「よくぞ来て下さいました
モルテ様。 ささ、お帰りはこちらでございます」
「ハイハイどうもご丁寧に。…って今来たばかりだろ!」
眉間を押さえ、如何にも(参ったな)という身振りで応えたのは審議侯。
モルテは膨れっ面のまま大広間、円卓にどかっと腰掛ける。サミュラの対面。
「大
ゲート祭で何かやるんだろ? 僕も一計考えてきたn ──
「ということで、邸の花園で幸せの門出を祝う結婚式を催すことになりました」
「もっもんっ!?」
卓を囲む貴族連、侯爵位などが頷く傍ら、モルテだけが豆鉄砲をくらっている。
「只今報せが参りました。 偉大なる音楽家の旋律の染み込みたるオルガン、地球より届いたとのこと。
式での演奏はお任せあれ」
首なし鳩からの手紙を読んだ不協和音男爵が恭しく御辞儀する。
「黒子は如何程入用ですかな? 五百体くらいであれば明日までに御造りしましょうぞ」
髑髏王の指先より走る糸が紡ぐ屍人設計布は既に山。
「折角だから僕もお祝いn ──
「残念ですねモルテ。 風雲モルテ城の周囲は既に迷宮鬼さんが堀を作っています。
越えることも降りて登ることも叶いませんので悪しからず」
「もももんっ!?」
「式場の周辺は
スラヴィア警邏隊が固めています。 不審な者がいれば即座に攻撃されるでしょう」
卓上に顔面を突っ伏して脳天から煙を燻すモルテ。
『【予選饗宴】への招待状は我が身を分けて各地に届けよう』
クゥーン クゥーン ワォーン ワォーン アーォ アーォ
「我が主様は何故ふて寝しておられるのか?」
「大いに当てが外れて落胆しているようだ。ここはそっとしておくべきでしょう」
白銀と赤銅の鎧が向き合う向こうで、サミュラ抱き枕をハグして芋虫のように布団に丸まるレシエ卿。
「サミュラ様【と】式を挙げるんじゃなくて…サミュラ様【が】式を挙げてくれるんじゃ意味がないじゃなぃいぃいぃぃ」
(でもサミュラ様のドレス姿は見にいこうっと)
吸血姫サミュラ主催の結婚式への参加権を賭けた饗宴。
誰でも参加可能としたにも関わらず、名乗りをあげる者はほとんどいなかった。
予想以上に【サミュラ様と形だけでも式を挙げたい】と思う者が多かったのと、
独り身に慣れきった者と既に結婚している者達が多かったのと、
真っ先に参加を表明した黒鎧卿の鬼気迫る鍛錬への熱に気圧されて参加を辞退する者が多かったのである。
そんな中、愛する者の「一緒に式しよっ」という上目遣いの懇願に一念発起し参加を表明した者がいた。
「このままでは黒鎧卿の不戦勝となり大ゲート祭の催しも半分終わってしまうところでした。
貴女の参加を嬉しく思います。頑張って下さいね、アデーレさん」
「ありがたき御言葉。 私も出るからには勝つつもりですので」
(もし負けてしまったら…優衣への穴埋めは大変なことになりそう… 絶対に勝利しなくては!)
- モルテ封じ込め作戦用意周到すぎる。このままいくと黒鎧卿とアデーレのタイマン勝負? -- (名無しさん) 2014-06-10 20:59:13
- 決戦はいつごろ?飛び入り参加とかはないん -- (名無しさん) 2014-06-19 23:30:15
- サミュラの威光が輝くせいか色恋沙汰が少ないようなスラヴィア -- (名無しさん) 2014-07-01 22:57:00
- 完璧なモルテ対策に笑いながらもスラヴィアの皆がモルテを理解しているのに微笑ましさを感じました。スラヴィアンにとって結婚というのはそれ以外の種族とは違った意識があるのかも知れませんね -- (名無しさん) 2017-10-22 17:42:19
最終更新:2014年06月07日 01:23