しおがゲストルームを出て行って二十分ほど経った。
入れ替わりに死柄木が戻ってきて、部屋の中には
デンジと死柄木のみとなる。
当たり前だがそこに会話なんてあるわけもない。
デンジと死柄木とでは性格もノリもまるで違う。
デンジから見る死柄木は暗くて陰気な奴という印象だったし。
一方で死柄木から見るデンジは気の抜けた馬鹿に写っていた。
お互いにシンパシーを感じ合うようなこともない、心の中でなんとなくいけ好かなく思っている間柄。
そんな二人が緩衝材を挟むことなく同じ部屋に居合わせたならどうなるか。
「……」
「……」
会話などあるはずもない。
デンジはアニメ番組をぼ〜っと見つめている。
死柄木は何をするでもなくソファに背を委ねて黙っている。
“……気まずいな……”
これがもしも本当に何の関係もない相手だったらなんということもなかった。
だが死柄木はそもそもデンジ達の敵なのだ。
それがどういうわけか手を結んで、一時的に同じ釜の飯を食っている。
“苦手なんだよなあコイツ。な〜んか合わねえんだ”
死柄木が常に放つ鬱屈としたもの。
そのいわば負のオーラとでも呼ぶべきものがデンジはどうも苦手だった。
そんな相手と二人きり、男同士で放置されて。
気を紛らわそうにもこの時間帯のテレビアニメはお行儀のいいものばっかりで、ないよりはマシだがデンジの感性にはどうも合わない。
「つーかお前、いいのかよ」
「あ……? 何がだよ」
「お前と俺らは敵同士だろ? 敵のサーヴァントと二人きりってのは普通危ないと思うもんなんじゃねえの?」
我ながら尤もな言い分だとデンジは思う。
今の状況は例えるならば同じケージの中でハムスターと大蛇が同居しているみたいなものだ。
しかし死柄木はいつも通りの陰気な面構えのまま、鼻で笑うようなことすらせずに答えた。
「そんな精力的なタイプには見えねえよ。少なくともお前はな」
「……あっそ」
認めるのは癪だが、正直なところそれは図星だった。
デンジ自身自覚している。
自分はこの聖杯戦争という儀式に、今ひとつモチベーションを持てていない。
「お前本当にやる気あんのか?」
「あぁ? 何だよ藪から棒に」
「別に。あのガキのサーヴァントにしちゃ無欲な奴だと思っただけだよ」
無欲。
無欲、か。
デンジはその言葉を反芻し、眉間に皺を寄せて腕組みをした。
デンジは少なくとも無欲な人間ではない、筈だ。
生前の話を俎上に載せるのは不適当かもしれないが、デビルハンターとして戦っていた動機も不純そのものだった。
今だって、聖杯を手に入れた暁には受肉して現世に蘇り酒池肉林の限りを尽くそうと志しているほどだ。
つまり死柄木が口にしたデンジに対する人物評は本来であれば的外れなものということになる。
あくまで本来であれば、だが。
“あぁ……。コイツ、しおとのことを言ってんのか”
デンジも此処で彼の言葉の理由を理解した。
先刻彼がしおにうっかり本音を溢した場に彼はいなかったが、だとすればその前から察されていたのだろう。
別に踏み込まれるのが嫌というわけではないがやはりいい気はしない。
「爺さんと乳繰り合うのが嫌だからって八つ当たりすんなよ。こっちはいい迷惑だぜ」
「お前のマスターはその爺さんと組めてた方が幸せだったろうけどな」
いけ好かねえ奴だとは思っていたが、やっぱりこいつとは合わない。
刺々しい会話を交わし合いながらデンジは改めてそう思った。
ただその言葉は思いの外深くデンジの心に響いた。
しおにとって本当に必要だったサーヴァントは誰なのか。
柄にもなくそんなことに思考のリソースを割いてしまう辺り、それは彼自身どこかで考えていたことでもあるのだろう。
“まぁそりゃな。俺は馬鹿だし、別に強いサーヴァントでも多分ねぇし……”
死柄木のサーヴァント、モリアーティ。
あの策謀家がどれほど戦えるのかは分からない。
それでも相対的に見れば間違いなくデンジより優秀だろう。
しおの未熟さをカバーするのだってどう考えてもあっちに軍配が上がる筈だ。
そしてそれは何もモリアーティに限った話ではない。
この聖杯戦争を広く見渡したとしても、聖杯戦争に勝つのにもっと適したサーヴァントはごまんといよう。
“けど仕方ねぇだろ。ノれねえもんはノれねえんだから”
デンジだって聖杯は欲しい。
その点でしおとデンジの利害は一致している。
優勝出来ればしおの願いは叶うし、デンジも念願の酒池肉林を叶えられる。
腰を重くする理由なんて普通に考えたらどこにもない。
“じゃあ……俺はなんでノれてねえんだ?”
なのにどうしてこんなに腰と足が重いのか。
しおが自分の問題に向き合おうとするとうんざりした風な気持ちになるのか。
それはきっと、予選の間に散々のろけ話を聞かされたからというだけが理由じゃない筈だ。
“普段のアイツは嫌いじゃない。世間知らずなガキだとは思うけど、まぁ……いろいろ付き合ってくれるしな”
そのしおが叶えたい願いがあるという。
好きな人がいるという。
ならサーヴァントとしてそのために戦うのが筋、そんなことは分かってる。
分かっているのだが。
“けど、アイツとそういう話はしたくねえ。なんつーか…違うんだよなぁ、そういうのは”
今のデンジにはまだそのもやもやを言語化出来ない。
だから言葉にしてこれ以上死柄木に言い返すことも不可能だった。
そんなデンジの胸中を知ってか知らないでか、死柄木は更に言う。
「聖杯が欲しいんなら真面目にやれよ。宝の持ち腐れだろ」
「宝ぁ? しおのことかよ、それ」
「アイツはイカれてる。下手すりゃ本当に聖杯に辿り着くぞ」
その言葉の重みがデンジには分からない。
二人の魔王に見初められた悪の風雲児をしてこう言わしめる"可能性"。
モリアーティが死柄木の対抗馬と呼んだことの重大さが浅学な彼には未だ分かっていなかった。
ただ前半の、アイツはイカれてる……というところにだけは同意出来たが。
「自覚しろよ、お前は勝ち馬に乗ってんだ。まぁ、最後には俺が殺すんだが」
「だから腐らず真面目にやれよってか? 見かけによらず親切なんだな」
「脳味噌膿んでんのか? 一時とはいえ俺達とお前らは一蓮托生だろうが。連合(ウチ)に腑抜けは要らねえって言ってんだ」
「爺さんにおんぶに抱っこのお前が言うかぁ? それをよ」
話せば話すほど分かる。
この男とは馬が合わない。
デンジも、そして死柄木もそう思う。
「お前も爺さんも、どんだけアイツのこと買い被ってんだよ」
