蒼天 - (2024/03/13 (水) 16:49:54) の1つ前との変更点
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私は一目散に裏通りを駆け抜け、暗間へと飛び込んだ。
寒鉄
捕まえたわよ、秦君。
事前に考えていた逃げる経路に、完全武装した寒鉄先生が壁に寄り掛かるようにして立っており、俺に話しかけてきた。
寒鉄
フフ、授業が終わる前に捕まえられたわね。あなたの負けよ。今日の夜はあなたが食堂でおごってね。
俺
......先生は食堂で無料で食べられるんでしょう?
寒鉄
何言ってるのよ。あなた違う学校からきたばかりだし、話をしてお互いに理解を深めておいた方がいいと思って言っただけじゃない。それともあなた、おばさんとお話するのがイヤ?
俺
すみません……。
寒鉄先生はため息をつき、やや怒ったように俺の頬を軽くつねった。
寒鉄
あなた、なにも悪い事してないじゃない。なんでいつも自分から謝るのよ?
俺
すみません、ただ——
寒鉄
また謝った。
俺
あの......お、私は.....。
寒鉄
プッ、冗談よ。今日は私がおごるわ、秦君。
でもその前に教えて.......。
あなた、スマートマシンガンを遠隔操縦できるリモコンを腰につけてるじゃない。どうして使わなかったの?
俺
すみません。カルマ教授がスマートウエポンが嫌いだったので、それで.....。
寒鉄
私も使われるのを嫌がると思ったわけ?でも互いに敵であることを想定してるんだから、敵に気を遣う必要はないんじゃないの?
俺
すみません、次回から気をつけます…....。
寒鉄
でも......本当にそうだったのかな? どうもあなたの言ってる事、事実じゃないような気がするんだけど
見つかってしまったか.......。
「ニャ〜。」
寒鉄
あら〜。
かわいい猫ちゃんね。
あなた、この子がいるのに気が付いて迷ったのね?期末試験の成のために猫一匹犠性にしてしまっていいものかどうか。
俺
本当にごめんなさい......。
寒鉄
……あなたって人は。
あなた、ひょっとして自分にすごく自信がないのかな?
でもあなたは自分の中で、正しいことと間違ったことを区別できているわけでしょう?猫か合格証書、勝利か流血、そのどちらにより価値があるのか分かってるじゃない。
そうそう、あなた中間のレポートのときに教育で使う場所についての提案を書いてくれたわよね?あの内容、私すごく気に入ったのよ?
そういう自分の考えをしっかり持ってるのに、なんでちゃんと口に出して言わないのよ。謝ってばかりで。
俺
……ですが、みんなが正しいと思う事の方が——
寒鉄
——正しいと思うから。
俺
はい。
寒鉄
お父さんとお母さんの関係かな?
お父さんが早くに亡くなり、お母さんが権力のある軍の高官と再婚して、何が正しいのかわからなくなっちゃったのかな。
怒るべき?それとも祝福するべき?あるいは呪うような言葉をかけるべきなのか......どうするのが正しいのかわからないのよね。
それで自分から家を出て家族から逃げ、よく知らない第一軍団の学校へとやってきた。そうすれば家での変化がまるでなかったかのように振る舞うことができるから。
俺
………先生は本当にすごいお方です。
でも何が正しくて、何が間違っているかを決める資格が私にあるのでしょうか?
みんなが正しいと思っているのなら、私もそうする方がいいのではないでしょうか?
人と異なる意見を言ってしまうと、逆に孤立しやすくなってしまうし、何もいい事がないと思うのです。
私も......以前は自分がこの世で何か特別な意義のある存在だと思っていました。
唯一無二の存在で.....父と母に愛されていると。
でもわかったのです......先生?
寒鉄
ニャ〜。
寒鉄先生は俺の話を聞いていないかのように、猫と遊ぶのに夢中になっていた。
俺
先生……?
……この先生ならこれまでとは何か違うと思ったけど.......この人も結局俺のことなど........
寒鉄
ニャ〜すごくかわいいわね〜。
猫
ニャ〜〜〜。
寒鉄
泰君。
俺
はい。
寒鉄
じゃあこの猫を殺しなさい。
俺
……………えっ?
寒鉄
みんなが正しいと言う事が正しいのなら、期末試験でいい成績をとるためにこの猫と私のことをスマートウエポンで撃ちなさい。
そうしたらあなたにA+の成績をあげるわ。そうしなかったらあなたは期末試験に不合格。
あなたの言うみんなの力って偉大よね?さて、どうする?
俺
…………………………。
寒鉄
秦君、人って弱い生き物なのよ。だから団結しようとするの。でも入って互いの個性が相容れないことがある。だから自分が本当に思っている事を隠して、入り乱れた無数の力をひとつにまとめようとするのよね。
だから結集された力が最終的に向かう方向は、必ずしもひとりひとりが進みたい方向になるとは限らない。
今後、もしその結集された力が敵として目の前に立ちはだかったら、あなたどうする?
服従する?それとも立ち向かう?
俺
今の時代、平和ですし私は平凡な一学生ですよ。そういう問題はちょっと......。
寒鉄
そうかな?
猫
ニャ〜〜。
猫が甘えるように先生の靴にすり寄っている。先生が抱きかかえると猫の無防備なおなかが俺の方に向けられた。
寒鉄
ちゃんとして覚悟しておかないと、いつの日かこの猫を殺さなければいけなくなるか——
すべてを失うことになるわよ。
…………………………
——[乗員に告ぐ。Site-01の領空に到着した。]——
猟犬01
グッ……。
人の潜在意識は本当にイヤになる。過去のバラバラになったかけらの中から鋭利なものばかりを集め、知らず知らずのうちに傷つけてくるのだから。
——[カロス少将指揮下の猟兵部隊の「猟犬」小隊隊長、猟犬01は会議室に来て作戦プリー
フィングに参加して下さい]——
猟犬01
承知しました。
マスクを取り部屋を出る前に窓の外を見た。
眼下には以前、長空市と呼ばれていた場所が広がっている。そしてその空を各艦隊の戦艦が埋め尽くしている。
あるひとりの存在のために集結したのだ。
———
猟犬01
猟犬01、到着しました。
カロス将軍
秦大尉、君ならこの重要な任務を必ずや遂行できると信じている。
猟犬01
将軍はまだ.....。
カロス将軍
そうだ。我々、中央遠征軍の部隊は今も第一軍団の元拠点での秩序回復にあたっていてな。今回、そちらで私自ら指揮することはできない状況だ。
猟犬01
承知しました。任務のご説明をお願いします。
カロス将軍
まず君も知っていると思うが、ここ1ヶ月ほど「寒鉄」という第一軍団の元高官が、各地で南方軍の基地を襲撃して回っていてな。
一方、彼女に金属の聖痕を奪われた東方軍の者どもときたら、越境軍事作戦の事実を認めようとせず、所有者の位置を算出できる移植体のデータも提供しないと言ってきている状況だ。
そのため、今回も第一軍団を相手にした戦争の時同様、自分たちの力ですべてやる必要がある。
寒鉄の行動や行き先については技術部門が解折を行っているのだが、担当者によると寒鉄はSite-01、つまり長空市への行き方をこれまで複数の端末で検索していたということだ。
今の所、寒鉄の姿は捉えられてはいないものの、彼女が目指す目的地が長空市であることはほぼ間違いない。
それで今回、&color(#F54738){「聖碑」}というコードネームによる共同作戦を実施することとなったのだ。その目的は寒鉄を捕らえ、罪悪の火花を完全に消し去ることにある。
猟犬01
&color(#F54738){「聖碑」}?それは確か、共鳴を抑制することのできるあの......。
そうだ。かの徹慢な第一軍団団長、カリスマ・サンダーランドがユカタン大死域を作り出し西方軍を壊滅させた後、世界各地で発生した「共鳴」のような現象。
多くの小型の死域が共鳴したかのように都市の内部で広がっていった。中でも崩壊エネルギーの大爆発があった長室市は、その影響が最も深刻だった。
そこで我々、南方の中央軍が直属の特殊部隊を派遣して状況確認を進めた所、一般市民から&color(#F54738){「聖碑」}と呼ばれる物が出現していたのだ。
猟犬01
結局......その正体はなんだったのですか?
