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【チョコを贈ろう】

「ふぅ、なんとか間に合いました。後は各領、皆の御家庭に届けましょう。闇さん、お願いしますね」
サミュラ邸の厨房から玄関ホールまで埋め尽くした無数の小さな包み。
サミュラのスカートの中から溢れ出す闇は小鳥大の翼と変化し包みに取り付くと端から次々と夜空へ翔び上がっていく。
「ふぅ~、思った以上にかかりました。これで全ての民の分、なのでしょうか?」
茶色の飛沫が付いたエプロン姿のレシエが疲れた面持ちでツインテールをぐんなり下げて飛び立っていく包みを見送る。
言葉無く優しく微笑み返すサミュラの笑顔で納得したレシエは次いで懐から派手過ぎない程度の包みを取り出す。
「さっサミュラ様、私からのバレンタインチョコですっ」
「まぁ、私にですか?ありがとうございます。私が渡すより先にもらってしまいましたね」
レシエから受け取るのと交差して、サミュラはエプロンのポケットより取り出した包みを渡す。
「とっとんでも御座いません。いつも受け取るばかりでは申し訳ないと思い…」
「レシエ卿は真面目ですね」
サミュラの労いに顔面が溶けふにゃふにゃになるレシエ。
「しかし、“あまぞん”を使っても南極基地までチョコの素材を届けることは無理でどうしようかと思いましたが、まさかエリスタリアでカカオに似た樹が栽培されているとは…」
「そうですね。民全てのチョコを作るに十分な量も揃いましたし助かりました」
「ですね。でもここ最近のエリスタリアの発展は目を見張るものがあります。 無限とも言える世界樹の力を以てすればありとあらゆることが可能なのでしょうけども…今は通商においてはホビットの方々が調整されてますが、
これから先のバランス取りは一層気を付けなければいけませんね」

話す二人の背後から走ってくる影一つ。思いっきりレシエを弾き飛ばして登場する。
「さみゅらさみゅら~!ボクもチョコ作ったゾ!サミュラのチョコと交換しよう!」
「駄目ですよモルテ。走る時は前に気を付けて下さい」
「あーゴメンゴメン!急いでて気づかなかったヨ。ということでチョコ頂戴!」
レシエには一蔑もくれずに両手をサミュラへと突き出す。掌の上には茶色の球体。
「色々挑戦したんでしょうね。そして紆余曲折を経てこの形になったのでしょうね」
「そうそう!理想と現実が中々合わなくてネ~、究極のカタチに行き着いたってわけサ!」
「それにしてもどうしたのですか?いつもだとテーブルを叩いて待っているだけですのに」
石かと思える硬度の球体を受け取ったサミュラは、それをしげしげと見つめながら微笑する。
「恐れながらサミュラ様、モルテ様は今年始まってから例年以上に悪戯で方々に迷惑をかけています。なので、サミュラ様からチョコをもらえないと思ったのでしょう」
「そうですね。目安箱にも沢山届いています」
深いため息と共にエプロンを下すとスカートの影から大きな包みが迫り出してくる。
「モルテ、少しでも良いから人の心を思って行動して下さい。チョコを作るくらいには申し訳ないと思っているのでしたら、出来るでしょう?」
言葉と共に包みがすぅーっとモルテの前に移動する。
「うわーい!だから好きさーさみゅらー!」
宙に浮いた包みは一瞬で纏う紙が黒塵となり中身が露わになる。
等身大モルテチョコ胸像である。
「これは何とも…邪悪な、いやそっくり瓜二つで御座いますね」
「サミュラ、こ、これは?」
「はい。昨日までのわるいモルテを食べて明日からいいこになりましょう、ね」
「もっ、もんっ!」
自らの姿を上から齧り食べるモルテであったが、それはとても苦くて甘かった。


ちょっと遅れましたがスラヴィアのバレンタインを想像しました

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最終更新:2020年02月25日 20:42