「事実だろ。あんな目した奴がただのガキで済まされるなら世も末だぜ。小学校の道徳の時間は倍に増やした方がいい」
神戸しおはその小さな体の内側に大きな大きな狂気を飼っている。
その狂気は愛という名を持つ。
自分以外の何もかもを塗り潰さんとする大きすぎる感情の重力。
デンジも当然それは知っていた。
何度となく彼女の口から聞いてきたことだ。
さとちゃんへ向ける愛。
さとちゃんと一緒にビルの屋上から飛び降りて、しおは死で分かてないものがこの世にあることを知った。
知ってしまった。
そして彼女は、その時知った思いを胸に……もしくは手に。
この聖杯戦争を草の根一本残さず刈り取らんとしている。
「それが買い被りだってんだよ」
だがデンジはしおを怪物だとは思っていなかった。
彼女の狂気を一番間近で見ておきながら、当の彼だけが周りの評価に付いていけていない。
「……ただのガキだろ、アイツは」
吐き捨てるようにそう言ってそっぽを向く。
これ以上お前と話す気はないという意思表示だ。
死柄木は何か言いたげにしていたが、彼も言葉を重ねる意義がないと判断したのだろう。
それ以上は何も言わず、ソファの背もたれに身を投げ出してその視線をまた虚空に向けた。
性格も価値観も感性も何一つ合わないデンジと死柄木。
英霊と人間、二人の悪魔。
彼らの会話が終わったのをちょうど見計らったように、廊下の方からたたたた、という急ぎ足の足音が聞こえてきた。
「ただいまー!」
「おう、意外と遅かったな」
「うん。おじ――えむさんとのお話が長くなっちゃって。もしかして退屈だった?」
「別に。……ていうか何だよそのえむさんって」
「これからはこう呼ぶようにって言われたの。なんだかかわいい響きだよねぇ」
ぼふん、とデンジの隣に腰を下ろすしお。
それからややあってしおは小首を傾げた。
「もしかしてけんかしてる?」
「するかよ。こんな野郎にマジになってたら俺まで陰気になっちまう」
おえ、と舌を出して言うデンジ。
「……とむらくんは?」
「同じく。バカと話す慈善活動(ボランティア)に精を出す趣味はない」
やっぱりけんかしてる、と唇を尖らすしお。
子供というのは大人の想像以上に鋭い生き物だ。
彼女もデンジと死柄木の馬の合わなさには気付いていたのだろう。
「だめでしょー、けんかしたら。仲直りしてっ」
「してねえって言ってんだろ。……それより爺さんはなんて言ってたんだよ」
「あ、そうだった! あのね、おばさんに会いに行ってもいいって!」
マジかよ。
心の中でデンジは舌打ちをした。
顔には思いきり嫌そうな色が出てしまっていたが。
「おばさん達のお引っ越しに合わせて会いに行くんだって。らいだーくんにも伝えておくといいよー、ってえむさん言ってた」
「……話は分かったけどよ。何かあっても俺を恨むなよな」
「? どうしてらいだーくんを恨むの?」
「あぁ、いや。もういいわ」
とはいえマスターは彼女だ。
いくら顔見知りらしいとはいえ、流石のデンジも一人で会わせようという気にはならない。
ましてやあのバーサーカーの危険性もある。
願わくばモリアーティがしおの頼みを断ってくれればよかったのだが、こうなってはデンジも腹を括るしかなかった。
「ありがとうね、らいだーくん」
「何だよ改まって」
「だってらいだーくん、おばさんのこと嫌いなんでしょ?」
きょとんとした顔でまた首を傾げるしお。
それを聞いたデンジは言葉に詰まった。
「まあ……そうだけどよ」
あの狂った女のことは嫌いだ。
というより、純粋に近寄りたくない。
生理的な嫌悪感というやつがそこにはある。
ただ、乗り気になれない理由の最たる所はそれじゃなかった。
彼女としおが出逢えばきっと彼女達は愛の話を繰り広げるのだろう。
その場にいる自分のことなどほっぽり出して。
しおはまた、デンジの理解出来ない世界に一歩歩みを進めるに違いない。
……それがどうにも嫌だった。
“なんて言えばいいんだ? この気持ち悪さ”
もしもデンジが。
デビルハンターとして生き、支配の悪魔を殺したその一点にのみフォーカスを当てられて召喚されていなければ。
マキマの支配から抜け出て人としての生き方を始めた以降の記憶もある状態で呼ばれていたならば。
ひょっとするとその奇妙な感覚も、容易に言語化することが出来たのかもしれない。
「あの野郎の引っ越す時間ってことは、会いに行くのは夜か?」
「たぶんね。お日さまが沈んだ頃にでもえむさんが呼びに来るんじゃないかな」
「ならそれまでう〜んとダラダラしてハゲ社長の厚意を食い潰しとくぜ。しお、ポテチ開けるぞ」
いや。
今のデンジでもその答えに辿り着くこと自体は可能だろう。
辿り着くまでの道のりが遠いだけで、既にデンジは一度それを経験している。
「あ。死柄木お前は食うなよ。俺達のポテチだからな」
「お前がマスター以下のクソガキだってことはよく分かったよ」
「そういえば私、らいだーくんのこと年上って思ったことあんまりないなぁ」
――友達が手の届かないところに行ってしまうのは、誰だって当たり前に嫌だ。
それまでで、それだけの話だった。
【豊島区・池袋/デトネラット本社ビル/一日目・夕方】
【神戸しお@ハッピーシュガーライフ】
[状態]:健康
[令呪]:残り三画
[装備]:なし
[道具]:なし
[所持金]:数千円程度
[思考・状況]
基本方針:さとちゃんとの、永遠のハッピーシュガーライフを目指す。
0:なかよくしなさい!
1:さとちゃんの叔母さんに会いに行く。
2:とむらくんとえむさん(モリアーティ)についてはとりあえず信用。えむさんといっしょにいれば賢くなれそう。
3:最後に戦うのは。とむらくんたちがいいな。
4:“お兄ちゃん”が、この先も生き延びたら―――。
※デトネラット経由で松坂(
鬼舞辻無惨)とのコンタクトを取ります。松坂家の新居の用意も兼ねて車や人員などの手配もして貰う予定です。
アーチャー(モリアーティ)が他にどの程度のサポートを用意しているかは後のリレーにお任せします。
【ライダー(デンジ)@チェンソーマン】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:なし
[所持金]:数万円(しおよりも多い)
[思考・状況]
基本方針:サーヴァントとしての仕事をする。聖杯が手に入ったら女と美味い食い物に囲まれて幸せになりたい。
0:行きたくねえなぁ……。
1:しおと共にあの女(さとうの叔母)とまた会う?
