【よくある学活の風景】

TAKE1

「では、各自今度行われる年に一度の大ゲートフェスで行う我がクラスの出し物の意見を出してください」
教壇に立ったクラス委員長の豊島真知子がクラスのみなに向かってこう問うた。
「ハイ!ここはオーソドックスに喫茶店など如何でしょう?」
オルニトから来た鷹人の優等生男子生徒がビシリと手を挙げて委員長閣下にそう上訴する。
委員長・豊島はふむ…と頷くと黒板に喫茶店と書き込む。
「はい!定番といえばお化け屋敷など如何でしょう?」
人の男子生徒が続けて意見を出す…が!
「訴えを却下します」
委員長はピシャリとそう返す。
「えー何でだよ!?定番中の定番だろ?」
「だよなぁ?横暴じゃね?」
意見を出した生徒は不満たらたら、他の数人の生徒も不満を露わにする。
ざわめきが他の生徒に感染する前に委員長は静かに組んでいた腕を解く、そして…

ビシィッ!

鞭を打つ音が聞こえそうな勢いで右腕を伸ばし手の平をみなの前に向ける委員長。
いきなりの行動にみなが騒ぐのを止め委員長の方へ注目する。
注目が集まった事を確認すると委員長は無駄のない動きで手の平を自分に向けると人差し指と中指でかけている縁無しの丸メガネをクイッと押し上げる。

「静粛に!!みなの不満はわかります。しかし、悲しいことに去年の祭りでとあるクラスのお化け屋敷のお化け役の生徒がカタギの女性の体を故意に触るなどという痛ましい事件が起こりました…」
悲痛な表情でそう訴える委員長。
「何だと?カタギに手を出すたぁふてえ輩だ!!」
義侠に厚いドニー・ドニー出身であるオーガの生徒が憤る。

「幸いにして我らが生徒会神罰部の活躍により警察沙汰は避けれましたし、学園長の寛大な措置により特に今年の出し物に規制がかかるような事はありませんでした…」
神罰部の活躍の下りで何人かが「ああ、あのタレット前に磔にされてたのが…」と背筋を震わせてヒソヒソと話していた。
「しかし!咎人が我々のクラスメイトでなく、規制も無いからといって前年の過ちを忘れてしまうのは正しいことでしょうか?私はそうは思いません。
私は、だからこそ前年を省みて自主規制の中でより良い出し物を行うことこそが有意義であると考えるのです!」
そう拳を握って力説する熱き委員長・豊島。
生徒からも「おお…」と感服の声が出、豊島の熱き心に共感する。

「まあ…」
そこで豊島はちらりとある一点を見てため息をつき。
「我がクラス唯一のスラヴィアンがあの調子では、お化け屋敷をやっても華が無いというのが一番の理由でもあるのですが…」
全員がそちらを見る。

「おお、やったわ!馬鹿で強欲なドワーフを下にたたき落としたわ!でかした私によく似たヒト!でかした骸骨船員!!」
学活中に堂々とポータブルDVDでアニメを視聴するアニーの姿があった。

「「「「はぁっ……」」」」
一斉に大きなため息がつかれる。
「…え?どうしたのあんた達?」
周りの冷たい様子に気づいたアニーは状況が飲み込めずきょときょとする。
その姿が一層クラスメイト達に大きな失望感とため息をつかせることになるのだった。
「「「「「「はぁぁぁああっ………」」」」」」
「ちょっ!なによ?何がどうしたってのよ!?わ、私エライのよ?スラヴィアの海賊貴族なのよ?あんたらなんか簡単にギタギタにできるほど強くて怖いのよ?
う……わーーーーーん!!おとうさまーーーーーーーーー!!!」
ベソをかくアニー。

そんないつもの教室の昼下がりの風景。



TAKE2

「まともに意見が出たのが喫茶店ですね…でも、喫茶店は他の多くのクラスも申請するだろうから普通の喫茶店では申請が却下されるでしょう。
だから喫茶店でやるにしても何かパンチの効いたものが望ましいわ…誰か良い案のある人はいますか?」
委員長はまたクイッとメガネの位置を直しながら、そうみんなに発言した。
ざわざわとみなが相談する「メイドとか?」「ありきたりだろ」「バニーとか」「なにそれ風俗?」。

そんな中、さっそうと手を挙げるものがいた。
「ハイ!小生思いますにノーパン喫茶というのは如何でしょうか?」
即座に担任のチョークマシンガン(十津那学園兵器部謹製)が火を吹き、トンマな事を言った生徒は先生の鼻息で吹き飛ばされる。

「はい」
吹き飛んだ生徒を横目に教室の後ろの隅でのの字を書いていたアニーが手を挙げる。
「何ですか?アニーさん」
「…のうぱんって何?」
クラスが一瞬固まる。さながら子供に赤ちゃんってどこから来るの?と聞かれたパパママのように…

「ノーパンとは!!!」
クラスの静寂をいきなり破ったのは窓からの闖入者だった。
ラペリングの器具をつけて窓を開けて入ってきたその人物は…
「そ、総督!!」
吹き飛ばされた変態生徒が起き上がりその人物に対して叫ぶ。
そう変態十六羅漢の盗撮総督!土佐宗徳その人であった。

「ノー・パンツ及びノーパンティの略であり一般的にはボトムの下着ショーツ等を着用しない事をいう!
これはエロ行為と取られがちだが、健康法や下着のラインを出したくない服を着る時、また文明に汚染された我々の自然回帰の一つでもあり実用的かつ神聖な行為である!!」
ご高説をたれる変態。
そしてぽかーんとアニーの子の顔でそれに聞き入るアホ。

