バロン城地下1階 牢獄
「人がいるのかと思いきや、全然いないな……」
薄暗く、じめじめとしており、カビと鉄錆の臭いが混ざった臭いがするこの場所には、好んで居座る者はいない。
だが、それ故に隠れるのに向いている。
罪人たちが収監されていたはずの牢屋の奥に、鶴見川レンタロウは座っていた。
「だから言ったはずだ!別の場所へ向かえと!!」
その服の中から、彼に話しかける者がいる。
彼の同行者、写真のおやじこと吉良吉廣だ。
「うるさいな……本当にいないかどうかは……、まだ分からないじゃないですか……。」
レンタロウはザックからスパイ衛星を取り出し、発射させる。
超小型の衛星を模した監視カメラは、城内を走り回る。
かつてこの道具は、とある世界の大魔王の城に囚われている人間を探すのに使われたことがある。
バロン城のような大きな建物を探るのには極めてうってつけな道具だ。
しかし、そうした努力も空しく、小型衛星が参加者を捕らえることは無かった。
「やめておけと言ったのに……そもそもこの城の入り口が壊れているのが分かった時点で、別の場所へいくべきだったんだ!!」
「あなたってアレですよね。代替案も出さないくせに、人のやることが上手く行かなかった瞬間、『ほれ見たことか』って得意げな顔するタイプ。」
うるさく言う写真の親父をレンタロウは流している。
彼としても、獲物がやってこないのは不満だった。
橋を渡り、川を越えて遠路はるばるやってきたこの場所に、人がいないのはおかしい。
常人ならばここに隠れようと考えるが、彼はそのような心持ではない。
モタモタしていれば、自分が殺したい、汚したい相手もどんどん殺されてしまうかもしれない、ということしか考えていなかった。
すぐにこの城を抜けるか、はたまたもう少しだけ待とうか、そう考えていた所、待ちかねていた来訪者がやって来た。
??? 大広間
それは、いつかの記憶。
――――クッパ様!!
――――クッパ様 バンザイ!!
――――クッパ様 かっこいい!!
――――クッパクッパ やっぱり強い クッパ様!!
誰かが、もう覚えていない大勢の誰かが声を上げる。
――――静粛に!!今からクッパ様が、ありがた~い話をするのですじゃ!!皆の者、良く聞いておくのじゃ!!ゼーゼー……
引退まで間もないというほど、しわがれた声が響く。
隣にいたのが誰だったのか、そこにいるのは自分なのか分からない。
「今からワガハイは、全軍を率いてピーチ城へ向かう!!今日こそあのにっくき×××を倒し、ピーチ姫を我が妻とするのだ!!!」
決して止むことのない、広い城内にも響き渡る歓声。
それは、遠い遠い世界の記憶。
バロン城 入口
「神様、如何なされました?」
ぼんやりと壊れかけた城を見つめているクッパを、同行者スクィーラが呼びかける。
見た目もクッパの方が大きく、スクィーラはそのクッパを神様と呼んだが、実の所はスクィーラが主であり、クッパが従だ。
「しろ……」
「はい?この建物がどうかなされました?」
「わがはい、しろにいた。けど、このしろじゃ、ない。」
「……では神様が御殿に帰られるよう、このスクィーラ、尽力致します。」
彼がクッパ城にいた時のことを思い出したのは、すぐ目の前にあったバロン城からの連想だろうか。
だが、思い出しただけで、何かが変わったという訳ではない。
それは、もう遠い遠いものになってしまった、クッパ大王の記憶であって、クッパ大王だった何かの記憶ではないからだ。
彼が覚えているのは、ピーチ姫という最愛の女がいたということ。
やがては将来の妻にするはずだった、その女を取り戻さねばならないということ。
(一瞬正気に戻ったかと思ったが、そうではなかったか。)
クッパの異変に気が付いたスクィーラは、聊か驚くも、特に大した変貌は無いと分かり安堵した。
この変異主(ミュータント)の表情は相変わらず虚無そのもので、牙を生やした口周りだけがモゴモゴと動いている。
「では神様。この城に向かいましょう。神様の妻を攫った不届き者が、ここにいるかもしれません。」
クッパはこくりと頷き、スクィーラの後に付いて行った。