2:死柄木とジジイ(モリアーティ)は現状信用していない。特に後者。とはいえ前者もいけ好かない。
【
死柄木弔@僕のヒーローアカデミア】
[状態]:健康
[令呪]:残り三画
[装備]:なし
[道具]:なし
[所持金]:数万円程度
[思考・状況]
基本方針:界聖杯を手に入れ、全てをブッ壊す力を得る。
1:“舞台”が整う―――その時を待つ。
2:しおとの同盟は呑むが、最終的には“敵”として殺す。
3:ライダー(デンジ)は気に入らない。しおも災難だな。
◆ ◆ ◆
中央区某所の住宅街。
資産家や有名企業の関係者、果ては政治家などの富裕層が暮らす地区。
その中に紛れた一軒の豪邸の内で一人の男が画面を見つめていた。
木を隠すなら森の中の理屈で此処では豪邸であることこそが最適のカモフラージュになる。
そこに我が物顔で住まう彼は人間ではない。かつては鬼、今はサーヴァントと呼ばれる身だ。
人間としての今の名は松坂某。サーヴァントとしての真名は、鬼舞辻無惨。
全ての鬼種の始祖である無惨が今見ているのは、とあるSNSだった。
SNSなどという生前では考えられなかったハイテクノロジーにも今の無惨はしっかり順応を果たしている。
“…予想しなかった展開だな……”
SNS上で話題になっている……というより。
完全に肖像権や基本的人権を無視され、現在進行形で最悪の危険人物として拡散されている人物がいる。
現代ではSNS炎上なんてものは毎日何かしらの形で起こる日常茶飯事だが、今回のそれは度を越していた。
何しろ炎上している張本人にかけられている容疑が容疑だ。
女性のみを狙って連続で襲撃事案を起こし、現在も逃走中の未成年。
それは世間の群衆の心を掴むには十分すぎる火種だった。
少年法に対して悪感情を抱く民衆が多いのも拡散のスピードに拍車をかけたのだろう。
本当か噓かは全く定かじゃないものの、今では巷を騒がす女性失踪事件の容疑者だという話すら出ている。
“付け込む隙が生まれたと言えなくもないが…。これだけ名が知れてしまった以上、不用意に抱え込むのは愚策か”
渦中の少年の名は、
神戸あさひ。
その姓を見た瞬間に無惨はピンと来た。
こいつだ。こいつが、神戸しおの兄。
異常な愛情を抱く女達の物語に巻き込まれた哀れな少年。
無惨は当初彼を次の契約先として使おうと考えていた。
言わずもがなそれは、自分の狂ったマスターと縁を切るためだ。
“不愉快だ。私の考える方策が悉く頓挫していく”
しかしそれも今となっては望みが薄くなった。
無惨は今のマスターのことを心底嫌悪しているが、だからと言って公共の敵として追われる立場になるのはもっと御免だ。
あさひが本当に襲撃犯なのかどうか、そこは重要ではない。
真実はどうあれ彼がこうして悪目立ちしてしまった以上は、無惨の次なる契約相手としての役割を果たすには役者不足も甚だしかった。
“私の期待を裏切った屑めが。どこぞで野垂れ死んでしまえ”
――だが無惨は気付かない。
気付ける筈もないが、彼は今とても正しい判断を下した。
あさひに取り入るのを諦めたのは彼らしくない慧眼だ。
今もしも彼が、多少のリスクを了承してでもあさひを手に入れようとしていたならば。
最悪彼は破滅へと続く階段をごろごろ転げ落ちていくことになりかねなかった。
何故なら今彼の傍には……鬼舞辻無惨がその生涯で唯一恐れた怪物の如き男が控えているのだから。
“……他人の癇癪に振り回されるというのは初めての経験だ。率直に腸が煮えくり返る”
今の無惨はまさに不快の絶頂だった。
あさひのこともそうだが、それ以上に彼を苛立たせているのは他でもない自身のマスターだ。
無欲なことだけが取り柄のような女だったのにも関わらず此処に来て彼女が主張を始めた。
松坂さとうとの再会。
そんな無惨に言わせれば糞以下のどうでもいい事柄に時間を割かねばならなくなった。
ただでさえ日中出歩けない無惨にとって夜は貴重な行動可能時間だというのに、あの女の腐った脳ではそれくらいのことも分からないらしい。
“早急に手を講じなければ…。もはやこれは好悪の問題を超えている……。
あの女は腫瘍のようなものだ。維持していればいるだけ私を蝕み奈落へ誘う。
マスターなど最悪私の血を注いで軟禁しておけばそれで事足りるのだから、選り好みする意味もない”
青筋を立てながら不機嫌そうに指先で机を叩く無惨。
渦巻く激情を誤魔化すようにコーヒーを一口呷った。
その時だ。無惨の携帯端末が着信音を鳴らす。
「次から次へと……」
表示された名前を見て思わず舌打ちをする無惨。
しかしこの相手に限っては反応しないわけにもいかない。
認めるのは業腹だが、無惨の聖杯戦争を明確に前へと進めてくれる貴重な相手だ。
早ければ今夜中にも切り捨てる腹だが、今はまだ利用の段階である。そう思って我慢をする。
『君の住居の手筈が付いたよ。日が沈み次第そちらへ向かう』
「貴様は要らん。迎えの者だけ寄越せ」
『私も当初はそのつもりだったのだがね。連合(こちら)の側に君のマスターと話したいという者がいるんだ』
「……神戸しおか」
『おや、聞いていたのか。ならば話は早い』
飄々とした物言いがこの上なく鼻につく。
今目の前に通話の主……Mがいたなら無惨は間違いなく殺しにかかっていただろう。
元を辿ればこのMさえいなければ、自分が他人の人間関係に振り回されることもなかった。
『そう不機嫌にならずともいいじゃあないか。これを機に君のところの難儀な彼女も、少しはやる気を出してくれるかもしれないだろう』
「要らん。あの女が発する言動の全てが私にとっては障害だ」
『……ウ〜ン、実際会った身からするといまいち否定しづらいネ!』
無惨は確かに気難しいの域を通り越した、ある種狂的ですらある自我(エゴ)の持ち主だ。
しかしこれについて彼の落ち度と責めるのは酷である。
今話の俎上に載っている女に召喚されたなら、大半の英霊は頭を抱えるか今の無惨のように苛立ちを露わにするだろう。
そしてそれは多分、M……
ジェームズ・モリアーティをしても例外ではない筈だ。
尤も大袈裟でなく町一つを掌握出来る手腕を持つ彼に課すにはそれくらいのハンデでちょうどよかったかもしれないが……。
『まあとにかくだ。そういうことだから、苦労をかけるが彼女に話を通しておいてくれ』
「私が対面の場を利用して神戸しおを殺すとは考えないのか」
『させないさ。私を誰だと思っている?』
不愉快になって無惨は通話を切った。
千年に渡って身を隠し続け、自分の目的のため邁進してきた無惨にとって誰かの手の内で踊らねばならない状況というのは本当にストレスフルだ。
狂った要石を砕いて蜘蛛を殺し、これまで取り続けてきた遅れを取り戻さなければ。
感じる筈もない頭痛をすら覚えながら端末を置いた無惨の元に、まるで見計らったみたいにその女はやって来た。
「あのおじさまからのお電話?」
「……日没後、奴らが再び此処を訪れる。神戸しおも一緒とのことだ」
「まあ。……うふふ。しおちゃんかぁ、なんだかとても久しぶり。何を話そうかしら」
反吐が出る思いで視線を背けた。
松坂さとう。神戸しお。そしてこの狂ったマスター。
いずれも話に聞いた限りでは無惨にとっては嫌悪の対象でしかなかった。
「ありがとうね鬼舞辻くん。鬼舞辻くんのおかげで私、とてもわくわくしてるの」
「私に話しかけるな。吐き気がする」
人間を踏み台にし続け利用し続け、果てには英霊の座に登録されるまでに至った悪鬼・鬼舞辻無惨。
彼の所業を知る者が見たならなんて皮肉だとそう思うだろう。
鬼の首魁がこうまで人間に振り回され続けている。
人間にその命運の全てを握られている。
「しおちゃん。あの子の大切な人。ふふ。あの子は私に、どんな愛を見せてくれるのかしら」
……これもまた。
鬼舞辻無惨という神でも仏でも救えなかった咎人に対しての因果応報なのかもしれない。
【中央区・豪邸/一日目・夕方】
【バーサーカー(鬼舞辻無惨)@鬼滅の刃】
[状態]:肉体的には健康、精神的には不快の絶頂
[装備]:なし
[道具]:なし
[所持金]:数億円(総資産)
[思考・状況]
基本方針:界聖杯を用い、自身の悲願を果たす
0:日没を待つ
1:やむをえないが夜になったら、松坂さとうを探索する。死んでて欲しい。
2:『M』もといアーチャー達との停戦に一旦は合意する。ただし用が済めば必ず殺す。
3:マスター(さとうの叔母)への極めて激しい嫌悪と怒り。早く替えを見つけたい。
4:神戸あさひはもう使えない。何をやっているんだ貴様はふざけるなよ私の都合も考えろ
【本名不詳(さとうの叔母)@ハッピーシュガーライフ】
[状態]:健康、軟禁解除
[令呪]:残り3画
[装備]:なし
[道具]:なし
[所持金]:なし
[思考・状況]
基本方針:いつもの通りに。ただ、愛を。――ああ、でも。
0:しおちゃん。ふふ、わくわくするわ!
