「ああ、やっぱり異世界は素晴らしいなぁ。荷物から女の子が出てくるなんて」
ヤマダは日本人である。
パンツ丸出しM字開脚で荷物から転がり出た少女を見て、出てきた感想はまず異常事態を肯定する言葉だった。
「厚着のコートから延びる白い足! それを包む白くローライズの紐パン! 赤身を帯びたお尻! 合掌礼拝の合掌地帯!」
おまわりさん、コイツです! と赤い少女は叫びたくなったが、まずは自らの下半身を隠す事に専念した。
手荷物の金具に引っかかったスカートの裾を開放し、絡まったブーツの紐を解いて不本意なM字開脚から足をそろえた戻した。
非常に事務的な動きであった。羞恥心を極力ださず、ヤマダを興奮させない作戦であるが、その配慮を無視して、ヤマダは被り付きで眺めている。
ゲートから離れ、人が少なくなった裏通りとはいえ、誰かがみたら官吏への通報は逃れられない状況である。
リンゴのように真っ赤そまる少女の頬。見とれるヤマダを見下ろし、パンモロは無かったということにする決意で、自らの名を名乗る。
「私は執行者! 名はイスティ・イスティス・ムス・ティス・ント・エルント!」
「……ウル・ラピュタ?」
「私をどっかの王族にするな!」
手荷物に紛れていたラップの芯を拾い、ヤマダの後頭部に激しい突っ込みをいれる。
謎の少女もボーイミーツガール冒険活劇映画を見ているようだ。
「コンタクトがぁ! コンタクトがぁ!」
視力を失って彷徨う悪役のごとく、ヤマダはうろたえて足元の這いつくばった。
「いい気味さ。いっそ、私の……ゴニョゴニョ……の記憶も叩きだしてくれよう!」
「小旗さん! ここです!」
騒ぎを聞きつけたのか、近くの住人が班軍の番上を呼んだようだ。小旗となると十人隊長である。
十人の手勢で来る可能性があった。
「ええい、面倒さ! こい、ヤマダ!」
「……え? なんでボクの名前を! ああ、これは運命なんだ! こんにちはガール。さよならコンタンクト! ウェルカムレディ!」
イスティは混乱するヤマダの袖を引き、一目散に駆け出した。
どこへでも偏在できる彼女でも、誰かを連れて違う場所に存在することはできない。そういうふうになってしまった。
おいしそうな香りを漂わせる屋台の合間をぬけ、二人は上手く番上の追撃を振り切ることができた。
イスティはもちろん、ヤマダの息もさほど切れていない。大荷物を抱えているにも関わらず。
ヤマダは見かけとは違い、身体を鍛えているようだ。
「イスタン、ハァハァ」
違う意味で息が切れ始めた。
素足に縋りつくヤマダを蹴り飛ばし、鼻先で擦り付けられ偏った大事な所を覆う布を、それとなく気づかれないように直した。
正気に戻ったヤマダは、予備として携帯していたメガネを取り出し、改めてイスティを観察した。
脳裏に浮かぶはM字開脚と柔らかく華奢な足。そして鼻腔に残るイスティの……
迷わずイスティは、ラップの芯で水月を突いた。
「ゥヴァルス!」
ヤマダの体は九の字折れた。
しかし、orzは、慣用句でも使われる九があるんだから本来、いらなかったよな。
o九
〇九……頭でけーな、おい。
閑話休題
「キー! こいつ最低!」
クールな面持ちをかなぐり捨てて、イスティはヤマダへの嫌悪感を露にした。
「……あ、狐だ」
身悶えていたヤマダは、イスティの股間越しに周囲の人々の姿を捉えた。ちなみにパンツはちゃんと直ってない。
ここにいたって、ヤマダは大延国にいる住人の正しい姿を理解した。
こいつは大物かもしれない。
つづぬ…いや、つづく
volti subito!
- 執行者の威厳もヘチマもなくなっちゃったイスティと真性ロリのヤマダの明日はどっちだ -- (名無しさん) 2012-10-30 21:02:53
- ロリコンなのに気持ちがいいキャラが面白いですね。荷物からちょこんと顔を出したイスティとか想像して和みました -- (ROM) 2013-03-03 19:25:11
最終更新:2013年04月02日 12:03