スクィーラはクッパを手駒に加えてから、彼の持ち物を探ってみた。
だが、カルシウムが含まれていそうな物は見つからなかった。
やはり他の参加者を探すなり、そのような物を調達するなりしなければならないと考え、城に入ることにした。
「神様、こちらではありません。」
勿論、正面から入るような真似はせず、どこか別の場所から入ろうと考える。
このような大きい建物は、籠城している者がいる可能性は十分にある。
そんな場所に正面から突撃するということは、どうぞ攻撃してくださいと言っているようなものだ。
かつてのクッパならば、うるさいと言って正面から突撃している所だが、借りてきた猫のように大人しくスクィーラに従う。
ガノンドロフとノコタロウの戦いの中で開けられた壁から、城内へと入る。
この城はもともと正面以外の侵入を防ぐために、周囲に堀が作られていたが、この世界ではそれが埋め立てられている。
なので、壁に穴でも開いていれば横から入ることも可能だ。
クッパは少し窮屈そうにしていたが、どうにか身体を縮めて入った。
バロン城 地下1階 牢獄
残念ながら、スクィーラの策略は意味を為さなかった。
スパイ衛星は城内を余すところなく駆け回り、城内の情報を余すところなく持ち主に伝える。
しかし、レンタロウにもレンタロウで失望することがあった。
最もそれは、ようやく獲物が来たと思ったら、醜いネズミとカメの化け物だったという、極めて自分勝手な失望だったが。
しかし、長らく獲物を見つけていなかったから、奴等を甚振り殺し、もっと醜い姿にしてやろうと意気込んだ。
モニターを見てみると、亀の怪物とネズミの怪物は2手に分かれた様だった。
「おい……まさか奴等を……。」
「そのつもりですよ。」
レンタロウは意気込み、スパイ衛星を仕舞うと牢屋のベッドの下に隠れて石ころ帽子をかぶる。
そして、肉体と霊体を分離させ、上のフロアへ向かおうとする。
片手にはダンシングダガー、もう片方の手には写真の男。
「やめろ……離せ!」
幽体に握りしめられる吉廣は、写真だけに手も足も出せずに連れて行かれる。
「あなたが俺の場所をバラすかもしれません。
良からぬことをした時に、即座にビリビリに破れることが出来るじゃないですか。」
(くそ……せめてコイツらが相打ちになってくれればいいのだが……。)
写真の姿をしているとはいえ、不死身という訳ではない。
破られたり、燃やされたりすればそのまま死んでしまうことになる。
バロン城 1階 西
「では神様。人がいるか探しましょう。」
「……。」
クッパは黙って、歩いていく。
その後ろ姿は、本当に長年生きたがゆえに目的を失っている老亀のようだった。
(だが、あんな変異主でも役に立つことはある。)
スクィーラとしては、敵を抉り出すことが目的だった。
もしもこの城に殺し合いに乗った者がいれば、クッパのように大きくて遅い相手など、即座に攻撃を仕掛けるだろう。
逆に殺し合いに乗っていなくても、クッパの図体と外見を見れば、逃げようとしたりするはずだ。
クッパという存在は、力の誇示という意味で極めて重要な交渉材料になる。
この時、スクィーラは感づいていた。
戦場を経験した者なら誰もが感じることが出来る殺意を。
だが、殺意は確かに感じているのにその出所は分からない。
何か、重要な見落としをしているような感覚を覚えた。
彼らの不運は、力など関係なしに襲ってくる相手がいるということだ。
「おらあっ!!」
「!!?」
突然、ぼんやりと空間に浮かぶ何かが、ナイフと写真を持って襲い掛かって来た。
スクィーラは持ち前のすばしっこさと戦で培った反射神経で、レンタロウの斬撃を躱す。
「な、なんだこいつは?」
反撃とばかりに毒針をケースから取り出して投げるが、幽体化したレンタロウには当たらず、突き抜けてしまう。
貴重なアタッカーと距離を離した瞬間の奇襲。
かつて東京で呪力を持った人間と戦った時にも、しでかしたミスであった。
最も、壁をすり抜けて襲ってくる相手を警戒しろと言われる方が理不尽なのだが。
「ああ……その顔、いいですね。醜い顔がもっと醜くなっている。」
「く……くそ!!」
