115 名前: べっぴん(滋賀県) 2007/04/02(月) 04:45:15.85 ID:OatxLKy20
「それで例のクイズ大会優勝者とデートして意気投合したらしくって、それから付き合ってるんだって。」
「そう、それは良かった。」
イルミネーションの門をまたひとつくぐり抜ける。
「ところで成績の方はどう?」
「もう、こんな日にまで…。」
だが彼女の表情はにこやか。
「センターで実力が出せればひとつ上の大学狙えるって。」
「頑張ってきた甲斐があったよ。」
「元の志望校に戻るだけだよ。」
一瞬影がちらついた。が、すぐにさっきの笑顔。
「じゃあ、そろそろ行こっか。」
「うん。」
大きなモミの木を背に、繁華街から暗闇へと歩き出すふたり。
他愛もない話が時間の流れを加速し、あっという間に目的地に着いた。
「ただいま。って誰もいないんだけどね。」
「えっと…、おじゃまします。」
通るごとに電気を点けたり消したりしながら、最終的にたどり着いたのはモノクロを基調とした落ち着いた部屋。
ふたりはどことなく緊張しているようで、視線を合わせることなく机を飾っていく。
「メリー、クリスマス!」
クラッカーを鳴らし、乾杯、ケーキを食べる。
「おいしい。」
自分の口から出ている声なのに遠くから聞こえてくる。
これから一夜、ふたりきりで過ごす。
そう思うと彼女の心臓は壊れそうなほどだった。
自分から言い出したことなのに…。
「それで例のクイズ大会優勝者とデートして意気投合したらしくって、それから付き合ってるんだって。」
「そう、それは良かった。」
イルミネーションの門をまたひとつくぐり抜ける。
「ところで成績の方はどう?」
「もう、こんな日にまで…。」
だが彼女の表情はにこやか。
「センターで実力が出せればひとつ上の大学狙えるって。」
「頑張ってきた甲斐があったよ。」
「元の志望校に戻るだけだよ。」
一瞬影がちらついた。が、すぐにさっきの笑顔。
「じゃあ、そろそろ行こっか。」
「うん。」
大きなモミの木を背に、繁華街から暗闇へと歩き出すふたり。
他愛もない話が時間の流れを加速し、あっという間に目的地に着いた。
「ただいま。って誰もいないんだけどね。」
「えっと…、おじゃまします。」
通るごとに電気を点けたり消したりしながら、最終的にたどり着いたのはモノクロを基調とした落ち着いた部屋。
ふたりはどことなく緊張しているようで、視線を合わせることなく机を飾っていく。
「メリー、クリスマス!」
クラッカーを鳴らし、乾杯、ケーキを食べる。
「おいしい。」
自分の口から出ている声なのに遠くから聞こえてくる。
これから一夜、ふたりきりで過ごす。
そう思うと彼女の心臓は壊れそうなほどだった。
自分から言い出したことなのに…。
116 名前: べっぴん(滋賀県) 2007/04/02(月) 04:45:49.81 ID:OatxLKy20
風呂上り、だぼだぼのパジャマを着た恵が再び部屋に入ってきた。
「やっぱり大きかったみたい。」
寝間着を持ってくるのを忘れていたのだが、まさか目の前の彼氏のものを借りることになるとは思ってなかったらしい。
「ごめんね、それしかなくて。」
聞くと母親は長期出張のため、この家には男服しかないらしい。
だが、やはり問題は大きさなどではなく、英雄の服を自分の身にまとっているという状況だ。
「は、早く寝ようか。」
同じくパジャマ姿の英雄に問いかける。
そして、答えを待たず一歩ずつ近寄る。
近づくたびにこれ以上あがらないだろうと思っていた鼓動はまた一層と速くなる。
つま先とつま先がぶつかりそうな距離までやってくると、見上げてかすれた声でただ一言。
「お願い…します。」
英雄は真摯な顔でうなずくと、にっこり微笑んで、両手を恵の肩に掛け、ベッドに優しく寝かせた。
「電気、どうする?」
「あの、オレンジの…。」
「分かった。」
部屋が一気に暗くなる。ただ、単に暗くなっただけで、物体の識別は容易である。
英雄が自分の真上で、膝と肘をついて、
「本当に大丈夫?」
「うん。」
自分に言い聞かせるように返事を打つ。
英雄が、パジャマの一番上のボタンに手をかけた。
その瞬間、ある光景がフラッシュバックされて…。
「だ、大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ。」
気付いたら英雄を突き飛ばしていた。
風呂上り、だぼだぼのパジャマを着た恵が再び部屋に入ってきた。
「やっぱり大きかったみたい。」
寝間着を持ってくるのを忘れていたのだが、まさか目の前の彼氏のものを借りることになるとは思ってなかったらしい。
「ごめんね、それしかなくて。」
聞くと母親は長期出張のため、この家には男服しかないらしい。
だが、やはり問題は大きさなどではなく、英雄の服を自分の身にまとっているという状況だ。
「は、早く寝ようか。」
同じくパジャマ姿の英雄に問いかける。