カロス将軍
上層部でのやり取りの際には「永世の錨」と呼ばれていた。
実は特殊部隊司令部のドロレス将軍とは仲がいいのだが、彼女もそれがなんなのかまでは言及しなくてな。
分かっている事と言えば永世の鑑が出現したことで、それまで続いていた長空市での死域の拡大が止まったということくらいだ。東方軍のある町でも小型の死域と永世の錨が出現しているのだが——
東方軍の者どものやり方は不思議でな。町から市民を排除し軍の管轄下に置くことはせず、永世のが現れた周辺の店に対し、消防の検査と補修をするという手法を採っているのだ。
西方と北方については......ユカタン大死域で遮られてしまっていることもあり、信頼に足る情報が少ない状況だが、衛星データによるとやはり同様に永世の錨が出現しているようだ。
だがそれ以外の事、そもそもあれを作り出したのは誰なのか?共鳴の抑制以外にどういう力を持っているのか?そうした疑問について、ドロレス将軍も答えを持ち合わせていなくてな。&color(#F54738){「永世の錨」}という名が誰によってつけられたのかについても聞けていない状況だ。
私は......頂点に立たれているお方が作ったんじゃないかとも考えてもいるのだが。
猟犬01
頂点のお方?え.......ああ......将軍......将軍がおっしゃっているのは......&color(#F54738){元帥}の事ですか?
カロス将軍
まあ想像はこのあたりまでにしておこう。これから言い渡す任務とこれはまた別の話だからな。
今回の任務だが、猟犬としての力が大いに発揮されることになる。長空市の防衛部隊に協力し、寒鉄を捕まえるのだ。
Site-01は至って平凡な町だから、敵が目指す可能性が一番高いのは永世の錨だと思われる。
だから任務にあたる間、永世の錨の状況には特に注意を払い、重点的に警戒するんだ。また永世の錨の情報やデータについてもなるべく集めておいてくれ。
猟犬01
承知しました。
カロス将軍
君の事は既に特殊部隊司令部のドロレス将軍にも伝えておいたからな。ブリーフィングは以上だ。
猟犬01
少しよろしいですか。
カロス将軍
なんだ?
猟犬01
将軍閣下、ここに来る前に私も今回動員された部隊の状況を調べたのですが。
現在、窓から見ることのできる部隊はすべて地方の軍勢.....彼ら自身に言わせればオブザーバーという立場の者たちに過ぎません。
カロス将軍
君は地方の軍の将軍たちの誠意ある心をもっと理解しないといかんな。現在、中央遠征軍が外地にいるという敏感な時期にあるのは分かるな。そんな時期に彼らとしても明確な理由なく、中央軍の管轄下にある都市に部隊を駐留するといった、問題視されかねない行動はできないのだ。
彼らとしても名目上、オブザーバーしか派遣できないというわけだ。
だから今回の作戦で実際に支援を行うことができるのは、中央軍に所属している部隊、つまり君ら猟犬小隊だけなのだよ。
だが心配は無用だ。今はただのオブザーバーかもしれんが、寒鉄が出現すれば地方の師団にも長空市の防衛部隊に協力するだけの十分な理由ができることになる。
相手はあの寒鉄......伝説の世代だからな。その実力、決して侮ることはできない。
猟犬01
あの......出過ぎた発言かもしれませんが、お許し下さい。.....なぜ師団長クラスの人を派遣しないのですか。
カロス将軍
……。
猟犬01
寒鉄は既に金属の聖痕の移植体を手に入れており、今や数に物を言わせる戦術程度では彼女を止めることはできません。聖痕騎士ですらやられてしまう恐れがありますが、師団長であれば——
カロス将軍
…………素大尉。
君は我々、南方の軍人が持つ勇気と意志の力に疑問を持っているのかね?
猟犬01
いえ、そういう意味で申し上げたのではありません。
カロス将軍
寒鉄とはいえ、ただの年老いた退職済みの教員ではないか。我ら南方軍が誇る武力は絶対だ。
秦大尉、君は心構えに少し問題があるようだな。
自身の決定をむやみに信用しないことだ。司令部は君なんかよりももっと先を見据えていて、より多くの事を把握しているんだ。2か月前に君の部下のひとりが戦死したのも、君が誤った指揮をしたからではないか。
そんな事はない。彼女は.....砲兵部隊が彼女がいたエリアを砲撃すると決定したのに、彼女に連絡しなかったから死んだんだ。
カロス将軍
かなり若い子だったが、名前は確か......エ、エ……。
猟犬01
エリザ・ウェストです。
カロス将軍
そうだ、こうしよう。寒鉄が現れるまで、君は中央軍が地方の師団による行動を黙認することの証としてこの戦艦に残るのだ。
猟犬01
閣下、どうか私たちに出撃させて下さい。「猟犬」と呼ばれているように、我々崩壊の猟兵は飛び回るのではなく、地上で戦う方が——
カロス将軍
これから私はゴルフがあって.....何?緊急の会議だって?わかった。ではそういう事で。
ピッ………………。
猟犬01
…………。
さきほど長空市を上空から眺めた際に見た、巨大な戦が地面に映し出した真っ黒な影と同様のものが、俺の心にもあるのを感じた。
この暗い気持ちはどこから生じたのだろう?寒鉄先生に再会したからか?それともあの、俺に力をかしてくれた女の子に出会ったからだろうか?あの子に力を貸してもらったにも関わらず、俺は彼女に銃口を向けてしまった。
それともこの真っ黒なものは、元々俺の心の片隅にあったものなのだろうか?
カロス将軍の言っていた状況から、集まった地方の部隊は.......興味本位で来ているのではなく、長空市にある永世の錨の研究が真の目的であろうことは想像に難くない。
地方の師団がここまで興味をもっているとは。永世の錨には一体どんな秘密があるのだろう。
封建体制に未練のある人や......国の再建を狙う者、それに人契連の残党たち。彼らはこれまでも軍団本部からの命令に絶対的に服従することができていなかった。
彼らは長空市に何か秘密があり、そこに中央軍が地方を圧倒するような決定的な力が存在しているのではないかと恐れている。だがそれと同時に彼らは、中央からの指示に公然と逆らう勇気も持てずにいる。
だから集まった地方の軍は、自分たちが認められていることを証明し見届ける存在として、中央軍所属の俺たちを必要としているのだ。彼らにとって寒鉄はあくまでも二の次ということだ。
……彼らははたして寒鉄がどれだけ危険な存在なのか、分かっているのだろうか?
