【イスズの悩みマス】

エルフのイスズ・サンレスカは少し機嫌が悪かった。いや、少しではないかも知れない。
しかし、その不機嫌の原因が自分にあることを自覚しているためかどうしようもなくもやっとしている。
地球、日本にやってきて知った様々な恋人達のイベント。異世界にいた頃よりも華々しく甘いひと時。
しかしそれが自分達、イスズと瑪瑙には全く関係がないという。
いや、関係があればそれはそれで些か問題だろう。
イスズは付いているので瑪瑙からは出会った頃から男性認定であり、同じく男性である人間の瑪瑙が恋人のイベントを一緒にどうだい?と言ってきでもすれば、
瑪瑙はホでモな人やゲでイな人になってしまう。
それはイスズにはちょっともにょってしまう事案である。が、最近はそうでもいいので瑪瑙と恋人の様に振舞いたいと思い始めてもいるので少し戸惑う、焦る。
瑪瑙と一緒に大学内を歩いていると聞こえてくる二人の関係を揶揄する妄言。血走った眼と荒い息で最近の二人の仲はどうなんですかとネタを補給しようとする眼鏡女学生。
世間に認められるのならいいのかな…という悪魔の囁きに心が疼く。
これが愛だと言うのなら、形振り構わずそれを求めようとするのがエルフの本能だと自分自身を納得させようとしているのが恐い。
しかし、それが自分の理想とは違うのだと言い聞かせて今に至る。

「イスズ!明日からちょっと異世界行かないか?」
今日は23日。となれば明日は24日。月は12月。
しかしイスズは揺るがない。
「ボク行かないからね。アリョーシャとワナヴァンの世話の打ち合わせとかさせておいてメノーは市で買い物する気なんでしょ?
今の時期は大延の山獣やドニーの海獣の良質な革が売られているからね!
ボクは街でバイトするから、メノー一人で行ってくれば?」
つんけんした言葉を投げられ思うところが二三、四五六ある瑪瑙は愛想笑いで頭をかく。
「まぁアリョーシャの厩舎に行くのはそうなんけどな。その後ワナヴァンに乗って行きたい所があるんだ」
「行きたい所?市じゃないの?」
「イスズとじゃなければ駄目なんだ」
真顔、重なるeyes line。
自分でもどの様な表情で首を縦に振ったのかは覚えていない。
心此処に在らずで出立の準備をして一睡もせずに迎えた朝。
時はクリスマスイヴ。特別な事が起こってもいいんじゃない?と思いながら乗った渡界タコフェリーの揺れは休んでいない脳には響くはずなのに
どこか心地良かった。

イスズはもっと注意するべきだった。毎度毎度瑪瑙が切り出してくるのはハプニングか厄介ごとか期待を斜めに裏切るアクシデントだと言う事を。
イスズは瑪瑙の目から少し視線を下げるべきだった。なれば手に何やら紙が握られていたと気付いただろう。

 ── ミズハミシマ アリョーシャの厩舎
「嵐が来るのだわ」
大きな鳩、いや鳩に似たワイヴァーンがチキンを突く嘴を止める。
「ワナヴァン、日本からの送料込みのケンタッキーの代金はどうするのだわ」
厩舎主のゴブリン、アリョーシャ・ギョーシャが立て替えた請求書をひらつかせている。
「いつも通り、瑪瑙イスズのツケにするのだわ」


瑪瑙とイスズのクリスマスはどうなっているのかなぁと勝手に想像して一本

  • 瑪瑙君が正常な限りイスズを恋愛対象と見ることはなさそう -- (名無しさん) 2015-12-27 16:57:35
名前:
コメント:

すべてのコメントを見る

タグ:

j
+ タグ編集
  • タグ:
  • j
最終更新:2016年02月02日 23:20