餌 その5
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homuhomu_tabetai
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アロワナの水槽のある部屋に入った。
私の自慢の空間だ。
特別製の巨大な水槽の中で、三匹のアロワナが悠然と泳いでいる。
権力と繁栄の象徴と言われるこの魚を、
繁殖力だけが自慢の非力な小動物に紹介してやろう。
……………………
「ホムゥ…」「スゴイ…」「オオキイネ」「ホミャァ~」「カッコイイ♪」「マドォ」「ドウヤッテタベルノ?」
自分より遥かに巨大な生物を見ているのに、全く恐怖を感じていない。
ほむほむとは、つくづくおめでたい生き物だ。
このままいきなり食べられるのも可哀想だな…
少しだけ、楽しませてやろう。
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「マドッ」「ヨクミエル♪」「オオキナサカナ…」「ホムー」「ホミュゥ~」「コッチムイテ~」「ミャドォ~」
私は、ほむほむ達の水槽をアロワナがよく見える机の上に置き、
アロワナの水槽の下に置いてあった、小さな虫籠を手に取った。
中にはコオロギが数匹入っている。
……………………
私は一匹のコオロギをピンセットでつまみ上げ、ほむほむ達に見せてやった。
「これが何か知っているかな?」
「ホムゥ?」「ナニコレ?」「シラナイ…」「マドォ…」「アシガイッパイ…」「ホミャァ~」「チョットコワイ」
やはり、コオロギを知らないらしい。
野生のほむほむ達ならば、イナゴやバッタ、そしてコオロギ程度は必ず知っているのだが…
もっとも、私が見せたのはアロワナの餌用に品種改良されたコオロギだ。
一時期は、詐欺まがいの商法で話題になったりもしたあのコオロギだ…
立場的には目の前のほむほむ達と同じ所にいる生物だ。
……………………
「ホムゥ…」「ホミュゥ」ジーッ「ミャドォ」ジローッ「ホム~」「コワイ」「デモ…キニナル…」
ほむほむ達は初めて見たコオロギに興味があるようだ。
自然界ではほむほむがコオロギを食べる事もあるだろうから、
少しだけ残っていた野生の本能が刺激されたのかも知れない。
どうせなら、もっと良く見せてやろう。
なんなら、殺して食べてもかまわない。
それくらいのサービスはしてやろう…
私はほむほむ達の水槽の中に、このコオロギを落としてやった。
そして、コオロギが跳び出さないように、水槽の上にアクリル板で蓋をした。
「ホムムムゥッ!!」「ナニコレ!」「コワイ!」「ホミャァー!!」「オカアサーン!!」「ワアァーッ!!」「コッチキター!!!」
「ホミャア~」「イヤダァーッ!!」「ミャドォ~!!」「タベナイデーッ!!」ドタドタ バタバタ
ほむほむ達が水槽の中を走り回っている。
どうやら、コオロギを餌ではなく、危険な敵と判断したようだ。
「マドドォ!!」「ホビャアァ!!」バタバタ「ホミャア~」「ホムラチャーン!!」「ミャドギャァ~」ドタバタ
うーむ、コオロギ程度でここまで大騒ぎをするとは思わなかった…
……………………
しかし、これはこれで面白かった。
気が向いたら、百足か蠍でも準備しておこう…
……………………
私は水槽の中のコオロギをピンセットでつまみ出してやった。
「ホッホムゥ…」「コワカッタ…」「モウアンシン?」「ミャドォ~」「オカアサーン」「ホミャア~」「ダイジョウブ?」
ほむほむ達が、子供や仲間の無事を確認し合っている。
「ホムッ?」「ケガシテナイネ?」「ダイジョウブ…」「ホミャア~」「コロンジャッタ…」「ペロペロ」
社会性が強く、仲間思いなのは立派だが…
僅かコオロギ一匹にここまで翻弄されるとは…
……………………
「ホムゥ…」「アノムシキライ…」「アシガイッパイ」「マドォ」「ワルイムシ」「コワカッタ…」
「ホミュ?」「ムシハドコ?」「ミャド」「アソコ」「ツカマッテル…」「ホムゥ」「ヨカッタ♪」
さて、ほむほむ達の反応は…
「ホムゥ♪」「タスケテクレタ」「ムシヤッツケタ」「ホミャァ~」「イイヒトダ~」「マドドォ」「アリガトウ♪」
相変わらずだが、ほむほむ達は馬鹿だった…
ほむほむ達は、まだ私をいい人だと思っている。
後もう少しだけ、そう言う事にしておこう…
その方が面白い。
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「ごめんね、悪い虫さんを入れちゃって…」
「ホムッ!」「ダイジョウブ!」「ホミャァ」「ヘイキダヨ」「ビックリシタダケ」「ミャロ~」
「悪い虫さんは、あのお魚さんに食べてもらおう」
私はアロワナの泳ぐ水槽を指差した。
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ほむほむ達が見つめている中で、
私は水槽の上部に取り付けてある餌の投入口を開いた。
そして、ほむほむ達の言う所の悪い虫…
餌用のコオロギを、水槽の中に落としてやった。
チャポッ パシャパシャッ
「ホミャッ!」「ワルイムシオチタ!」「ヤッタ!」「マドォ」「オボレテル」「ワーイ♪」
ほむほむ達はコオロギが溺れるのを見て大喜びしている。
自分達の未来がどうなるのかも知らずに…
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そして、一匹のアロワナが溺れるコオロギに近付き…
バクッ
一口だ。
コオロギはアロワナに飲み込まれた。
まだ腹の中で生きているかも知れないが、
生還する事は絶望的だろう。
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「ホミャア!」「ホムムゥッ!」「ヤッタ!」「スゴイ…」「カッコイイ!!」「マデョ~」「ワルイムシタベタ~」「ワーイ♪」
ほむほむ達が歓声を上げた。
無邪気であるが故の残酷な感性…
そして、無知であるが故に悲惨な未来を予測出来ないでいる。
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「ホムムゥ~」「オサカナスゴイ♪」「カッコイイ」「マドォ…」「モットミタイ♪」「ホミャア~」「チカクデミタイ…」
大丈夫だ。もちろん近くで見せてやる。
文字通り、君達の目の前でアロワナを見せてあげよう…