猟犬01
いや待て......もしそうなら、カロス将軍はなぜそこまでして地方の師団の行動に協力しようとするのだ?
そんな事をして、アヴィニョン元帥から責任を追及される可能性を想定していないのだろうか?
どういう事だ? 上層部にいる将軍の後ろ盾の人物が失脚したとでもいうのだろうか?今回のような作戦に地方の師団が師団長を出さないのは……
あっ!?
一瞬、電気が走るような感じがし、頭の中にかかっていた黒い雲が晴れた。
これは非常にまずい予兆だ。考えられる可能性はひとつ。しかもそれはとんでもない可能性だ。
最近、遠征軍の本部ではとある噂がずっと流れていた。しかしそんなのあり得るはずがないと、俺はずっと信じようとしてこなかったのだが。
まさか......我々南方軍の&color(#F54738){元帥}閣下は......噂されているように.......。
既に......亡くなられているとでもいうのか?
猟犬01
そんなバカな......そんな事あり得るはずが......&color(#F54738){元帥}閣下はとても不思議な奇跡の女性とも言われる人......この前テレビでも話をされていたはず……。
だがもしそれが事実だとすればすべての辻褄が合う。それなら中央遠征軍の将校が突然地方の師団に下手に出るようになったのは、トップの元帥が亡くなったからということになるし、上層部が事実を隠していることも、表面化してしまうと地方の軍に補給線を断たれてしまう可能性を懸念してということになる。
地方の軍の師団長たちが寒鉄の討伐に自ら参加したがらず、聖痕騎士の派遣をためらっているのも……
内戦の準備を進めるため。
猟犬01
うう……!
俺は吐き気を催すほど戦燥するのを感じた。壁に手を当て体を支え、一連の考察の結果をなんとか消化しようと努めた。
猟犬01
更に戦い続けるというのか?人類の内戦の次は南方軍での内戦。平和は半年も続かないということか……。
いや、ここは一度冷静になるべきだ。さっきの考えはあくまで推測に過ぎない。
そうだ、冷静になるんだ。これは幻想だ。そう、ただの幻想。悪い夢と同じで苦しくはあるが無害なもの。
冷静になって考えるんだ。我らが&color(#F54738){元帥}は決して戦いで命を落とすことなどない。それに人々はもう戦争に嫌気がさしていて、これ以上戦う必要なんてもうないはず。
落ち着かなければ。理由なき恐怖など一銭の価値もない。余計な思考は兵士としての任務遂行を邪魔するだけ。
やらなければならないことは、与えられた任務を実行することだけ。
猟犬01
そうだ......作戦の内容について子どもたちに伝えないと。
そして使命を全うしなければ。
……………
俺は窓際に立った。
猟犬03、05、07がいる。
猟犬01
早くみんなに連絡しよう。
…………………
窓の近くにいた猟兵らに会議室に向かうよう伝えた。
猟犬01
……………よし。
次は生活区画にいる子どもたちだな。
……行こう。
……………
生活区画へとやってきた。
猟犬09と04がいる。
……………
生活区画にいた猟兵らに会議室に向かうよう伝えた。
猟犬01
……………よし。
後は射撃室にいる二人だ。
射撃室へとやってきた。
猟犬06と08がいる。
猟犬01
……………全員に伝えたな。
俺も会議室に向かおう。
猟犬02
大尉。
猟犬01
猟犬02、長空市に到着した。間もなく聖碑の作戦に入るから、みんながそろい次第、俺から注意点について説明する。
猟犬02
ハッ!
猟犬01
これまで同様、君に分隊長を任せる。待ち伏せ部隊として策応するように。
今回の敵は伝説とも言われる人物。コードネーム「寒鉄」で知られる金属の聖の持ち主だ。
もし俺が戦死したら.....次の猟犬小隊の隊長は君だからな。
猟犬02
私は子どもの世話が得意ではないので、そういう煩わしい事は大尉ご自身でなさって下さい。
猟犬01
(猟犬02こと神原嵐音。風の聖移植体のレシピエントで、能力のずば抜けた副隊長だ。)
(最近、どうも俺に対して冷たい感じがする。距離もとるようになり、お父さんとも呼ばなくなった。これが俗にいう反抗期だろうか?)
そう言う君も子どもではないか。
猟犬02
私はもう18です。
今日も不機嫌そうな顔をしているが、何か怒らせるようなことをしてしまったかな?
猟犬01
そうだ。
俺はネックレスを取り出した。エメラルドのついた銀色のネックレスを。
猟犬01
これまでずっと寒鉄を追うのに忙しくてプレゼントを渡せてなくてな。誕生日おめでとう。
これで少しは機嫌をよくしてくれるといいのだが。
猟犬02
わわ私——私こんなに粗野で平凡なのに......こんなプレゼント、私にはもったいないんじゃありませんか!?
猟犬01
副隊長、これくらいの事でしどろもどろにならなくてもいいじゃないか。どうだ、気に入ってもらえたかな?
彼女は手を伸ばし、半ば奪い取るようにしてネックレスを手に取った。
猟犬02
大尉はいつも趣味が悪いなと思ってましたが......今回はこんないいもの、どうやって選んだんです?
猟犬01
ああ、これは......。
購入した時のことを思い出すと、頭の中にあの少女のことが浮かんできた。
猟犬01
……。
まったく、以前の俺はこんな感じではなかった。上からの命令をただ実行するのみ。しかし......これまで子どもを殺せなどという命令を受けたことがなかった。
あんな子が本当にこんな世界に存在しているのか?銃を突きつけられているというのに泣きもせず、跪きおとなしく死を待つなど。
そういう子どもがいるのが普通なのか?
俺はこれから、恐らくまたあの子を殺さなければならないことになる。
猟犬01
……。
不思議な感じがした。心に何かひとつの種があるような気が。
しかしそれが花を咲かすまで、それがなんの種なのか知る由もない。
猟犬02
わ......私の知らない女性が選んでくれたのですか!?
猟犬01
.....すまん。その人が誰なのかは言いたくないんだ。
猟犬02
…………大尉、あなたひどい顔をしていますよ。
猟犬01
すまない。
猟犬02
コホン.....ではその代わりに大尉。その.....私ももう18歳です。
あの......だから......今後は私のことを名前で呼んでくれませんか?
名前?てっきり彼女はこう呼び合うのが好きだと思っていたが。
だがまあ、それもいいだろう。コードネームは軍隊でのものだ。子どもたちは本来、互いに名前で呼び合うべきだし、戦後の世界のためにも今から慣れておくべきだろう。
猟犬01
わかった。嵐音。
猟犬02
嵐......で、では......針慮.....針虎大尉。
猟犬01
ああ。
「わあっ、ちょっと待ってって言ってるでしょう———!」
猟犬01
?
猟犬03
オヤジが会議だから集まれって言ってたじゃん?なのに猟犬09、なんで入るの邪魔するんだよ?
