「主よ、武具屋に着きました」
「なーんで端っこにあンのよ! しかも苦手な星教会の臭いを横切って…たまんねェな!」
狗人の戦士を先頭に、武具店“髭真剣”の前に
ケンタウロスの騎士団がやってくる。
服装から防具まで、身につけているあらゆるが戦傷など刻み込まれている。
「おォい!邪魔するぜー!」
石造りの押し戸を勢い良く開いた赤毛のケンタウロス。
店内は木と鋲が織り成す重厚な壁に囲まれ、並んである武具と共に空気を重くする。
[イラッシャイ イイイマセ ナニヲヲヲヲモトメニ ……]
立て掛けてあるとばかり思っていた全身鎧?何故か作業服の前垂れを着ているそれが
ガタガタと店の入り口の方へ向きを取り、ぎこちない低い声の途中で止まった。
「あーやっぱり途中で止まったかー。 精霊比重を上げると応対の設定が上手く起動しないな」
金床を打つ音が止んですぐに、店の奥から若い
ドワーフが苦虫を潰した様な顔でやって来た。
『何だよ文句言うなよ!こんな重たい鎧、動かすだけで精一杯なんだからなー!
そっちが作ったルーンが粗末だから途中で止まったんだぞー』
冑からひょっこり顔を出した土精霊が大いにぼやく。
「店主よ、賑やかなのは結構ですが、品の方を見せてもらってもよろしいですか?」
丁寧な物言いでドワーフと精霊の間に入った狗人に、鎧の中から飛び出し降りた土精霊が
どうぞどうぞと店内へ案内していく。
「ざっと見ても中々良さげなモノが多いじゃないか? こりゃ悩ンじまうなぁ」
「客人、今身に着けている武具はどうするつもりで? 他の方々のも相当傷んでいるようですが」
騎馬重剣の並ぶ棚をしげしげ眺める赤毛のケンタウロスは、その問いに一つ間、腕を組んで思案した。
「俺の団は使って替えてまた使いだからなァ。思い入れなんてもんは無いな。
思い切ってまるっと新調しても良いぜ。 この店の“鉄”は古臭い空気が全くしない。気に入った」
そう言うと、隣で同じく剣を選ぶケンタウロスに腕を上下して指示を出すと、大振りの貨幣袋がドンと出てきた。
「主よ、新調もよろしいですが浪費し過ぎには御注意を!」
奥で盾を見ていた狗人が、ひょっこり顔を出して忠告してくる。
「サーンクス!金は使う時に使っておかないとくたばってから後悔するぜ!?」
店内に騎士団の笑い声が響く。
「修理というのであれば隣の“打ち美髯”か“無双髭”をお勧めしようと思ったんですがね。
気に入ってもらえたのなら選りすぐりを出させていただきましょう!
クルスベルグじゃ禁止禁止でにっちもさっちもいかない“新技法”を駆使した合金製の武具、御覧あれ!」
店主が声を張り上げたのに呼応し、天井に設置された光のルーンが点灯、店内を照らす。
先程までは暗がりが覆っていたが、一斉に武具の光沢が目に飛び込んでくる。
「店主、これは?」
サンクスと呼ばれた狗人は、支払いカウンターの横に置かれている奇妙な鉄の塊を指す。
「中々の目利きだね。 こいつぁ“新たなる創造”の原動力を生み出す“バッテリー”って代物さ!
仲間内でも変わり者がいてね、クルスベルグを出る時に餞別代わりに貰ったのさ。
貰った時はボロボロのバラバラでどうしようもなかったけど、見ての通りそれなりの形にまでは復元できたのがこれだ」
嬉々として語る若いドワーフ。 隣の土精霊は少し呆れ顔で頬杖をついている。
「店主!どうやら俺らの財布はここで空になりそうだ。 何か良い稼ぎ話が聞けるとこはないか?」
山盛りの武具を並べ、赤毛は貨幣袋の全てをカウンターの上に乗せた。
「毎度あり! そういう話なら、冒険者ギルドか酒場がいいね。
今まさに大
ゲート祭の真っ最中でどの店も食材確保がおっつかないってさ。
そこいらの依頼が料金割り増しで貼られているって話だ」
「賑やかだと思ったら祭りの最中か。成る程な、行ってみる。ありがとうよ!」