~ン♪」
まみまみは罠から抜けだしたさやさやに気づく様子もなく、仔さやの肉を食べ続けています。
仔さやの仇を討つならチャンスは今しかない、とさやさやは判断しました。落ちた地面に転がっていた自分の剣を拾うと、一直線にまみまみに向かって駆け出しました。
タタタタタ……
さやさや「ビ――」ヒュンッ
まみまみ「ティロ・フィナーレ・ブツリ!」
ゴシカァン!
さやさや「ビュボゥ!?」ドザッ
まみまみ「マーーッフプ」ゲーーップ
剣をまみまみに突き立てる寸前に、さやさやの体が吹っ飛びました。何が起こったか理解出来ないさやさやは、受け身も取れずに地面に叩きつけられました。
どうやらさやさやの不意打ちにまみまみは気づいていたようです。さやさやがまみまみを刺す前に振り向きざまにマスケットの重症でさやさやを殴打したのでした。
来ることがわかっている奇襲などまみまみにとっては脅威でもなんでもありません。げっぷをする余裕まであるようです。
さやさや「……? ――!? !?!?」
自分の顔に違和感を感じ、声が出せないことにさやさやが気づきました。顎に手をやってみると、なぜか触ることが出来ません。
ふと雪原を見てみると、ピンク色の何かが転がっています。よくよく見るとそれには白い歯が鈍く輝いていて、とろとろと赤い液体が流れ出ていて――。
さやさや「モビャ――ギビ―――!!」
そこまで見たところで、さやさやの顎を猛烈な痛みが襲いました。あそこに転がっているのは、さやさやの下顎です。
まみまみに撃たれて頬が引き裂かれた顎にマスケットで強烈な殴打を加えられた結果、下顎丸ごと吹っ飛んだようでした。凄まじい痛みに悶絶するさやさやに、まみまみがマスケットを片手に悠々と近づいてきます。
まみまみ「シッヌシッカナッイジャナ~~イ♪」グリィ
さやさや「ビョ――ビョォゴ゙ォォッ」
鼻歌を口ずさみながらまみまみはさやさやの頭に銃口を突きつけます。痛みにのたうつさやさやには、もはやそれを跳ね除ける力は残っていませんでした。
ドウッ!!