ここは異世界、
エリスタリア。
国を司る神である
世界樹の御膝元の夏季領に点在する様々な施設の一つ、森の研究院。
主に自由意志を持った広範的な役目を受けた地球帰りの
エルフが多く在籍している。
優秀な遺伝子を世界樹へと献上した後に、更なる活動の向上のために経験や知識を持ち寄り研究し、そして再び地球や異世界各地へと赴くのだ。
── が、ここに一人大した活動もなく外にもあまり出たことのないエルフがいる。
同期が地球より遺伝子を持ち帰った際に、部屋で知識準備という名目で籠っていた所を半ば無理やりに連れ出され共に研究院入りしたという。
地球で何者からか研究を依頼されたので人手が必要だというので、とりあえず知識だけは蓄えた当人に白羽の矢を立てたのだ。
依頼された研究の題目は【
ゲートの発生】という途方もないものである。
「なんかねー地球でゲートについて研究している人達がいて、私が遺伝子をもらった人がそこでそこそこの役職でねー何かエリスタリアでも研究をしてくれないかって頼まれちゃって」
異世界の神々が協力することで初めて発生させることに成功した大ゲート。それを人の手で発生させるなどどれだけ規模が小さくなっても無理なのでは、という疑問から始まった研究院生活。
何となくそれっぽく研究しレポートを地球に送るだけで潤沢な資金が送られてくる。
研究院の一角を借り切っての形だけの研究は地球帰りのエルフ達の良いオフ過ごし場となったのである。
唯一人、籠る場所が部屋から研究院の一室に変わったエルフだけは真面目に一生懸命にゲート研究に打ち込んでいたのである。
「ごめんね皆ー、今月で資金援助終わっちゃうってさー」
突如の報告。ゲート研究室にいた十名ほどのエルフが総員「えー」と残念の声を上げたがやってることはサボリなので仕方がないかと荷物をまとめだした。
話によると地球とエリスタリアを繋ぐゲートは発生させて移動を計画していたが、数々の研究の結果「不可能」と判断されたために方針を転換、
エリスタリア側への交渉などにより安全かつ確実な移動を目指すとなったのである。
「今月で部屋出なくちゃいけなくなったけど、どうする?一緒に地球いくー?」
同期の誘いは嬉しかったのだが、引き籠りの意地が外へ出るのを拒否。ギリギリまで研究を続けると一人残ったのである。
「世界を周って理想の遺伝子を探すよりも、ゲートを発生させて優秀な遺伝子の持ち主を呼ぶ…私はその夢を諦めない!」
普通に世界を周った方が確実で現実的なのは分かっている。分かっているのだが。
「男と話すのなんてどうやったらいいか想像できないの!」
いよいよ明日は最終日。皆はもう地球へ向けて出立し研究室はがらんどう。
「色々試したけど…やっぱり人の力なんてそんなものだよね…」
研究の失敗を外へ出る言い訳にしようと最後の実験に取り掛かる。
ルーンを主体に躍字を加えた符号字列により精霊属性力を収束する力場。その中心に資金と共に譲り受けた何かしらの【布切れ】。
様々な実験はこの布切れを中心に行われてきたのだが、実際それが何なのか詳細は誰にも分からないのだった。
私達の研究により、この布は過去にて異世界より地球へ持ち込まれたものだと判明した
異世界への郷愁から仲間を集い世界の壁を越えようとした騎士王伝説の残照
異世界では成しえることが出来なかった理想の国を造るべく命を燃やした王の中の王の背を覆った名残
あらゆる伝説伝承の一端である可能性のあるこれは、異世界で使用することで力を発揮すると予測される
「でも何も起こらなかったのよね…」
起動のルーンが輝く。最後の実験ということで精霊炉の残り全てを放出させる。符号陣の外周から中心に設置される布へ増幅凝縮された力が流れ込む。
「お願い!ゲートよ、私に理想の遺伝子を導いて!」
弾ける白光 音のない爆発 体を突き抜ける衝撃 地を踏む感覚が消える
