理解促進

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概要

ブルームは、低次思考から高次思考に連なる6つの学習目標を示した。知識、理解、応用、分析、総合、評価である。
ブルームの弟子であるアンダーソンとクラスウォールは、低次なスキルから高次なスキルまで順に、記憶する、理解する、適用する、分析する、評価する、創造する、というレベルを提示した。
しかし、この分類体系では、示された思考が、1つのレベルだけに収まらないという混乱がある。それは「理解」において特に顕著で、浅い理解と深い理解を区別することもある。知識や事実の記憶のような表面的な学習は、しばしば単純な練習の形をとる。一方、深い理解をもたらすのは、より積極的で構成的なプロセスである。今日の教育者たちは、理解について、とても深いものだと考えており、理解が教育の主たる目標と考えられていることがよくある*1

基本テクニック

理解を促進する思考

R.リチャート他は理解するために必要不可欠で、理解を促進する思考として次の8つが挙げ、これらの思考を可視化することが理解を深めるための特定の思考方略・プロセスであるとしている*1
1 念入りに観察して記述する
2 説明や解釈を作り上げる
3 根拠をもとに推論する
4 関係づける
5 異なる視点を考慮する
6 核心を見抜いて結論を導き出す
7 疑問に思って質問する
8 複雑なものを単純化して深める
また、理解ではないが問題解決、意思決定、判断において重要な思考として次の6つが挙げられる。
1 パターンを見つけて一般化する
2 可能性とオルタナティブ(別の方法や考え方)を見いだす
3 根拠、議論、実行を評価する
4 計画し、実行をモニタリング(経過を観察)する
5 問題、仮説、偏見を見極める
6 優先順位、条件、何がわかっているかを明確にする

ファインマンテクニック

ファインマンテクニックは勉強の理解度を高めるテクニックであり、次のような利点がある*2
  • 勉強したい内容への理解が深まりやすくなる
  • 学んだ内容を忘れにくくなる
  • 興味を持って主体的に勉強へ取り組めるようになる
そして具体的なやり方は次のとおりである。
①自分の学びたい知識、テーマを書き出す
②学びたい知識、テーマについて知っていることを「人に説明するように」書いていく
③上手に説明できなかった部分は、テキストなどで調べ、書き足していく
④説明文を再度チェックし、分かりやすい言葉へ書き直す

具体⇔抽象

「東大医学部在学中に司法試験も一発合格した僕のやっているシンプルな勉強法」の著者である河野玄斗は、勉強効率を爆速で挙げる方法の一つとして、「具体と抽象を行き来して理解を加速する」ことを勧めている。
ここで、具体とは、勉強していて実査に解く問題のようのに、目の前にでてくるもの、抽象とは「要するにこういうことでしょ」と、勉強で出てくる問題の要点をまとめたものである。河野は問題を解くたびに「これらの問題は、まとめると○○だな」と共通点を洗い出して「抽象化」することを勧める(具体⇒抽象)。また、大抵の本の目次は「抽象」で構成されており、目次を見て今度は具体的に説明できるようにすることを勧めている(抽象⇒具体)。

東大読書

「東大読書」の著者である西岡壱誠は、「能動的に」読むことで「本を読みこむ力」と「地頭力」が鍛えられるという。そしてそれらは次の5つの力で身につくのだという*3
読解力 素早く、かつ正しく文章の内容を理解し、文章を読み込んで理解する力
論理的思考力 より深くその文章を理解し、論理の流れがクリアに追えるようになる力
要約力 他人に説明しやすい形にかみ砕く力
客観的思考力 さまざまな視点からの意見、多角的なものの見方を持つための力
応用力 得た知識を他のところにも活かせるように、自分のものにする力
西岡はさらに、これらの力を養うために、次の読み方を推奨している。
仮説作り 文章を読む前の準備が、理解度とスピードを左右することになる。具体的には「装丁(カバーや帯)からヒントを得るようにする」という「装丁読み」と「自分がその本から何を学ぶのか目的をはっきりさせる」という「仮説作り」を行う。
取材読み 本当に読解力を身に着け、本の内容を自分のものにするためには「読者」ではなく、「記者」にならかければならない。具体的には、相槌を売ったり、質問を考えたり、時にはメモをしながら前のめりになって本を読むという「取材読み」を行う。
整理読み 本を読む上で気を付けないといけないことは「わかった気になる」こと。一言で言い表せない場合は「わかった気になっている」のと同じ。理解するために必要なのは、情報を整理して、一言で言い表せる状態にすること。整理読みとは、「著者のいいたいこと」と「それを補強する言説」を切り分けながら読むことである。
検証読み 一冊の本からより多くのインプットを得るために、「同時並行で複数の本を読む」読み方が大事。これを「検証読み」といい、「意見の偏り」を避けるとともに、主体的に読むことことができる。
議論読み 読んだ本の内容を活かせないのは、本と「会話」をしていないから。本と会話することによってその内容を理解し、情報を活かしやすい。そのための読み方が「議論読み」で、①「仮説作り」で作った仮説が外れていなかったのか確かめる「答え合わせ」②「整理読み」よりももっとコンパクトな要約を行う「アウトプット要約」③自分の感想・意見をアウトプットする「自分なりの結論」により、行うもの。

