松坂さとう飛騨しょうこの二人はタクシーの後部座席で揺られていた。
 路面状況はお世辞にも空いているとは言い難い状態だったが、そこはどうやらやり手の運転手を引けたらしい。
 空いている道をうまく選択し続けてくれ、結果思ったよりも早く目的の地域に辿り着けそうだった。
「それにしても…お嬢ちゃん達、本当に気を付けるんだぞ? 家族と早く会いたい気持ちは分かるが……」
 二人の目指す先は中央区。
 件の大惨事が起こった新宿とは一区隔たれた位置にあるが、しかしだから安全だなどとは口が裂けても言えないだろう。
 人の良さそうな運転手の忠告に愛想笑いで無難な受け答えをするさとう。
 そんな彼女を横目で見ながら、しょうこは浮かない顔でこう思っていた。
“覚悟してたことではあるけど……やっぱり涼しい顔ではいられないわね”
 さとうと一緒に戦うことを選んだ手前これみよがしな溜息はつけない。
 不安と緊張を心の中に秘めてしょうこは窓越しに流れていく町並みに視線を移した。
 つい先刻までは北区にあるさとうのマンションで過ごしていたしょうこ達。
 彼女達が安全な住処を出て事の爆心地に近付くのを選んだ経緯は、ざっと以下のようなものである。


「何よこれ……」
 二人がその事件を最初に知ったのはSNSのニュース速報だった。
 絶句するしょうこと、そんな彼女とは裏腹に素早くテレビを点けたさとう。
 しかし次の瞬間、テレビ画面に映し出された現地の映像を見た時にはさしものさとうも言葉を失った。
 聖杯戦争が現実感だとか常識的だとかそういう範疇から逸脱した儀式であることは百も承知していた筈なのに。
 それでもさとうをして言葉を失うほど、最強と最強の激突という災害に見舞われた新宿の有様は凄まじかった。
「……アーチャー。これって」
「ああ。間違いない」
 ようやく沈黙を破ったさとうはまずしょうこのアーチャー、GVに意見を求めた。
 新宿で生じた被害を焦った調子で伝えるニュース番組の中では一つ、明らかに異質な情報を伝えてもいたからだ。
 それは天を埋め尽くすような巨大な"青龍"の姿が記録された映像。
 件の龍の姿形と大きさは、さとうがGVから聞いていた龍に化ける怪物の特徴と完全に一致していた。
「ボクが戦ったあの青龍(ライダー)だ。この分だとボクが与えたダメージはとっくに消え去っているようだね」
「それじゃ…あの時令呪を使ってでも逃げたのは正解だったってことよね」
「そうだね。ボクもみすみす負けてやるつもりはなかったけど……実際、あのまま戦い続けたなら敗れていたのはボクだったろう」
 強大なサーヴァントだとは思っていた。
 だがこれほどのことを出来るというのは流石に想定していなかった。
 その点、令呪を使って逃走したしょうこの判断は間違いなく正しいものであったと言える。

「不謹慎かもしれないけど……正直安心したわ、さとうんちが新宿から遠くて」
 そんな言葉を口にすることにも罪悪感を感じるしょうこは、やはりとても真っ当な人間だと言う他ない。
 たとえいずれ消え去る命だとしても、一万人以上もの死者の存在はしょうこの心にずっしりと重くのしかかった。
 聖杯戦争の真の恐ろしさを垣間見たしょうこの顔色は悪い。
 そのことを察していたのはGVと、そして彼女の親友であるさとうだった。
「しょーこちゃんに相談なんだけどさ」
 相談、という言葉を使ったことに打算的な意図はない。
 これはさとうなりのしょうこに対する誠意だった。
 あんなに庇い立てていた神戸あさひを捨てて自分を選んだ彼女。
 一度己を殺した相手を健気に信用してしまう小鳥のことを愚かしく思わなかったといえば嘘になる。
 だがその愚かしさは結果として、さとうにとっての"飛騨しょうこ"の信用度を引き上げていた。
「これからどうするべきだと思う? このまま私の部屋で晩ごはんでも食べるか、それとも打って出るか」
「打って出るって、そんな…、……いや、逆に私から聞くわ。アンタはどうしてあの惨状からその選択肢を思い浮かべたの?」
「あれだけの戦いがあって動かずいられるのは、私達みたいな爆心地から遠く離れた場所にいる人間だけ」
 新宿で起こった戦いは単なる小競り合いの域に留まっていない。
 一つの区を壊滅に追いやるほどの壮絶な激突だ。
 死者の数もさることながら、インフラやその他様々な方面に甚大な影響が出ているだろうことは想像に難くない。
 それほどの大きなイベントが起こったとなれば否応なくその周辺の連中は動くことを余儀なくされる。
 さとうが注目しているのはひとえにそこだった。
「要するに火事場泥棒みたいなものかな。動きたくもないのに動かなきゃいけなくなった奴らを狩るの」
「で、でも…それって危なすぎない? 新宿にはまだあの化物みたいな連中が居座ってるかもしれないのよ?」
「新宿には行かないよ。その近くを狩場にするだけでも十分だと思う」
 しょうこはさとうの答えに舌を巻いた。
 やはりこういう状況での判断力なら自分とさとうの間には無限大の差がある。
 こんな理路整然とした方針を突きつけられては、とてもではないが新宿の戦いに巻き込まれた犠牲者達に対する哀悼の念など滲ませられなかった。
「しょーこちゃんのアーチャーはさっきの映像に出てきた龍とある程度戦えるくらいには強いんでしょ?
 私のキャスターも…まぁ人格はともかく……実力は確かだから。二人で組めばよっぽど規格外な相手でもない限り優位に戦えるんじゃないかな」
「さとうちゃん?」
 童磨の抗議は当たり前ながらスルーする。
 しょうこも、そしてGVもそれに突っ込もうとはしなかった。
 下手に反応して彼に絡まれるのは本当に嫌だという意思がその無言から伝わってくる。
「しょーこちゃんが嫌だって言うんなら理由は聞くけど、でも今は攻めるチャンスだってことだけは覚えておいて」
「……アーチャーはどう思う?」
 さとうとしょうこは今でこそ同じ行き先を見据えて手を繋いでいるが、二人が持つ争いごとに対しての適性は雲泥の差である。
 あくまでもしょうこは背伸びをした素人だ。
 真っ当な良識と倫理観を持った善良な少女が頑張って背伸びをして、どうにか人でなしになろうとしているのが今の彼女。
 しょうこもそれは自覚している。
 だがそれを逃げ道にする気はなかったし、こうして自分のサーヴァントに助け舟を求めたのも自分の未熟さを自覚しているからだった。
「作戦としては悪くないと思うよ。ただ、同時にかなり危険だとも思う」


