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【鬼と狗と女子ふたり】

ミズハミシマ最北部にある巨島「北夷」

中央政権の支配から最も遠ざかったその地は、隣接する海洋国家ドニー・ドニーの影響を強く受け、

陸地には多くの鬼族が居住している。

島の中央に位置する都市アズア・ピウカを境に、鬼族と鱗人の住む地が分かれているとも言われる。

そんな物騒な地に、物好きにも乗り込んだ者が居る。

十津那学園高等部1年の天峰院桃(てんほういんもも)と、同じく1年の倉石緑(くらいしみどり)である。

天峰院桃は列島古来よりの名門『天峰院家』の息女である。

が、周囲の評価は一言でいえば処女ビッチ。

時代錯誤というか現実にいるのかそソレ!と言うしかない縦ロール髪とEカップバストの持ち主だ。

今回の旅の理由は男漁りだが、完全に漁り方を間違っている。所詮は去年まで中学生だという事だ。

倉石緑は、どういう訳か桃に気に入られ、かつ桃に振り回されている不幸な娘だ。

十津那学園大学在籍の倉石教授の娘で、親が魅力に憑りつかれた十一門世界をその目で確かめたくなったのだ。

かなりの真面目娘なのだが、それゆえに桃に振り回されがちとも言える。

ちなみにAカップの残念ボディであり、そこも桃と比較されがちだ。

そして護衛が2人。2人とも傭兵である。

一人は狗人のサムライ。名は忍蓮(ニンバス)という。イェゾという国の出らしい。

もう一人は鬼族で、赤鬼と呼ばれる赤銅色の肌の鬼だ。名は蜘蛛若(クモワカ)という。

2人ともミズハミシマにある冒険者ギルドの斡旋によって、彼女らの護衛任務に就いたのである。

「北夷はアブないって聞いてたけど、そうでもねぇのんすなぁ」

桃が暢気な事を言うと、緑の顔が引きつった。

「上陸してから2回も襲われてますけども!

 あんた昨日の夜に酒場でチチ揉まれて奥の部屋に連れ込まれたの

 まさか忘れたワケじゃないでしょうね!」

「チチくらい揉まれますのんわな。貧乳にはわかるまい」

「ブチ殺しますけども。この駄乳淫乱ピンク髪が」

女子同士のじゃれあいはかしましい。

狗侍はそっぽを向いて紫煙を吹かしていたし、鬼はそっと懐から守り刀を抜いて研ぎ始めた。

桃と緑は長期休暇を用いてミズハ観光に来たのだが、「どうせ行くなら誰も行かない場所に行きたい」

という桃の暴走によって「誰も行きたがらない」北夷へと赴いたという訳だ。

ゲートの街で狗侍と鬼の護衛を見つけられなかったら、今頃は海の底か山に埋められているか・・・

それがこうして宿でくつろげるのだ。護衛さまさま、と言ったところか。

「へえぇ。不思議な色した刀なんのんすわなぁ

 これが火廣金(ひひいろかね)ってヤツなんのすか」

桃は刀を研ぎ始めた鬼、蜘蛛若にしなだれかかった。

「ぬしの言葉はどうにもわからぬ。本当に翻訳されておるのか。

 それより、刃物を扱っておるのだ。しばし離れよ」

「まあまあ固い事ぁ言いっこ無しですのん。

 これでも昨日の夜に助けてもらった恩を感じてますのんよ」

「おなごは苦手なのだ。頼むから離れてくだされ」

「顔まっかですのん」

「生まれつきだ」

「またいちゃついてるし・・・アイツ本当は男漁りに来たな」

緑はイライラしながら狗侍の隣に腰を下ろす。

「あと!こないだから気になってたんだけど、キミまだ未成年じゃないの?

 タバコ吸うとか法律違反でしょ」

そう言いつつ、狗侍のキセルを取り上げようとする。

「元服くらいしておるわ。貴殿は阿呆か」

慌てて狗侍は取り返そうとするも、悲しいかな手足の短さゆえに届かない。

「で、何歳なのさ」

「今年の正月で十五周期は過ぎておる。何が問題か」

「15歳って事じゃん!私より年下でタバコとか絶対ダメだね」

緑の勝ち誇った顔を見て、狗侍は深いため息をついて諦めた。

せっかくカイデン様から許可をいただいて大人の仲間入りをしたと思った矢先にこの仕打ちである。

傭兵とは辛い生き方だ。

「そだ。かわりにアメちゃんあげる。オレンジ味」

緑は狗侍の口に直接放り込んだ。

「またいちゃついてますのんし・・・緑に負けてはいられないのんよ」

延々と刀を研ぎ続ける蜘蛛若の気をなんとか引こうと、桃は必死にアプローチをかけ続ける。

「ねえ、クモちゃんは何で護衛の仕事なんてやってんのんすか」

桃のその質問に、蜘蛛若はしばし手を休めて言った。

「食うためだ。

 鬼には生きる土地も術も不足している。

 俺は赤鬼だし、頭を使って生きることも難しかろうと思ってな」

「アカオニはバカなんのんすかね」

「馬鹿は馬鹿であろうな。ぬしを助けるほどに」

「お、ヒニクってやつでんのすなぁ。

 やるじゃんクモちゃん。

 でもわっちは感謝してるんですのんよ。

 オニが優しいってのも実感したところなのでんすわぁ。

 ところで今夜、お部屋に遊びに行ってもいい?」

「護衛対象に手を出せば首が飛ぶと何度も言っておろう」

「見かけによらず草食系なんのすなぁ」

「正直、桃のあそこまで糞ビッチな姿勢には憧れなくもない」

「く、そ?なに?」

「なーんでも無い。うーん・・・

 ね、今夜さ。忍蓮くんの部屋に遊びにいってもいい?とか聞いてみたりして・・・」

「ん?むしろ良いぞ。

 そなたが身近に居た方が護り易いというもの。

 鬼殿の膂力ならともかく、拙者には剣術しかござらぬゆえ。

 チニウェターでは半歩ほど遅れをとってしまうゆえな」

オレンジ味のアメをコロコロ転がしながら狗侍が言う。

「ま、そういうノリでもいいか

 あれ?鉄砲も持ってきてなかったっけ?」

「ヒナワなぞ、そうそう使えるものではないわ」

よく見ると、忍蓮はしっぽを思いっきり左右に振っていた。

こういう話をもっとしたがってるんだろうな、と緑は微笑ましく思った。


  • 上手くSSSをまとめてきたこれと。はじまりのはじまりだけど火縄とか地名とか興味わくワードは多い -- (名無しさん) 2014-04-12 21:18:52
  • 男漁りでそこまでいくかとつっこみたいけどそこに一緒に行く腐れ縁がいいな。なぜそこまでビッチになったのか家の重圧の反動か -- (名無しさん) 2014-04-13 16:45:56
  • 傭兵の相場や質とか気になる -- (名無しさん) 2014-04-18 20:56:10
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最終更新:2014年08月31日 02:18