勢いづいて、ナイフを嬉々として振り回すレンタロウ。
スクィーラは慌てて逃げようとするも、黒魔導士の服や皮膚を僅かに裂かれてしまった。
ワンサイドゲームにしか見えない戦いが広げられる。
だが、かつてスクィーラが革命を起こした人間も、予想もつかない攻撃をしてくる相手だった。
これしきの相手一人殺せずして到底優勝など望めない。
「神様!!神様!!」
とはいえ、自分ではこの男をどうにもできない以上、クッパに頼るしかない。
自分たちバケネズミの力を超越する力を持つ人間とも戦って来た彼だが、攻撃が当たらない相手など対峙したことが無かった。
クッパでも対処できるか分からないが、時間稼ぎぐらいにはなるだろうと考える。
バロン城1階 大広間
逃がすものかとスクィーラを追いかけているレンタロウ。
「ぶかに、てをだすなあ!!」
「!?」
しかし、そこに彼の傀儡と化したクッパが立ち塞がった。
「ぶかにてをだしちゃだめだ!!わがはい、つま、みつけられない!!」
大王とは思えないほど覚束ない口調で、鉄球を投げ飛ばす。
だが、その鉄球も先程スクィーラが投げた針と同様、当たることなく突き抜けていく。
壊すことが出来たのは、レンタロウの後ろにあった壁だけだ。
「無駄ですよ。」
チェーンハンマーを難なく躱したレンタロウは、鉄球が戻ってくる前にクッパ目掛けてナイフを振りかざす。
レンタロウのナイフと、クッパの爪がぶつかり合い、黒板を引っ掻いたような高音が響く。
「く……なんて力だ……けど、そんなの意味が無いんだよ!!」
いくら強い力で殴られても、強い武器で攻撃されても、幽体化している以上は全く意味が無
い。
クッパは怒りのまま腕を振り回す。
そこに思考は無い。正しいか正しくないかの分別も無い。
ただ、降りかかる火の粉は払うという昔から培ってきた意思と、恋人を救わねばならないという偽りの意志があるだけだ。
「意味が無いのが分からないのですか?」
レンタロウはナイフで、クッパの腕を切り裂く。
その傷は浅いが、太い腕にダメージを与えた。
「うがーーーーッ!!」
クッパの口から、高温のブレスが吐き出される。
例え心が壊れても、かつて得意としている技は覚えている。
長らく乗っていなくても、一度乗り方を覚えれば忘れずに済む自転車のようなものだ。
だが、炎もまた突き抜けるだけ。
レンタロウを焼き殺すことなど出来はしない。
それでも、クッパは炎を辺り一面に吐き続ける。
「バカだなあ。効くわけがないじゃないですか。」
だが、物理ダメージのみならず、炎による高温もレンタロウには通じない。
炎に満ちた空間を何もなかったかのように潜り抜け、クッパの腹をナイフで斬りつけた。
勿論、その程度の一撃でクッパは倒れることはない。
大魔王の名を冠する者だけあって、ギガスラッシュをまともに受けても倒れなかったほどだ。
ましてや、武器を持って喧嘩をしたことさえない素人のナイフなど、ほとんどダメージが無いようなものだ。
「がああああああ!!!」
突然暴れ出し、両足を踏み鳴らし、鉄球を辺り一面に振り回す。
腹を裂かれた痛みで思い出したのは、かつて緑の帽子の×××に、死の恐怖を感じさせられたこと。
まるで子供が怖い物を寄せ付けまいとおもちゃを振り回すかのように暴れるクッパ。
だが、どんな威力がある攻撃も、幽体化しているレンタロウには効かない。
いとも簡単にクッパの懐、チェーンハンマーの死角に潜り込み、クッパの胸をナイフで斬りつけた。
そして痛みに悶え、クッパはまたも暴れ続ける。
その時、レンタロウのナイフが鎖に当たり、明後日の方向に飛んでいく。
(チッ……。)
幽体離脱しているとはいえ、持っている武器にまで攻撃が及ばない訳ではない。
だが、ナイフは見えない糸で操られているかのように宙を舞い、クッパに襲い掛かって来る。
まさに、ダンシングダガーの名をあるがままにしている。
クッパは狭い通路でチェーンハンマーを振り回すが、相も変わらず壊せたのは城壁のみだ。
その時、人の頭ほどもある瓦礫が、レンタロウ目掛けて降って来た。
最も、彼はそんなものなど恐れもしない。