 愚図が気持ちだけでがむしゃらに出す即答よりかは、周りの意見を参考にして出した丸っこい結論の方が絶対いいに決まっている。
 第一そうでもしなければしょうこはさとうの方針に控えめに頷くだけの存在と化してしまう。
 二人を比べた場合、優れているのは何をどう考えたってさとうの方なのだから。
「さとうの推測は多分正しい。でも、それを踏まえた上でマスターが乗り気になれなくても当然だ。
 そうならないように努力はするけど、ボクらが首尾よく狩る側でい続けられるかは分からないからね」
「飛んで火に入る夏の虫……ね。もしそうなったら」
 大きなリターンを得ようと思うなら当然それに見合うだけのリスクを背負う必要がある。
 世の中そう美味い話はないということだ。
 しょうこはGVの意見を胸の中でしっかり噛みしめる。
 決意という麻薬で麻痺させていた恐怖心が再び渦を巻き始めるのが分かった。
「それでも勝負するの? さとう」
「するよ。新宿の件で危機感を覚えてそこかしこに同盟が乱立するようなことになったら、此処で攻めに出ること以上のリスクを負うことになる」
 さとう達のサーヴァントとて決して弱くはない。
 もしも弱かったならそもそも此処まで勝ち残れていないだろう。
 しかしGVの言う通りリスクの高い選択であることも当然分かっていた。
 それでも進撃案を推す理由は、此処で競争相手を減らしておかなければという感情によるものだった。
「みんな考えることだと思うんだよね。同じマスター同士で同盟組むのって」
「あー…正直それは分かるかも。安心出来るものね」
「私達と同じくらいの……二組規模の同盟だったらまだ太刀打ち出来るけどさ。もっと大規模にやってる奴らがいたら怖いと思わない?」
「それは……確かに、やばいわね。純粋に物量だけで押し潰されちゃうし」
「正直私は、もう今の時点でかなりの大規模同盟が成立してるものだと考えてる」
 さとうは自分達の戦力を過小評価はしていない。
 気に入らない童磨もしょうこのGVのことも、ある程度その戦力の輪郭を正確に捉えて評価していた。
 だがその一方で彼女は自分達の脆さについても自覚的だった。
「そいつらの足並みを適当なところで崩さないと私達は最悪詰む」
「……っ」
「例えばだけどさ、しょーこちゃんの家を壊して新宿を焼け野原にしたあのライダーがそんな大同盟を抱えてたらどうなると思う?」
 答えは一つだ。
 考えたくもない。
 まさに悪夢。取り付く島などある筈もない。


「だから今動いておきたいの。あまり積極的に探すつもりはないけど、もしかしたら私達のこの同盟も拡張出来るかもしれない」
 さとうの考えを聞いて内心認識を改めていたのはGVだった。
 自分のマスターを悪く言うつもりはないと断っておくが、それでもさとうはマスターとしてしょうこより確実に優れていた。
 善し悪しではなく頑然たる事実としての話だ。
 彼女は少なくとも自分の抱く狂おしい愛に支配されるばかりの存在ではないのだと、GVは密かに理解する。
「…分かった。アンタの心配はもっともだわ」
「分かってもらえて嬉しいよ。じゃあすぐに出発ってことでいい?」
「いいけど、でも一つだけ釘を刺させて」
 ずいっとしょうこが身を乗り出した。
 表情を変えないさとうの沈黙を肯定とみなし彼女は言う。
「もしもアンタが私に不満を感じたり、至らないところがあると思ったら……その時はすぐに言って」
「そのつもりだけど……いきなりどうしたの?」
「……私とアンタは最終的には敵同士だって分かってる。でも、一方的に切り捨てられるのは寂しいでしょ」
 過去のあの時は話し合うことすら出来なかった。
 しょうこはさとうが自分にやったことを根に持ってはいないが、心の傷まではそう簡単に消せない。
 生命活動の継続という現世利益とは関係なしに、しょうこはもう二度とあんな思いはしたくないと思っていた。
 なんで、どうして。
 そんなことだけを考えながら自分が自分でなくなっていく、物言わぬ何かに変わっていくあの感覚はもう二度と味わいたくない。
 だからこうして改めてさとうに求める。
「私も直せるところは直すからさ……おこがましいかもしれないけど私、アンタとは親友同士だと思ってんのよ。
 そのくらいの間柄なんだから――何でも話したいし、話してほしいの」
 お互いもっと話をしようと。
 そうすれば自分は聞くし、そっちにも自分の話を聞いてほしい。
 そういう訴えだった。
 さとうにとってその訴えは取るに足らない、下らないものでしかない。
 松坂さとうにとって世界の中心は神戸しおであり、それ以外の有象無象の価値は等しく陳腐だ。
 だが飛騨しょうこに関して言うならばその枠組みに含めていいかは微妙であった。
 過去、自分の秘密を知った彼女を殺した時。
 その時さとうが感じたのは――確かな命の重みであったのだから。
 神戸しお以外のすべては等しく羽毛の如くなりと。
 そう価値を決定づけていた筈のさとうが感じるにしてはおかしな重み。
 当時のさとうであれば不合理の一言で片付けてしまうのだろうが、不思議と今のさとうは違った。
「……分かった。じゃあ何かあったら遠慮なく言うね」
 この世界での自分は。
 正しくはしょうこと再会してからの自分はらしくないなと、さとう自身そう思う。
 利用するだけして使い潰すべき相手の言うことにいちいち驚くなんて、此処に来る前の自分では考えられないことだ。
 でもその理由は分かる。
 以前のさとうならばいざ知らず。
 今のさとうにならば、なんとなくだが分かる。
「その代わりちゃんと働いてね。私達のために」
「調子乗るんじゃないわよ、バカ。最後に笑うのは私だっての」
 彼女の存在は他の有象無象と同列ではなかった。
 飛騨しょうこと自分は、信じ難いことだけれど。
 思いのほか――ちゃんと友達だったらしい。
 そう分かったからこそさとうはしょうこの言うことを聞き流しはしなかった。
「……それは無理かな。勝つのは私だから」
 神戸あさひを切り捨てて自分の手を取った彼女に対して、さとうはらしくもなく一定以上の信用を抱いてしまっているのだった。




 ……以上が二人が家を出て動き出すまでのざっくりした経緯だ。
 買ってきた食糧(栄養食品、インスタント食品中心)をかばんに詰めて家を出てタクシーに飛び乗った。
 運転手にはかなり心配されたが、家族と合流したいからという言い訳をすれば特に粘られることもなかった。
 さとうのアドリブにしょうこも素早く話を合わせられたのは彼女も伊達にいろいろ遊んできたわけではないということか。
「でも流石に結構遠かったわね。タクシー代怖くなってきちゃった」
「多めに持ってきてるから大丈夫だよ」
 さとうが運転手に伝えた行き先は中央区だった。
 別に特定の誰かを狙い撃ちにして此処を目指したわけではない。
 危険地帯である新宿と程よい距離にあるのが何処か探してみて、たまたま中央区が丁度いい位置にあったというだけ。
「着いたらどうする? とりあえず今晩の宿でも決めた方がいいかな」
「目処だけはつけておきたいね。荷物だけ置いてそれから少し散策してみたいかも」
「ん…分かった。じゃあスマホで適当にホテル探しとくわ。
 安いところでいいわよね? 流石にセキュリティとか気にしないでしょ」
「うん、安いビジホでいいよ。お金も無限じゃないからね」
 慣れた距離感と歩幅の会話は淀みというものがない。
 直に長めの旅も終わる。
 そしたら今しょうこに対して言ったように当面の宿を見つけ、それからマスターとしての仕事に勤しむ。
 それが彼女達の当座の指針だったのだが――それを突き崩したのはやはりと言うべきか童磨だった。
“さとうちゃん。一つ耳に入れておきたいことがあるのだが”
“いいよ、言ってみて。返事するかどうかは聞いてから決めるね”
“非道いなぁ。その言い草じゃまるで俺が日頃ろくなことを喋らないみたいじゃないか”
 違うの? と聞かなかったのは童磨と会話する上では間違いなくパーフェクトコミュニケーションだ。
 彼とスムーズなやり取りをするには塩分を利かせた対応をするのがコツである。
 さとうはもちろんしょうこもGVもそろそろそのことを理解してきた頃だろう。
“で、何”
“中央区だったかな? この町に、多分俺の元上司がいるぜ”
“……。それ、本当?”
 童磨が念話で告げた内容にさとうは表情を硬くした。
 少なくとも彼女は何も感じていなかったし、見る限りしょうこもそうだ。
 この友人は裏で自分のサーヴァントに危機の訪れを伝えられて平静を保てるほど人間離れしていない。
 そう考えるとGVもやはり何も感じていないのだろうと思われた。
 となると気付いたのは問題児の童磨だけという状況になるのだったが……
“この全身の毛穴が逆立つような感覚は間違いなくあのお方……あぁ、今は鬱陶しい呪いもないのだったか。
 この世に最初に生まれた鬼であり、俺達を生み出した偉大な始祖殿。鬼舞辻無惨様の気配に違いない”
 さとうは意外にもそこに疑念を抱くことはしなかった。
 彼女は夢を通じて悪鬼童磨の生涯を垣間見ている。
 ならば当然、ただの哀れな青年を鬼に変えた諸悪の根源についても知識を持っていた。
“同族だからお互いを感知することには長けてるってことか”
“まぁそんなところだろう。まして相手は全ての鬼の産みの親だ”
“一応聞いておくけど、無惨の支配が今も生きてるってことはないよね”