「…我らがクラスに何の用?駄メガネ」
両腕をがっしりと前で組み委員長が不機嫌そうにそういう。
「ふ…知れたこと!悪魔が支配するこの教室で孤軍奮闘する我が同胞を救いに来たのだよ……あ、すいません!先生は悪魔ではありません。この汚れた地上に舞い降りた最後の天使です!!だからっだからこっちに銃口を向けないで!!」
冷酷に銃口を向けていた担任(34才独身女性)が銃口を下ろして、とりあえず自分の教室に帰りなさいと宗徳に言う
「し、しかし我らが同胞が命を賭けて発言したことを…」
チャキッ
「ハイ!ワカリマシタ!」
即・最敬礼してさっと身を翻して帰ろうとする宗徳 。
「何しにきた駄メガネぇぇっ!」
叫ぶ変態クラスメイト。
「うるさい!いくら一騎当千の変態(もののふ)とも銃(権力)には勝てんのだ!」
もっともらしことを言い返すメガネ。

そこでずっと何か考えていたアニーが口を開く。
「よくわからないんだけど、私も彪もたまに下着はき忘れるけど、それがどうしてパンチの効いた喫茶店の案になるの?」

「「「「え?」」」」
驚きの声の後、静寂に包まれる教室。
ゴクリッと生唾を飲み込む音がする。

「……ち、ちなみに今は?」
宗徳がぷるぷると震えながらやっとのことでアニーにそう聞く。
「え?今は…」
その時!!

「違うわ!!!アニーたん!!!!!」
教室の後方のドアを蹴り倒して十津那学園が誇る変態セクハラ露出姫の沢村彪が登場した。
担任は頭を抱える。
「ちょっと貴方!今は学活中よ!!」
キレる委員長。
「堅いこと言わなーい♪
そんな事よりアニーたん、それは違うわ!」
「…な、何が違うの?」
彪とその下の蹴り倒されたドアに押しつぶされながらアニーが聞き返す。
彪は制服の上からでも分かるほどのたわわな胸を張り
「アタシは、はくのを忘れてるんじゃなくて『はいてない』のよ!!」
衝撃の事実を告白する彪。目を剥く生徒といきなり興奮しだす変態たち。

「よおし…それじゃあ、彪お姉さんがはいてないとこをみんなに見せてあげよう…」
彪はそう言うとスカートの両端をつまんでツツツツッ…と上に持ちあげていった。
生唾を飲み込む男子生徒(一部女子生徒も)と開いた口がふさがらない委員長と先生。
「さあ、御開ty…!?」

「重いわぁーーーーーーー!!!」
グオッ!!と音がして彪が下のドアごと後ろに吹き飛ばされる。
そこにはドアに押しつぶされて忘れられていたアニーが、骨腕のギミックをフル開放させて立っていた。

「ちょ、アニーたん…重いとかひどす…」
吹き飛ばされた彪がドアの下で息も絶え絶えにそう抗議する。
「てめぇーーーー!このアマ!!もうちょっとだったのに空気読めよ!!!」
男子達は怒り心頭だ。数人がアニーへ詰め寄って行く。

ガガガガン!

アニーへ詰め寄ろうとした男子生徒の何人かがチョークマシンガンの餌食となる。
教室が阿鼻叫喚の地獄絵図に変わる。
そこへ

ドン!と雷が落ちるような音がする。
「Shut Up――!!」
委員長豊島がブチギレて教卓を叩いたのだ。
全員がその迫力に縮こまる。

「何がノーパンだよ!オメエらアホか!?ナーガの巳野さんや人魚の鳴門さん、カワセミ人の翠さん見ろ!パンツどころかスカートすらはいてねえだろうがよぉ!!」
クラスでも綺麗所である三人の女生徒を指さしてエキサイトする委員長。
指さされた三人は居心地わるそうに
「…いや、あたしら足無い上に鱗とかあるし…ねえ?」「わたしも羽毛や尾羽根があるから…」
もごもごとそう言い合う。

「まあ、そもそも種族違うんだから興奮しないでしょ…特に私みたいなのは」
惨状を見て自虐的にそういうのは希少種である牛頭人身のミノタウルスである美濃さんだ。
彼女は豊満な胸はともかくゴツい体と他の種族に比べて割りとイカツイ顔を気にしている。
「ぼ、僕はそんな事は無いと思う!む、むしろ僕は美濃さんのことが…」
「吉田くん…!」
突如教室に湧いたラブロマンス!
みなが固唾を飲んで二人を見守る。

その時、
キーンコーンカーンコーン!
授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。

「ハイ!今日の学活はこれまでです。今日決まらなかった事案については次の学活の時間に決めますので各自意見などを用意しておいて下さいね」
「「「「「「「はーーい!」」」」」」」
委員長がまとめて今日の学活の時間が『いつも通り』に『円満』に終わる。

その後、本日の授業の終了を告げた担任が帰り支度を始める生徒を見ながらつぶやいた。
「……転職しようかしら?」



蛇足
勝手にキャラを使わせて頂いている【E=愛c^2】の作者様には多大な感謝を。
妙なSSばかり書いてすみません。


  • 学園生活にも慣れだした頃にクラス団結しての学園祭や体育祭は異種族交わる十津那学園で大きな意味を持っているんでしょうね。多様な生徒たちも何故か精神年齢が横一線になっているのもらしくて面白いです。そしてしわ寄せは教師へと収束するのでしょう -- (名無しさん) 2014-08-03 17:28:45
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最終更新:2014年08月03日 17:24