少年少女の猟兵たちが会議室へと入ってきた。
猟犬07
父ちゃんと猟犬02、もももう会議室にいるよ。
猟犬01
マーチン、もうみんな集まったか?
猟犬03
えっ?オヤジ、どうしたんだ突然。
猟犬01
第一軍団の討伐はほぼ終わり、君たちもほどなくして学校に戻ることになるからな。今から人に名前で呼ばれる生活に慣れておいた方がいい。
事前に慣れておけるよう、君たちを名前で呼ぶことにした。
ちょうどさっき嵐音副隊長からアドバイスを受けてな。
神原風音
……………大尉の言う通りです。
猟犬01
とにかくみんな並びなさい。俺から情報を共有する。
……
カロス将軍から聞いた任務について皆に説明した。
リド・ファスター
どうして僕らを作戦に行かせないの?
マーティン・ハノヴァー
そんなのどうだっていいだろ。今回のレベルの敵に真っ向から戦いを挑みたくないし、戦艦にいるのも仕事のうちだ。
リリス・ヴェラルド
でも、でもさ。聖碑についての情報を調べろって、何をすればいいのかな?
「あの艦隊はただ雰囲気を盛り上げるだけ?」「どうして地方の師団が参加するんだろう?」
「ぼぼぼぼ僕.....」「07は黙ってて。」「07黙りなさい!」「07はチャットにしろ!」
………………
猟犬01
わかった。君たちが言いたいことはわかった。
(やはり今回の作戦内容には反発があるようだな。)
俺が思うに、カロス将軍は何か理由があって地方の軍勢に下手に出なければならない状況なのだろう。だから今回、こういう任務を出してきた。
上官から命令が下された以上、それを完璧に実行するのが軍人というものだ。出された任務にどういう背景があろうとな。
マーティン・ハノヴァー
その上言って.....寒鉄がまだ弱かった頃、オヤジがせっかく寒鉄の追撃を提案したのに、異常なくらい拒否ってただろ?
リド・ファスター
そして僕らでは恐らく勝てないから追撃すべきじゃない状況になったのに、逆に参加するよう強要してくるだなんてどういう事?
猟犬01
…………そうだな。みんなのためにもっといい作戦環境を引き出すことができず、本当に申し訳ない。
マーティン・ハノヴァー
……プッ。
だからオヤジは真面目過ぎだって言ってんだよ。
真面目な顔して仕事して、真面目な顔して謝ってさ。そんなんじゃまるでこの世界が正常だなんて言ってるようなもんだろ。
リリス・ヴェラルド
そうよそうよ〜。
神原風音
そういう細かい事は......どうでもいいです。
大尉のそばに居続けられるのであれば私は満足です。
あ!私が言いたかったのはみんなとね......
子どもたちがうなづいた。副隊長の発言に無言で賛同したかのように、子どもらは笑顔で俺のことを見つめていた。
猟犬01
君たち……。
わかった。話を戻そう。
そうだ。考えすぎず自らの使命に集中すればいい。
猟犬01
猟犬10、寒鉄の行動の疑問点について総括してくれ。
マーティン・ハノヴァー
オヤジ、猟犬10は死んだって。
猟犬01
ああ、すまん。これまでずっと彼女に参謀役をやってもらっていたからつい、な。
神原風音
……私が代わりに総括します。
まず、寒鉄と光の聖痕使いは軍団のイントラを使い、頻繁に長空市の情報を検索していることが判明しています。
マーティン・ハノヴァー
あいつら何をそんなに繰り返し調べてるんだ?
リド・ファスター
僕が気になるのは、寒鉄が何に乗って長空市に来ようとするかだね。
神原風音
これも手がかりのひとつです。今のところどの地方の軍も、寒鉄が長空市に向かった痕跡をつかめていない状況です。寒鉄はあちこちで軍の基地を襲撃していますが、方向としては逆に長空市から次第に離れ、東方軍の駐屯地の方へと移ってきている状況です。
大尉、寒鉄が長空市に関心を寄せているというのは、ただのプラフでしょうか?彼女の本当の狙いは東方軍なのでしょうか。
猟犬01
寒鉄の聖痕の移植体には東方軍から位置を推定されてしまうデータが入っている。そんな彼女が東方軍団の方に向かうとは考えずらい。
神原風音
東方軍に身を寄せる可能性についてはどうでしょうか?
猟犬01
……寒鉄が東方軍に投降すると?
神原風音
私は猟犬10ではないのでそこまで正確に推測できませんが、内戦において何もいい所がなかった東方軍は、切り札や対外宣伝に使えるものを必要としている可能性があります。その場合、最良の選択肢ではないかもしれませんが、まだ生存していて使えそうなのは寒鉄だけじゃないですか。
俺は目を閉じ、かって1年間スキルを教えてくれた先生の行動パターンについて考えてみた。
彼女はどういう人だっただろうか?
猟犬01
………………それは無いと思う。
先生.....寒鉄先生は才能は至って平凡だったものの、常に行動し続ける人だった。
彼女は常に前進し続ける。そう、放たれた矢のように振り返ることなく進み続ける。彼女が目指す終点が何かは分からないが、そこにたどり着くまで彼女が歩みを止めることはない。
俺の知っている彼女なら、一度第一軍団に所属したら、絶対に他の勢力に身を寄せようとはしないはずだ。
そんなことをすれば、自分のことが受け入れられなくなるから。
神原風音
しかし追われる者の立場で考えれば、我が軍の追跡から逃れるために.....逃げ道を探しておこうとは考えないでしょうか。
猟犬01
確かに......いや、違うな。彼女はきっと自分のことを追われる獲物だとは考えない。
自分が獲物を狩る側だと認識しているだろう。
彼女は積極的に動く.....しかし、受け身の状態からどうやって積極的に動ける状態に転換するだろうか?
長空市に何か重要な要素があるのだろうか?いや、長空市に限ったことではない。彼女はまだどんな切り札を残しているのだろうか?聖痕の移植体?光の聖痕使い?それとも南方軍に呼応する裏切り者が潜んでいたりするのか?
リド・ファスター
お父さん!?
猟犬01
待ってくれ。もう少し考えれば.....何かがつかめそうだ。
リド・ファスター
ちょっと!外を見て——!?
猟犬01
?
振り向いて窓の方を見た。窓の外には青空が広がり、空には戦艦が浮いていた。
猟犬01
あの一番大きいのは山の座だな?操縦室に連絡するんだ。どうして山の座の方に近づいていくんだ?くっ……!
その瞬間、すべてを悟った。それまでバラバラだった手がかりが、その瞬間にひとつにつながった。
この船が山に近づいているんじゃない。
山の方からこちらに近づいてきているんだ。
猟犬01
子どもたち———
走れ——!!!
……………
………………
寒鉄
あなたって本当に内向的よね。
少し言ったくらいで、下向いて黙っちゃうだなんて。
もういいわ。今晩、何食べたい?先生、お金持ってるから。
外のレストランでご馳走してあげる。
俺
先生……。
寒鉄
さっきの期末試験の事は考え直すから。
それでいいでしょう?行きましょう〜。
俺
質問していいですか。
寒鉄
何?
俺
猫が好きで猫を殺さない先生......。
……行く手を阻むネズミどもをどれくらい踏みつぶしてきただろうか?