“それはまったくないから安心していいよ、さとうちゃん。
 ただ…恐らくあのお方も俺が近くまで来ていることに気付いてる”
 全ての鬼は始祖、鬼舞辻無惨の生み出した眷属だ。
 臆病で小心な無惨は全ての鬼を常に監視し呪いという名の支配で縛っていた。
 今では支配は外れているようだが、それでも互いの気配くらいは感じ取れても不思議ではない。
 だからさとうは特に疑うことなく童磨の報告に納得した。
 だが問題はそこからどうするか、で。
“意見を聞こうかな。キャスターとしてはどうした方がいいと思う?”
“俺に意見を聞くとはさとうちゃんもずいぶん心を開いてくれたものだねぇ。俺は嬉しいよ”
 もちろんさとうはそんな戯言にはまともに取り合わない。
 童磨もそれは予想通りだったのか、特に粘るでもなくすぐに質問の答えを続けて述べた。
“無惨様は常軌を逸して苛烈なお方だ。領地の内に入ってなお俺が素知らぬ振りをしたと知れば……怒るだろうなぁ”
“味方になってくれる保証は?”
“それは交渉次第かな。生前なら有無を言わさず従わされてるところだが、今はそれがないから難しい話ではないだろう”
 さとうは少し考えてから、運転手に「此処でいいです」と告げた。
 タクシーが停まり、移動としてはなかなかにお高い運賃を支払ってしょうこ共々降りて中央区の大地を踏む。
 車のドアが閉まるなりすぐにさとうはしょうこに対して口を開いた。
「キャスターの知り合いがこの区にいるらしいんだよね。知り合いっていうか元上司だけど」
「え…アイツの上司? やめといた方がいいんじゃない? ……その、絶対ろくでもないでしょ」
 眉根を寄せるしょうこの言うことはもっともだ。
 童磨の人間性を抜きにしたって相手は人食い鬼の首魁だ。
 何も事前知識がなくてもヤバい相手だと分かる。
 無惨(かれ)に対する知識のないしょうこでさえごく自然に懸念の言葉が出るくらいには当然のことだった。
「うん、私もそう思う。ギャンブルになるのは否めないかも」
「まぁアンタのことだから私なんかよりいろいろ考えてるんだろうけどさ。自信はあるのよね?」
「自信があるかって言われたら微妙かな。でも打算ならあるよ」
 自分達ではどの道単独で都市を滅ぼせるような強豪達には敵わない。
 だから必要なのは兎にも角にも戦力だった。
 そのためなら多少のリスクは冒して然るべきだとさとうは考えていた。
「怖いのは、出会った瞬間こいつが支配されちゃう展開だけど……」
「あぁ、それはないと思うよ?」
 さとうの懸念に童磨が口を挟む。
「無惨様は、自分の部下の存在を知って悠長に待てるような気性はしておられない」
 尊敬しているのだか馬鹿にしているのだかよく分からない物言いだったが彼に限って他意などはあるまい。
 夢の中で垣間見ただけの相手ではあるが、無惨がこの鬼のことを好ましく思っていなかったろうことは優に想像がついた。
「今も無惨様の声すら聞こえてこない。あくまで気配と存在感だけだ。
 無言で圧だけかけるようなやり方は、俺の知るあのお方らしくないと言わざるを得ないなぁ」
「……そ。ならそこは心配ないか」
 お世辞にも言動に信用のある男ではないが、腐っても無惨に百年以上仕えてきた臣下である。

 それにさとうの中で形成された無惨という存在のイメージと合致する所見でもあった。
 無惨と会う選択に伴う最大のリスクはあらかじめ排せたことになる。
「いざとなったら私が令呪を使うよ。アーチャーもそれでいい?」
「決めるのはボクじゃなくてマスターだ。マスターに異論がないのなら従うよ」
 さとうとGV、両者の視線がしょうこに向く。
 しょうこは少し緊張した面持ちだったが控えめに一度だけ頷いた。
 まだ不安と懸念はあるのだろうが、石橋を叩き続けていては状況は進まない。
 他の参加者達に比べて明らかに出遅れている自分達が彼我の差を埋めるためには、多少のリスクは覚悟して受け入れなければ。
 修羅場を知らない未熟な小鳥にもそのくらいのことは分かっていたから、ぎこちなくでも友の肩に乗る方を選んだようだ。
「交渉とかそういうのは任すわよ。いざとなったら私も、やれる範囲でアーチャーに暴れてもらうから」
「うん。その時はお願いね」
 ナビは無惨の気配に慣れ親しんだ童磨が務める。
 無惨に対して合流の意思があることをアピールするためにも実体化を保たせ、気配をより濃く放たせている。
 下手すれば死地になりかねない場所に向かう緊張感から高鳴る心臓。
 その居心地悪さを紛らわすためにか、しょうこはさとうに話を振った。
「……アンタとはいろいろ一緒にやってきたけどさ、何気に修羅場ったことはなかったよね」
「たかが男漁りだったしね。変な人はたまにいたけど、そういう人は物腰見てればなんとなく分かったし」
「あ~…それ分かる。なんか笑顔が不自然なのよね、良からぬこと企んでる男って」
 ずいぶん昔のことのように感じられるが、実は足を洗って久しいと言えるほどの時間は経っていない。
 さとうは自分の運命と出会って無軌道で無意味な遊びを止め、しょうこも彼女に続く格好になった。
 あの頃からまだ数ヶ月しか経っていないと考えると、此処最近の時間がどれだけ濃密なものだったかがよく分かる。
 さとうにとっても、しょうこにとっても。
“この戦いもきっとそうなんだろうな”
 この先自分達の同盟がどんな結末を辿るとしても、きっと最後に振り返った時思うことは一つなのだろう。
 あっという間だった。もう終わってしまった。
 もしかしたらこの先数時間。長くてもきっと数日。
 自分がさとうと過ごせる時間はせいぜいその程度。
“それなら、せめて……”
 せめて、もう一度会えてよかったと思えるように。
 そして――思ってもらえるように。
 最後に勝つのは自分だとそう信じつつも、この再会を蔑ろにだけはしたくないから。
 しょうこは隣を歩く親友の横顔を見つめながら、神様のくれた奇跡のような今を改めて噛み締めた。