殴打だろうと炎だろうと瓦礫だろうと、幽体では痛くも痒くもない。
だが、こうしている間にネズミの方に逃げられると厄介だと思ったので、スクィーラを先に追いかけて殺そうとする。
そこへ、またも瓦礫が落ちて来た。
既にこの城は一度戦いがあったため、クッパが暴れたことも相まって西側が壊れ始めていたのだ。
「ま、まずいぞ!!早く逃げろ!!」
レンタロウに握られている写真の親父は、急に叫び始めた。
「問題ありませんよ。何が起ころうと俺の能力は無敵ですから。」
彼とは対照的に、涼しい顔のままのレンタロウ。
「分からんのか愚か者め!!このまま城が崩れれば、おまえの肉体も駄菓子屋で量り売りにされているスルメのようになるのだぞ!!」
ゴンゴンゴンと、城内の壁が壊れる音が何度も響く。
写真の親父はその音に負けず大声でレンタロウに怒鳴る。
彼としてはレンタロウに死んでほしく無いという気持ちは微塵も持ち合わせていないのだが、自分がこの城の生き埋めになり、吉影を助けに行けないのは忍びなかった。
「おのれ……!!クソどもが……!!」
レンタロウは初めて自分が鼻持ちならぬ状況に陥っていることに気付き、慌てて地下へと走る。
そして、その言葉を聞き逃さなかった者はレンタロウだけに非ず。
(そうか……奴の弱点は……!!)
どんな強力な能力の持ち主でも、弱点はどこかにある。
かつて彼の世界にいた呪力を持った人間は、同胞の姿をした者を殺せなかったように。
もし殺せば、戒めがその身に降りかかるように。
そして、写真の男が『肉体』と言ったことから、それがあの男の弱点なのだと気づいた。
レンタロウはクッパとスクィーラに背を向け、文字通り我が身を守りに走る。
肉体を取り戻せば無防備になるが、そんなことは考えずに階段を駆け下りる。
スクィーラには知る由も無いことだが、レンタロウは殺戮を嗜みながらも、自身の安全を第一に置く。
良く言えば慎重派、悪く言えば小心者な性格の持ち主だ。
だから小動物や同級生を殺害する時も、トイレの中や親分の説教中など、アリバイ作りが出来るタイミングでしかしてこなかった。
だから、獲物を無視して一目散に自身の肉体の下へと向かう。
(なるほど……そこか……!!)
既に城の崩壊が始まり、階段が揺れて危なっかしい。
スクィーラは態々追いかけるような真似はしなかった。
「まて!!にげるな!!」
クッパは逃げるレンタロウ目掛けて鉄球を投げる。
その一撃は彼にとって脅威ではない。だが、その余波で城の崩壊が進む方が脅威だ。
「神様。もっとここで暴れてください!!」
クッパに指示を出す。地下まで行く必要は無い。
かつて大魔王だった男は、スクィーラの指示に疑問を抱くことも無いまま、そこら中に鉄球をぶつけ、炎をまき散らす。
柱や壁や天井が、炎に包まれ、壊れていく。
自身の船や拠点に火をつけ、襲撃する敵を嵌める戦術はバケネズミ時代に、ニセミノシロモドキから学んでいた。
(これで奴は生き埋めになるはずだ……。)
このバロン城は自分の拠点ですらないので、拠点崩壊の損失を考える必要でさえない。
ただ敢えて文句を言うとするなら、巨大な城に巻き込んだのがレンタロウ1人しかいないということぐらいだ。
そう思っている内に、本格的に城の崩壊が始まった。
「神様、すぐに逃げましょう!!きっと奴は瓦礫に押しつぶされているはずです。」
「わかった!そうする!!」
スクィーラはクッパを連れ、正門から逃げ出した。
外から見ると、その崩壊の様が良く分かった。
クッパが破壊した場所は、バロン城内の一部だったが、それでもドミノ式に壊れていく。
炎が燃え広がり、崩壊が崩壊を呼び寄せる。
左の塔が倒壊し、城内の真ん中に刺さる。
既に城としての役割を半分放棄していたが、右部分を除いてバロン城は崩壊した。
「さて……あとは奴から支給品を回収するか。」
瓦礫の山へ向かうスクィーラ。
ここまで来てそれが手に入らないのは無駄骨というものだろう。
辛うじて生き残っている可能性も考え、毒針を出しておく。
その時、スクィーラの鼻孔が、何かしら嫌なものを捉えた。
レンタロウは小動物を殺していた経歴から、その服には洗っても消えぬ悪臭が染み付いており、この殺し合いで殺害した美夜子の血の臭いも付いていた。
