【海中貿易の推移】

周りを海で囲まれた群島の国、ミズハミシマ
海と言っても異世界においてそこは陸と同じく人が住む場所である。
異世界各国の中でも特に水棲種族の多いミズハミシマは地図の見た目以上に生活圏が広く、こと水中におけるあらゆる術に長けている。
海中の潮流を航路とする海中船による貿易に大きく関わっているのもミズハミシマの力の一つである。
水中船は海上船とは建材から組み立て方まで方向性や感覚が違うと言われており、名工、職人と名高いドワーフ達も水中船への理解を深めるのに長い年月を要したという。

ミズハミシマに属する大手の水中船貿易社は元竜宮城関係者が活躍していることが多い。
海中所領の管轄を担っていたことから海底の地形から潮流、海棲生物の生態や分布、そして水精霊との関係や交渉まで長年の積み重ねは確かな土台となっている。
しかし事業は最初からスムーズに進んだわけではない。
国が泰平となっていく中でそれまで戦事に対する役職の多くが形骸化し、合わせてそれに属していた者達も役目を失い宙に浮く形となった。
知識と力を持ってはいるものの、他の職業や業界への意識の低さやプライドの大きさなどから自ら八方塞がりに陥っていた。
そこを竜宮城の上層部が働きかけることにより民間との連携や組織編制を進めることができたのである。
そうして形となった貿易社は輸送量こそ海上船に劣るものの、海中の潮流航路、水精霊と海武士の警護など安全と信頼はかなり高い。
物量ではなく早急に確実性が求められる品、貴重な品、機密物などを主な輸送品目とし他海運業との違いを売りに一応の成功を実現している。
ゲートの解放前より様々な商法を模索し、多様な意見を取り入れることで物品輸送以外の事業も行う様になった。
海洋素材と土精霊、クルスベルグの技法を合わせた貝鉱製超硬質透明保管箱。それらを契約した期間貸し出すことで保管を請け負うというものである。
最初は保管庫としてだったが、そこから依頼者との話し合いから一部の認められた客のみが乗船し閲覧可能な海中移動美術展を催すことを始める。
品を保管委託する側の“見せたい欲求”を満たし、海中運航という決められた期間の入場時間、安全安心の警備など合わさって入場権が盛んに求められるほどには成功している。
港から港までは潮流という下船不可という状況、関係者のみの乗船、防音室と秘密厳守を売りにした会議室の提供も行っている。
緊張感と俗世から切り離された空間というものが受けて、多くの海中輸送船に専用会議室が設けられることとなった。

遠沿でゆらり海面が持ち上がるとそれは海中船がやってきた合図。
海面にその姿の全てを現すことことの少ない海中船と物品をやり取りする船が行き交う中に大商会の大物や機関の高官などが混ざることも珍しくなくなった。
地上ではあまり姿を見かけないことから知られることも多くない水棲種族ではあるが、その“力”は海の中で確実に大きなものとなっている。

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最終更新:2019年04月14日 22:47