1:夜になったらさとうちゃんを探す。
2:それはそうと鬼舞辻くん、夜に二人っきりってデートね。
◆ ◆ ◆
受話器を置く。
バーサーカーは相変わらず難儀な人物だったが、彼の抱える重荷を知ると少しは優しい目で見れるというものだ。
神戸しおの運命もとい"松坂さとう"の叔母。
あの女はモリアーティの目から見ても明らかに狂人だった。
いわゆる作戦に組み込めない……ことはないが出来れば組み込みたくない人種だ。
無惨とはまた別なベクトルで扱いにくい人種。
それがモリアーティが彼女に対して行ったプロファイリングの結果である。
「すまないね、話の腰を折ってしまった」
「お気になさらず。不躾な訪問をしたのは拙僧の方です故」
社長室、本来このデトネラットを統括する四ツ橋力也が居するべき場所。
そこで巨大なコンピュータの前に座ったモリアーティが振り向いた先にいたのは毒々しい何者かだった。
陰陽師を思わせる装束はしかし彼に清廉さも潔白さも約束しない。
あまりにも毒々しくて、それでいて禍々しい男であった。
彼のことを一目でも見た人間で彼に対して悪の印象を抱かない者はまず居まい。
「して。返答の方は如何に?」
「地獄界曼荼羅、だったかな。私の予想を数段は超えた計画だったよ。うん、正直面食らった」
「窮極の、でございます。そこが肝ですので」
男の真名は
蘆屋道満。
もしくはアルターエゴ・リンボ。
この東京を文字通りの地獄に変えようとしている大悪である。
「そもそも君、真っ当なサーヴァントではないネ? 善悪の話じゃなく構造の話だ」
「はてさて。何のことやら分かりませぬな」
「普通のサーヴァントはね、こんな馬鹿みたいな話を大真面目に語ったりしないんだよ」
地獄界曼荼羅。
もとい、窮極の地獄界曼荼羅。
アビゲイル・ウィリアムズなる降臨者を使い聖杯戦争を終わらせる計画。
その行き着く果ては界聖杯すら通過点にした羽化、空想樹としての変容。
皆が血眼になって求める願望器をたかだか苗床程度にしか考えないその発想にはさしものモリアーティも驚いた。
だが……。
「結論から言うと協力は出来ない。というより、協力する意味がない」
「これはまた手厳しい」
「予想通り、なんて顔をして言うセリフではないね」
リンボがモリアーティの前に現れた理由。
地獄を築くための協力要請。
それはモリアーティにとって到底受け入れられる話ではなかった。
というか言葉を選ばずに言うなら、論外の話だった。
リンボは界聖杯を求めていない。
一方でモリアーティは曲がりなりにも界聖杯を求めている。
そこの違いが彼らに安易な結託を許さない。
リンボの計画がもし万が一にでも成功してしまったなら、その時絶望的な状況に立たされることになるのはモリアーティ達も同じだ。
であれば当然、手放しにこんな話に飛びつく道理はない。
「交渉相手を間違えたのが君の失敗だ。敵に塩を送るようだが、この手の話を伝えるならもっと後先を顧みない人間にするべきだった」
現代で言うところの無敵の人。
一時の衝動のままに未来を捨てられる、もしくは未来がそもそもない人間。
そんな人間であればきっと、目を輝かせて地獄界曼荼羅の礎になってくれたろう。
「そういう御方ならば既に一人確保しております。よってご心配は無用」
「おっと。思いの外抜かりないね」
「ンンン、そこはそれ。――ところで、話はそれで終わりですかな?」
「と、いうと?」
「恍けるようなお歳でもありますまい。分かっているでしょう、此処で断ればどうなるかなど」
リンボの指摘は正解だった。
此処で話を蹴れば、モリアーティは一方的にリンボから拠点を知られることになる。
それは旨くない。
陰謀を武器にする蜘蛛にとって巣を直接叩かれるのは最悪の展開だ。
そして、そのことにすら思い当たれないほどモリアーティは耄碌しているのか。
答えは当然否。モリアーティの眼鏡が、北欧にあっては叡智の結晶と称されたそれが妖しく光る。
「察しがいいネリンボ君。しかしせっかちなのは良くないぞ、今からそこを語ろうと思っていたところだ。
まず改めて言っておくが、我々敵連合は君の計画に関与しない。状況にもよるが、まぁ無駄な期待はしないが吉だ」
「……」
「だが敵対もしない。連合(われわれ)は君に対して"静観"だ」
「ふむ」
「それが利になるなら背中を押そう。しかし邪魔はしない。どうぞやりたいようにやり給え、私も君の描く地獄が現出した未来には興味がある」
リンボが窮極の地獄界曼荼羅を本当に完成させたなら確かにそれはモリアーティ及び彼の後ろに続く連合の面々にとっては窮地だろう。
しかし彼が描かんとする絵図。
その完成までの過程で起こるだろう争いと生まれる犠牲の数は、むしろモリアーティ達の利になる。
そも、連合の弱点とは何か。
モリアーティもデンジもそうだが、現状の連合はそう強大な戦力というものを持っていない。
なればこそ勝つためには他の陣営、特に抜きん出た強者たちの消耗が必要不可欠だ。
その削りの手段としてリンボの無茶苦茶な暗躍は実に理に適っている。
積極的な賛同は出来ずとも、"敵対しない"ことでやんわりと背中を押してやるには十分な旨みのある話だった。
「君が頓挫したなら。もしくは成功したなら。いずれにせよ、君の野望が行き着くところに行き着いたなら」
モリアーティは四ツ橋が出してくれたウイスキーを一口含んで笑った。
英霊に酔いなどというものは基本ないが、それでも良い酒というものは気分を良くしてくれる。
「話はまたその時だ。手を取ってあげるのも、刃を向けるのも……ね」
「――ンンンン。これはこれは……参りましたな。どうも拙僧はとんだ古狸に儲け話を持ちかけてしまったらしい」
「君に言われたくはないなァ。そのおぞましい霊基、一体どんな外法に手を出したのやら」
「いつだとて一番恐ろしいのは生きている人間と申しましょう」
「それは本当に怖いものを知らない者のセリフだよ、蘆屋道満君。
ああいや……こうして真名を突きつけてやることも、君に対しては然程意味はないのかな?」
「その通り。この身は既に、斯様な一僧の領分をとうに超えておりまするので」
悪の陰陽師。
そう聞いて真っ先に浮かぶ真名は一つだ。
モリアーティもほぼ山勘で投げただけの言葉だったが、リンボは粘つく笑みを浮かべあっさり頷いた。
「実のところ。敵に回る可能性があるのならば、一つこの居城へ手頃な呪いでもばら撒いて帰るつもりだったのですが」