それは、ただの悪臭に非ず、鼻が鋭い物からすれば、悪臭を何枚重ねにもしているような臭いだった。
その饐えたような死臭のおかげで、スクィーラは事なきを得たのだが。
「ひっ!!」
「ちっ、外しましたか。」
間一髪、だがダンシングダガーが可愛らしい針のケースを弾いた。
家庭科の授業中に裁縫セットを落とした時のように、針がバラバラと地面に転がる。
「は、ははは……かなり肝を冷やしましたが、畜生ごときが敵う訳が無いんですよ。」
額に汗を浮かべながらも、再び笑みを浮かべるレンタロウ。
地下牢に戻った彼は元の肉体に入ると、支給品の1つであった通り抜けフープで、地下からの脱出に成功したのだった。
「ゆるさない!!わがはい!!おまえをころす!!」
だが、レンタロウの魂は肉体に戻っている。
石ころ帽子も、バッテリーが切れて本来の役割を発揮していない。
クッパの言う通り、今が彼を殺す千載一遇のチャンスだ。
しかし、レンタロウは慌てず騒がず、高々とある道具を掲げる。
クッパが炎を吐こうとした瞬間、その炎を出せなくなった。
「くそ!!うごけない!!」
だが、レンタロウはすぐに肉体が持っていたザックから、道具を一つ出した。
みるみるうちに王の間の温度が下がり、あっという間に氷点下を越える。
クッパは炎を吐くのを諦め、レンタロウに突進しようと考えていたが、既に全身が凍てつき、動けなくなってしまった。
「本当は透明のまま、じっくり嬲って汚して殺すのが良いんですが、まあ仕方がありませんね。」
彼が使ったのは「こおりのいぶき」というアイテムだ。
辺りに絶対零度の空気を走らせ、炎の力を持った魔物にさえも威力を発揮する道具だ。
レンタロウは硬直した二人を、邪な笑みを浮かべてまじまじと見つめながら、ナイフを強く握りしめる。
念には念をと、スクィーラが落とした針とその箱を拾って回収しておく。
「まずは、大きい方が殺し甲斐がありそうなので、あなたにしましょう。」
氷の中で藻掻いているクッパの頸動脈を斬り落とそうとする。
スクィーラ一人ぐらいなら武器さえなければいつでも殺せそうなので、標的をクッパに選んだ。
「さあ、汚いカメの怪物は、どんな風に汚く表現できるかなあ!!」
ナイフを振りかざした瞬間。
「は!?」
唐突に、レンタロウの全身から力が抜けた。
口をパクパクとさせる。
なんでというつもりだった。だが、声はもう出せなかった。
頸には、奪ったはずの毒針が刺さっていた。
氷漬けにされたはずのスクィーラが、毒針でレンタロウの首筋を刺していた。
(表現の材料のクセに……!!)
ドサリとレンタロウは地面に倒れ、動かなくなる。
彼は体力そのものは人間と同じか、平均より下ぐらいだ。
猛毒の針を首筋に刺されて、生きることは出来ない。
「神様、危ない所でしたな。」
軽い凍傷は見られど、スクィーラは普通に動いている。
こおりのいぶきを受けたはずなのに、なぜ普通に動けたのか。
彼が付けていたのは、「守りの指輪」
元々持っていた道具で、氷属性を始めとする幾つかの攻撃への耐性が出来る指輪だ。
この力で、凍結状態を自分だけ防ぎ、勝手に凍り付いたと思っていたレンタロウの隙が出来るのを待っていたのだ。
また、それだけではない。
元々スクィーラは針をケースのみならず、黒魔導士の服の裏側に数本仕込んでおいたのだ。
そもそもなぜ印象的なピンク色をした箱に入れていたのかというと、それはあくまでフェイクの為だ。
そしてレンタロウはその箱と、散らばった針を奪っただけで安心してしまった。
しばらくするとクッパの周りの氷が溶け、動けるようになる。
そうしてレンタロウの支給品を集める。
ここでも残念ながらカルシウムになり得る道具は見つからなかった。
レンタロウの死体を解剖して、その骨からカルシウムを抽出するのもありかもしれないが、時間がかかりすぎる。
また、城の石材となる石灰岩にもカルシウムは含まれているので、瓦礫を起爆剤にすべきかとも考えた。
だが、この城の石材の含有物が何なのかは分からない上に、彼の見知らぬ物質という可能性も考え、瓦礫を使う考えもすぐに切り捨てた。