    ◆ ◆ ◆

「…………」
 童磨の誘導(ナビ)に従って辿り着いた先は富裕層がこぞって居を構える高級住宅街だった。
 正しくはその中に紛れるようにして建っていた一軒家。
 豪邸と言っていい佇まいだが木を隠すなら森の中とはよく言ったもので、この一等地にあっては一切浮いたものは感じられない。
 此処に恐ろしい鬼が巣食っているなど、傍から見ただけでは想像することも出来ないだろう。
「さ、さとう…。此処に住んでるのってまさか……」
「うん。そうみたいだね」
 備え付けのインターホン。
 その真上に貼られた表札に二人の目は釘付けとなっていた。
 そこにあった苗字は『松坂』。
 偶然か? いや、さとうもしょうこもそうは思わない。
 さとうに至っては元より"彼女"の存在を直感していたから余計にだ。
 つくづく、奇縁だ。
 界聖杯が恣意的に自分の周りの人間ばかりを生き残らせたのではないかと勘繰りたくなってくる程に。
「多分、叔母さんだ」
 とはいえ叔母の存在はさとう達にとって追い風だった。
 味方に付けられる可能性が高いのもそうだし、何より鬼舞辻無惨という危険すぎる相手を制御しているのが知己の相手だというのは大きい。
 油断は相変わらず禁物だが少しだけ肩の力を抜いてさとうはインターホンを押す。
 しょうこはと言えばまださとうの叔母に対する苦手意識が抜けていないのか、まだ緊張した様子だったが。




 ぴんぽーん、ぴんぽーん。
 呼び鈴の音が響いて数秒する頃。
 がちゃりと内側からドアが開かれた。
 姿を現したのは、ああやはり。
 さとうにとっては見慣れた、しょうこにとっては苦い思い出のあるその顔。
「あら、さとうちゃん。久しぶり。元気にしてたぁ?」
「うん。叔母さんみたいな人が生き残ってるとは思ってなかったけどね」
「うふふ、私の力じゃないわよ。私はな~んにもしてないから」
「だろうね」
 この人は変わらないな。
 さとうは冷めた瞳のままそう思う。
 いや、この人を変えるなんてことはきっと地球上の誰にも無理だろう。
 松坂さとうの叔母は多分、精神のつくりが普通の人間と違うのだ。
「中に上げてもらってもいい? 叔母さんのサーヴァントに用があるの」
「きぶ…バーサーカーくんに? ふふっ、あの子にも友達がいたのねぇ……」
「なんにも聞かされてないの? 私達、そのバーサーカーに呼ばれたんだけど」
 これだけの会話でも叔母達の主従関係がどんなものであるかは理解出来た。
 バーサーカーこと鬼舞辻無惨はこの女を完全に持て余している。
 元々マスターなどという要石を相手に相互理解など試みるとは思えない傲慢な鬼なのだ。
 そんな人物がよりによってこんな人間に召喚されたとあっては……。
 さぞかし神経を逆撫でされる毎日を過ごしてきたのだろうなと、さとうはそう思った。
「とりあえずいいわよ、中に上がって。小鳥さんも一緒にね」
「あ…、……ありがとうございます。お邪魔します……」
「ふふっ……なんだか前より逞しくなったんじゃないかしら。これからもさとうちゃんと仲良くしてあげてね」
 さとうとしょうこの間にあったことを知っておきながら、平気でこんなことを言う。
 もちろん悪気などあるはずもない。
 彼女には、そういうものはないから。
 だからこそ尚更始末に負えないのだったが、そのことを彼女が自覚する日はきっと来ないのだろう。
「大丈夫、しょーこちゃん」
「……うん。入りましょ、さとう」
 けれど飛騨しょうこという小鳥が以前に比べて逞しく成長しているのは事実だった。
 臆病風を吹き飛ばすように力強く頷いて、しょうこはさとうの後に続く。
 そんなしょうこにGVが念話を飛ばした。
“マスター”
“大丈夫よ、心配しないでアーチャー。もう平気だから”
“いや――そうじゃない”
 GVの語気には忌々しげな嫌悪感が籠もっていた。
 何かひどく悍ましいものに触れたようなそんな声。
“もしもいざという状況になったら、惜しむことなく令呪を使って此処から離脱するんだ”
“……それって、この家にいるバーサーカーが危険だから?”


“危険度なら板橋でボクが見えた龍の方がずっと上だろう。
 でも…この家は腥(なまぐさ)すぎる。血と、臓物と……死の臭いが汚泥のように堆積している”
 GVは英霊の座に至るまでに様々な敵と戦い、それを斃してきた。
 中にはどうしようもない奴もいた。
 理解不能の倒錯者だっていた。
 だがこの先でこれから自分達が邂逅する存在は、そんな彼らと比べても格段に救えないものであるという確信がGVにはあった。
 相互理解など試みるだけ無駄だ。
 この臭いの主と分かり合えたというのなら、それはもう人間と呼べる存在ではない。
“さとうを置き去りにすることに抵抗があるなら彼女のこともボクがなんとかする。
 だから判断は誤らないでほしい。ボク達が足を踏み入れたこの家は、人外魔境の伏魔殿だ”
“……分かった。その時は言われた通りにする”
 化物の腹の中に入るのだ、選択するタイミングを見誤れば何もかもを失うことになる。
 そう思っての忠告だったし、しょうこも此処にいる鬼が極めて危険な存在だということは聞いていたため素直に首肯できた。
 と。
“でもちょっとびっくり。アーチャーはさとうのこと邪魔がってると思ってたから”
“百パーセントの信用を置ける相手ではないからね。警戒しなきゃいけない対象が増えるという意味じゃ、その認識も間違いではないよ”
“私のためとはいえ、私が言ったらさとうも助けてくれるなんて。二人で買い物に出かけて、もしかしてちょっと打ち解けた?”
“別に打ち解けてはいないと思うよ。彼女の側がどうかは知らないけど”
 GVは一拍置いて。
“ただ……少し印象は変わったかもしれない”
 そう締めくくった。
 しょうこを殺したという少女は思っていたよりずっと人間だった。
 破綻してはいても狂人と呼べる存在ではなかった。
 ひょっとすると――だからこそなのだろうか。
 飛騨しょうこという小鳥が一度その命を壊されても尚、もう一度彼女のところに飛んでいったのは。

    ◆ ◆ ◆

 部屋の中はごくごく普通の今風だった。
 蛍光灯が照らし出す豪奢な、それでいてある種の慎みを持った内装。
 白を基調にした壁紙と肌触りの良さげな絨毯。
 デスクの上にはパソコンが置かれ、モニターには株式関連であろうグラフや数字が所狭しと踊っている。
 そんな何処からどう見ても現代の部屋といった内装の中で。
 その"鬼"は殺気にも似た不機嫌を隠そうともせず来訪者達を迎え入れた。
「……聞いていた特徴と一致する。よもや貴様、松坂さとうか?」
「……はい」
 成る程、これは――確かに恐い。
 さとうでさえそう思った。
 体の奥の本能的な部分が警鐘を鳴らしているのが分かる。
 しょうこは唇をぎゅっと噛んで、微かに体を震わせていた。
 しかし傍若無人な鬼の始祖が女子供の怯えに配慮などするわけもない。