私は一目散に裏通りを駆け抜け、暗間へと飛び込んだ。
寒鉄
捕まえたわよ、秦君。
事前に考えていた逃げる経路に、完全武装した寒鉄先生が壁に寄り掛かるようにして立っており、俺に話しかけてきた。
寒鉄
フフ、授業が終わる前に捕まえられたわね。あなたの負けよ。今日の夜はあなたが食堂でおごってね。
俺
......先生は食堂で無料で食べられるんでしょう?
寒鉄
何言ってるのよ。あなた違う学校からきたばかりだし、話をしてお互いに理解を深めておいた方がいいと思って言っただけじゃない。それともあなた、おばさんとお話するのがイヤ?
俺
すみません……。
寒鉄先生はため息をつき、やや怒ったように俺の頬を軽くつねった。
寒鉄
あなた、なにも悪い事してないじゃない。なんでいつも自分から謝るのよ?
俺
すみません、ただ——
寒鉄
また謝った。
俺
あの......お、私は.....。
寒鉄
プッ、冗談よ。今日は私がおごるわ、秦君。
でもその前に教えて.......。
あなた、スマートマシンガンを遠隔操縦できるリモコンを腰につけてるじゃない。どうして使わなかったの?
俺
すみません。カルマ教授がスマートウエポンが嫌いだったので、それで.....。
寒鉄
私も使われるのを嫌がると思ったわけ?でも互いに敵であることを想定してるんだから、敵に気を遣う必要はないんじゃないの?
俺
すみません、次回から気をつけます…....。
寒鉄
でも......本当にそうだったのかな? どうもあなたの言ってる事、事実じゃないような気がするんだけど
見つかってしまったか.......。
「ニャ〜。」
寒鉄
あら〜。
かわいい猫ちゃんね。
あなた、この子がいるのに気が付いて迷ったのね?期末試験の成のために猫一匹犠性にしてしまっていいものかどうか。
俺
本当にごめんなさい......。
寒鉄
……あなたって人は。
あなた、ひょっとして自分にすごく自信がないのかな?
でもあなたは自分の中で、正しいことと間違ったことを区別できているわけでしょう?猫か合格証書、勝利か流血、そのどちらにより価値があるのか分かってるじゃない。
そうそう、あなた中間のレポートのときに教育で使う場所についての提案を書いてくれたわよね?あの内容、私すごく気に入ったのよ?
そういう自分の考えをしっかり持ってるのに、なんでちゃんと口に出して言わないのよ。謝ってばかりで。
俺
……ですが、みんなが正しいと思う事の方が——
寒鉄
——正しいと思うから。
俺
はい。
寒鉄
お父さんとお母さんの関係かな?
お父さんが早くに亡くなり、お母さんが権力のある軍の高官と再婚して、何が正しいのかわからなくなっちゃったのかな。
怒るべき?それとも祝福するべき?あるいは呪うような言葉をかけるべきなのか......どうするのが正しいのかわからないのよね。
それで自分から家を出て家族から逃げ、よく知らない第一軍団の学校へとやってきた。そうすれば家での変化がまるでなかったかのように振る舞うことができるから。
俺
………先生は本当にすごいお方です。
でも何が正しくて、何が間違っているかを決める資格が私にあるのでしょうか?
みんなが正しいと思っているのなら、私もそうする方がいいのではないでしょうか?
人と異なる意見を言ってしまうと、逆に孤立しやすくなってしまうし、何もいい事がないと思うのです。
私も......以前は自分がこの世で何か特別な意義のある存在だと思っていました。
唯一無二の存在で.....父と母に愛されていると。
でもわかったのです......先生?
寒鉄
ニャ〜。
寒鉄先生は俺の話を聞いていないかのように、猫と遊ぶのに夢中になっていた。
俺
先生……?
……この先生ならこれまでとは何か違うと思ったけど.......この人も結局俺のことなど........
寒鉄
ニャ〜すごくかわいいわね〜。
猫
ニャ〜〜〜。
寒鉄
泰君。
俺
はい。
寒鉄
じゃあこの猫を殺しなさい。
俺
……………えっ?
寒鉄
みんなが正しいと言う事が正しいのなら、期末試験でいい成績をとるためにこの猫と私のことをスマートウエポンで撃ちなさい。
そうしたらあなたにA+の成績をあげるわ。そうしなかったらあなたは期末試験に不合格。
あなたの言うみんなの力って偉大よね?さて、どうする?
俺
…………………………。
寒鉄
秦君、人って弱い生き物なのよ。だから団結しようとするの。でも入って互いの個性が相容れないことがある。だから自分が本当に思っている事を隠して、入り乱れた無数の力をひとつにまとめようとするのよね。
だから結集された力が最終的に向かう方向は、必ずしもひとりひとりが進みたい方向になるとは限らない。
今後、もしその結集された力が敵として目の前に立ちはだかったら、あなたどうする?
服従する?それとも立ち向かう?
俺
今の時代、平和ですし私は平凡な一学生ですよ。そういう問題はちょっと......。
寒鉄
そうかな?
猫
ニャ〜〜。
猫が甘えるように先生の靴にすり寄っている。先生が抱きかかえると猫の無防備なおなかが俺の方に向けられた。
寒鉄
ちゃんとして覚悟しておかないと、いつの日かこの猫を殺さなければいけなくなるか——
すべてを失うことになるわよ。
…………………………
——[乗員に告ぐ。Site-01の領空に到着した。]——
[[猟犬01]]
グッ……。
人の潜在意識は本当にイヤになる。過去のバラバラになったかけらの中から鋭利なものばかりを集め、知らず知らずのうちに傷つけてくるのだから。
——[カロス少将指揮下の猟兵部隊の「猟犬」小隊隊長、猟犬01は会議室に来て作戦プリー
フィングに参加して下さい]——
猟犬01
承知しました。
マスクを取り部屋を出る前に窓の外を見た。
眼下には以前、長空市と呼ばれていた場所が広がっている。そしてその空を各艦隊の戦艦が埋め尽くしている。
あるひとりの存在のために集結したのだ。
———
猟犬01
猟犬01、到着しました。
カロス将軍
秦大尉、君ならこの重要な任務を必ずや遂行できると信じている。
猟犬01
将軍はまだ.....。
カロス将軍
そうだ。我々、中央遠征軍の部隊は今も第一軍団の元拠点での秩序回復にあたっていてな。今回、そちらで私自ら指揮することはできない状況だ。
猟犬01
承知しました。任務のご説明をお願いします。
カロス将軍
まず君も知っていると思うが、ここ1ヶ月ほど「寒鉄」という第一軍団の元高官が、各地で南方軍の基地を襲撃して回っていてな。
一方、彼女に金属の聖痕を奪われた東方軍の者どもときたら、越境軍事作戦の事実を認めようとせず、所有者の位置を算出できる移植体のデータも提供しないと言ってきている状況だ。
そのため、今回も第一軍団を相手にした戦争の時同様、自分たちの力ですべてやる必要がある。
寒鉄の行動や行き先については技術部門が解折を行っているのだが、担当者によると寒鉄はSite-01、つまり長空市への行き方をこれまで複数の端末で検索していたということだ。
今の所、寒鉄の姿は捉えられてはいないものの、彼女が目指す目的地が長空市であることはほぼ間違いない。
それで今回、&color(#F54738){「聖碑」}というコードネームによる共同作戦を実施することとなったのだ。その目的は寒鉄を捕らえ、罪悪の火花を完全に消し去ることにある。
猟犬01
&color(#F54738){「聖碑」}?それは確か、共鳴を抑制することのできるあの......。
そうだ。かの徹慢な第一軍団団長、カリスマ・サンダーランドがユカタン大死域を作り出し西方軍を壊滅させた後、世界各地で発生した「共鳴」のような現象。
多くの小型の死域が共鳴したかのように都市の内部で広がっていった。中でも崩壊エネルギーの大爆発があった長室市は、その影響が最も深刻だった。
そこで我々、南方の中央軍が直属の特殊部隊を派遣して状況確認を進めた所、一般市民から&color(#F54738){「聖碑」}と呼ばれる物が出現していたのだ。
猟犬01
結局......その正体はなんだったのですか?
