ラ・ムールを横切る大運河、それに沿う街道にあるガンカタイ村。
北の
クルスベルグより運河で運ばれる石材鉱材を仕分けするなどで賑わう村である。
「アンタも難儀な取引をしちまったな」
耳まで届く口の端をにまりと吊り上げた酒場の店主は岩肌の蜥蜴人。
商人から頼まれたチラシを品書きと隣に貼り付けた。
「いやー、助かったよ店主。
人の集まる場所にチラシ一枚貼ってもらうまでは延々と話を広めないといけなくってね。」
長毛種の猫人商人は安堵の息を適度に冷えた甘茶と共に胃袋へ流し込んだ。
代金無用ですぐに承諾したが…
“双頭貿易都に着くまでの間、立ち寄った町などで人の集まる場所に
「ディセト・カリマでどーんと物資と人材を募集中!」のチラシを貼ってもらう
貼ってもらうまでは先々で会話する度にチラシの内容を語って欲しい”
これはとんでも無い取引…だろ! 手間がかかりすぎるだろ! 人間の女、侮れん!
…しかし商人として取引を反故にする事はできねーよな
やっと村を出る事が出来る商人は、今回の取引のシステムや効果をあれこれ検討し
サバーニャ商会に持って行けば役付きで入れるんじゃないかと想像を膨らませていた。
「まぁ、今回の苦労もこの“のぎす”をレシエ卿に持って行けば報われるだろう
俺の鑑定眼力が一目見ただけでビビっときた品だしな!」
── 戻って酒場
「中々良さそうな話じゃない?」
「そうだな。予定が変わって港から運搬船が戻るまで何月か遅れるという風精の報も来ていたしな。
ここからディセトまでなら早蜥蜴で一日二日で着くだろうし。 行ってみるか」
凡そ“硬い物”の扱いには一家言ある土竜人は、鉱業などで幅広く活躍している。
酒場のチラシを見てディセト行きを決めたのは、その土竜人の夫婦。
周囲を見れば、同じ様にチラシに触発されたらしき人々の動きが慌しくなっている。
「あたいらは物専門で人を載せる商売はしてないんだけど…
ま、今回の荷の行き先もディセトって街だから良いよ。乗っていきな!」
人と獣の声が行き交う荷場。
“雷龍運送”の幟を背に差した走龍を背に、
所々破り解れた作業服を着た大きな体と同じく大きな胸を腕組で支える人間の女性は応える。
ディセトまで乗せて欲しいという土竜人の願いは承諾された。
「辰乃、ここでの荷は降ろし終えた。 出発出来る」
腰に携帯金庫をぶら提げてのっしのっしとやって来たのは破れた配送帽を被った太鼓腹の
オーク。
「ご苦労様。 荷を縛りなおすとすぐ出発だから用意はすぐに頼むよ。
あんた!もう一仕事だよ!」
走龍の牽く砂ゾリにうず高く積まれた両手で抱える程の大きさの卵。
「主、この卵は一体?」
「あぁ、もうちょっと待っておくれ。座る場所を開けるからね」
「卵、
マセ・バズークからの荷物。 ディセト・カリマに届ける」
「あー、卵の事かい? 見るからに危険そうな荷じゃない限りは詮索しないのがあたいらのやり方だしね。
実の所、何の卵かは分からないだけどもさ、礼金の高さと蟲殻素材の龍護具に釣られちゃったのよね。
“ナノカイナイニディセトノアヘンクツニハコンデホシイ”としか繰り返さない依頼者の蟲人はちょっと不気味だったけどさ」
程無くして荷は整理し直され、あの後更に増えた搭乗客を乗せる。
「さぁ、行くよ! いっち、にっの、サンダーッッ!!」
「ダーーーっっ!!」
辰乃とオークのあげた声に走龍が反応し、足元の砂を巻き上げる咆哮をあげる。
村を出た一向はすぐに街道へ出ると、更に速度を上げた。
「ディセト・カリマ… 何やら面白そうな“匂い”がするねぇ!」
長毛種の猫商人さんは
【傀儡候女の日常】よりシェアさせていただきました
ラ・ムールの地図を使ってみたいとふと思いました
- ディセトカリマにどんどん人が集まって何をやるのか先に期待。名も無き猫商人のシェアで思わずスレの初期を思い出した -- (とっしー) 2013-04-11 22:25:07
- 仕事と労働者と雇用という体系は地球も異世界も同じなのだろうと思いました。しかし労働者としての種族の多さから仕事の配分や給料査定では異世界の方が一歩先に進んでいるのでしょうか -- (名無しさん) 2016-06-05 19:42:43
最終更新:2013年04月11日 01:04