餌 その6
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私はほむほむ達の入った水槽をアロワナの水槽の餌の投入口の側に置いてやった。
ここからなら、アロワナが餌を食べる瞬間が目の前で見られるだろう。
もっとも、いずれはもっと近くでアロワナを見てもらうのだが…
……………………
「ホムホムッ♪」「ワクワク」「ホミャァ~」「ハヤクハヤク♪」「ワルイムシ~」「マドォ」「ドキドキ」
ほむほむ達がコオロギの入った虫籠を指差して催促しているが…
コオロギの仕事はもう終わっている。
次は君達の出番なのだから…
……………………
「ホミャホミャア~」「マダカナ」「マダカナ?」「ワクワク」「マデョ♪」「ドキドキ」
やはり、一番手は仔ほむがいいだろう…
私は一匹の仔ほむを水槽から出して、投入口のすぐ横に置いてやった。
「ここからの方がよく見えるだろう?」
「ホミャア♪」「ワーイ、アリガトウ♪」
仔ほむは水槽の上でうつぶせに寝そべり、投入口から水槽の中のアロワナを覗いている。
目を輝かせながらアロワナを見つめる仔ほむは、まるで天使か小悪魔だ。
「ホミャア!」「ズルイ!」「ワタチモ!」「ミャド~」「アタチモ~」「ホムーッ」「マドドォ」
ほむほむ達が騒いでいる。自分も特等席でアロワナを見たいとアピールしている。
全く、本当に可愛いやつらだ。
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「ホミャミャーッ!!」「ミタイミタイミタイ!!」「ホムゥ…」「オチツキナサイ…」「ホミャアアー!」「ミタイヨーッ!」
元気のいい仔ほむが頑張ってアピールしている。
少し鬱陶しくもあるが、私は大人だ。
素直にこの子の願いを叶えてやろう…
……………………
「ホミュゥ♪」「ワーイ、ヤッタ~♪」
私は、騒がしい仔ほむを摘まんで、水槽から出してやった。
「ホミュホミュゥ♪」「タノシイナ~♪」
仔ほむは大喜びだ。この後どうなるかも知らずに…
さて、約束は守らなければ…
この仔ほむを、アロワナの目の前に連れて行ってやろう…
騒がしい仔ほむを右手の掌に乗せて、餌の投入口の上に案内してやった。
仔ほむは、ゆっくりと私の指先の方へ移動して、
私の中指に掴まりながら、水槽の中のアロワナに夢中になっている。
「ホミャア~」「カッコイィ~」
アロワナの魅力が分かっているようだ。
死なせるには惜しい、とまでは思わないがね…
さて、そろそろ始めようかな…
……………………
どうでもいい情報だが、私は指先が器用な男だ。中指と薬指の間を大きく開ける事が出来る。
まあ、あまり役に立った事の無い特技だが…
こう言う場面での遊び心は大切にしたい。
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私は、仔ほむが乗っている右手の中指と薬指の間を大きく開けてやった。
「ホホッ!?ホミャアアァァァーッ?!!!」「エェッ!?ウワアァァーッ?!!!」
チャポン パシャパシャ
仔ほむは、面白いように水面に落下した。
「ホビャアアアアァァーッ!!!」「コドモガアァァッ!!!」「マドォォッ!?」「ナンデェェッ!?」
親ほむ達はもちろん大騒ぎだ。
「ホミャッ!」バシャバシャ「ホホッ…ホミャミャッ!」「タッ…タスケテー!」
哀れな仔ほむは、一生懸命に助けを求めている。
……………………
どうかな?
さっきのコオロギと同じ運命を歩む気持ちは…
まあ、虫籠の中のコオロギ達は、
ほむほむがアロワナに食べられるのを見て大喜びするほど…
残酷な生き物ではないのだが。
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バクンッ
「ホビャアアアァァーッ!!!!」「マドォォオオォォーッ!!!」「コドモガアァァーッ!!!」「ホミャアアァァーッ!!!」「タベラレターッ!!!」
仔ほむもコオロギと同じように、一口で飲み込まれた。
生意気にも魚が食べたいと言った仔ほむちゃんが、逆に魚に食べられた瞬間だ。
ちなみに、さっきの「ホビャアアアァァーッ!!!」は親ほむ達の悲鳴だ。
あの仔ほむは既にアロワナの口の中だから、もう叫ぶ事も出来ないだろう。
「ホッ…ホビャッ…」「…ドウシテ?」ポロポロ「マドォォ…」「コドモガ…」グスッ「ホミャ…」「オネエチャン…」
突然目の前で起こった不幸な事故に対し、ほむほむ達はそれぞれの反応を見せてくれている。
「ホビャアアァアッ…」「アアッ…ウアァァッ…」「ホミャアアァァッ…」「ウワアァァーン…」「マドォォ…」
涙を流す親ほむ、号泣する仔ほむ、茫然とするまどまど等…
皆が皆それぞれの方法で悲しみを表現している。
実に素晴らしい。私はゾクゾクしている。
しかし、ほむほむ達はまだ大事な事に気が付いていない。
この惨事が、事故ではないと言う事に…
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そろそろ、善人の仮面を捨ててやろう。
アロワナの水槽の上の、餌の投入口の側で震えている一匹の仔ほむがいる。
ようやく、自分がどれほど危険な場所にいるかが分かったのだろうか?
まあ、よっぽどのドジでもないかぎり、足を滑らせて水槽の中には落ちないだろうが…
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「ホッ…ホミュゥ…」「オッ…オウチニカエル…」カタカタ
仔ほむは、仲間達の入った水槽を指差して震えている。
確かにここは危険な場所だ。
次に死ぬのは君だろう。
しかし、ほむほむ達は分かっていない。
水槽の中も充分危険な場所だと言う事が…
……………………
まあいい、まずはこの仔ほむからだ。
私は震える仔ほむに、そっと右手を差し伸べた。
水槽の中のほむほむ達も見ているだろう。
ほら、よく見ておけ…
私がどう言う人間かを…
お前達の運命を握る人間の正体を…
仔ほむが震える両腕で、私の右手の指先にしがみつこうとしたその時…
私は仔ほむを助けるはずの、その右手の人差し指で…
仔ほむを軽く弾き飛ばした…
そう、三匹のアロワナの待つ水槽の中に…