【探偵の好きなものがわかり易過ぎて辛い】

さて。ちょっとだけ雑談。
我々普通の人間にとって心地よい行為があるように、
大半の亜人達にもそうした行為があるのは想像に難くない。
(無論ここで言う心地よい行為とは卑猥な事ではない)
が、その中身は種族によって千差万別。
今回は自分の身の回りに居る亜人を例にして紹介しよう。

<ケース1 ケンタウロス
彼ら彼女らが最も心地よいと感じるのは『爪切り』である。
何だ、そんな事かと思われる方もいるだろうが、そんな単純な事ではない。
ヒヅメを持つ彼ら彼女らにとって、その手入れは冗談抜きで生き死にに関わる。
病でヒヅメを腐らせてその毒が全身にまわって死ぬ事もあるのだ。
反面、爪切り・・・削蹄と言うが、その時間は彼ら彼女らにとっての楽しみでもある。
サクリサクリと余分な爪を削ぎ、サクサクと老廃物をこそぎ落とし、
そしてピカピカの新しい蹄鉄をつけ、最後に爪を磨きあげるのである。
20余年前に異世界とのゲートが開き、ケンタウロス達が地球を訪れた時、
まっさきに街中に出現した施設が『ネイルサロン』と呼ばれるものだ。
今日では一般的な存在でもあり、地球人の女性でも爪先の美しさを求めて列を為すが、
当時は随分と奇異に思われたのではなかろうか。
十津那学園内にある『装蹄部』には、今日もケンタウロスの男女の列が出来ている。
その一角を覗いてみよう。
サクッ サクッ サクッ
「上手いモンですね」
「えへへ・・・あたし、5歳の頃からお坊っちゃんの削蹄やってますから。
 お坊っちゃんも自分の彼女さんには絶対させないで、あたしにしかさせないんですよ」
お坊っちゃんと呼ばれているのが、十津那学園2年C組のケンタウロス種族のアスカル・スターエフ君。
彼の爪を切っているのが、十津那学園2年D組の狗人のベールシカさん。
スターエフ君は地球人の彼女がいるようだが、削蹄は馴染んだ人にしかやらせたくないようだ。
「爪切りが一番リラックスできる時間だからねぇ
 でも、ヘタクソがやると深爪して痛くてたまらないんだ。
 オレの彼女になんて、もう二度とやらせたくないね。
 あ、ベルさ。そこもうちょっと削って。そうそう」
ベールシカさんがサクサクと小刀でスターエフ君のヒヅメを削っていく。
確かに、お世辞にもキレイとは言い難い汚れが取れたあとには、真っ白なヒヅメが出てきた。
「ここまで出来て一段落ですね。
 あとは蹄鉄の取り付けですけど、それは男子部員にまかせて、あたしは最後の仕上げ待ちです」
スターエフ君のにやけた表情と、ベールシカさんの笑顔が印象的だった。

<ケース2 ホビット
彼ら彼女らが最も心地よいと感じるのは『足の裏のブラッシング』である。
にわかに意味を理解するのは難しいかと思われるが、詳しく説明していこう。
ホビットは総じて足裏の皮が厚く、毛に覆われているので、靴をはくことはなく過ごす。
よってその汚れがちな足裏をキレイに洗ってブラッシングすることが、何より快感なのだという。
これもそうそう特殊な事では無いだろう。
地球人に例えるならば、エステサロンを好む人と同じ感覚と言えよう。
20余年前に異世界とのゲートが開き、エリスタリアの人々が地球を訪れた時、
ホビットの渡航者達がこぞって通いつめたところから、今日の『フットケアサロン』の流行につながったのだという。
という訳で、学園内にある専門学校部門、十津那美容専門学校の様子を覗きにきた。
ヘアカットのモデルをするのが一般的なイメージかと思うが、ホビットたちは足裏美容のモデルを好む。
そこで、同じクラスの女子のエーネミュンデがモデルになったと聞いたので、インタビューする事にした。
シュ シュ チャッチャ チョキ チョキ
小気味良いリズムで足裏の毛のカットから始まったようだ。
足裏の巻き毛も放っておくと伸びてくるようで、定期的なカットが必要との事だ。
「んっとね。美容師さんはやっぱ凄く上手だよ。
 自分でやっても上手くいかないし、昔はお母さんとか友達に切って貰ってたんだ」
次にシャンプーとリンスの行程に入る。同時にマッサージもするようだ。
「ん・・・ふ・・・ふいい・・・」
エーネミュンデの目がトロンとしてくる。心地よさそうだ。
「普段はあまり触れない部分だからかな。
 マッサージされると、くすぐったいっていうか、何って言うか・・・ふぅ」
最後はドライヤーをかけつつ丁寧なブラッシング。
どんな心地か聞いてみたかったが、エーネミュンデは半分眠りに落ちていた。
よほど気持ちいいのだろう。
1時間ほどかけて、足裏カットとブラッシングは終了した。エーネミュンデも満足げだ。
「ところで・・・」
「インタビュー料だね。しっかりしてるよホント」
自分はエーネミュンデに十津那学園近所の有名美容室のクーポン券を手渡した。
「エヘヘ。毎度ありー」