リンボは神出鬼没の存在だ。
本体を潜伏させ式神で町を探り回る怪異の先駆けだ。
そんな彼がどのようにしてモリアーティの、ひいては連合の居城を突き止めたかなどは問題ではない。
重要なのは形も向きも異なる二人の悪が邂逅したその結果である。
「……いいでしょう。邪魔されないだけでよしとします」
「ところで君、先程こう言っていたね。此処に来る前に一人マスターの勧誘を行ったと」
このように、リンボとモリアーティは敵対しなかった。
モリアーティは地獄界曼荼羅の構想を積極的に支持はしないが邪魔もしない。
行動を起こすとすればそれが自分達に与える不利益が看過出来ない次元に達した時か、その逆。
そして……地獄界曼荼羅が完全に成った後である。
とはいえ、そこに例外がないわけでもなかった。
重ねて言うが、モリアーティも決してリンボの話に興味がないわけではないのだ。
聖杯戦争の進行上の観点から見た場合でも、そして個人的な怖いもの見たさの観点からも。
悪の陰陽師がその裡に思い描く地獄篇の形に興味がないと言えばそれは嘘になる。
「典型的な凡愚、社会への鬱屈、破滅的な非日常への渇望……」
「おやおや。彼に興味がおありで? お言葉ながら貴殿の眼鏡に適うような男ではありませんでしたが」
「どんな英霊を従えているのかにもよるがね、話に聞いた限りでは実に連合(うち)向きの人材だと思ったよ。
私の教え子(マスター)に会わせてみたい。ひょっとすると大きく化けるかもしれない」
次に会うことがあれば私の連絡先を渡しておいてくれ。
そう言って紙片を一枚手渡すとリンボは「物好きですな」と嗤った。
それに対しモリアーティも嗤う。
「人間の可能性をそう馬鹿にするものではないよ。
それに君の波長(いろ)を見れば察しは付く。
一度は痛い目を見たことのある口だろう? 私と同じでね」
「悪事とはうまく運ばぬもの。えぇ、それはもう何度となく痛感して来ましたとも」
どちらも積極的に言及することはしないが。
犯罪教授も美しき肉食獣も、自分の命運全てを懸けた野望を一人の少女に砕かれている。
そして彼らはお互いに目の前の男が自分と同じであることを直感していた。
星の輝きに破られた敗北者達の第二幕。
彼らにとっての聖杯戦争はひとえにそれなのだ。
「ご忠告痛み入ります。当分は胸に留めておきましょう」
紙片を僧衣の内に仕舞い。
リンボの輪郭が陽炎のように薄れていく。
別れの言葉を交わし合うほど親しい間柄でもない。
リンボが自分達の居城から消えたのを確認してから、モリアーティは小さく息を吐いた。
「やれやれ。生きた心地がしないネ全く」
……危なかったとこの老紳士にしては珍しく胸を撫で下ろした。
連合を造った黒幕であるモリアーティには分かるが、自分達の状況は実のところそれなりに薄氷である。
もう一度言うが、今の連合は戦力面では烏合の衆と呼ぶ他ない状態だ。
デンジは良くも悪くも平均的で死柄木弔はまだ未完成。
しおは論外で、自分もそれなりに戦えはするがそれでも一軍級のサーヴァントとやり合うとなれば不安が残る。
そんな発展途上の悪の組織に押しかけてくる相手としては、あのリンボは正直十分に戦力過多だった。
“綱渡りだったが、しかし結果的には我々の利になった。心臓の痛みを堪えながら詭弁を弄した甲斐があったな”
しかしそこは流石のモリアーティ。
都を恐怖の底に落とした蘆屋道満に決して劣らぬ悪の親玉。
彼はリンボとの敵対という目前の危機を正しく認識しつつ、その上でリンボを自分達に利する可能性のある原石に変えた。
その上、接触したいマスターの候補まで新たに見出だせたのだ。
リンボが動いてくれることが前提になるものの、もしもまだ見ぬ"彼"が連絡先を辿ってきたならその時は前向きに検討したいところだった。
凡人と聞けば聞こえは悪いが、彼らが非日常に対して抱く歪んだ開拓心と爆発力は時に侮れないものがある。
モリアーティはそれを経験上知っていた。
何度となく道具として使ってきた身であるから。
「さて。後は……」
彼がそう呟いた時、社長室の扉がノックされた。
数瞬あって扉の向こうから現れたのはこの部屋の本来の持ち主だ。
四ツ橋力也。デトネラット社長にしてジェームズ・モリアーティの最大の支持者。
「失礼します、M。スケプティックから連絡がありました」
「ほう」
近属友保。
コードネームは"スケプティック"。
上場企業として知られる大手IT、Feel Good Inc.の代表取締役を務める若き天才。
彼もまたモリアーティのシンパの一人だ。
この世界の真実を知らされ、しかし絶望せず解放の未来を希求する道を選んだ人間。
「貴方様の目していたターゲット。
星野アイにトランペットを接触させるとのことです」
「彼がそう決めたのなら、それなりの根拠が持てたのだろう。私は特に意見しない。彼に任せよう」
「は、承知しました。ではそのように伝えます」
「便利なものだね。監視カメラ、各種サーバー、…そしてカーナビゲーションシステム。
彼の監視の目は現代社会のありとあらゆる場所に潜んでいる。私の生きていた時代にはなかった反則技だ。
まぁ首尾よく彼女達を懐柔出来た場合は、禪院君にもしっかりと話を通さねばならないだろうが……」
モリアーティはヴィラン連合を造った黒幕だ。
だからこそ彼は連合の強さも弱さも知り尽くしている。
今の連合に一番必要なものは人員。そして戦力。
今はまだ事を起こし、聖杯戦争を制するために動くべき場面ではない。
今は――烏合の衆を軍団(レギオン)にまで鍛え上げる勧誘(スカウト)の段階だ。
しかしアイを引き入れるとなれば禪院との折衷という問題も出てこよう。
リスクとリターンを慎重に見極めて最大利益を叩き出す必要がある。
当然、並大抵の難易度ではない。しかし彼は犯罪の操り手。
犯罪卿(ジェームズ・モリアーティ)――なのだ。
「では面接の準備をしておこう。ますます忙しくなりそうだ」
嬉しい悲鳴だネ。
眼鏡の後ろに不敵な眼光を光らせてモリアーティは言った。
大蜘蛛は卵嚢の生成に勤しむ。
いずれ来る孵化の時を見据えて。
悪の旋律は、爛々と演奏開始の時を待っている。
【アーチャー(ジェームズ・モリアーティ)@Fate/Grand Order】
[状態]:健康
[装備]:超過剰武装多目的棺桶『ライヘンバッハ』@Fate/Grand Order
[道具]:なし?