だが、ニトロハニーシロップに及ばないにしろ、優れた素材は見つかった。
それは、かつて自分と敵対していた人間が探していた、呪力を持った人間を殺すための兵器。
あの時は呪力を持った人間に渡ってしまったが、この武器は自分が使うべきではないかと考え、ザックに仕舞いこむ。
「ぴーち、どこだ?わがはい、ぴーち、さがす。」
「神様。ここにはおらぬようです。ですが神様の妻を攫った者がいる宛はあります。」
[鶴見川レンタロウ@無能なナナ 死亡]
[残り 28名]
【G-4 バロン城外/一日目 昼】
【クッパ@ペーパーマリオRPG】
[状態]:ダメージ(大) 凍傷 腹に刺し傷、全身の至る所に打撲、深い裂傷 両手に切り傷(応急処置済み) 精神の衰弱(大)
[装備]:チェーンハンマー @ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス
[道具]:基本支給品(名簿焼失)
[思考・状況]
基本行動方針: ぴーち、とりもどす。さらったやつら、ゆるさない
1.すくぃーらにしたがう
※ステージ7クリア後、ピカリー神殿を訪れてからの参戦です
※スクィーラの言葉により、ピーチ姫が生きていると錯覚しています。
【スクィーラ@新世界より】
[状態]:軽い凍傷 体の数か所に裂傷
[装備]:毒針セット(13(うち5本を服の中に、残りをケースに)/20) @無能なナナ 黒魔導士を模した服@現地調達 守りの指輪@Final Fantasy IV
[道具]:基本支給品×3(レンタロウ、美夜子の分)、ニトロハニーシロップ@ペーパーマリオRPG 金のカギ?@調達 ダンシングダガー@FINAL FANTASY Ⅳ オチェアーノの剣@ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち、ゾンビキラー@ドラゴンクエストVII、スパイ衛星@ドラえもん のび太の魔界大冒険 サイコ・バスター@新世界より こおりのいぶき@ペーパーマリオRPG 通り抜けフープ@ドラえもん のび太の魔界大冒険 クッパの支給品1~2
[思考・状況]
基本行動方針:人間に奉仕し、その裏で参加者を殺す。
1:どこへ向かうべきか?
2:クッパを操る
3:ニトロハニーシロップで爆弾を作る。その為にカルシウムになり得るものを調達する。
4:朝比奈覚は危険人物として吹聴する。また、彼を倒せそうな参加者を仕向ける
5:金のカギを爆薬として使うべきか?
6:サイコバスター。どこで使うべきか。
7:優勝し、バケネズミの王国を作るように、願いをかなえてもらう
※G-6 バロン城が一部分を除いて倒壊しました。
「吉影!!吉影!!」
城が倒壊する寸前、いち早く写真の親父は逃げおおせることが出来た。
折角レンタロウから解放されたので、そのまま空を飛んでスクィーラからもクッパからも逃げる。
サイコ・バスターの回収が出来なかったのは残念だったが、それは諦めて息子を探すことにした。
【写真のおやじ@ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない】
[状態]:スクィーラとクッパに対する恐怖(小)
[思考・状況]
基本行動方針: 吉影を探して守る
【守りの指輪@Final Fantasy IV】
スクィーラに支給された指輪。
装備すると防御力・魔法防御が上がるだけではなく、氷、雷。炎属性の耐性が上がる。
【こおりのいぶき@ペーパーマリオRPG】
美夜子に支給されたアイテム。使うと周囲に吹雪をまき散らし、凍結状態にする。
もし相手が氷属性を吸収する力、あるいは装備があれば回復してしまう。
【通り抜けフープ@ドラえもん のび太の魔界大冒険】
鶴見川レンタロウに支給されたひみつ道具。
壁に付けると、通り抜けることが出来る。大長編では牢獄から美夜子たちを救うのにのび太が使った。
原作では地面に置いて落とし穴にすることも出来たが、本ロワでは床や壁、天井などにしか使えない。
最終更新:2022年07月03日 10:08