ひょんなことから女の子
I'm my sister 10
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hyon
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42 : 美人秘書(滋賀県):2007/03/17(土) 18:34:06.80 ID:P6TPsVwO0
そして九月がやってきた。
いつもと変わらぬ始業式を終え、教室に戻る生徒達。
またいつもと変わらぬ担任の科白で学期初頭恒例のホームルームが始まると、
誰もが思っていたし、実際多くの生徒にとってはそうであった。
しかしこの日、三年六組の教室だけは違っていた。
前に立つのは二人、よく知った担任と見知らぬ男子生徒。
黒板には大きく四つの漢字。
その四字の表す意味があまりにも非現実的すぎて、教室内のほぼ全員が周りの生徒とヒソヒソ話していた。
ただひとり、立花恵だけはこの男をじっと見据えていた。
黒板にはこう書かれていた。
『神代理人』
恵の反応を見た隣の席の生徒が話しかけてくる。
「ねえねえ、恵、知り合い?」
「いや…、でも…。」
間違いない、あいつは何か知っている。そんな雰囲気がある。
「もしかして惚れちゃった?」
「それはない。」
即答。あたりまえじゃない、私にはヒデがいるんだから。
とここで、ようやく転校生が重い口を開いた。
「カミシロマコトです。よろしく。」
飾り気のない挨拶を担任が補足する。
「…というわけで、彼は卒業まで一緒に勉強することになった。仲良くしてくれ。」
その間、向こうもこちらを見ている気がした。
「神代、一番後ろに空いてる机があるだろ、お前の席はあそこだ。」
無言で指示された場所へ歩き出す。
恵の前を通りかかったとき、彼は彼女だけに聞こえるように小声で言った。
「放課後、屋上へ。」
いつもと変わらぬ始業式を終え、教室に戻る生徒達。
またいつもと変わらぬ担任の科白で学期初頭恒例のホームルームが始まると、
誰もが思っていたし、実際多くの生徒にとってはそうであった。
しかしこの日、三年六組の教室だけは違っていた。
前に立つのは二人、よく知った担任と見知らぬ男子生徒。
黒板には大きく四つの漢字。
その四字の表す意味があまりにも非現実的すぎて、教室内のほぼ全員が周りの生徒とヒソヒソ話していた。
ただひとり、立花恵だけはこの男をじっと見据えていた。
黒板にはこう書かれていた。
『神代理人』
恵の反応を見た隣の席の生徒が話しかけてくる。
「ねえねえ、恵、知り合い?」
「いや…、でも…。」
間違いない、あいつは何か知っている。そんな雰囲気がある。
「もしかして惚れちゃった?」
「それはない。」
即答。あたりまえじゃない、私にはヒデがいるんだから。
とここで、ようやく転校生が重い口を開いた。
「カミシロマコトです。よろしく。」
飾り気のない挨拶を担任が補足する。
「…というわけで、彼は卒業まで一緒に勉強することになった。仲良くしてくれ。」
その間、向こうもこちらを見ている気がした。
「神代、一番後ろに空いてる机があるだろ、お前の席はあそこだ。」
無言で指示された場所へ歩き出す。
恵の前を通りかかったとき、彼は彼女だけに聞こえるように小声で言った。
「放課後、屋上へ。」
43 : 美人秘書(滋賀県):2007/03/17(土) 18:41:02.34 ID:P6TPsVwO0
「誰も来ません。正確には、誰も来れません。」
屋上からは早速練習を始めた運動部の姿が見える。多分マッキーもいるのだろう。小さくて誰が誰かまでは確認できない。
「お前がやったんだな。」
「ええ、私達が。…『正樹』は封印したはずでは?」
「これは『立花正樹』全体に関わる問題だからな。」
「なるほど。今日お話しできることはほんの一部です。ほとんど無いといっても過言ではない。
ただ、いずれあなたと正樹君には私達のお手伝いをしてもらわなくてはなりません。その時にすべてを話しましょう。」
「どういうことだ…。」
「あなた達が、あの人の子供だからです。」
「父さん…か。ということは母さんもグルなのか?」