[所持金]:なし
[思考・状況]
基本方針:死柄木弔の"完成"を見届ける。
0:当面は大きくは動かず、盤面を整えることに集中。死柄木弔が戦う“舞台”を作る。
1:蜘蛛は卵を産み育てるもの。連合の戦力充実に注力。
2:禪院(
伏黒甚爾)に『283プロダクション周辺への本格的な調査』を打診。必要ならば人材なども提供するし、準備が整えば攻勢に出ることも辞さない。
3:しお君とライダー(デンジ)は面白い。マスターの良い競争相手になるかもしれない。
4:"もう一匹の蜘蛛”に対する警戒と興味。真名が『モリアーティ』ではないかという疑念。
5:リンボと接触したマスター(
田中一)を連合に勧誘したい。彼の飢えは連合(我々)向きだ。
[備考]
※デトネラット社代表取締役社長、四ツ橋力也はモリアーティの傘下です。
デトネラットの他にも心求党、Feel Good Inc.、集瑛社(いずれも、@僕のヒーローアカデミア)などの団体が彼に掌握されています。
※禪院(伏黒甚爾)と協調した四ツ橋力也を通じて283プロダクションの動きをある程度把握していました。
※283プロダクションの陰に何者かが潜んでいることを確信しました。
※アルターエゴ・リンボ(蘆屋道満)から"窮極の地獄界曼荼羅"の概要を聞きました。また彼の真名も知りました。
アラフィフ「これ先に知れて本当によかったなァ〜…(クソデカ溜め息)」
◆ ◆ ◆
星野アイが取った選択肢は一度事務所に戻るというものだった。
その他にも取れる選択肢はいろいろあった。
真乃達に連絡を取る、それか接触する。
もう少し空魚に対して自分達の価値を売り込むのも手ではあっただろう。
だが何事も急ぎすぎては空回りするものだ。
アイは慌てず騒がずそして逸らず、芸能人としての責務(ロール)を果たすことを選んだ。
「ただいまー」
「アイ! お前どこほっつき歩いてた! 大変なことになってんだぞ今!」
「ごめんごめん。でも板橋の方には近寄ってないから、特に危ないこととかはなかったよ」
事務所に戻るなり社長が仁王像の如く眉間にシワを寄せてどやしつけてくる。
とはいえ予想できていた展開なので特に面食らうこともなく、いつものように受け流した。
そも、彼が心配するのも当然なのだ。
アイが外出している間に起きた板橋の大破壊。
SNSを現在進行形で炎上させている連続襲撃犯の少年。
自分の事務所の看板といってもいいアイドルが(運転手同伴とはいえ)好き勝手出歩くには、今日の東京は少々物騒すぎた。
「それに殺島さんがいるから大丈夫でしょ。あの人結構頼りになるよ?」
「あんな経歴不明の怪しい男、お前のたっての希望じゃなかったら絶対使ってないからな?」
「ま、そこは企業秘密ってことで」
「企業を持ってるのは俺なんだけど」
板橋の惨状を移動中に知った時は流石のアイも驚いた。
事件それ自体は然程の衝撃ではなかったが、問題は悲惨な報せの裏で拡散されているとある画像にあった。
爆心地となった住宅地の上空に漂う青く巨大な龍。
間違いなくサーヴァントだろうとすぐに分かったが、問題はそのサイズだ。
数百メートル、いや全長ならばそれ以上かもしれない……それほどの大きさ。
あんな奴までこの聖杯戦争に参戦していたのかと驚かずにはいられなかった。
が……少なくとも今のところは、アイにとっては他人事だ。
“化け物のペースに合わせたって仕方ないもんね。あくまで自分達のペースでじゃないと”
アイドルとしてのアイは神をも恐れぬ一番星だが。
聖杯戦争のマスターとしてのアイはちゃんと身の程を弁えている。
アイもそしてそのサーヴァントである
殺島飛露鬼も認めるところだ。
自分達は――弱い。この聖杯戦争において間違いなく下から数えたほうが早い弱小であることは。
“別に戦って勝たなくてもいい。最後に勝てばそれでいい。名誉の戦死とか、ぶっちゃけ負け犬の自己満足でしょ”
目指すのは優勝、そして界聖杯の確保だ。
であればその過程はどれだけ狡猾でも卑怯でも構わない。
そう弁えているからアイに焦りはなかった。
敵が強いのなら賢く立ち回って避ければいいのだ。
そうすればどんなに強くて恐ろしい敵だろうと、アイ達の敵を蹴散らす露払いに早変わりしてくれる。
“まぁでも、それにしたって今の状態じゃまだちょっと心細いけど”
“そうだな。アサシンの野郎がオレの不義理を水に流してくれたとしても、もう少し後ろ盾は欲しいとこだ”
目の前の社長の説教を聞き流しながら念話を交わすアイと殺島。
神戸あさひが関わるだけで損をする相手になってしまったことで彼女達の展望も多少変わった。
紙越空魚の重要性は増したし、万一に備えて彼女や真乃以外に頼れる相手のコネを新たに結びたいところだ。
そう考えているアイの心中を知るわけもない苺プロの社長。
しかし次に彼が言った言葉は、アイ達のあまり見通しのよくない先行きに一筋の光明をくれた。
「あぁ、それとだ。もうすぐこの事務所に政治家の先生が来る」
「なんで? 汚職? 枕?」
「違うわバカ。選挙が近いからな。広報役にウチのアイドルを使いたいんだと」
「結構ド直球な癒着じゃん」
政治ネタなんてオタクが嫌がる代名詞だろうに。
アイは社長の銭ゲバ根性に結構本気で引いた目を向けた。
すると彼もそれに気付き、「そんな目で見るな!」と鋭く突っ込む。
「いらっしゃったらお前も一応挨拶くらいはしてくれ。近年で議席を急激に増やしてる、今トレンドな心求党のトップなんだから」
「うさんくさ。まぁ私選挙とか一回も行ったことないけどさ」
とはいえ確かに苺プロといえば、の段階にあるアイが出迎えるのと出迎えないのとでは向こうの心証も大違いだろう。
自分の世界の彼でないとはいえ顔くらいは立ててやるかとアイはなけなしの慈悲を示すことにした。
心求党。政治に疎いアイは名前を聞いたことはなかったが、件の党はいわゆるポピュリズムを武器にして支持を伸ばした政党である。
主に党首、花畑孔腔のカリスマ性と口の上手さで成り上がった団体だ。
このままこの世界が続けば数年後には最大野党になってもおかしくない新進気鋭の軍団。
もっともこの世界の滅亡は生まれたその瞬間から既に確定しているため、特段その将来性に意味はない……本来なら。
事務所で待つこと数分。
インターホンの音が鳴り、社長が慌ただしく出て行ったのを見てアイは件の政治家が訪問してきたのを察した。
アイはアイドルとしての活動以外にはとことん興味を示さない女だ。
だから政治沙汰には疎いし、心求党などという政党の名前にはさっぱり聞き覚えがなかった。
だがその陥穽をごくごく自然に隠し通すことなど根っからのアイドルであるアイにしてみればお手の物。
社長の面子を保つためにもアイドルとしての表情を作り、やって来た心求党党首の前に出ていった――そして。
都民の人心を誘蛾灯のように引きつけるカリスマ政治家、花畑孔腔は……星野アイの姿を視界に収めるなり慇懃に一礼して、言った。
「お迎えに上がりました。星野アイさん」
「…………はい?」
「おっと…。不躾な言動をしてしまいました、どうかお許しを。
社長さんから聞いていると思いますが……私は花畑という者です。政党"心求党"の党首を務めさせていただいております」
「…えっと。その党首さんが、私に何の用ですか?」
「ははは。恍けるのはいかがなものかと。既に分かっておられるでしょうに」
「……ふーん」
え? 何? 知り合い?