カロス将軍
上層部でのやり取りの際には「永世の錨」と呼ばれていた。
実は特殊部隊司令部のドロレス将軍とは仲がいいのだが、彼女もそれがなんなのかまでは言及しなくてな。
分かっている事と言えば永世の鑑が出現したことで、それまで続いていた長空市での死域の拡大が止まったということくらいだ。東方軍のある町でも小型の死域と永世の錨が出現しているのだが——
東方軍の者どものやり方は不思議でな。町から市民を排除し軍の管轄下に置くことはせず、永世のが現れた周辺の店に対し、消防の検査と補修をするという手法を採っているのだ。
西方と北方については......ユカタン大死域で遮られてしまっていることもあり、信頼に足る情報が少ない状況だが、衛星データによるとやはり同様に永世の錨が出現しているようだ。
だがそれ以外の事、そもそもあれを作り出したのは誰なのか?共鳴の抑制以外にどういう力を持っているのか?そうした疑問について、ドロレス将軍も答えを持ち合わせていなくてな。&color(#F54738){「永世の錨」}という名が誰によってつけられたのかについても聞けていない状況だ。
私は......頂点に立たれているお方が作ったんじゃないかとも考えてもいるのだが。
猟犬01
頂点のお方?え.......ああ......将軍......将軍がおっしゃっているのは......&color(#F54738){元帥}の事ですか?
カロス将軍
まあ想像はこのあたりまでにしておこう。これから言い渡す任務とこれはまた別の話だからな。
今回の任務だが、猟犬としての力が大いに発揮されることになる。長空市の防衛部隊に協力し、寒鉄を捕まえるのだ。
Site-01は至って平凡な町だから、敵が目指す可能性が一番高いのは永世の錨だと思われる。
だから任務にあたる間、永世の錨の状況には特に注意を払い、重点的に警戒するんだ。また永世の錨の情報やデータについてもなるべく集めておいてくれ。
猟犬01
承知しました。
カロス将軍
君の事は既に特殊部隊司令部のドロレス将軍にも伝えておいたからな。ブリーフィングは以上だ。
猟犬01
少しよろしいですか。
カロス将軍
なんだ?
猟犬01
将軍閣下、ここに来る前に私も今回動員された部隊の状況を調べたのですが。
現在、窓から見ることのできる部隊はすべて地方の軍勢.....彼ら自身に言わせればオブザーバーという立場の者たちに過ぎません。
カロス将軍
君は地方の軍の将軍たちの誠意ある心をもっと理解しないといかんな。現在、中央遠征軍が外地にいるという敏感な時期にあるのは分かるな。そんな時期に彼らとしても明確な理由なく、中央軍の管轄下にある都市に部隊を駐留するといった、問題視されかねない行動はできないのだ。
彼らとしても名目上、オブザーバーしか派遣できないというわけだ。
だから今回の作戦で実際に支援を行うことができるのは、中央軍に所属している部隊、つまり君ら猟犬小隊だけなのだよ。
だが心配は無用だ。今はただのオブザーバーかもしれんが、寒鉄が出現すれば地方の師団にも長空市の防衛部隊に協力するだけの十分な理由ができることになる。
相手はあの寒鉄......伝説の世代だからな。その実力、決して侮ることはできない。
猟犬01
あの......出過ぎた発言かもしれませんが、お許し下さい。.....なぜ師団長クラスの人を派遣しないのですか。
カロス将軍
……。
猟犬01
寒鉄は既に金属の聖痕の移植体を手に入れており、今や数に物を言わせる戦術程度では彼女を止めることはできません。聖痕騎士ですらやられてしまう恐れがありますが、師団長であれば——
カロス将軍
…………素大尉。
君は我々、南方の軍人が持つ勇気と意志の力に疑問を持っているのかね?
猟犬01
いえ、そういう意味で申し上げたのではありません。
カロス将軍
寒鉄とはいえ、ただの年老いた退職済みの教員ではないか。我ら南方軍が誇る武力は絶対だ。
秦大尉、君は心構えに少し問題があるようだな。
自身の決定をむやみに信用しないことだ。司令部は君なんかよりももっと先を見据えていて、より多くの事を把握しているんだ。2か月前に君の部下のひとりが戦死したのも、君が誤った指揮をしたからではないか。
そんな事はない。彼女は.....砲兵部隊が彼女がいたエリアを砲撃すると決定したのに、彼女に連絡しなかったから死んだんだ。
カロス将軍
かなり若い子だったが、名前は確か......エ、エ……。
猟犬01
エリザ・ウェストです。
カロス将軍
そうだ、こうしよう。寒鉄が現れるまで、君は中央軍が地方の師団による行動を黙認することの証としてこの戦艦に残るのだ。
猟犬01
閣下、どうか私たちに出撃させて下さい。「猟犬」と呼ばれているように、我々崩壊の猟兵は飛び回るのではなく、地上で戦う方が——
カロス将軍
これから私はゴルフがあって.....何?緊急の会議だって?わかった。ではそういう事で。
ピッ………………。
猟犬01
…………。
さきほど長空市を上空から眺めた際に見た、巨大な戦が地面に映し出した真っ黒な影と同様のものが、俺の心にもあるのを感じた。
この暗い気持ちはどこから生じたのだろう?寒鉄先生に再会したからか?それともあの、俺に力をかしてくれた女の子に出会ったからだろうか?あの子に力を貸してもらったにも関わらず、俺は彼女に銃口を向けてしまった。
それともこの真っ黒なものは、元々俺の心の片隅にあったものなのだろうか?
カロス将軍の言っていた状況から、集まった地方の部隊は.......興味本位で来ているのではなく、長空市にある永世の錨の研究が真の目的であろうことは想像に難くない。
地方の師団がここまで興味をもっているとは。永世の錨には一体どんな秘密があるのだろう。
封建体制に未練のある人や......国の再建を狙う者、それに人契連の残党たち。彼らはこれまでも軍団本部からの命令に絶対的に服従することができていなかった。
彼らは長空市に何か秘密があり、そこに中央軍が地方を圧倒するような決定的な力が存在しているのではないかと恐れている。だがそれと同時に彼らは、中央からの指示に公然と逆らう勇気も持てずにいる。
だから集まった地方の軍は、自分たちが認められていることを証明し見届ける存在として、中央軍所属の俺たちを必要としているのだ。彼らにとって寒鉄はあくまでも二の次ということだ。
……彼らははたして寒鉄がどれだけ危険な存在なのか、分かっているのだろうか?
