広い国土ではあるもののその大半は草原であり土壌は肥沃とは言い難い東イストモス。
その地に住む氏族達は進む異世界の歴史の中で外への対応手段として一つの東イストモスとしてまとまることを選んだのである。
どの氏族も信義を持ち誇りを掲げる強者気質であり、東の長を決める手立ては幾度となく変わり繰り返されたのである。
ケンタウロス達が苦手とする
クルスベルグの山脈の向こう、
ラ・ムールが交易にて力を伸ばすのに合わせて中間地帯の獲得を進めた結果が今の山脈の脇を南下した国境線である。
しかし頑ななまでの武力傾倒は東の思想に歪みを生じることに繋がったとも言える。
星神のもたらした星遺物に選ばれる、氏族連による選出という明確な方法が確立したのだが、ある長(ハーン)が謀略を実行する。
長の座に固執した結果、氏族会議に集まった氏族長を燃やし消そうとしたのである。
選出対象がいなくなれば長の座に居続けられる。安直で先を考えない思考ではあるが、それを実行する程に長は歪んでいたのであろう。
その謀略の場で生き残った者の中に氏族長の次代として同行していた若きスヴォーロフがいた。
炎に巻かれ全身を焼かれながらも会議の場にあった星遺物である星弓を射ることで炎に道を開いた彼はすぐさま生存した氏族長を説き伏せ
謀略の長に対して即座に反抗し討ち取ったのである。
彼は確かに力のあらゆる面に長けてはいたのだが、余りにもそれだけを求め信じすぎたのである。
片や西イストモスは力だけでなく豊国の念と心の一致によりまとまった、言わば東と真逆の性質に立つ。
そのような東と西が衝突するのは避けられないことであったが、森林地帯に多く住む獣人や星神を信奉する山岳氏族との勢力バランス、国土拡張に伴う防衛線の維持など
決して多くはない東の人口分配による配置の難により全面的な衝突が発生することはなかった。
しかしそれでもイストモス統一を目指すスヴォーロフは自ら皇帝(ツァーリ)と冠し西イストモスの長である騎士王マリアンヌと対峙することになる。
一度目の会談は一方的に恭順を迫るスヴォーロフにマリアンヌが共存共栄を返す形で折り合いも何もつかずに終わる。
二度目の会談は国境を広げた実績と自らの大隊を誇示しマリアンヌだけでなく西イストモス自体に迫ったのである。東西中間であるラタにて一触即発の緊張状態にまでなったものの
次回の会談にて決着案を提示するというマリアンヌの言にスヴォーロフが引く形で終わる。
そして三度目の会談。マリアンヌの定時した案は互いの持ちうる最高の力同士による一騎打ちによる決着であった。
勿論、東は暴虐王スヴォーロフ自らが出たのだが、西はマリアンヌでも王護騎士団でもなく森の一族、東西どちらにも従わず反逆の天狼と呼ばれる狗人の戦士ズィリウスを推したのである。
「信頼こそ国を造る力」と主張するマリアンヌはその信頼をズィリウスに託したのである。
星遺物を持ちながらその力を使わずに東イストモスをまとめ上げ数々の戦いに勝利した最前線の皇帝。
心無いケンタウロスに虐げられる獣人の解放のために立ち、対騎馬戦闘に特化した戦技を磨き上げた射手闘士。
イストモス統一を賭けた一騎打ちはラタ内では収まらず草原、森へと場を移しながら不眠不休で三日三晩続いたのである。
重鎧の全てを破壊され狂暴なる全身を露にするスヴォーロフ、クロスボウは砕け残す矢は一本となったズィリウス。
誰もが近寄ることのできぬその戦いの決着は当人だけにしか分からず、互いに精根尽き果て地に伏したところを救助される形で終結した。
どのような心境の変化があったのか、または国の戦略上試算の答えか、スヴォーロフは東西境界線の位置承認と他国への侵略停止国境維持を確約したのである。
しかし皇帝の信義は一切の揺らぎ無く、東イストモスは国土拡張と軍備増強以外の強国への道を模索している。
彼にとっての力は唯暴力のそれだけではなく国そのものの強さであるのかも知れない。
大
ゲートが開いてからは彼の新たな戦いが始まったと言える。