とキョドっている社長をよそにアイは納得したように頷いた。
どういう手段で突き止めたのかは分からないが、この言動からしてそういうことなのだろう。
まさかこの苺プロを直接訪ねてくるような手合いがいるとは思わなかったが。
「花畑さん、マスターじゃないよね。誰の指示で私に会いに来たのか聞いたら答えてくれる?」
「"M"とだけ。とはいえ貴方も既に存在は知っている御仁だと思いますが」
「…なるほどね。こっちから探すまでもなかったか」
Mという名前、そして記号に聞き覚えはない。
だが存在は知っている筈だという物言いで察しがついた。
それはアイの方からどうにかして接触したいと考えていた相手。
空魚のサーヴァント、アサシンの言っていた協力者。
十中八九そうだろうなと当たりを付けてアイは花畑を見据えて話す。
相手が政治家だろうがなんだろうが、此処で気圧されるアイではなかった。
「こっちから聞くのもなんだけど、いいの? アサシンは怒るんじゃない? あの人、私達に不信感持ってるみたいだったし」
「Mは当然想定の上ですよ。彼の思考は常に我々の数段先にある。彼の身を案ずることは彼に対する一番の非礼です」
「ふぅん。なら、今はそれを信じてみようかな」
手間が省けた。
神戸あさひをあれほどの短時間で詰ませた人物。
それほどの社会的権力を持つ人物。"M"と呼ばれる男。
手探りで探すしかなかった彼へのパイプを予期せず手に入れたアイに、それを捨てる理由など当然なかった。
「ところでどうやって私のことを突き止めたの? 自分で言うのもなんだけど、ボロは出してなかったと思うんだけど」
「近頃の電化製品には中に盗聴の設備が埋め込まれていることがある。勿論違法ですがね」
「うわぁひっどいやり口。そっかー…それはちょっと考えてなかった手だな……」
事実上の答え合わせだ。
大方アイの乗っていた車に使われていたカーナビがそういうことを仕出かす会社製のものだったのだろう。
まだ不透明な部分の多い相手だとはいえ、彼らが積極的に自分達を潰しに来る手合いでなくてよかった。
“ねぇライダー。この人ただの
NPCだよね?”
“ああ、間違いない。魔力を全く感じねぇ”
霊体化しているライダーに念話で訊くとやはり予想通りの答えだった。
“神戸あさひを潰したのだって馬鹿なNPCを焚きつけてやったことだろ。
NPCに情報を与えることである程度動きの方向(むき)を操作できるってんなら、まぁ当然忠実な手駒(イヌ)にすることも出来るってことだ”
“…盲点だった。なるほどね……確かにそれが出来るなら、理屈の上ではどこまでも自分達の戦力を増やしていけるのか”
“オレも似たようなことは出来るが、いいとこ使い捨ての特攻隊(カミカゼ)もどきを作るくらいが限度だな”
やはり只者じゃないぜ、奴さん。
苦笑交じりの念話にアイも同意する。
初めてその働きを認知した時から思っていたことだが、東京を裏で操る黒幕じみたサーヴァントにはやはり一度接触しておくべきだ。
そうでなければ最悪、取り返しの付かない状況に追い込まれてから後悔することになりかねない。
彼らを自分の与り知らないところで敵に回し潰された神戸あさひのように。
「あ、アイ…お前さっきから何を話してるんだ? 花畑先生とどこで面識を……」
「ごめん社長。ちょっとまた出てくるね」
「そういうことですので。ご心配なく、アイさんの身の安全は我が党が全力で保証します」
何が何だかさっぱり分からないといった顔をしている社長に手を振る。
混乱するのも尤もな状況だが、彼に説明したところで何の得にもならないだろう。
アイドルを始めてからずっと世話になっている相手だ。
実験感覚で戦争に巻き込むのを寝覚め悪く感じるくらいの良心はまだアイの中にもあった。
「運転もそっちでいいの?」
「スカウトしたのは此方ですから。アイさんには優秀な運転手がいるようですが、そこの礼儀は通しますよ」
「……ふぅん」
「ああそれと。私のことは"トランペット"とお呼びください」
ホントに全部バレてるんだ。
事務所を出てあちらの用意した車に乗る。
伏魔殿へ向かう旅路は事務的な冷たさを伴い始まった。
“ライダー。いざという時すぐに逃げられるように準備だけはしといて”
“当然(モチ)だ。お前も……言いくるめられるんじゃねぇぞ? 相手は真実(マジ)のやり手みたいだからな”
“んー、多分それは大丈夫。伊達にプロの嘘つきやってないよ、私だって”
アイにとって噓は衣服で虚言は呼吸だ。
相手がどれほど人の心を弄ぶことに長けていたとしても、プロの噓つきであるアイを騙すのは決して容易ではない。
面接をするつもりなのは何もM、モリアーティに限った話ではない。
彼に見初められた側であるアイ達もまた、蜘蛛の巣の中心で待ち構える毒蜘蛛を見極めんとしていた。
【練馬区・苺プロ事務所周辺/一日目・夕方】
【星野アイ@推しの子】
[状態]:健康
[令呪]:残り三画
[装備]:なし
[道具]:なし
[所持金]:当面、生活できる程度の貯金はあり(アイドルとしての収入)
[思考・状況]
基本方針:子どもたちが待っている家に帰る。
0:トランペットに付いて行き“M”に接触する。
1:空魚ちゃん達への監視や牽制も兼ねて、真乃ちゃん達とは定期的に連絡を取る。必要があれば接触もする。
2:空魚ちゃん達との同盟を主にしつつ、真乃ちゃん達を利用。彼女達が独自に
仁科鳥子ちゃんと結託しないようにしたい。
3:アサシン(伏黒甚爾)の背後にいる“協力者”に警戒と興味。空魚達が脱出派に転じるならば、利害関係を前提に彼らへとアプローチを仕掛けてみたい。
4:あさひくん達は捨て置く。もう利用するには厄介なことになりすぎている。
[備考]
※
櫻木真乃、紙越空魚と連絡先を交換しました。
※現在『心求党』党首、花畑孔腔(トランペット)の車でデトネラット本社ビルに向かっています。
【ライダー(殺島飛露鬼)@忍者と極道】
[状態]:健康
[装備]:大型の回転式拳銃(二丁)&予備拳銃
[道具]:なし
[所持金]:なし
[思考・状況]
基本方針:アイを帰るべき家に送り届けるため、聖杯戦争に勝ち残る。
1:真乃達と空魚達の動向を注視。アイの方針に従う。
2:ガムテたちとは絶対に同盟を組めない。
3:アヴェンジャー(
デッドプール)についてはアサシンに一任。
4:“M”については現状様子見だが、警戒は怠らない
[備考]
※アサシン(伏黒甚爾)から、彼がマスターの可能性があると踏んだ芸能関係者達の顔写真を受け取っています。
現在判明しているのは櫻木真乃のみですが、他にマスターが居るかどうかについては後続の書き手さんにお任せいたします。
◆ ◆ ◆
蘆屋道満は陰陽師である。
安倍晴明に敗れこそしたが彼の術師としての才を疑う者はいなかった。
その道満が悪の神を、黒き太陽を取り込んだ結果誕生したのがこのアルターエゴ・リンボだ。
生活続命の法とまでは行かないが、式神を操縦して奸計を練ったり本体の活動と並行して自律行動させるくらいはお手の物。
そして今まさに道満はその手段に頼り、自分の野望に向け駒を進めるつつマスターの意向にも添うという並行作業をこなしていた。
