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【倍速】実況スレ【お前死にすぎ】まとめ

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island-of-refugee

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何ここ?


倍速スレのまとめサイトです。こっち(有志によるまともなサイト。進行状況や各種データなど)
も参照するといい感じ。
サイトの方向性としては、視聴中に「こいつら何訳わかんないこと言ってるんだ?」
と思ったときに見ると多少役に立つことを目標としています。
まぁ変に気張らず馴れ合いはほどほどにやりましょうや。

進行に応じて内容を書き加えて頂けるととても嬉しいです。








次の予定


ピアノ配信








 1958年に大阪で生まれ、1970年代に市民権を得て以来、回転寿司というもの
はわれわれ庶民のなじみの深いものになっている。それまでになかった手軽さ
や安さによって、多くの回転寿司チェーンは規模拡大に成功した。がしかし地
方には、このような有名チェーンだけでなく、実に多くのローカル回転寿司屋
というものが存在する。このような回転寿司屋は、趣向を凝らした数多くの魅
力あるネタで我々を楽しませてくれる。


 さて、先日私は友人に誘われ回転寿司屋に行くことになり、寿司券3000円を
もらった。どうやら商工会から貰ったものらしいが、この店がいかにもローカ
ルな雰囲気をかもし出している。さてこの店、聞いたこともない店だったが、
私は少し期待した。どんな食べ物屋でもうまい店はローカルな店と相場が決ま
っているものである。さらにタダで食べられるのだから、余計な煩悩もない。

 約束の日になり、私は朝食を抜いて事に備えた。空腹に勝る調味料は無しと
は東西新聞社社主の弁であるが、まさにそのとおりだと思う。これは貧乏根性
とは違う。寿司に対する最低限の礼儀なのだ。
 そんなこんなで支度を済ませているとき、いきなり例の友人から行けなくな
ったの一報が入った。最近言わなくなったが、いわゆるドタキャンである。私
は朝食を抜いてまで事に備えたというのにこの男、甲子園が見たいなどという
ふざけた理由で断ってきたのだ。
 確かに明日のない球児たちの熱い戦いは、我々をも熱くさせてくれる。さら
にそれは、録画ではなく生で見るからこそ価値があるというのも納得できる範
囲である。がしかしそれは甲子園を見ることでしか味わえないことであろうか。
答えはもちろんNoだ。寿司屋であってもそのような感動を味わうことは十分で
きる。レーンを回るトロ1つとっても、そこには漁師との壮絶な戦いを感じ取
ることができよう。それは甲子園球児に勝るとも劣らない気迫であろう。球児
は白球を追い、漁師はマグロを追う。そこには何の違いもない。と、メールを
返そうと思ったが、今後の人間関係を考え、最低限の返事だけをした。
 こうなると困ったのは私の胃袋と余った寿司券3000円分である。しかもこの
寿司券、一丁前に有効期限などというものをつけていやがった。ローカルな店
が商魂を必要以上に見せるものじゃないと思うのだがどうだろう。普通は金券
に有効期限をつけるのは当たり前の話ではあるが、そのときは胃袋と甲子園の
おかげで無駄に腹が立った。とはいえ腹がなって仕方ないので一人でいくこと
にした。

 最近「ヒトカラ」と呼ばれるものが流行っているらしい。一人でカラオケに
行くという行為を指すそうだが、これには相当な勇気と決断がいるそうだ。が
しかし、この「ヒトスシ」も負けてはいない。そう聞くと、「寿司屋なんざ一
人で行ってこそ本物よ」という人がいるかもしれない。がしかしそれはおそら
くカウンターの寿司屋での話であろう。回転寿司におけるヒトスシの恐ろしさ
を知らずして、ヒトスシを語るべきではない。さらにそのときは土曜のお昼時
のため家族連れが多く、難易度はストップ高まで上がった。また私は無駄に自
意識過剰な所があるため、このヒトスシはより敷居の高いものとなった。

 寿司屋へ出向くと案の定満席だった。仕方ないので待つことにして、ヒトス
シ初心者の私は、ヒトスシとはどのようにあるべきかと考えることにした。
 無い頭で個人的にヒトスシ道を考えると、
1・ヒトスシは寿司上級者のするもの
2・ヒトスシは常に周りから見られているもの
このようなものが挙げられる。体裁を良くするため3項目欲しかったが、所詮
はヒトスシ初心者の頭。たかが知れているのである。こんなことを考えながら
ふと上を見ると、テレビが置いてあった。しかも甲子園。私は例の友人を心の
中でバカにしてうさを晴らした。