「悪人みたいに言わないでください…いえ、あなたには申し訳ないことをしましたが。
あなたの母親は一般人です。夫の本当の姿も知らない。あなたの父親がなかなか家に帰らないのも、私達の仕事のせいです。」
「何をする団体なんだ。」
「簡単に言えば、世界のバランスを保つ…でしょうか。」
「そうか…。で、なぜ俺達をこういう風にした?」
「立花夫婦には子供が男女ひとりずつ産まれるはずでした。
しかし…あなたは知らないと思いますが、彼女はあなたを産んだことで子供を産めない体になってしまいました。」
「…どっちが本物の『正樹』なんだ?」
「例えばここに、ひとつの細胞が細胞分裂をしました。片方はその後突然変異を起こしました。さて、どちらが『元の』細胞か分かりますか?」
「いや…。」
「分かりませんよね、分からないというより区別する必要がない。
全く同じなんです。実はあなたの魂を分裂させました。生まれてからの十六年間はそのために魂を成長させていたのです。」
「せめて、教えてくれれば…。」
「すみません、それはあなたの父親にゆだねられていましたので。」
「そう。…ちょっと待てよ、そんな力があるなら母さんの病気ぐらい治せるだろ。」
「いいえ、あなたの母親は医学的には全く健康です。この場合子供を産めないというのは、胎内で魂を精製できないという意味です。」
「無理に産もうとすると?」
「流産や障害なんかが起きて、正常に成長する前に死にます。
魂を一から創るのは現在の我々には不可能ですし、魂を創れない病気も治せません。」
恵が黙りこくってしまったので、神代も何も言わないでいる。
屋上からは早速練習を始めた運動部の姿が見える。多分マッキーもいるのだろう。小さくて誰が誰かまでは確認できない。
「お前がやったんだな。」
「ええ、私達が。…『正樹』は封印したはずでは?」
「これは『立花正樹』全体に関わる問題だからな。」
「なるほど。今日お話しできることはほんの一部です。ほとんど無いといっても過言ではない。
ただ、いずれあなたと正樹君には私達のお手伝いをしてもらわなくてはなりません。その時にすべてを話しましょう。」
「どういうことだ…。」
「あなた達が、あの人の子供だからです。」
「父さん…か。ということは母さんもグルなのか?」
「悪人みたいに言わないでください…いえ、あなたには申し訳ないことをしましたが。
あなたの母親は一般人です。夫の本当の姿も知らない。あなたの父親がなかなか家に帰らないのも、私達の仕事のせいです。」
「何をする団体なんだ。」
「簡単に言えば、世界のバランスを保つ…でしょうか。」
「そうか…。で、なぜ俺達をこういう風にした?」
「立花夫婦には子供が男女ひとりずつ産まれるはずでした。
しかし…あなたは知らないと思いますが、彼女はあなたを産んだことで子供を産めない体になってしまいました。」
「…どっちが本物の『正樹』なんだ?」
「例えばここに、ひとつの細胞が細胞分裂をしました。片方はその後突然変異を起こしました。さて、どちらが『元の』細胞か分かりますか?」
「いや…。」
「分かりませんよね、分からないというより区別する必要がない。
全く同じなんです。実はあなたの魂を分裂させました。生まれてからの十六年間はそのために魂を成長させていたのです。」
「せめて、教えてくれれば…。」
「すみません、それはあなたの父親にゆだねられていましたので。」
「そう。…ちょっと待てよ、そんな力があるなら母さんの病気ぐらい治せるだろ。」
「いいえ、あなたの母親は医学的には全く健康です。この場合子供を産めないというのは、胎内で魂を精製できないという意味です。」
「無理に産もうとすると?」
「流産や障害なんかが起きて、正常に成長する前に死にます。
魂を一から創るのは現在の我々には不可能ですし、魂を創れない病気も治せません。」
恵が黙りこくってしまったので、神代も何も言わないでいる。
44 : 美人秘書(滋賀県):2007/03/17(土) 18:41:24.90 ID:P6TPsVwO0
十分ほど経った。
神代が突然口を開いた。
「あ、そうそう、野茂君がとても気にしていましたので…、
この十六年間『立花恵』なる存在はいませんでした、すべて後から記憶として植えつけたものです。」
