地球には未だ発見されていない無数の植物があり、またそれと同じように異世界にも無数の植物が存在している。
そして、我々人類が長い年月の間に様々な植物の有用性や害を理解し利用してきたように異世界の人々もまた同じように有益・有害な様々な植物を利用してきた。
本著では私がこの10年で
エリスタリアで記録した特異な性質をもつ植物を紹介していこうと思う。
【カダイア】 主な生育地:エリスタリア火山地帯周辺
別名「爆炎果」と呼ばれるエリスタリアの火山地帯周辺に自生している植物である。
動植物に食べられないようにするために極めて硬質な殻で種子を覆う性質をもっているが、困ったことにあまりに固すぎて中の種子が十分に熟しても殻が割れることがない
では、どうやって殻を割って中の種子を撒くかと言えば火の精霊を利用するのである。
内部の種子が十分に熟すと殻の外側は鮮やかな赤に変色し、さらに火の精霊を惹きつける性質をもつ模様が浮かび上がる
これによって惹きつけられた火の精霊は次々と殻の中に入り込んでいく
こうして殻の内部はたちまち火の精霊で満員となり、やがてその内部圧力に耐えられなくなって殻が破裂するのである。
破裂と同時に内部に押し込まれてストレスをため込んだ火精霊が一斉に火炎を撒き散らし、撒いた種が他の植物に生育を阻害されないように焼き尽くしてしまう。
エリスタリアの火山付近で高温で焼かれた場所を発見したら早急にその場から離れたほうがいいだろう
余談ではあるが基本的に火を嫌う傾向がある
エルフの中でダークエルフだけはこのカダイアの実を時に焼夷手榴弾のように使うことがある。
【吸精樹】 主な生育地:不明
これについては未だ多くの謎がある植物であるということをまずは述べておかなければならない。
初期のエリスタリア調査の際に十数枚の写真が撮影され、それを記録したカメラが回収されたという経緯がある。
カメラが回収された地点から推測してこの植物が生育しているのは夏の森の我々が未だ調査することを許されない深部のどこかであると思われる。
カメラに残された写真には、この植物はまるで軟体動物のような触手状の枝を持ち、極めて肥大化した幹を有していることが記録されていた。
さらにこの植物はエルフを捕獲するとその生殖器官に枝を潜り込ませるなどをしている写真もあったが、それが何のための行為であるかは謎である。
しかし、この植物に捕獲されたエルフは危険を感じているような反応はなく、むしろ恍惚とした表情をしていたのが実に印象的だった。
これらのことを私は以前に親しくなったエルフに尋ねたことがあったが、「吸精樹」というこの植物の名前らしいことだけしか応えてはくれなかった。
【コチート】 主な生育地:エリスタリア寒冷地帯
別名「針凍根」とも呼ばれるエリスタリア寒冷地に自生する特殊な植物である。
種子が発芽する際に周囲を極低温にする性質を持ち、一粒の種子で50mプールが底まで凍りつくこともあるという
その特殊で危険な習性のため扱いが難しく、また自生地からの持ち出しは極めて厳重に現地のダークエルフによって警備されているため難しい。
その希少性から
ラ・ムールなどではこのコチートの種子は驚くべき高値で取引され、その利用方法は製氷などに用いられている。
精霊の力を利用した製氷技術もあるがコチートの種一粒で大量の氷を一気に作ることができるということがその理由である。
【ヒメユリ】 主な生育地:エリスタリア森林地帯
地球のヒメユリによく似た形をしている上に現地でもほぼ同じニュアンスでそう呼ばれているという、なんとも不思議な偶然をもつ植物である。
ただ似ているのは形状だけで大きさもその習性もかなり異なっている。
ヒメユリの花弁はかなり大きなもので中には甘い香りのする粘液で満たされている。
さらに花弁の奥にある花壷と呼ばれる部位にはこの粘液が貯めこまれている。
この粘液は様々な薬効効果があり、日焼け防止や体の熱冷ましなどの他には性交渉の際にスムーズに行うための潤滑液としても用いられる。
【プーフ】 主な生育地 エリスタリア森林地帯
別名「家泡」とも呼ばれるキノコである。
通常は中空状の大人が数人中に入って休息することができるほどの巨大なキノコである
拳大の菌株に水をかけるとみるみる膨れ上がり2時間ほどでテントのように利用することができるほどの大きさになる。
菌株と水さえあれば何度でも利用できるため冒険者や旅人に重宝され、異世界での旅の経験を重ねた地球人旅行者の中にも愛好する者は多いという。
内部はフカフカとしていて実に寝心地が良く、こうしたことは森の獣を内部に誘い込み体に胞子を付着させて遠方に拡散するためにこうした習性を得たと考えられる。
食用としては適さず食感はまるでスポンジか発砲スチロールを食べているかのようで味もないので食べるものがなくても口にすることはおすすめできない。
【マヌガン】 主な生育地 エリスタリア温暖地域
別名「肉の実」と呼ばれるきわめて栄養価の高い果実が実る樹木である。
アボガドのような植物性油分を豊富に含んだ果実が実り、これを火であぶるとまるで肉のような食味になる。
またこの実から絞り出したマヌガンオイルは食用油や照明用または血止めや保湿などの薬効も高く食用や薬用として集落には必ずと言っていいほど植えられている。
【ルーレン】 主な生育地:エリスタリア大森林地帯
別名「夜光花」とも呼ばれる真っ白くランプシェードのように膨らんだ花弁を持ち、花弁内部に光精霊を集め、その光と甘い蜜で夜行性の虫を集め花粉を運ばせるとい習性をもつ花である。
世界各地に亜種や変種が多く分布し、エリスタリアにはこの種で最も巨大なものが自生し、夜間の光量は白熱電球の照度に相当するものとなる場合もある。
花弁は鈴なりに咲き常にいくつかの花弁が開くようになっているため、自生している株を持ち帰り鉢植えにして育て夜間の照明として利用されることの多い有益な植物であるが、ルーレンの白い樹液には麻痺性の毒が含まれているため取扱いには注意してほしい。
- “あったら面白いな”という要素が詰まっている。 背景も説得力があっていつでも使える設定になっているのが素晴らしい -- (名無しさん) 2013-04-04 02:22:43
- マヌガンの樹が家に欲しい!植物ごとの特徴がちゃんと説明されててほーと頷くばかりだ -- (とっしー) 2013-04-05 21:53:18
- エリスタリアが飛び抜けているだけで他の国は案外普通の植物だったり? -- (とっしー) 2013-04-13 00:03:32
- 読んでて持ったけど 何も特殊な機能を持たない植物 というものがなさそうなエリスタリア -- (名無しさん) 2013-10-24 22:43:02
- 珍しさと生態系の仕組みがちゃんとできているのが面白くて異世界にありそうな感じがよくできていました。精霊との共生は異世界の動植物に広くありそう。エリスタリアは世界樹の国ですし便利な植物はどんどん生み出されていそうですね -- (名無しさん) 2016-05-29 18:29:12
最終更新:2013年04月21日 13:08