暗記方法

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概要

全般でも述べられているように暗記は、基本的な学習方略の一つである。
例えば市井・新井の中学生を対象とした国語の学習方略尺度の作成の研究では、「意味理解方略」(文章はその主題を考えながら読むなど)と並び「暗記・反復方略」(教科書は暗記するくらい繰り返し読むなど)を挙げており、社会科の学習方略研究の一つとして、村山が中高生の社会科の学習方略尺度を作成した際にも「拡散学習方略」「マクロ理解方略」「ミクロ理解方略」と並び「暗記方略」を挙げている。
なお、西洋では暗記や復習が表面的で効果が薄いと批判されるのは、これらを使う生徒がそれ以外の方略を使わない傾向にあるからである。一方で、日本では暗記や復習は単に教材を理解する過程の手段とされ、学習の一環として行われている。要するに、暗記等の「低レベル」とされる方略を使い基盤を作った上で、日本人の生徒はその他の方略も使っているとされる*1

基本テクニック

絞る、変換する、繰り返す

「暗記のすごいコツ」の著者である碓井孝介は、暗記が得意な人は次の3つを行っているという*2
絞る 覚える情報を徹底的に厳選する
変換する 情報の姿・形を覚えやすいように変える
繰り返す 情報に触れる回数をできるだけ増やす
そして、「繰り返す」ことについて、覚えたい情報を聞いたり、読んだりしたら、すぐに脳内で繰り返す「即反復」を推奨している。とくに、即反復する際には、頭の中で説明することが効率的に覚えられるコツとして紹介している。その上で復習するタイミングとして、エビングハウスの忘却曲線と管理のしやすさから、1日後、1週間後、1か月後を原則とするのがよいとする。ただし、得意科目であれば、1日後、10日後、45日後とし、苦手科目は、1日後、3日後、1週間後と科目によって変化させるのも効率を上げるとしている。

マインドマップ

「トニー・ブザン天才養成講座」の著者であるトニー・ブザンは著書の中で、「記憶の原則」として次の6つを挙げている*3
原則1 「最初」は覚えやすい 最初の方が覚えやすい傾向があり、これを「初頭効果」と呼ぶ。
原則2 「最後」も記憶しやすい 最後の方も想起しやすい傾向がある。これを「親近効果」と呼ぶ。
原則3 「ユニークなもの、目立つもの」は記憶しやすい 目立っていて頭の中でパッとイメージが浮かぶものほど、そして、イメージが多感覚的であるほど記憶に残りやすい。これを「フォン・レストルフ効果」と呼ぶ。
原則4 「繰り返されたこと」は記憶しやすい 繰り返しによって、同じ言葉同士の結びつきが強化される。
原則5 学習の中盤で学ぶことは記憶しにくい 学習法を工夫しないと、真ん中の記憶がすっぽり抜け落ちてしまいかねない。
原則6 関心の高いことは記憶しやすい 関心や興味のあることほど、記憶に残りやすい。
こうした原則から、「記憶を高める4つの方法」として次を挙げている。
1 計画的に休憩をとって「初頭効果」と「親近効果」を活かす
2 連想による関連付けをする
3 興味を持って学ぶことで、学習意欲を高める
4 重要なポイントは繰り返す
さらに、記憶の基本原則として次の10つを挙げている。
イメージする力を高めるための基本原則
原則1 ”五感”を活用する
原則2 大げさに"誇張"する
原則3 ”リズムと動き”を活用する
原則4 カラフルに”色”を付ける
連想力を生かすための基本原則
原則5 ”数字”を活用する
原則6 ”記号”を活用する
原則7 ”順番”をつけ”パターン化”する
右脳と左脳の両方を活用するための基本原則
原則8 ”魅力的”なイメージにする
原則9 ”ユーモア”を活用する
原則10 ”ポジティブ”なイメージにする
これらの原則を活用し「マインドマップ」を描くことで有効に記憶することができるという。「マインドマップ」の書き方については、著書の中で次のように説明されている。
1 罫線のない大きめの紙を横長に使い、これから作成するノートのトピックやテーマを要約するカラフルなイメージ(セントラル・イメージ)を紙の中心に描く。
2 セントラル・イメージから直接(すきまなく)、自然な曲線を描く太い枝(メインブランチと呼ばれる)を伸ばす。
3 メインブランチのすぐ上に、太く大きい字でキーワード(本の各章の見出しに相当する包括的な言葉)もしくはキーイメージを記入する。
4 それぞれのメインブランチの先から、枝分かれさせてサブ・ブランチを伸ばし、その上にキーワードかキーイメージを記入する。ブランチの太さ、文字の大きさと太さに変化を付け視覚的リズム感を出し、中心は太く大きく、外側は細く小さくする。また、すべてをすきまなくつなげる。
5 ほぼ完成してから、関連個所を矢印でつないだり絵を加えたりして、記憶しやすくなるよう工夫する。

ストーリー法(リンク法)

世界記憶力グランドマスターである青木健は、著書「記憶力日本チャンピオンの超効率 すごい記憶術」の中でストーリー法を紹介している。
ストーリー法とは覚えるものを使って話(ストーリー)を作って記憶する方法で、手順は以下のとおり。
1 覚える単語をイメージ化する
2 イメージ化した単語で話を作る
例えば、覚えるものが「黒電話」「時計」「燃えているエレキギター」「穴の中の猫」「てんとう虫」であったとすると、それをそのまま覚えるのではなく次のような話を作って覚えるものであるという。
「黒電話」が鳴ると「時計」がものすごい速さで動き出した。空からは「エレキギター」が降ってきて、「穴の中にいる猫」にあたると、猫は口から「てんとう虫」を吐き出した。
ストーリー法を使用するときは、このようにあり得ないような話の方が感情に結びつき、印象に残りやすくなるため、現実の世界で起こりそう似ないようなストーリーの方がよいのだという*4

