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【オルニト蜥蜴牧場にて】

 ─── 大ゲート祭開始数日前 森の蜥蜴牧場
収穫の範囲を超えたレベルまで増殖&強化された蜥蜴を間引くために牧場で蜥蜴狩りが行われる前の調査、樹上の枝に武士姿の狗人と軽装の鳥人が並ぶ。
「前方100…8メトル、上方10メトル。肉食蜥蜴の大きな群れを確認」
「何やら動いていると思ってはいたが、当たりであるな」
 オルニトの森林地帯に設営された食用蜥蜴牧場。自然のありのままを尊重し伸び伸びと育てることで極上の云々と言えば聞こえが良いが、
 要は特に何もせず放りっぱなしということである。
 森で繁殖する草食と肉食の蜥蜴を狩り、シメて素材そのままで出荷したり牧場内の加工場で食肉加工などして各業者に卸したりとオルニトのみならず新天地などにも需要が増えてきている。
 しかし牧場も楽に順風満帆と言う訳にも行かない。日々繁殖し自然の摂理を生きる蜥蜴達も現状に甘んじているのではなく、種の繁栄と存続の本能によって変化進化していくのである。
 地を走る草食種はその膂力を更に強くし、体を覆う鱗は強固になり遂には地中を掘り進むべく突起形状に頭部を変化させていく。
 木々の間を飛ぶ肉食種は滑空距離を伸ばすべく四肢に広がる被膜翼を肥大化させ、強襲する顎は屈強に牙は鋭利頑強に強化していく。
 豊かな自然環境の中で増えれば増えるほど繁殖速度も増すため、牧場運営側が獲り切れない程の数に達してしまうのだ。 大体二、三年周期で。
「個体を見た感じはどうであろうか?」
「いやいやいや…これはちょっと凄いと不味いの合わせ技。前回大会で参加者を手こずらせた強個体が蜥蜴その一の様に群れてます」
「もっと以前に大会を開けば楽であっただろうに…」
「牧場主が大ゲート祭に合わせて開催すれば認知度も世界を駆け巡るように広まると言いまして」
溜め息をつきながらも腰に下げた幾つかの革袋から濃い赤の小実と炭石の粉を取り出し、身の丈に迫る長さの銃、かの種子島に似た無骨な鉄の銃口に詰め込み細い棒で押し込む。
「とりあえずあれより先に進み続けられたら牧場の外に出てしまうのは明らかであるな。一撃見舞って騒がしておく也」
「あれら全てが“生きた巣”。およそ首領がいるであろう中心部までは届くとは思いませんが、警戒心を起こし場に留めるのは上策」
「では…、一射頼もう」
狗人が何やら香ばしい藁の一本を火皿に近づけると、鉄蓋がぱかりと開き小さな火鼬が顔を出し藁を食んだ。
やがて鼻にさわる硬い香りが漂うと銃身の底に熱が籠っていく。
「風は南東から少し、狙いより銃口二つ上にずらし撃つのが良いかと」
「あい分かった」

一瞬の静寂。 そして空を破る発射音。
銃身の中で増大させた火の事象力が弾け、弾丸に見立てた赤い実が一直線に飛ぶ。
実には火鼬の尾先が纏い、蠢く蜥蜴巣の直前にて熱により実を膨張させ爆発させる。
イストモス北部の地の下で育ち、発芽の際に爆散して地上に飛び出すバカラ草の幼種。 尚、爆発は大きな音と衝撃波を発生させるために威嚇や撹乱に適している。
森の樹上が一気に騒ぎはじめ肉食蜥蜴がその獰猛な爪で幹や枝を掻き跳び滑空し巣の周囲に広がっていく。
しかし、当の二人は発射即既に退却しているのであった。

「御苦労!そうかそうか強く増えていたか!こりゃ今度の大会は盛り上がること間違いなしだな!」
急ごしらえに作られた仮設舎の中、牧場主の中年駝鳥人はくわっくわっと高らかに笑い飛ばす。 尚、元の舎は例年の倍以上に巨大化した草食蜥蜴の大移動の前に砕け散ったのだ。
「で、偵察してきた感触は?」
「草も肉も今まで見たことのない集団を形成していました。躰も強く進化していました。数も多いですね」
「動きを見る限りでは前回大会の倍の難しさになるのではなかろうか。下手をすれば群れを間引く前に参加者達が返り討ちになるのでは?」
 牧場で扱いきれなくなった蜥蜴を減らすために開催される“蜥蜴狩り大会”。
 大会の期間中は、強くなればなるほど美味になるという草食肉食蜥蜴が無料で狩り放題という大盤振る舞いっぷりに大会は回を重ねるごとに参加者が増えているのであった。
 群れの主であるボスを狩った時点で大会は群れの弱体化と間引きの完了となり終了となる。
 しかしそこに至るまでの道は楽ではなく、強く進化した個体や高まった知能による集団行動により返り討ちにされる参加者も少なくはない。
 基本、牧場側は日に二回の行動不能者回収巡回くらいでしか援護はしないハードなサバイバルハンティングとなる。
「ほら見ろ!今回は海やゲートを越えての参加者も山盛りだぞ!前回肉食の王をきゅっと締め落とした新天地のオーガの酒場マスターをはじめ腕に自信のある料理人やら冒険者やらが大量にやってくる!
参加者が美味い蜥蜴を持ち帰る、それはどこの蜥蜴何だと評判を呼ぶ!大会大成功!」
「ふぅむ。大人数ならばどうにかなるか」
「しかし巡回要員は増やした方がいいのではないでしょうか。絶対的な強さが倍増した蜥蜴達相手では戦闘本職でなければ危うい事故も発生すると思います」
「よし分かった!大会までに増員できるようにギルドに打診しておこうじゃないか」
牧場主は増員要請の旨を書いた便りを伝書鷹に括り付けると空へと放つ。

そして始まる大ゲート祭。オルニトの蜥蜴牧場へと各々が色々な思いを胸に世界中から参加者が集まってくるのであった。


阿鼻叫喚の蜥蜴狩り大会本番へと続く

  • 大会がもし失敗したらトカゲ大行進? -- (名無しさん) 2017-08-24 00:32:55
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最終更新:2017年08月23日 02:41