法則的知識、接続用知識、個別的知識

「間違いだらけの学習論」の著者である西村克彦は知識を法則的知識、接続用知識、個別的知識に分類する*4。ただし、これらの分類は相対的なもので、法則的知識が、他の知識にとっては接続用知識になったり、個別的知識になったりすることもある。
法則的知識 上層の知識で一般的な知識。ここで一般的とは複数の対象に対してその知s機を適用できるということ。
(例)「気温差が大きいと昼間の光合成量と夜間の呼吸量との差が大きくなって、当殿高いおいしい果物ができる」
接続用知識 中層の知識。個別的知識はこの接続用知識を介して法則的知識によって必然的に説明される。
(例)「山形県には内陸部が大きく、内陸部は気温差が大きい」
個別的知識 下層の知識で、個別的な事柄に関する知識。法則的知識から必然的には導かれない(必然的つながりにおいて隙間がある)。
(例)「山形県は果物の産地である」
このように知識を分類した上で「理解」を「理解とは、個別的知識が、接続用知識を介して法則的知識で説明されること、または法則的知識の一事例になることである」と定義する。なお、これは「理解」の定義の一つであり、違う定義の仕方を否定するものではない。

有意味化

(a)「ジョンがボートに乗って日本にやってきた」
(b)「ペリーが黒船に乗って日本にやってきた」
この2つの文章を比べると、(a)では「ジョンがボートに乗って」となっているところ(b)では「ペリーが黒船に乗って」となっているだけだが、(b)の方が容易に記憶ができる。それは、(a)では「ジョンがボートに乗って」と「日本にやってきた」という項目間の隙間が埋められない一方で、(b)ではペリーが黒船に乗ってくるエピソード(既存知識)によって項目間の隙間が埋められるためである。エピソードは、特定の時空間の1回きりのものなので、一般性を持ちようがなく、法則的知識にはなりえない。このため、これは「理解」とは異なるが、「隙間を埋めること」を「有意味化」と呼んで区別する。有意味化は記憶を楽にする。

理解に必要な法則的知識

個別的知識は、それだけだと孤立してばらばらの知識となってしまい、いわゆる「応用ができない」という状況にある。しかし、個別知識に紐づいた法則的知識があれば、法則的知識を経由して他の個別的知識を説明することができるようになる。
(例)
(a)個別的知識:白鳥は冬にシベリアの方から渡ってきて、春にいなると帰っていく
  接続用知識:シベリアは日本から見て北にある
(b)個別的知識:ツバメは夏にフィリピンから日本に来る
  接続用知識:フィリピンは日本から見て南にある
この例では、「ほとんどの鳥は渡りをして、冬は暖かいところへ、夏は涼しいところへ移動する」という法則的知識があれば、(a)と同じように(b)が説明できたり、あるいは、(a)(b)から法則的知識を説明することができ、いわゆる「応用ができる」ようになる。

接続用知識の効用

個別的知識そのものによって、応用が行われることはありません。応用には接続用知識が大きな役割を果たしています。
個別的な知識の中から取り出された接続用知識が、他の個別的なことがらの関連知識の中にもあれば、そこでも同様の現象が起きているということが推測可能となります。
(例)
(a)個別的知識:北西海岸のインディアンは杉板の斜めの屋根の家に住んでいた。
(b)個別的知識:東南アジアでは降水量大である
個別的知識の(a)から取り出された接続用知識「降水量大のために大きな木が得られる」に対して、(b)も(a)と同様に木造家屋が発達しているだろうと推測可能になる。
このように(a)を理解するときに使われた接続用知識(降水量大・大きな木)は、そのような特徴を共有するすべてのことがあらに、その理解の仕方をそのまま適用可能にする。

構造された知識、対比的知識、階層的知識

多くの個別的知識が、それぞれの多様な接続用知識を介して、1つまたは複数の共通の法則的知識と結びついて有機的な形態をしているとき、その知識の状態を「構造化された」と表現する。
構造化された知識に近いものとして次の二つを挙げることができる。
対比的知識 それぞれの条件下での状態が、反対であったり歴然と異なるものを、対比的に並べてあるような知識
(例)「凸レンズではものが大きく見える」と「凹レンズではものが小さく見える」
階層的知識 上位のものが持つ特徴が、それよりも下位のものすべてが共有する層構造をなす知識
(例)(上位)「動物は○○である。」-「哺乳類は○○である。」-「クジラは○○である。」(下位)
対比的知識も、階層的知識も整理された有効な知識形態とみなされがちだが、必然性による結びつき(「個別的知識」-「接続用知識」-「法則的知識」のつながり)がなく、理解できているとは言えない。しかし、対比的知識の場合では、どちらか一方が理解できれば、他方も容易に理解でき、また、階層的知識も、同じ階層では、それぞれが対比的になっており、一方を理解できれば、他方の理解もかなり容易になる。さらに、階層的知識では、上位のものの特徴が把握できれば、それを出発点にして、下位のものの特殊性はというように考えていくことができ、その分、理解も容易になる。
つまり、対比的知識、階層的知識も理解されていなければ、ばらばらの知識の寄せ集めと、さほど変わらないけれども、ある部分が理解されれば、その他にも急速に理解が進むという有利な点があることから、それを利用して構造化された近づきやすいものであるといえる。


参考にした本

子どもの思考が見える21のルーチン アクティブな学びをつくる [ ロン・リチャート ]

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感想(0件)

学習に有効に働く思考を可視化するテクニックの本。
教育者だけでなく自習者にも必ず役に立ちます!!