場所法

青木健は、メモリースポーツの世界チャンピオンを含め、メモリーアスリートのほぼ全員が使っている絶大な効果のある記憶術として「場所法」を紹介している。場所法のやり方は次の通り。
【ステップ1】
仕込み
身近な場所を選ぶ。そしてその場所のどこ(プレイス)に、どの順番(ルート)に記憶すべきものを配置するかを事前に決めておく。これを「場所づくり」という。身近な場所としては「自宅」が挙げられる。自宅を例に考えるとドア、玄関、洗面台、トイレ・・・などをプレイスとして設定し、ドアから入って近い順にルートを設定することが考えられる。遊園地や大学のキャンパスなどを活用し広い場所で長いルートを作ることもできる。
【ステップ2】
覚えたいものをプレイスに置く
覚えたい単語などを「仕込み」で設定したプレイスに頭の中で、順に置いていく。置く際には、文字情報ではなく、イメージとして置いていく。プレイスに物をおくときは、俯瞰的に置くよりも、自分の目の前にプレイスがあり、そこに覚えるものがあるイメージをすると記憶に残りやすい。
【ステップ3】
ルート通りに思い出す
思い出す時には、頭の中でプレイスをルート通りにたどり、何を置いたかを思い出していく。
「記憶術全史」の著者である桑木野幸司は、ステップ1で使う場所として、できることなら、普段から見知っているなじみの建築がよく、例えば、自宅や会社、学校、よく使う駅、図書館、スーパーが理想的であるとしている。そして、その見取り図を頭の中にコピーするだけでは不十分で、想像力を駆使して自由にこの空間の内部を動きまわれるよう普段から訓練すべきであると述べている。
また、ステップ2でイメージを作る際に、類似、置換、連想、接触、反対、寓意、語呂合わせ、地口といった概念装置を駆使し、もっとも効果的な方法で文字をイメージに「翻訳」することを提案している*5

間隔練習・交互練習・多様練習

「使える脳の鍛え方」の著者であるピーター・ブラウン他は、ひとつのことを完璧になるまで一気に何度も練習するという「集中練習」に対し、間隔練習、交互練習、多様練習の方がより効果的であると述べている。*6
間隔練習 間隔をあけて学習を行い、少し忘れてから思い出そうと努力することで、記憶がさらに強化される。
交互練習 二つ以上の科目を交互に学ぶもの。交互学習は、集中練習のように成果を実感できず、使われることが少ないが、集中練習より交互練習の方が習熟と長期間の記憶の維持に役立つことがわかっている。
多様練習 様々な条件での学習。例えば、計算問題の数字を変えて解きなおすなど。

アウトプット・語呂合わせ

「東大医学部在学中に司法試験も一発合格した僕のやっているシンプルな勉強法」の著者である河野玄斗は、著書の中で、一度覚えたものはなるべく早いうちに反復した方が復習時間を短縮することができ、一般的に最も効率がいいのは、「はじめて記憶した30分後、1日語、1週間後、1か月後にそれぞれ復習・再記憶する」こと(諸説あり)だと述べている。その上で、「アウトプット」と「語呂合わせ」を紹介している。
アウトプット勉強法 アウトプットは、より一層、しかも格段に長期記憶へ移行しやすい方法。単語を覚えるときは1単語に1分かけて1回チェックするより、10秒かけて6回チェックしていった方が、断然記憶に定着する。なるべくアウトプットの回数をふやせるような工夫をすべき。
語呂合わせ 語呂合わせには「平成以降の総理大臣全員」などの複数の単語を覚えるものと「マルクス・アウレリウス・アントニウス」のような複雑で長い単語を覚える2種類がある。前者は、ストーリー仕立てにして暗記単語をつなげていく。後者は、一言一句間違えてはいけないので、正確に思い出せるよう複数の語呂合わせを用意する。

「暗記」3:「問題集」7

「アウトプット大全」の著者である樺沢紫苑は、著書の中で記憶においては、インプットよりアウトプットが重要で、教科書や参考書を読むのはインプット、問題集を解く、過去問を解く模試を受けるのがアウトプットで、教科書をただ反復して暗記するだけでは、記憶に残らないという。そのため、できるだけたくさんの「問題を解く」ことが記憶に残すために重要であると指摘している。
また、勉強する上でのインプットとアウトプットの黄金比は3:7であるとして、短時間で教科書を暗記し、その倍の時間を問題を解くことに振り向けることが最も効果的な記憶法、勉強法だとしている*7

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みんなの攻略方法

実践テクニックを紹介する欄。
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(記載例)【10代 高校生 佐藤太郎(ニックネーム)】
私は、○○の時には○○することで○○しています。

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最終更新:2023年02月17日 18:20

*1 自己調整学習研究会,「自己調整学習 理論と実践の新たな展開へ」,北大路書房,2012

*2 碓井孝介,「図解でわかる 暗記のすごいコツ」,日本実業出版,2018

*3 トニー・ブザン,「マインドマップ記憶術」,Discover,2009

*4 青木健,「記憶力日本チャンピオンの超効率 すごい記憶術」,総合法令出版,2020

*5 桑木野幸司,「記憶術全史 ムネモシュネの饗宴」,講談社,2018

*6 ピーターブラウン&ヘンリー・ローディガー&マーク・マクダニエル,「使える脳の鍛え方 成功する学習の科学」,NTT出版,2016

*7 樺沢紫苑,「学びを結果に変える アウトプット大全」,サンクチュアリ出版,2018