猟犬01
いや待て......もしそうなら、カロス将軍はなぜそこまでして地方の師団の行動に協力しようとするのだ?
そんな事をして、アヴィニョン元帥から責任を追及される可能性を想定していないのだろうか?
どういう事だ? 上層部にいる将軍の後ろ盾の人物が失脚したとでもいうのだろうか?今回のような作戦に地方の師団が師団長を出さないのは……
あっ!?
一瞬、電気が走るような感じがし、頭の中にかかっていた黒い雲が晴れた。
これは非常にまずい予兆だ。考えられる可能性はひとつ。しかもそれはとんでもない可能性だ。
最近、遠征軍の本部ではとある噂がずっと流れていた。しかしそんなのあり得るはずがないと、俺はずっと信じようとしてこなかったのだが。
まさか......我々南方軍の&color(#F54738){元帥}閣下は......噂されているように.......。
既に......亡くなられているとでもいうのか?
猟犬01
そんなバカな......そんな事あり得るはずが......&color(#F54738){元帥}閣下はとても不思議な奇跡の女性とも言われる人......この前テレビでも話をされていたはず……。
だがもしそれが事実だとすればすべての辻褄が合う。それなら中央遠征軍の将校が突然地方の師団に下手に出るようになったのは、トップの元帥が亡くなったからということになるし、上層部が事実を隠していることも、表面化してしまうと地方の軍に補給線を断たれてしまう可能性を懸念してということになる。
地方の軍の師団長たちが寒鉄の討伐に自ら参加したがらず、聖痕騎士の派遣をためらっているのも……
内戦の準備を進めるため。
猟犬01
うう……!
俺は吐き気を催すほど戦燥するのを感じた。壁に手を当て体を支え、一連の考察の結果をなんとか消化しようと努めた。
猟犬01
更に戦い続けるというのか?人類の内戦の次は南方軍での内戦。平和は半年も続かないということか……。
いや、ここは一度冷静になるべきだ。さっきの考えはあくまで推測に過ぎない。
そうだ、冷静になるんだ。これは幻想だ。そう、ただの幻想。悪い夢と同じで苦しくはあるが無害なもの。
冷静になって考えるんだ。我らが&color(#F54738){元帥}は決して戦いで命を落とすことなどない。それに人々はもう戦争に嫌気がさしていて、これ以上戦う必要なんてもうないはず。
落ち着かなければ。理由なき恐怖など一銭の価値もない。余計な思考は兵士としての任務遂行を邪魔するだけ。
やらなければならないことは、与えられた任務を実行することだけ。
猟犬01
そうだ......作戦の内容について子どもたちに伝えないと。
そして使命を全うしなければ。
……………
俺は窓際に立った。
猟犬03、05、07がいる。
猟犬01
早くみんなに連絡しよう。
…………………
窓の近くにいた猟兵らに会議室に向かうよう伝えた。
猟犬01
……………よし。
次は生活区画にいる子どもたちだな。
……行こう。
……………
生活区画へとやってきた。
猟犬09と04がいる。
……………
生活区画にいた猟兵らに会議室に向かうよう伝えた。
猟犬01
……………よし。
後は射撃室にいる二人だ。
射撃室へとやってきた。
猟犬06と08がいる。
猟犬01
……………全員に伝えたな。
俺も会議室に向かおう。
猟犬02
大尉。
猟犬01
猟犬02、長空市に到着した。間もなく聖碑の作戦に入るから、みんながそろい次第、俺から注意点について説明する。
猟犬02
ハッ!
猟犬01
これまで同様、君に分隊長を任せる。待ち伏せ部隊として策応するように。
今回の敵は伝説とも言われる人物。コードネーム「寒鉄」で知られる金属の聖の持ち主だ。
もし俺が戦死したら.....次の猟犬小隊の隊長は君だからな。
猟犬02
私は子どもの世話が得意ではないので、そういう煩わしい事は大尉ご自身でなさって下さい。
猟犬01
(猟犬02こと神原嵐音。風の聖移植体のレシピエントで、能力のずば抜けた副隊長だ。)
(最近、どうも俺に対して冷たい感じがする。距離もとるようになり、お父さんとも呼ばなくなった。これが俗にいう反抗期だろうか?)
そう言う君も子どもではないか。
猟犬02
私はもう18です。
今日も不機嫌そうな顔をしているが、何か怒らせるようなことをしてしまったかな?
猟犬01
そうだ。
俺はネックレスを取り出した。エメラルドのついた銀色のネックレスを。
猟犬01
これまでずっと寒鉄を追うのに忙しくてプレゼントを渡せてなくてな。誕生日おめでとう。
これで少しは機嫌をよくしてくれるといいのだが。
猟犬02
わわ私——私こんなに粗野で平凡なのに......こんなプレゼント、私にはもったいないんじゃありませんか!?
猟犬01
副隊長、これくらいの事でしどろもどろにならなくてもいいじゃないか。どうだ、気に入ってもらえたかな?
彼女は手を伸ばし、半ば奪い取るようにしてネックレスを手に取った。
猟犬02
大尉はいつも趣味が悪いなと思ってましたが......今回はこんないいもの、どうやって選んだんです?
猟犬01
ああ、これは......。
購入した時のことを思い出すと、頭の中にあの少女のことが浮かんできた。
猟犬01
……。
まったく、以前の俺はこんな感じではなかった。上からの命令をただ実行するのみ。しかし......これまで子どもを殺せなどという命令を受けたことがなかった。
あんな子が本当にこんな世界に存在しているのか?銃を突きつけられているというのに泣きもせず、跪きおとなしく死を待つなど。
そういう子どもがいるのが普通なのか?
俺はこれから、恐らくまたあの子を殺さなければならないことになる。
猟犬01
……。
不思議な感じがした。心に何かひとつの種があるような気が。
しかしそれが花を咲かすまで、それがなんの種なのか知る由もない。
猟犬02
わ......私の知らない女性が選んでくれたのですか!?
猟犬01
.....すまん。その人が誰なのかは言いたくないんだ。
猟犬02
…………大尉、あなたひどい顔をしていますよ。
猟犬01
すまない。
猟犬02
コホン.....ではその代わりに大尉。その.....私ももう18歳です。
あの......だから......今後は私のことを名前で呼んでくれませんか?
名前?てっきり彼女はこう呼び合うのが好きだと思っていたが。
だがまあ、それもいいだろう。コードネームは軍隊でのものだ。子どもたちは本来、互いに名前で呼び合うべきだし、戦後の世界のためにも今から慣れておくべきだろう。
猟犬01
わかった。嵐音。
猟犬02
嵐......で、では......針慮.....針虎大尉。
猟犬01
ああ。
「わあっ、ちょっと待ってって言ってるでしょう———!」
猟犬01
?
猟犬03
オヤジが会議だから集まれって言ってたじゃん?なのに猟犬09、なんで入るの邪魔するんだよ?