図解 東大医学部在学中に司法試験も一発合格した僕のやっている シンプルな勉強法 [ 河野 玄斗 ]

価格:1,320円
(2023/2/12 11:24時点)
感想(2件)

あの天才、河野玄斗氏の実践する勉強法が余すところ
なく解説されています!

「読む力」と「地頭力」がいっきに身につく 東大読書 [ 西岡 壱誠 ]

価格:1,540円
(2023/2/12 11:47時点)
感想(14件)

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みんなの攻略方法

実践テクニックを紹介する欄。
※管理人も収集した情報を書き込みますが、読者も自由に追記してくださいね♪
(記載例)【10代 高校生 佐藤太郎(ニックネーム)】
私は、○○の時には○○することで○○しています。

【ポルカ】https://poruka01.com/way-to-study/
〇流れを理解する
第一として、全体像、いわゆる全体としての話の流れを理解することが大切です。流れを押さえることで、どこが重要なポイントなのかある程度絞ることができます。
大まかな流れを理解するだけでも、全体でどのぐらいの分量があるかなどを正確に把握することができるので、まずは全体を見渡して、どのくらいの手順でもってこれが理解できるのかくらいは分析するようにしてみましょう。
〇基本から忠実にこなす
理解する勉強のおいては、基本が理解できていないと、次が理解できないという典型的な積み重ね式の勉強が要求されることが多いです。なので、理解できないと思った場合は、思い切って、1年前に習ったことでも復習をしっかりしましょう。
〇焦らずゆっくりと
理解する勉強においては、理解できなくて苦しむときも多いです。そういった時は焦らずゆっくりと理解できるように時間をかけましょう。
一度理解すれば、一気に解決することも多いので、焦らずにじっと考えるという時間がどうしても必要になってきます。ですが、それを耐えることによって、論理的思考能力が大幅にアップされていくので、ぜひ忍耐強く頑張りましょう。

【「第二の家」学習アドバイザー 勉強犬】https://blog.home-kobetsu.com/posts/13226817/
「最高の勉強法」は「読んで理解すること」
読んで理解する」ことが重要な3つの理由はつぎのとおり。
  • 能動的に勉強できる
  • 早い
  • テストはその形のことが多い
「読んで理解する」力を鍛える方法はつぎのとおり。
  • 多読(柔らかい文章や固い文章。好きな文章や嫌いな文章。物語やエッセイや新聞など)
  • 成功体験(読んでできた!を増やす)
  • 文法理解(指示語・接続語・具体抽象など最低限の文法や構造を理解して読む練習をする)
  • 語彙を増やす(知らない言葉は調べる癖をつける・語彙強化の教材で練習する)
  • 国語力(相手の求めるものを返す力)を鍛える
  • 文章を読んで絵を描く
  • 沢山会話する

【桜凛進学塾】https://www.ohrin.jp/column/comprehension/
勉強の理解力を上げる方法
  • 基礎から学び直す
基礎から学び直すことが何よりも重要になります。参考書を何度も繰り返すことが最も重要になります。
間違えた問題には付箋やマークをつけておいて、こちらも同じ問題は間違えないつもりで学びましょう。
  • 図を描いて知識の整理
物事の原因結果、繋がりを明確に見えるようにするため、知識を整理しやすくなります。
この方法で最も使いやすい方法として「マインドマップ」が挙げられます。
マインドマップとは、メインのキーワードから放射状に線を伸ばし枝葉を広げるように関連することを書き出していく書き方です。
複雑な物事を整理したい時など用いてみると、効率性も理解力も上がるのでお勧めです。

【FLAPS高校指導部】https://flaps-dream.com/highschoolcourse/82/
理解力を高めるためには整理する力を身につけることが大切です。
  • 理解力とは物事の共通項に気がつくこと
  • 物事の共通項に気がつくためには要約する力が必要
  • 「要はどういうこと?」を考える

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最終更新:2023年02月18日 14:27

*1 R.リチャート・M.チャーチ・K.モリソン,「子どもの思考が見える21のルーチン アクティブな学びをつくる」,北大路書房,2015

*2 https://www.thg.co.jp/douyo/study/feynman-technique/

*3 西岡壱誠,「「読む力」と「地頭力」がいっきに身につく東大読書」,東洋経済新報社,2018

*4 西村克彦,「間違いだらけの学習論 なぜ勉強が身につかないか」,新曜社,2017