そして、答えを待たず一歩ずつ近寄る。
近づくたびにこれ以上あがらないだろうと思っていた鼓動はまた一層と速くなる。
つま先とつま先がぶつかりそうな距離までやってくると、見上げてかすれた声でただ一言。
「お願い…します。」
英雄は真摯な顔でうなずくと、にっこり微笑んで、両手を恵の肩に掛け、ベッドに優しく寝かせた。
「電気、どうする?」
「あの、オレンジの…。」
「分かった。」
部屋が一気に暗くなる。ただ、単に暗くなっただけで、物体の識別は容易である。
英雄が自分の真上で、膝と肘をついて、
「本当に大丈夫?」
「うん。」
自分に言い聞かせるように返事を打つ。
英雄が、パジャマの一番上のボタンに手をかけた。
その瞬間、ある光景がフラッシュバックされて…。
「だ、大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ。」
気付いたら英雄を突き飛ばしていた。
117 名前: べっぴん(滋賀県) 2007/04/02(月) 04:46:18.69 ID:OatxLKy20
「中学校のときにね、彼女ができたんだ、初めて。
それで…、何を焦ってたんだろうね、三日目にいきなり…。
その時の彼女の泣き顔が…、忘れられなくて…。」
英雄は無言で部屋を出た。
そして布団一式を持って戻ってきた。
「今日は…、もう寝よう。」
「うん。」
「ベッドは使っていいよ。」
「うん。」
彼の言葉を噛まずに丸飲みする。
ベッドに腰掛けたまま、自分でも何を考えているのか分からない状態で…。
突然、携帯電話が鳴った。
「はい。」
「姉ちゃん?」
「ん…、ちょっと、あんた! 何こんなときに電話してるのよ!」
意外な電話に我に返った。弟も自宅で同じ状況だったはずだ。
「こっちはうまくいったよ。」
「…そう。」
「姉ちゃん。」
「ん?」
「頑張れ。」
返事を返さずに、電話を電源ごと切った。
そして、英雄のほうに向き直り、一言。
「やっぱ、やる。」
「中学校のときにね、彼女ができたんだ、初めて。
それで…、何を焦ってたんだろうね、三日目にいきなり…。
その時の彼女の泣き顔が…、忘れられなくて…。」
英雄は無言で部屋を出た。
そして布団一式を持って戻ってきた。
「今日は…、もう寝よう。」
「うん。」
「ベッドは使っていいよ。」
「うん。」
彼の言葉を噛まずに丸飲みする。
ベッドに腰掛けたまま、自分でも何を考えているのか分からない状態で…。
突然、携帯電話が鳴った。
「はい。」
「姉ちゃん?」
「ん…、ちょっと、あんた! 何こんなときに電話してるのよ!」
意外な電話に我に返った。弟も自宅で同じ状況だったはずだ。
「こっちはうまくいったよ。」
「…そう。」
「姉ちゃん。」
「ん?」
「頑張れ。」
返事を返さずに、電話を電源ごと切った。
そして、英雄のほうに向き直り、一言。
「やっぱ、やる。」
118 名前: べっぴん(滋賀県) 2007/04/02(月) 04:46:43.03 ID:OatxLKy20
今度は抵抗なく裸になることができた。
丁寧に、丁寧に互いの体を確かめ合い、そして…、
「いい?」
「うん。」
いよいよ、『それ』を『そこ』に入れようと、触れ合う瞬間…。
「や…だ…。」
再び涙がこぼれてくる。
「やっぱり今日は…。」
「ダメ!」
彼女はすがりついていた。
「多分…、最後の砦なの。
もう男に戻れないのは分かってる。
でも…、どこかにそれを認められない私がいて…。
だから…、多少強引でも…。」
「同じ間違いを繰り返すだけだ!」
初めて聞く怒鳴り声が割り込んだ。
ふたりとも肩を震わせている。
「今度は、間違いじゃない。」
「どうして、分かるの?」
既に、いつもの落ち着いた声の英雄だった。
「だって…、心から、あなたを愛しているから。」
そしてふたりは…。
今度は抵抗なく裸になることができた。
丁寧に、丁寧に互いの体を確かめ合い、そして…、
「いい?」
「うん。」
いよいよ、『それ』を『そこ』に入れようと、触れ合う瞬間…。
「や…だ…。」
再び涙がこぼれてくる。
「やっぱり今日は…。」
「ダメ!」
彼女はすがりついていた。
「多分…、最後の砦なの。
もう男に戻れないのは分かってる。
でも…、どこかにそれを認められない私がいて…。
だから…、多少強引でも…。」
「同じ間違いを繰り返すだけだ!」
初めて聞く怒鳴り声が割り込んだ。
ふたりとも肩を震わせている。
「今度は、間違いじゃない。」
「どうして、分かるの?」
既に、いつもの落ち着いた声の英雄だった。
「だって…、心から、あなたを愛しているから。」
そしてふたりは…。
はじめての感覚に、頭の中は真っ白だった。
ただ、ひとつだけ分かること、『彼』は今度こそ完全に成仏してくれたようだ。
窓の外では、太陽が頭をのぞかせていた。
ただ、ひとつだけ分かること、『彼』は今度こそ完全に成仏してくれたようだ。
窓の外では、太陽が頭をのぞかせていた。