「童磨を出せ」
「分かるんですね」
「上弦(やつら)は私の血を分け与えることで鬼になった存在だ。
 腹立たしいことに今は呪いも監視も機能していないが、それでも気配で個体を識別することくらいはできる」
 無惨の目が鋭く細められる。
 猫のそれを思わせる鋭い瞳孔の目がさとうを睨め付けた。
「私に同じことを二度命じさせる気か?」
「いえ。……出ていいよ、キャスター」
 何気にしょうこ達に真名がバレてしまったが、気にするだけ無駄だろう。
 さとうの言葉に呼応する形で血染めの髪を揺らし、虹瞳の鬼が実体化した。
 恭しく片膝を突いて頭を垂れる鬼(かれ)の名は童磨。
 臣下のように傅く童磨であったが、それを見下ろす無惨の表情は一切緩まない。
 それどころか発せられる殺気の桁が跳ね上がったようでさえあった。
「お久しゅうございます、無…おっと。今はバーサーカー様とお呼びするべきか」
「当たり前だ。相変わらず腐った脳をしているようだな」
「また酷いことを仰る。俺は貴方の存在を知るなり、真っ先にこうしてお傍に駆け付けたというのに」
「真っ先にだと? 遅い。聖杯戦争が始まってから一月経っている。
 貴様は私の存在を感じ取ったその日に、草の根を分けてでも私の許へ飛んで来なければならなかった」
 言っていることは無茶苦茶だが、彼の中ではそれも立派な理屈なのだろう。
 人を喰い殺して笑う悪鬼達でさえもが恐れた鬼舞辻無惨。
 同族に対する絶対の支配権を持ちながら、あまりに気性の激しすぎる活火山のような男。
 サーヴァントとして別なマスターの許に召喚されている以上、種族は違えど敵同士だという道理は理解していても……それがどうしたと無惨は不変。
 上弦としての役目を果たせと臆面もなくそう言い放つ。
「その娘を捨てて私に隷属しろ。解けた呪いを今一度刻み直してやる」
 無惨の言葉は何であれ絶対の正当性を持つ。
 それが鬼の世界における掟だ。
 破った者は誰であれ例外なく処刑される。
 たとえ心の中であろうと無惨に異を唱えることは許されない。
 上弦である童磨がそれを知らない筈はなかったが。
「ん~……非常に心苦しいのですが、それは承服しかねます」
 さとうには無惨の顔に亀裂が走ったように見えた。
 血管がビキビキと隆起したのがそういう風に見えたのだ。
 次の瞬間無惨の腕が童磨へと高速で振り下ろされた。
 家の床が破砕してしまうことなど気にも留めない"癇癪"だった。


「何故避ける」
「ははは。貴方に触れられては俺とてひとたまりもないのです、勘弁してくださいませ」
「見ない内にずいぶんと物の道理が分からなくなったようだな、童磨。
 貴様は私の願望を叶えるためだけに生み出された同族だ。意思決定が叶うなどと思い上がるな。
 まさか貴様に限って聖杯の恩寵が惜しくなったわけでもあるまいに。
 黒死牟ならば、猗窩座ならば、即断即決で私に頭を差し出していた筈だ」
 さとうとしょうこの思考は今共通していた。
 此処に来た選択は間違いだったかもしれない。
 最悪、どうしようもないことになる前に令呪で逃げた方がいいか……?
「いやぁ。誠にお恥ずかしい話なのですが……」
 マスター達の焦燥をよそに童磨は笑った。
 頬を微かに染めて、まるで照れたみたいにだ。
 彼を知る者が見たら誰であれ気味の悪さを感じ取るだろう、そんな表情をした。
「そのまさかなのですよバーサーカー様。俺にも聖杯にかける願いができました」
「……何?」
 無惨の眉間に皺が寄る。
 この男を困惑させた鬼など未だかつてあったかどうか。
「覚えていますかな。鬼狩りの柱の……」
「そんなものを私が記憶していると思うか?」
「でしょうなぁ。では結論から申しましょう。
 ――恋をしたのですよ、俺は。あの日無限城で散る今際の瞬間に!
 人の心をついぞ理解できなかったこの魂に、初めて熱が灯ったのです!」
 童磨の高揚した調子での告白。
 それを聞いた無惨の内心は一言だけだった。

“何を言っているのだ、こいつは……?”
 無惨は童磨の宿業を知っている。
 彼は人の感情を持たない伽藍の洞だ。
 明るい言い回しも浮かべる喜悦も全ては猿真似に過ぎない。
 だからこそ眷属の心が読める無惨にとって、童磨はある種嫌悪の対象でもあった。
 表面上の忠心と冷え切った内心という矛盾した二面性が彼に限っては両立する。
 もしも鬼としての実力が高くなかったなら、彼は何処かの頃合で無惨に殺されていたに違いない。
 そんな男が何やらわけの分からないことを言っている。
 恋を知った、心に熱が灯った――こいつが? よりにもよって、こいつが?
「……その下らない妄執に憑かれ、貴様は私の聖杯を掠め取ろうと思い立つに至ったのか」
「バーサーカー様に逆らうのは俺もとても恐ろしい。ですが……愛というのは障害に満ちたものと聞く。
 であれば僭越ながら俺は、貴方の悲願を追い越させていただくことにします」
「愛などという妄想のためにか?」
「いかにも!」
「そうか」
 疑問は尽きない。
 一体どういう風の吹き回しか。
 死に際に何を見たというのか。
 こいつの空洞をさえ埋める、それも人の力とやらの一つなのか。
 尽きなかったが、しかし無惨の取るべき行動は改めて決まった。

「死ね」

 童磨(こいつ)は殺す。


 もはや新しく呪いを刻む価値も見出せない。
 それほどまでに今のは不愉快な体験だった。
 増やしたくもないのに仕方なく増やした同族。
 存在するだけで脳の何処かが苛立ちでささくれ立つ"ままならなさ"の象徴。
 それが何やら意味不明なことを言いながら自分の意に背いてきた。
 そんな従僕は必要ない。
 細胞から分解させて跡形もなく消し去ってくれよう。
 無惨の肉体が膨らむ。膨張する。
 始祖と眷属の間にある力量差は天と地だ。
 たとえ上弦の壱である黒死牟ですら無惨には届かない。
 であれば上弦の弐たる童磨を食らうことはどれほど容易か。
「……叔母さん!」
 一計を案じたのはさとうだった。
 無惨は手のつけられないサーヴァントだが、この世界に限っては彼にも手綱がある。
 そしてそれを握っているのは他でもない、松坂さとうの叔母その人だ。
「駄目よ、バーサーカーくん。その子を虐めないであげて?」
「口を挟むな」
「うふふ、挟むわよ。だってその子はさとうちゃんの…私のかわいい姪っ子のサーヴァントなんだもの。壊されちゃ悲しいわ」
「貴様は、何処まで……!」
 さとうは考える。
 無惨はさとうの想像以上にどうしようもない男だった。
 癇癪持ちの癖して力ばかりべらぼうに強いなんて厄介過ぎる。
 クズの上司はやはりクズか、と辟易すら覚えた。
 だが童磨と無惨で違うのは気位の高さ、高慢さ。
 童磨はマスターに令呪で従わされようが何とも思わないだろう。
 しかし無惨は恐らく違う。
 彼にとって人間に従わされることは……中でもいっとう気に入らないこの叔母などにそうされることは、最悪の屈辱なのではないかと考えた。
「私からもお願いします、バーサーカーさん。
 キャスターの非礼はお詫びしますから話を聞いてください」
「私と何を話すというのだ。売女の血筋めが」
「貴方はこのままじゃ聖杯を手に入れられない」
 空気が凍った。
 火事場の只中のように赤熱していた空気が今度は極地の極寒に変わった。
 それほどまでにさとうの言葉が鬼舞辻無惨の現状を鋭く言い当てていたということ。
「分かっていますよね。貴方のマスターには聖杯を狙う熱がない。
 自分からあちこち動いて敵を見つけるでも、情報を得ていくでもない。
 お察しします。その人のことはよく知ってるつもりだから」