 さて、カウンターが一席空き、私は威勢よく立ち上がった。寿司上級者たる
もの、寿司を食べられる喜びを表現する必要があろう。私は寿司上級者でもな
んでもないのだが、ヒトスシをしている手前やむを得ない。
 案内されたカウンターは左は親子連れ、右は部活帰りかなんかの学生3人で
あった。私の「ヒトスシ」デビューは1死2塁3塁というちょっと危険な状況
からの登板となったのだ。テレビに映るマウンド上の絶体絶命な投手に親近感
を感じつつも、私は座った。 
 さて、ここで寿司初心者はいきなり流れている皿をむやみやたらととってい
くものである。私の知り合いに鍋奉行な男がいるのだがこの男、寿司屋におい
てもその奉行っぷりをいかんなく発揮したことで有名だ。席に着くなり流れて
くる寿司を取っては皆に配り始めたのだが、それがみんな納豆巻きだったのだ。
回転寿司は時々ネタが偏って流れることがあることから生まれた悲劇ではある
が、果たして寿司屋に来て最初に食べたいネタが「納豆巻き」という人間はい
ったいどれくらいいるであろうか。少なくとも私の周りには誰一人いない。さ
らにそのときは散々待たされた挙句、このザマなのだから手に負えない。それ
でなくとも最初に皆に配るものはおしぼりと皿、箸、お茶であろうにまったく
この大馬鹿三太郎は何を考えていたのだろうか。結局その後この男は納豆巻き
を一人で処理することなり、挙句、納豆大臣と呼ばれる羽目になった。

 私は寿司上級者でなくてはいけないので、しばらく寿司の流れを見ることに
した。どの世界であっても上級者はいきなり勝負にでないものである。いきな
り大張りするバクチ打ちが大損して首をつる話はよくあること。あの日本を代
表する大打者、山田太郎であっても初球から大振りすることは滅多にない。一
流とはそういうものなのだ。
 今日のマグロは脂が乗ってそうだな、エビも身が締まってら、などと考えて
いるフリをしてレーンをぼうっと見てると、実に様々なネタが右から左と流れ
ていく。
 最近の寿司屋は突拍子も無いものを流してくるので、ハンバーグが流れてき
たところで驚きもしないし、それどころか食べたりすることもあるのだが、今
回だけは違った。ローカルパワー全開のオーダーで我々の度肝を抜かすのであ
る。
 最初に流れてきたのはウニ丼である。値段を区別するための皿が必要以上に
豪華なのが、ウニ丼がこの店におけるボスであることをまざまざと見せ付けて
くれる。ところでこの「豪華な皿」、値段表に無い皿なのだがいくらなのだろ
うか。店員に尋ねたところ700円だそうだ。700円の代物である。店長の「地元
の、高いけど本当においしいウニを食べて欲しい」という気概が窺える。その
割には普通のウニもあるのだから、この「ウニ丼」の存在意義は何なのだろう
か。それにしても値段表にしっかり載せないのは、いささか詐欺くさいのだが
どうだろう。それほどローカルの寿司屋というのは経営が厳しいものなのであ
ろうか。賑わってはいるのだが。このように1つのネタからでも様々な事情が
透けて見えてくるものである。これが寿司上級者なのである。
 次にきたのはクッキーである。れいとうビームを喰らったあとに、はかいこ
うせんを急所に喰らったような気分になったのは言うまでも無い。どうやら地
元の銘菓らしいのだが、店長の郷土を想う気持ちの表れであると強引に解釈し
た。このクッキーはレーンを3週した挙句、やっとこさ左にいた子供がとって
行った。地方は就職採用率がまだまだ低いというが、このクッキーはまさにこ
のことを体現していると言えよう。このように1つのネタからも様々な事情が
透けて見えてくるものである。これが寿司上級者といえよう。
 間髪あけず中トロがきた。じこさいせいである。がしかし真ん中には謎の国
旗が立っていた。どうやらこの町の旗らしい。またしても店長の郷土愛に満ち
た配慮に感銘を受けた。さてこの旗、もちろん「さび抜き」を示すものなのだ
が、中トロを子供に食べさせるほど豊かな家族がいるのであろうか。いや、い
るからこのようなものがあるのであろう。これも格差社会の一面といえよう。
このように1つのネタからでも様々な事情が透けて見えてくるものである。こ
れが寿司上級者であるのだ。
 とどめにきたのがたまごっちである(正確にはたまごっち風のゲームなのだ
が)。回復が追いつかないことはポケモンにおいてよくあることだが、ヒトス
シ界においても例外ではないのだ。これが役所の振興課かどこかが作ったオリ
ジナルのゲームなら、この店長の郷土愛はいよいよ本物であるが、私にそれを
確認する勇気は無かった。引き際を見極め、潔く手を引くこともまた、寿司上
級者に無くてはならない要素の一つである。
 ところでこのオーダー、何かと共通点が見えないであろうか。そう、1997年
の中日のオーダーである。一番立浪(ウニ丼)はチームのスター。二番鳥越(ク
ッキー)は確実に仕事を決める(クッキーは子供相手には必殺仕事人であろう)。
三番パウエル(中トロ)は高打率を残すアベレージヒッター。四番ゴメス(たま
ごっち)は一発屋だけに破壊力抜群である。おそらくこの店長は大の中日好き
と見て間違いない。中日の何たるかを寿司を通して伝えようという趣向だ。こ
のように4つのネタからでも様々な事情が透けて見えてくるものである。これ
が寿司上級者の本質といえよう。