<ケース3 エルフ
一番身近なのは同じクラスで隣の席のウッドエルフ、カニガデルニナである。
彼女に最も心地よい行為を尋ねてみた。
「え?セックス」
エセックスとは英国あるいは合衆国の地名であり、それを由来とする軍艦の名前である。
「そうじゃなくて、エッチ。子作り。一番気持ちいいのでしょ?」
「いや、あの、卑猥なのは今回は無しで」
「卑猥?何で?普通じゃん。
 鳩村くんだってエッチするのが一番気持ちいいでしょ?」
「いや、自分童貞なんで」
やはり人間とエルフとでは価値観の相違がある。参考にならない。
「あ!そっかそっか。筆おろしの話ね。
 今夜で大丈夫?赤ちゃん出来ないタイミングだけど。ゴメンね」
駄目だ。話が変な方向にねじれていってる。
ここは断固断らなければなるまい。
「地球人ってのは、本当に頑固な人が多いね。
 ムリしなくたっていいのにねぇ。え?違うの?
 ああ、そっかそっか。一番気持ちいい場所の話だったのかな?
 これ皆違うよ。エルフ共通じゃないと思うな。私はアソコと乳首」
待て待て待て!ていうかまだ教室に人がいる!
自分すげー変な目で見られてるぞ!
「私の地元に『いかれエルフのグビナシオン』ってのが居てさ。
 これがトンデもないヤツで、エルフなのにエッチするなって言い出したヤツなんだ。
 神の御名において身を清純にせよ、とか言っちゃうようなヤツなの。
 神様は世界中に種を撒けっておっしゃってるのにね。変なの」
ああ、もうこれ以上話を聞いても、記事が18禁になるだけだ。エルフはケースから外そう。
「それでお尻でって、もう話終わり?私はいつでもOKだからね~」

<ケース3 猫人>
彼ら彼女らが最も心地よいと感じるのは・・・ってこれ有名すぎて記事にならんな。
言うまでもなく『マタタビ』と『ネコジャラシ』である。
今も教室の片隅でバカップル丸出しの二人がネコジャラシでじゃれあっている最中だ。
どうも猫人は本能的に目の前で動くものを狩りたがる習性があるようで、
静電気でホコリを吸着する化学モップなどを目の前でチラチラされた日には、
そりゃ左右から手をシュパシュパと出さざるを得ないだろう。
「にゃ!んにゃ!にゃにゃにゃ!・・・ふう」
「よく飽きないよね、これ。フワフワなのがツボに入るのかな」
「にゃー!にゃにゃにゃ!」
「はい、今日の分は終わり。もう帰ろ」
「マ・・・マタタビは無いのか?」
「あれはトロンとしすぎるから駄目。帰ってからね」
十津那では見慣れた光景ではあるが、リア充には爆発してもらいたい。

<ラストケース 蟲人>
おっと。シャーロックからメールだ。
シャーロックとは、マセ・バズークからの留学生(多分)で、自分がつけたアダ名だ。
自称『地球観測・解析型強行偵察蟲36号』 ゆえに36(シャーロック)だ。
また何か事件を嗅ぎつけたようで、自分に助手のように動けとの催促の内容だった。
自分はシャーロックに、蟲人が一番心地よい行為についてメールした。
『言うまでもない。情報の収集と菌糸ネットワークの拡張。
 これこそが我らの最大の望みであり心地よい事だ』
ウソつけ。
『そうそう。ゲート祭りで買った水飴、お土産で持って行こうか?』
即座に返信が届いた。
『何秒後だ!?地球人独特の曖昧な表現は許さないぞ!
 そうだ。ついでにワタアメも購入してきたまえ。私も実食してみたいんだ』
これも有名すぎて記事にならんなぁ


  • 面白い。種族観とキャラ像が素晴らしい合わせ味噌のハーモニーでした。ケンタと狗人の関係は果たして彼氏彼女に理解してもらえるか!? -- (名無しさん) 2014-08-24 01:25:29
  • とても気持ちがふわふわする説得力のある解説でした。好きなことに対する種族柄も面白かったですね -- (名無しさん) 2014-08-31 17:35:08
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最終更新:2014年08月31日 01:46