 さとうの叔母には飛び抜けた異端の才能がある。
 それは人を堕落させること。
 彼女の信じる"愛"で駄目にしてしまうこと。
 その一点において彼女に勝る人間をさとうは未だかつて見たことがない。
 しかし一方で、その一点以外はからっきしだ。
 情熱もなければ執着もなく、悲嘆や憐憫を動力に動くでもない。
 ただ、自分の世界の"愛"だけを振りまく存在。
 鬼舞辻無惨のマスターであり、松坂さとうの叔母であるこの女はそういう人間なのだ。
 まさに異常者。社会に混ざることのできない、混ざってはいけない人間。
「日光を浴びることができない貴方が、マスターの積極的な行動なしに勝ち抜くことはとても難しい」
「…………」
「手を組みませんか。そうすればマスターの不在という問題をクリアできますよね」
「何を考えている」
 さとうの言うことはすべて正論だ。
 日光に嫌われた体質が英霊になってからも健在である以上、無惨が単独で聖杯戦争を制するには夏の夜間帯というわずかな時間に縋るしかない。
 だが東京は広い。
 そのわずかな時間を闇雲に動き回るだけでは効率が悪すぎる上、他の主従の結託に対してあまりにも弱すぎる。
 無惨がいくら強大だといっても彼には新宿を焦土に変えたあの二体ほどの抜きん出た強さはない。
 今のまま聖杯戦争を続けていけば……いずれ無惨はごくごく順当に負けるだろう。
「取引になっていない。そこの小娘ならばいざ知らず、松坂さとう。貴様には私を斃す手段がないだろう」
 ならばこの話、無惨にとって乗らない理由はない。
 そう見える。
 が、無惨は見逃さなかった。
 自分の眷属である童磨を従えている限り、さとうは絶対に己を打ち倒すことができない。
 この先を順調に勝ち進んでいった場合、その時さとうは自分が結んだ同盟関係という名の壁に直面して詰むのだ。
「何を目論んでいる。この私を謀るというなら万死に値するが」
「…そう警戒しなくても、童磨(こいつ)はそのうち捨てますよ。叔母さんにでも譲ります。
 そしたらバーサーカーさんは私と新しく契約し直せばいい。私にはちゃんと願いもありますから」
 さとうは小さく溜息をついて無惨に答えた。
 どうせこの叔母に願いなどないだろうし、喜んで踏み台になってくれるだろう。
 二人を横目に叔母が童磨へ「あら~~」と微笑み。
 童磨も「さとうちゃんったら俺に本当つれないんだよ叔母さん~」とそれに答えているが当然拾わない。
 構えば構っただけ疲れるのだから触らぬ神に祟りなしだ。
 奇しくも異常者(叔母)(童磨)への対処法はさとうも無惨も同じだった。


「ただ……」
 別にさとうとしては今すぐ童磨を捨ててもよかった。
 というかそれが一番合理的だ。
 ベクトルは違えど同じように性格が終わっているのだから、強い方を取った方がいいに決まっている。
 だからこの先は非合理の世界。
 他人から見ればちっぽけな、でも本人にとっては譲りたくない意地だ。
「少しこいつに証明してやりたいことがあって。
 契約をし直すならその後になると思います。
 バーサーカーさんが呑んでくれるならの話ですが」
「……下らん。理由を聞く気も起きん。
 暫く見ない間に白痴を通り越して気違いになった屑と比べ合う意地など、取るに足らぬに決まっている」
 ――鬼舞辻無惨は愛を知らない。
 否、知る気もない存在だ。
 そんな下らないものに命を懸ける輩の気が知れないとすら思っている。
 そんな無惨はさとうの素性について、他ならぬ彼女の叔母から聞いていた。
 他所の家の娘を誘拐して愛を育み合うなどとんだ破綻者だとその時は思ったが、こうして話してみると……。
“叔母に比べれば幾分使いでがある、か……”
 頭の回転が速く話もまともにできる。
 自分の破綻を内側に納めて振る舞うことができる。
 その上非情な判断も下せる。
 愛などという病じみた疾患を抱えているのは玉に瑕だが、そもそも無惨はこの手の輩の相手は慣れていた。
 息を吐くように虚言を撒き散らす老爺や芸術狂いの奇人すら鬼に変え、何百年と関わってきた無惨なのだ。
 理解の及ばない相手であろうとも能力があってなおかつその存在が自分の利になるのであれば……利用するのもやぶさかでない。
「だが私がこの狂った女のせいでろくに動けず、不本意な後手に甘んじさせられているのは事実。
 非常に業腹だが貴様の話を呑んでやろう、松坂さとう。
 私の悲願のために身を粉にして働け。鬼に変えて呪いを刻まないでやることを最大の慈悲と思え」
「ありがとうございます。同盟は成立ですね」
 さとうはぺこりと一礼する。
 無惨は未だ憤懣やる方ない様子で舌を打った。
 戦力の少なさという問題を抱えていたさとう達だが、それもこれで少しはマシになるだろう。
「話は終わりだ。私をこれ以上不快にさせる前に消えろ」
「バーサーカーさんはこの後外に出るんですか?」
「貴様らがどう動くのか決まったら伝えに戻れ。連絡先もその時渡せ。
 どの道その後私も出る。これ以上待ち惚けるのは癪に障る」
 ……呆れるほど不遜な物言いだったし待ち惚けとは何のことだか不明だったが、彼と関わる上では気にしないのが吉らしい。
「いくよ、しょーこちゃん」
「う、うん!」
 しょうこの手を取って粉塵が舞う部屋を後にするさとう。
 とりあえず、目下の問題はなんとかなった。




「やっぱり凄いわね…アンタ。私なんて息するだけでやっとだったわよ」
「叔母さんがいたからね。そうじゃなかったら私だって逃げるしかなかったよ」
 鬼舞辻無惨のマスターがよりによって叔母だったことはさとうにとって最大の幸運だった。
 あれがなければさとう達は令呪一画を無駄にして帰ることになっていたのだ。
 もちろんそれだけの損害で済まなかった可能性もある。
 因果なものだとしょうこは感じていた。
 あの時は自分とさとうの仲を終わりに導いた叔母さんが、今回は打って変わって救いの光になるとは。
「うんうん、あの無惨様を相手に一歩も引かずに交渉を持ちかけるのは凄かったなぁ。拍手してやらなくちゃだ」
 霊体化する素振りも見せず、何がそんなに愉快なのかニヤニヤ笑っている童磨が口を挟んでくる。
 しょうこは露骨にイヤそうな顔をしたがそれで察してくれる童磨ではない。
 彼はわざとらしくパチパチ手を叩いた後で、思い出したように言った。
「それにしてもさとうちゃん、俺は感動してしまったよ!
 君があのお方に言っていた……"証明してやりたいこと"っていうのは――俺達の"愛"のことだろ?」
「俺達のって言わないで」
「俺もね、君の愛を見極めてやろうと思っていたんだよ。
 これで正式に勝負が成立したってわけだね。
 君の愛か、俺の愛か。どちらが正しい本物の"愛"なのか!」
「…別に貴方に付き合ってあげたかったわけじゃないよ」
 勘違いされては困るという風にさとうは童磨へ言う。
 さとうは童磨に対して新たに哀れみの感情を覚えた。
 だが今も変わらず彼女にとって童磨は嫌悪の対象だ。
 一刻も早く自分の視界から消し去りたい、無粋でがさつな冒涜者だ。
 そしてだからこそ、彼にしたり顔で消えられては困るのである。
 それでは自分の心にいつまでも…童磨の存在が残ってしまうから。
「散々不快にさせられた分をやり返したいってだけだから。ただそれだけのつまんない意地」
 童磨はそれに対しても何やら喋っていたが重要ではないので割愛する。
 いつも通りの壊れたラジオみたいな妄言だ。
 わざわざ聞く価値もないと、さとうは思考の照準をさっさと彼からずらした。
「しょーこちゃんの意見も聞きたいな。これからどうするのがいいと思う?」
「えっ…あ、えーと……。やっぱり敵を探して回るのがいいんじゃない? 元々そういう目的だったでしょ、私達」
「ん……そうだね。やっぱりそれがいいのかな」
 流石のさとうも先刻の大立ち回りは多少緊張した。
 それが無事成功に終わった今、予定通りに動くべきかそれとも何か方針転換を行うべきか。
 思考を巡らすさとうであったが、その思考をおもむろに切り裂く声があった。

