【六月の挙式募集】

 およそ一年前 ───
異世界解放区として日々交流が進むポートアイランドを対岸に臨む、メリケンパーク。
そこに建つ神戸有数の大ホテル、神戸オリエンタルホテル。
 その会議室 ───
「── というように、当ホテルでも亜人に対応したプランを作ろうと言う訳です」
「ふむ。“あの”異世界へとつながるゲートの通行規制が大幅に緩和されるという期間、“大ゲート祭”に合わせての戦略。
一ヶ月間という短い間に規模の大きい改修を実施してまで行うモノがあるのかね?企画室長」
多くの催し物を請け負うホテルには式場から会議室まで豊富に揃っている。
その会議室の一つ、大窓からポートアイランドを眺め問う支配人。
「勿論です。 ポートアイランドにてイベント開催サービスを始めたマックスGARYUの、その後の増収傾向を見れば明白です。
すでに日本、そして世界における移住亜人の有する経済力は無視することのできない大きさになっています。
国と市が大ゲート祭に合わせて亜人の行動範囲規制を緩和するにあたって、それらを集め得ようということなのです」
「ふむ。一時的な利益だけでなく、亜人にもサービスを提供するというホテルの姿勢を国内外に報せれば
まだ十分に亜人へ門戸を広げてはいない企業の中で頭一つ抜きん出、信用という大きな利を得ることができる、か」

多くの種族が存在するということは、それだけ多くの考えが存在するということであり、そのせいで発生する問題も多い。
異世界交流先進国と言われる日本でさえ、未だ亜人への理解が行き届いている訳では無かった。
しかし、その様な状況下でもアグレッシブな者達による交流は進み、商業面での繋がりは広く太くなっているのである。

「一階二階では大広間の拡張と耐震を進め、大型種族の受け入れを強化します。
中層階では中広間の数とバラエティを増やし、小型中型種族の需要を満たします。
高層階では大規模な水周りと開放吹き抜け工事を行い、サービスが不十分である水棲、空中種族を獲得します」
多種多様な企画書とスライドが広がる会議室。 その扉が不意に開く。
「そして強力なアドバイザーも既に得ております」
ゴブリン海賊団の旗章を腕に掲げる、交渉代表のゴブリン。
イギリスから広く世界を周り観光産業に働きかけているエリスタリア観光局副長のホビット
ドイツ産業界と結びつき、次いで世界への足がかりを模索しているクルスベルグ対外部長のノーム
そして異世界と地球を問わず活動範囲を広げている鯖猫商会から商会長、猫人。
「サバーニャですにゃ。アドバイザーを代表して挨拶しますにゃ。
お互いの利益に繋がるように頑張らせてもらいますにゃ」
「どうでしょうか?」
全員と握手を交わした支配人が企画室長へ笑顔を向ける。
「止める理由が見つからないな。推し進めたまえ」


 今年 ───
「六月、ジューンブライドに合わせての結婚式を前面に押し出し、華々しく異種族サービスの開始とします」
「こっちの世界で結婚するということは、どんどん意味が大きくなってきましたからにゃー。これは絶対受けますにゃ」
準備は既に整った。後必要なのは ──
「最後に一押し、実際に開催することによってこれまでは空想に近い地球での式を実感してもらいます」
オリエンテルホテルが六月開催の新サービステスターとして募集した枠には相当数が集まった。
 ・実際に結婚式を挙げます。費用は当ホテルが一切を負担します。
 ・式を挙げるにあたり、一人、もしくは二人が亜人であることが最低条件です。
 ・式場のセッティングは、参加される方に合わせてこちらで全て行います。
 ・招待される人数は種族のサイズ如何で制限されることがあります。
「それでは、当ホテルの発展のためにこの一ヶ月…精一杯頑張りましょう!」


  • 異世界アドバイザーが頼もしすぎる。ポートアイランドに住んでるキャラがテスターに選ばれるのかな -- (名無しさん) 2014-06-02 21:52:50
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最終更新:2014年05月31日 18:52