“…なるほど。デトネラット、ですの。そこにサーヴァントの徒党が”
“戦力としては微弱と見受けましたが一応報告しておいた方が宜しいかと思いまして”
“この町はずいぶん蜘蛛が多いんですのね。鬱陶しいですわ”
道満は現状モリアーティと彼の連合に手出しをするつもりはない。
理由は簡単で、排除に急を要するほどの敵とは感じられなかったから。
下手に対立構造を作って手を噛まれるくらいなら確実に潰せる、野望が実った状態で初めて視界に入れても問題はないと判断した。
彼らに己を邪魔する気があるのなら話は別だったが、不干渉だというのならやはりわざわざ触りに行く意味は薄い。
とはいえマスターに報告をせず隠しておくほど彼らの肩を持ってやる理由もないので、沙都子への報告は怠らなかった。
“敢えて野放しにしておけば、あの怪物を倒す妙策でもひねり出してくれるかもしれませんわね”
沙都子としても、今すぐ潰しに行くのが妥当な相手とまでは感じられなかった。
存在を認識した主従を全て潰していてはそれこそ手が足りなくなる。
皮下病院の怪物をいつかは倒さなければならない都合、その辺は臨機応変に頭を使っていかなければ。
“話は分かりましたわ。ガムテさんへの報告も一旦保留にしておきます”
“ああそういえば。良いのですかな? 拙僧、未だそちらの方々へのお目通りは済ませておりませんが”
“どうせ近い内に顔を合わせることになりますわ。貴方がきちんと仕事をしてくれれば、そうなる筈ですもの”
野望成就に向け腐心する道満に与えられた仕事。
それは沙都子の協力相手、ガムテがそのサーヴァントの力を借りて特定したマスターの拿捕だった。
正確にはそのマスターが連れているサーヴァントの足止め役だったが。
“それと、もしもガムテさん達に会うことになったとしても”
“言われるまでもありません。拙僧の抱く野望については胸に秘めておきましょう”
“…弁えていただいてるようで何よりですわ。正直、まさかそれほど馬鹿げたことを考えてるとは思いませんでしたけど”
窮極の地獄界曼荼羅――その構想を聞かされた沙都子の率直な感想は「こいつは馬鹿なのか」だった。
界聖杯を文字通りの踏み台にして羽ばたくという本末転倒、やりたい放題の極致。
普通のマスターならば令呪を使ってでもその考えを封じていただろう。
沙都子がそれをしなかったのはひとえに彼女が帰還さえ出来れば後はどうでもいい、というスタンスのマスターだからだ。
空想樹どうこうの話には一切興味はないが、それでこの世界を抜けられるというなら反対する理由もない。
後はちゃんと頭を使って、角が立たないよう静かに勝利条件を満たしてくれさえすれば文句はなかった。
“釘を刺しておきますけど、途中で妙な方針転換をするのだけはおやめくださいましね”
“ンンンそこは抜かりなく。以前それで痛い目を見ましたから、今回はやりません”
“前に一度やったんですの……?”
頭が痛そうなマスターからの念話が耳に痛い。
しかし道満は先の敗北からしっかりと学習している。
今度は初志貫徹、当初の計画のままで勝利を掴み取るつもりだ。
それにもしも銀鍵の巫女が駄目ならその時はあの"怪物"を使えばいい。
スペアプランまでもを確保した道満は全能感すら感じながら悪の絵画を縦横無尽に描いていく。
「では、偶にはマスターのご希望に添いましょうか」
品川区の某所。
哀れにも心の割れた子供達に目を付けられた男の所在地に向かう蘆屋道満は紛れもない本体だった。
式神の戦闘能力は本体のそれに比べればやはり低い。
多少やれはするものの、確実に勝ちたいのならば本体を使うべきだ。
万一の事態があればそこで全ての野望が終わってしまうリスクはあるものの、しかし心配はしていない。
本来の蘆屋道満の規格を完全に超えたその霊基。
そこから出力される力の規模は、この聖杯戦争に参戦した全ての英霊と比べても間違いなく上位に入るそれだ。
「哀れな哀れな子供達。その苦悶にも興味はありますが……流石に時期尚早か。何しろ相手が相手。余計なつまみ食いは身を滅ぼしかねぬ」
道満が直接見たわけではないが、彼女の協力相手であるガムテの連れるサーヴァントもあの怪物に匹敵するような化物だという。
割れた子供達は嘆きと怨嗟の坩堝だ。
道満に……リンボにとっては格好の餌であり生贄羊。
適度に呪を植えて放つだけでも甘く美しい地獄を簡単に生み出せるだろうが、まだそれを楽しむには時期が早いと諦めた。
「まぁ。いつ痺れを切らしてしまうかは、拙僧自身とんと分かりませんが」
これから出会う彼らに対しても、ね。
小さく呟くと共にリンボの姿がどろりと溶けた。
場所の特定は完了、後はいつでも事を起こせる。
行動開始の号砲さえあれば、最悪の陰陽師は堕ちた戦鬼の前に顕現するだろう。
【中央区・某タワーマンション(グラス・チルドレン拠点)/一日目・夕方】
【
北条沙都子@ひぐらしのなく頃に業】
[状態]:健康、魔力消費(小)
[令呪]:残り3画
[装備]:トカレフ@現実
[道具]:トカレフの予備弾薬
[所持金]:十数万円(極道の屋敷を襲撃した際に奪ったもの)
[思考・状況]
基本方針:理想のカケラに辿り着くため界聖杯を手に入れる。
1:最悪脱出出来るならそれでも構わないが、敵は積極的に排除したい。
2:割れた子供達(グラス・チルドレン)に潜り込み利用する。皮下達との折り合いは適度に付けたい。
3:ライダー(
カイドウ)を打倒する手段を探し、いざという時確実に排除できる体制を整えたい
4:ずる賢い蜘蛛。厄介ですけど、所詮虫は虫。ですわよ?
5:リンボのプラン(地獄界曼荼羅)についてはひとまず静観。元の世界に帰れるのならそっちでもいい。
【アルタ―エゴ・リンボ(蘆屋道満/本体)@Fate/Grand Order】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:???
[所持金]:なし
[思考・状況]
基本方針:この東京に新たな地獄を具現させる。
0:地獄界曼荼羅の完成に向けて準備を進める。
1:マスタ―には当分従いましょう。今の拙僧はあの幼子の走狗なれば。
2:マスターの意向に添い本体はプロデューサーの元へ
3:式神は引き続き計画のために行動する。田中一へ再接触し連合に誘導するのも視野
4:それはそうと新たな協力者(割れた子供達)の気質も把握しておきたい
5:まさに怪物。――佳きかな、佳きかな。
6:“敵連合”は静観。あの蜘蛛に邪魔されるのは少々厄介。
[備考]
※式神を造ることは可能ですが、異星の神に仕えていた頃とは異なり消耗が大きくなっています。
※フォ―リナ―(アビゲイル・ウィリアムズ)の真名を看破しました。
※地獄界曼荼羅の第一の核としてフォーリナー(アビゲイル・ウィリアムズ)を見初めました。
彼女の再臨を進ませ、外なる神の巫女として覚醒させることを狙っています。
※式神の操縦は一度に一体が限度です。本体と並行して動かす場合は魔力の消費が更に増えます。
時系列順
投下順
最終更新:2023年02月26日 01:06