『ねぇねぇ、ココって何? 私、化粧室に入ったと思ったらイキナリ光がピカーってなって、ちょっと意味ワカンナイんですけど』
自分より大きな背丈。光のショックで座り込んでいる私を腰をかがめて覗き込む。 少し茶色がかった大きな黒い瞳。
『ちょっと耳長くない?え?何、ひょっとして異世界ってヤツ?ウッソマジで?!』
聞いたことのない言葉を喋りながら首を左右に振ると、合わせて金色の光沢輝く髪も舞い踊る。
「はっ!いけないいけない!あっと…えーとそうそう、実験成功の時のために用意しておいたコレ!」
翻訳加護の力を葉脈糸に染み込ませて編んだ腕飾り。これで言葉が対応するはず。
まだ周囲を見渡す出現者に恐る恐る腕飾りを差し出すと、何の警戒もなく受け取り即座に腕を通す。
「異世界土産?ミサンガっぽい」
「あっ言葉が分かります!」
興奮冷めやらぬまま思わず立ち上がる。少し冷静になって夢にまでみたゲートからの来訪者を観察する。
「…あれ?」
「ナニナニ?ところでココって異世界のどの辺なの?すぐ帰れる?あーでも休み中だからちょっとくらい旅行してからでもいいかも」
朗らかな笑顔がとても眩しく、靴先からすらっと伸びる体殻は胸の辺りで大らかに円を描く。
「女性なんですかっ?!」
「え?どっからどーみてもウーマンでしょ私。それはそうとアナタここの職員さんか何か?ちょっと案内してほしーなーって。
長い耳ってエルフさんでしょ?何か良い匂いするー、香水とか使ってるの?使ってなかったりするの?」
優秀な遺伝子を求めて願いを込めた筈が、ゲートより出てきたのは女性という結果。呆気にとられる。
「ほらほら立って立って。…よく見るとアナタ結構可愛い系じゃない?エルフって美人や二枚目の役者が目立っているけど皆素質あるの?羨ましいわー。
その野暮ったい前髪もバッサリ切って綺麗な目も出したらいいじゃない」
不意にかき上げられる髪と頬を撫でる掌の熱に血流が早まるのが分かる。触れるくらいに近づいた瞳に心が乱される。
「あら、よさげなスカーフが落ちてるもらっちゃおっと。首あたりのワンポイントどうしようか悩んでたんだー。うん、巻き心地もいい♪」
赤い布切れをさらっと首に巻いて無邪気に笑う。 どこからともなく寄ってきた風精霊がいたずらに揺らす金色の髪。
「とりあえず町いこ町っ。そのぱっとしない服も全部変えちゃおっ。何だかワクワクしてきたわー」
最後の一人が研究室を出る。実験は成功したのか、それとも単なる偶然による小ゲートの発生なのか。それは分からない。
問答無用に手を引く手。嵐の様に巻き込む性質。陽射しの如き温かさ溢れる笑顔。心を動かす通りの良い声。
それはまるでエリスタリアでは扱いに細心の注意を必要とする炎の様。
この人は今までの私を燃やし生まれ変わらせてくれる。そんな思いが過った時にはもう体が動き出していた。
「私の願いはこれから叶うのかも知れない」
スレで話題になっていたギャルと小ゲートと目隠れエルフで出会いを想像
- 小ゲートって大ゲート出現後も開き続けてるんかな。メカクレちゃんの女子力磨きが始まりそうだ -- (名無しさん) 2017-01-16 03:05:11
- ギャルは自由人なのは分かるがエルフもけっこう自由人だな -- (名無しさん) 2017-01-16 07:20:28
- 色々面白そうな要素あって興味深い -- (名無しさん) 2017-01-16 21:54:30
- 大ゲートが発生してから二十年以上が経過しているいと不意の転移にも対応できたりするように変わってきているのだろうか -- (名無しさん) 2017-01-19 09:05:47
- 偶然も偶然の小ゲート発生かなって思うけどそれだけにこの出会いの驚きは大きかろう。でも同性じゃないですかぁ -- (名無しさん) 2017-02-14 18:06:28
最終更新:2017年01月16日 01:54