「ねぇさとうちゃん、ちょっといいかしら」
「……叔母さん。さっきはありがとうね、助かった」
「うふふ、いいのよ~。鬼舞辻くんはすっごく暴れん坊さんだから、本当に童磨くんを殺してしまうかもしれなかったし」
 まあ死んだら死んだでよかったのだが、その時は交渉の難易度が多少上がっていただろうことを思うとやはり叔母には感謝だった。
 それはそうと何の用なのか。
 再会を祝するという柄でもないだろうに――と思っているさとうに。
 叔母はいつも通りの笑顔を貼り付けたまま、天使みたいに絶望を突き付けた。


「しおちゃん、来てるわよ」


    ◆ ◆ ◆




 胸倉を掴んでいた。
 そのまま壁に押し付けていた。
 しょうこの制止も耳に入らない。
 らしくなく我を忘れながらさとうはそうしていた。
「苦しいわ、さとうちゃん」
「何処にいるの」
「うん、うん。教えてあげるから落ち着いて? お洋服が伸びちゃうわ」
 血が出るほど唇を噛み締めながら力を緩める。
 解放された叔母はけほけほと咳き込むが表情は崩れない。
 嘘だとは思わなかった。
 叔母はそういう冗談を言う人間ではない。
 嘘であってほしかった。
 童磨に指摘され、なるべく見ないようにしていたその可能性。
 ずっと目を背けていたその可能性がまさか的中してしまっていたなんて。
「昼間にね? とっても悪そうなおじさまと、ちょっとお馬鹿さんって感じの男の子が来たの」
 やや稚拙な説明だったが今は話の腰を折らない。
 さとうは黙って先を促す。
 しょうこは口も挟めず、ただ二人のやり取りを見守るしかできずにいた。
「鬼舞辻くんがその人達といろいろお話をした後で、私の閉じ込められてた部屋にも顔を出しに来てくれたのよ」
「…………」
「その時ね、男の子が言ったの。確かに"しお"って」
 おじさまも男の子もサーヴァントだったから、しおちゃんはきっとマスターね。
 あっけらかんと言う叔母の胸倉をもう一度掴みたくなった。
 その言葉の意味が分からないのかと怒鳴りかけて、それが無意味なことを思い出した。
 この女にそういうものを期待することは暖簾を腕で押すみたいなものだ。
 ひとえに、意味がない。
「まさか、そいつらに脅されて……」
「さとうちゃん」
 真っ先に思いついた可能性。
 それを思わず口にした矢先。
 叔母はさとうの唇にそっと指を当てた。
「だめよ。嘘をついたら」


「っ」
「あなたは頭のいい子だもの。分かってるでしょ?」
 ……日中この家を訪れ叔母の許に顔を出したのは"二人組のサーヴァント"だった。
 主従というのはその名の通りマスターとサーヴァントで一セットだ。
 他の聖杯戦争でどうかは知らないが少なくとも此処ではそれに例外はない。
 "悪そうなおじさま"と"男の子"はどちらもサーヴァント。
 ならば彼らとセットになるマスターが存在するはずで。
 ああでもまだ。
 可能性はゼロじゃない。
 二人の内どちらか、しおちゃんのサーヴァントの方が悪玉で彼女を利用している可能性。
 しおちゃんが含まれる三組目の主従が存在し、しおちゃん達は件の二体が含まれる主従に利用されている可能性。
「それにね、男の子が言ってたわ。
 私が"神戸しおちゃんを知ってるの?"って聞いたら教えてくれた」
 でも。
「――しおは俺のマスターだけど、って」
 松坂さとうに逃避は許されない。
 叔母が突き付けた現実は、正確無比に彼女の鋼の心を貫いた。
 さとうの心にあるただ一つのウィークポイント。
 それが神戸しお。
 ただ一人甘い、世界で唯一の愛する人。
 こうなってはもう現実から目は反らせない。


 神戸しおは、聖杯を狙ってこの戦争に加担している。
 じゃあそれは何のため?
 決まっている。
 自意識過剰と言われるかもしれないが、さとうにはそれが答えだと分かってしまう。
 それほどまでに通じ合った二人だから。
 自分の想いが一方通行の独りよがりなんかでないことを知っているから。
 だから分かる。
 神戸しおは。
 しおちゃんは――自分のために。
 愛する"さとちゃん(わたし)"のために戦ってくれているのだと。
「さとうちゃん。おばさんは何もね、あなたを追い詰めたくて教えてあげたわけじゃないのよ」
 でも冷静に考えればそれはさとうの聖杯戦争の破綻を意味しない。
 自分としおちゃんは同じ未来を目指して戦っている。
 なら協力することだってできる筈だ。
 最後に自分達だけが生き残って、そして自分が死ねばいい。
 そうすればしおちゃんは聖杯を使って願いを叶え、私達の永遠のハッピーシュガーライフを現実のものにしてくれる。


 私がしおちゃんを殺す必要もない。
 ちゃんと守ってあげることさえできれば……この世の誰より頼もしい味方が増えたと解釈することだってできるはずだ。
「しおちゃんの仲間達と鬼舞辻くんはつながってる。
 それにね? 遅れてはいるけど、もうすぐ此処に来ることになってるのよ。しおちゃん達」
 叔母が笑う。
 さとうはただ俯いていた。
 親友のしょうこですら見たことのない弱々しい姿だった。
 今此処にいる松坂さとうは破綻者などではなく、ただの誰かを想う歳相応の少女だった。
「しおちゃんに会えるのよ、さとうちゃんは」
 叔母の言葉が脳裏に反響する。
「会いたいでしょう?」
 その言葉はまるで差し伸べられた手のよう。
 差し伸べられた言葉(て)にさとうはその手を。
「……私は」


「しおちゃんには、まだ会えないよ」


 伸ばさなかった。


    ◆ ◆ ◆




「…あのさ、さとう」
 返事はない。
 ただ無言で少女は座っていた。
 廊下の壁にもたれるようにしてさとうが座って、その横にしょうこが同じく腰を下ろしている。
「私が言うのも何だし、もしかしたらアンタを怒らせちゃうかもしれないけど」
「…………」
「よかったの? あれで」
 しょうこはさとうの愛を正しいものだとは思わない。
 だって彼女の愛が向かう先はひたすらに自閉した箱庭だ。
 二人だけの世界。
 二人だけしかいない世界。
 他の誰も入れない、見ることすら能わない角砂糖のような甘い部屋。
 それが正しい愛の賜物だなどとしょうこはどうしても思えない。
 思えなかったが、しかしその一方でさとうが神戸しおという少女に向ける気持ちの強さと重さは分かってきたつもりだった。
 だからこそ問わずにはいられなかった。
 本当にあれで良かったのかと。
「びっくりしたんだよね」
「え?」
「しおちゃんって、私がいなくても歩けるんだって」
 もちろんそれは比喩だ。
 身体の動作としての歩行ではなく、人間としての歩行。
「しおちゃんだけじゃ何もできないと思ってたし、それでいいと思ってた」
 予選は一ヶ月もあったのだ。
 しおは弱い。
 吹けば飛ぶような小さな体と幼い心、無知な頭脳。
 他のマスターからすれば格好の獲物だろう。
 それなのに彼女は生き残っているという。
 この本戦まで生き残った上で仲間を得て、聖杯に向かって彼女なりの歩みを続けている。
 ほんの少し外に出ただけで辺りをきょろきょろしていたあの子が。
 自分の足で歩いて、生きていた。
 それを知った時、さとうは思った。
 此処で自分があの子を迎えに行ってしまうのはきっと違う。
「おかしいよね、しおちゃんが危ない目に遭っちゃうかもしれないのに。
 私の知らないところで死んじゃうかもしれないのに――私、嬉しいって思ったんだよ」
 自分で歩いて。
 自分で選んで。
 でも二人の愛だけは見失わないで。
 地平線の果てを目指して長い長い遠足を続けていることを知ったさとうの舌が感じ取ったのは甘さだった。
「私が今あの子を迎えに行ったら、あの子は歩くのをやめちゃうかもしれない」