「私にも教えてくれればよかったのに。」
「自己に関する直接的な記憶は魂を傷つける恐れがありましたので…。」
「ふうん…。」
いつの間にか恵は『恵』に戻っていた。
「では、私はこれで。」
神代が去った後、入れ違いに英雄が入ってくる。
「恵! 大丈夫?」
「別に何も無かったよ。でもなんで?」
「いや…、君が謎の転校生に呼ばれたって聞いたから…。
いろいろ探し回ったんだけど、なぜか屋上のことだけ思い出せなくて。」
「思い出せなくて?」
「ああ、ごめん。」
「いや…。」
やはり本物だったのか。と改めて思う。
「今日の勉強終わったら私の家に来て。」
「うん、でもどうして?」
「ヒデとマッキーに、今聞いたこと話しておかないと…。」
「わかった。」
神代が突然口を開いた。
「あ、そうそう、野茂君がとても気にしていましたので…、
この十六年間『立花恵』なる存在はいませんでした、すべて後から記憶として植えつけたものです。」
「私にも教えてくれればよかったのに。」
「自己に関する直接的な記憶は魂を傷つける恐れがありましたので…。」
「ふうん…。」
いつの間にか恵は『恵』に戻っていた。
「では、私はこれで。」
神代が去った後、入れ違いに英雄が入ってくる。
「恵! 大丈夫?」
「別に何も無かったよ。でもなんで?」
「いや…、君が謎の転校生に呼ばれたって聞いたから…。
いろいろ探し回ったんだけど、なぜか屋上のことだけ思い出せなくて。」
「思い出せなくて?」
「ああ、ごめん。」
「いや…。」
やはり本物だったのか。と改めて思う。
「今日の勉強終わったら私の家に来て。」
「うん、でもどうして?」
「ヒデとマッキーに、今聞いたこと話しておかないと…。」
「わかった。」
45 : 美人秘書(滋賀県):2007/03/17(土) 18:42:31.01 ID:P6TPsVwO0
「ただいま。」
部活でへとへとになったマッキーが帰ってきた。
「マッキー! ちょっと私の部屋に来て!」
「うーい。」
恵の部屋。
「かくかくしかじか、というわけです。」
「…いや、それじゃ分からない。」
実は恵は本当に「かくかくしかじか」としか言っていない。
「えー、これで伝わるんじゃないの?」
「いや、小説じゃないんだから。」
ということで、今度はまじめに話し終わった後。
「分かった。じゃあ俺は部屋に戻るから。」
と言って、マッキーは出ていった。
「…正樹君、どう思ってるのかな。」
「別に何も考えてないんじゃない? ほとんどの話がマッキーには直接関係なかったし。」
「んー…。」
「それよりヒデ…大丈夫?」
「気にしなくていいよ。」
そうは言うものの、今にも泣きそうな顔だった。
「…昔の恵のこと、教えて?」
「え?」
「このまま、いなかった、で終わらせるのが嫌なんでしょ? だから…私に恵の続きをやらせて。」
「恵…。」
「だから、知ってることは全部教えてほしいの。」
英雄は、恵に思い切り抱きついた。こうしていれば、恵に涙を見られることはないから…。
部活でへとへとになったマッキーが帰ってきた。
「マッキー! ちょっと私の部屋に来て!」
「うーい。」
恵の部屋。
「かくかくしかじか、というわけです。」
「…いや、それじゃ分からない。」
実は恵は本当に「かくかくしかじか」としか言っていない。
「えー、これで伝わるんじゃないの?」
「いや、小説じゃないんだから。」
ということで、今度はまじめに話し終わった後。
「分かった。じゃあ俺は部屋に戻るから。」
と言って、マッキーは出ていった。
「…正樹君、どう思ってるのかな。」
「別に何も考えてないんじゃない? ほとんどの話がマッキーには直接関係なかったし。」
「んー…。」
「それよりヒデ…大丈夫?」
「気にしなくていいよ。」
そうは言うものの、今にも泣きそうな顔だった。
「…昔の恵のこと、教えて?」
「え?」
「このまま、いなかった、で終わらせるのが嫌なんでしょ? だから…私に恵の続きをやらせて。」
「恵…。」
「だから、知ってることは全部教えてほしいの。」
英雄は、恵に思い切り抱きついた。こうしていれば、恵に涙を見られることはないから…。