少年少女の猟兵たちが会議室へと入ってきた。
猟犬07
父ちゃんと猟犬02、もももう会議室にいるよ。
猟犬01
マーチン、もうみんな集まったか?
猟犬03
えっ?オヤジ、どうしたんだ突然。
猟犬01
第一軍団の討伐はほぼ終わり、君たちもほどなくして学校に戻ることになるからな。今から人に名前で呼ばれる生活に慣れておいた方がいい。
事前に慣れておけるよう、君たちを名前で呼ぶことにした。
ちょうどさっき嵐音副隊長からアドバイスを受けてな。
神原風音
……………大尉の言う通りです。
猟犬01
とにかくみんな並びなさい。俺から情報を共有する。
……
カロス将軍から聞いた任務について皆に説明した。
リド・ファスター
どうして僕らを作戦に行かせないの?
マーティン・ハノヴァー
そんなのどうだっていいだろ。今回のレベルの敵に真っ向から戦いを挑みたくないし、戦艦にいるのも仕事のうちだ。
リリス・ヴェラルド
でも、でもさ。聖碑についての情報を調べろって、何をすればいいのかな?
「あの艦隊はただ雰囲気を盛り上げるだけ?」「どうして地方の師団が参加するんだろう?」
「ぼぼぼぼ僕.....」「07は黙ってて。」「07黙りなさい!」「07はチャットにしろ!」
………………
猟犬01
わかった。君たちが言いたいことはわかった。
(やはり今回の作戦内容には反発があるようだな。)
俺が思うに、カロス将軍は何か理由があって地方の軍勢に下手に出なければならない状況なのだろう。だから今回、こういう任務を出してきた。
上官から命令が下された以上、それを完璧に実行するのが軍人というものだ。出された任務にどういう背景があろうとな。
マーティン・ハノヴァー
その上言って.....寒鉄がまだ弱かった頃、オヤジがせっかく寒鉄の追撃を提案したのに、異常なくらい拒否ってただろ?
リド・ファスター
そして僕らでは恐らく勝てないから追撃すべきじゃない状況になったのに、逆に参加するよう強要してくるだなんてどういう事?
猟犬01
…………そうだな。みんなのためにもっといい作戦環境を引き出すことができず、本当に申し訳ない。
マーティン・ハノヴァー
……プッ。
だからオヤジは真面目過ぎだって言ってんだよ。
真面目な顔して仕事して、真面目な顔して謝ってさ。そんなんじゃまるでこの世界が正常だなんて言ってるようなもんだろ。
リリス・ヴェラルド
そうよそうよ〜。
神原風音
そういう細かい事は......どうでもいいです。
大尉のそばに居続けられるのであれば私は満足です。
あ!私が言いたかったのはみんなとね......
子どもたちがうなづいた。副隊長の発言に無言で賛同したかのように、子どもらは笑顔で俺のことを見つめていた。
猟犬01
君たち……。
わかった。話を戻そう。
そうだ。考えすぎず自らの使命に集中すればいい。
猟犬01
猟犬10、寒鉄の行動の疑問点について総括してくれ。
マーティン・ハノヴァー
オヤジ、猟犬10は死んだって。
猟犬01
ああ、すまん。これまでずっと彼女に参謀役をやってもらっていたからつい、な。
神原風音
……私が代わりに総括します。
まず、寒鉄と光の聖痕使いは軍団のイントラを使い、頻繁に長空市の情報を検索していることが判明しています。
マーティン・ハノヴァー
あいつら何をそんなに繰り返し調べてるんだ?
リド・ファスター
僕が気になるのは、寒鉄が何に乗って長空市に来ようとするかだね。
神原風音
これも手がかりのひとつです。今のところどの地方の軍も、寒鉄が長空市に向かった痕跡をつかめていない状況です。寒鉄はあちこちで軍の基地を襲撃していますが、方向としては逆に長空市から次第に離れ、東方軍の駐屯地の方へと移ってきている状況です。
大尉、寒鉄が長空市に関心を寄せているというのは、ただのプラフでしょうか?彼女の本当の狙いは東方軍なのでしょうか。
猟犬01
寒鉄の聖痕の移植体には東方軍から位置を推定されてしまうデータが入っている。そんな彼女が東方軍団の方に向かうとは考えずらい。
神原風音
東方軍に身を寄せる可能性についてはどうでしょうか?
猟犬01
……寒鉄が東方軍に投降すると?
神原風音
私は猟犬10ではないのでそこまで正確に推測できませんが、内戦において何もいい所がなかった東方軍は、切り札や対外宣伝に使えるものを必要としている可能性があります。その場合、最良の選択肢ではないかもしれませんが、まだ生存していて使えそうなのは寒鉄だけじゃないですか。
俺は目を閉じ、かって1年間スキルを教えてくれた先生の行動パターンについて考えてみた。
彼女はどういう人だっただろうか?
猟犬01
………………それは無いと思う。
先生.....寒鉄先生は才能は至って平凡だったものの、常に行動し続ける人だった。
彼女は常に前進し続ける。そう、放たれた矢のように振り返ることなく進み続ける。彼女が目指す終点が何かは分からないが、そこにたどり着くまで彼女が歩みを止めることはない。
俺の知っている彼女なら、一度第一軍団に所属したら、絶対に他の勢力に身を寄せようとはしないはずだ。
そんなことをすれば、自分のことが受け入れられなくなるから。
神原風音
しかし追われる者の立場で考えれば、我が軍の追跡から逃れるために.....逃げ道を探しておこうとは考えないでしょうか。
猟犬01
確かに......いや、違うな。彼女はきっと自分のことを追われる獲物だとは考えない。
自分が獲物を狩る側だと認識しているだろう。
彼女は積極的に動く.....しかし、受け身の状態からどうやって積極的に動ける状態に転換するだろうか?
長空市に何か重要な要素があるのだろうか?いや、長空市に限ったことではない。彼女はまだどんな切り札を残しているのだろうか?聖痕の移植体?光の聖痕使い?それとも南方軍に呼応する裏切り者が潜んでいたりするのか?
リド・ファスター
お父さん!?
猟犬01
待ってくれ。もう少し考えれば.....何かがつかめそうだ。
リド・ファスター
ちょっと!外を見て——!?
猟犬01
?
振り向いて窓の方を見た。窓の外には青空が広がり、空には戦艦が浮いていた。
猟犬01
あの一番大きいのは山の座だな?操縦室に連絡するんだ。どうして山の座の方に近づいていくんだ?くっ……!
その瞬間、すべてを悟った。それまでバラバラだった手がかりが、その瞬間にひとつにつながった。
この船が山に近づいているんじゃない。
山の方からこちらに近づいてきているんだ。
猟犬01
子どもたち———
走れ——!!!
……………
………………
寒鉄
あなたって本当に内向的よね。
少し言ったくらいで、下向いて黙っちゃうだなんて。
もういいわ。今晩、何食べたい?先生、お金持ってるから。
外のレストランでご馳走してあげる。
俺
先生……。
寒鉄
さっきの期末試験の事は考え直すから。
それでいいでしょう?行きましょう〜。
俺
質問していいですか。
寒鉄
何?
俺
猫が好きで猫を殺さない先生......。
……行く手を阻むネズミどもをどれくらい踏みつぶしてきただろうか?
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