 それがさとうには怖かった。
 そんなの良いことでしかない筈なのに。
 何かとても大事なものを壊してしまうような、そんな風に感じられてならなかったのだ。
「……さとう。あのね」
 さとう自身後悔しているのだろう。
 今も迷っているのだろうと伝わってきた。
 しょうこは自分が偉そうに語れる身でないことを自覚している。
 自分はさとうの喜びも苦しみも、その半分だって知らない。
 死が二人を分かつともなんてとても言えない。
 だからかけられる言葉はひどく浅い、友人としてのものでしかなかった。


「さとうのそれは、"愛"だと思うよ」
 ハッピーシュガーライフ、二人の理想。
 永遠に自閉した不純物のない甘いだけの蜜月。
 現実という火に晒された砂糖菓子はとろけて形を変えていく。
 キャラメルのように甘く、カラメルのようにほろ苦く。
 理想とは離れた筈のそれも愛だと小鳥は言う。
 その言葉に何も言い返せず、砂糖少女は自分の膝に顔を埋めるしかできなかった。

【一日目・夜/中央区・豪邸】
【松坂さとう@ハッピーシュガーライフ】
[状態]:健康、動揺
[令呪]:残り3画
[装備]:なし
[道具]:鞄
[所持金]:数千円程度
[思考・状況]
基本方針:しおちゃんと、永遠のハッピーシュガーライフを。
0:?????
1:しおちゃんとはまだ会わない。今会ったらきっと、あの子を止めてしまう。
2:どんな手を使ってでも勝ち残る。
3:しょーこちゃんとはとりあえず組む。ただし、神戸あさひを優先しようとするなら切り捨てる。
4:叔母さんとバーサーカー(鬼舞辻無惨)と同盟。
5:"愛の証明"が終わったらキャスター(童磨)を切ってバーサーカー(無惨)と再契約する。
[備考]
※飛騨しょうこと連絡先を交換しました。
※飛騨しょうこのサーヴァントが童磨の言う"雷霆の弓兵"であると当たりを付けました。
※本名不詳(松坂さとうの叔母)が聖杯戦争に参加していると当たりを付けました。

【キャスター(童磨)@鬼滅の刃】
[状態]:健康
[装備]:二対の鉄扇
[道具]:なし
[所持金]:なし
[思考・状況]
基本方針:もう一度“しのぶちゃん”に会いたい。
0:君の愛が、俺の先を行くものでないのなら。その時は俺が君の先を行くよ、さとうちゃん。
1:さあ、どうしようかな?
2:しょーこちゃんもまた愛の道を行く者なんだねぇ。くく、あはははは。
3:黒死牟殿や猗窩座殿とも会いたいなぁ
[備考]
※予選期間中にアーチャー(ガンヴォルト(オルタ))と交戦しています。さとうの目を通して、彼の魔力の気配を察知しました。
※鬼同士の情報共有の要領でマスターと感覚を共有できます。交感には互いの同意が必要ですが、さとうは索敵のために渋々受け入れています。
※本名不詳(松坂さとうの叔母)と鬼舞辻無惨が参加していると当たりを付けました。本名不詳(松坂さとうの叔母)は見ればわかると思ってます。


【飛騨しょうこ@ハッピーシュガーライフ】
[状態]:健康
[令呪]:残り2画
[装備]:なし
[道具]:鞄
[所持金]:1万円程度
[思考・状況]
基本方針:さとうを信じたい。あさひくんにお礼を言いたい。そのためにも、諦められない。
1:さとうと一緒に戦う。あの子のことは……いつか見えるその時に。
2:それはきっと"愛"だよ、さとう。
[備考]
※松坂さとうと連絡先を交換しました。

【アーチャー(ガンヴォルト(オルタ))@蒼き雷霆ガンヴォルト爪】
[状態]:健康、クードス蓄積(現在3騎分)
[装備]:ダートリーダー
[道具]:なし
[所持金]:なし
[思考・状況]
基本方針:彼女“シアン”の声を、もう一度聞きたい。
0:マスター。君が選んだのはそれなんだね。
1:マスターを支え続ける。彼女が、何を選んだとしても。
2:ライダー(カイドウ)への非常に強い危機感。
3:松坂さとうがマスターに牙を剥いた時はこの手で殺す。……なるべくやりたくない。
4:バーサーカー(鬼舞辻無惨)への強い警戒。
[備考]
※予選期間中にキャスター(童磨)と交戦しています。また予選期間中に童磨を含む2騎との交戦(OP『SWEET HURT』参照)を経験したことでクードスが蓄積されています。

【バーサーカー(鬼舞辻無惨)@鬼滅の刃】
[状態]:肉体的には健康、精神的には不快の絶頂
[装備]:なし
[道具]:なし
[所持金]:数億円(総資産)
[思考・状況]
基本方針:界聖杯を用い、自身の悲願を果たす
0:『M』からの連絡が遅いので、そろそろ連絡先だけ残して家を出たい。
1:松坂さとう達を当面利用。
2:『M』もといアーチャー達との停戦に一旦は合意する。ただし用が済めば必ず殺す。
3:マスター(さとうの叔母)への極めて激しい嫌悪と怒り。早く替えを見つけたい。
4:神戸あさひはもう使えない。何をやっているんだ貴様はふざけるなよ私の都合も考えろ
5:童磨への激しい殺意
6:他の上弦(黒死牟、猗窩座)を見つけ次第同じように呼びつける。

【本名不詳(さとうの叔母)@ハッピーシュガーライフ】
[状態]:健康
[令呪]:残り3画
[装備]:なし
[道具]:なし
[所持金]:なし
[思考・状況]
基本方針:いつもの通りに。ただ、愛を。――ああ、でも。
1:さとうちゃん、あなたはそうするのね。



※当話の時間軸は『Epic of Remnant:新宿英霊事変』よりも前になります。
※この後家を出るまでの経緯は後の書き手さんにおまかせしますが、何か問題があるようであれば対応します。



時系列順


投下順


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070:夕景イエスタデイ 飛騨しょうこ 100:紅いリリイのすべて
アーチャー(ガンヴォルト(オルタ)) 108:蒼い彼岸花のひとひら
070:夕景イエスタデイ 松坂さとう 100:紅いリリイのすべて
キャスター(童磨) 108:蒼い彼岸花のひとひら
063:まがつぼしフラグメンツ さとうの叔母 089:ブラック・ウィドワーズ(前編)
バーサーカー(鬼舞辻無惨)

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最終更新:2022年06月02日 22:55