 このように寿司上級者の職務を全うしていると、一人の店員が声をかけてき
た。
「どうかされましたか?」
どうもこうもない。私は寿司上級者としてあるべき姿を晒しているのである。
私のこのような配慮を考えず、開口一番声をかけるあたり、この店員は新人と
みて間違いない。とはいえただぼけっとしていた私に声をかけるのも無理は無
く、いい加減寿司上級者ごっこも飽きたので皿をとることにした。
 さて私は、こはだやいわしなどの光物が好きな貧乏くさい食べ方をするのだ
が、いかんせんそこまで人気のあるメニューでもないので、ほとんどこない。
仕方ないので店員に頼むことにしたのだが、丁度目の前にいたのが、先ほど声
をかけてきた店員である。名前は田中だそうだ。私は田中にこはだとしめ鯖、
あじを頼んだ。そうして出来上がるの待ちながらテレビの甲子園を見ていると、
何かが割れる音がした。田中である。
 ここの回転寿司は一番したのレーンに寿司ネタ、二段目にわさびや箸など、
一番うえに湯のみが流れるという、まるで第三セクターの事業を見ているかの
ような無駄な構造になっている。一番上のレーンはなかなか高い位置を流れて
おり、店員が客に寿司を渡す際に危なっかしそうに渡しているのをよく見た。
そして今回、おそらくそれにひっかかって湯のみが割れたのだ。そして田中が
割ったのだ。田中は客に頭を下げて破片をホウキで片付けていた。そして先輩
に怒られ厨房へと下がっていった。私が頼んだこはだとしめ鯖、あじはどうな
るのだろうか。

 私は仕方ないのでほかの人に同じネタを頼んだ。その人はなかなかの手さば
きですぐに私に渡してくれた。田中とは月とすっぽんである。私は、時期外れ
ではあるが妙に脂の乗ったしめ鯖を食べながら、寿司職人を見ていた。すると
田中が厨房から出てきて再び何かを握り始めた。私は目線をそらさず田中の一
挙手一動を見ていた。この位置から何を握っているのかはわからなかったが、
光物を握っているのがわかった。どうやら光物3種らしい。一つはしめ鯖であ
ることはここから見てもよくわかった。私は嫌な予感がした。予感は的中し、
田中は私のところに迫ってきた。私は食べるのが遅いので、まだテーブルには
光物3つとも残っていたのだが、田中はそんなことはお構いなしに迫ってきた
のだ。つまり二重計上である。田中は無駄に大きな声で私が頼んだネタを復唱
した。一度大失態を犯している田中としては、なんとしても名誉挽回といきた
いところであるから、頑張るのも無理は無い話だ。がしかし私としては、いく
ら好きな光物とはいえ、2度も同じネタを食べるのもきつい。おまけに今日の
しめ鯖は無駄に脂が乗っているので、連荘はいやだ。私は頼んでませんと言っ
た。後ろめたさもあるが、それほどにしめ鯖の脂の乗りっぷりは素晴らしかっ
たのだ。さて、そこで困ったのは田中だ。ほかの近くの人にも尋ねてはいたが、
皆首を横に振る。当たり前である。おそらく田中は、私が頼んだネタだと確信
はしていたが、一応他の人にも尋ねたのだろう。私はしばらく田中の様子を見
ていたのだが、なんとこの田中、客が見ている前で食べてしまったのだ。寿司
屋といえば、何分かに一回は手を洗うほど衛生状態に気を使うところである。
それにもかかわらずこんなことをしてしまった田中、当然先輩に怒られまたし
ても厨房に下がっていった。一体あの男は何を考えているのであろうか。納豆
大臣も裸足で逃げ出すほどの大馬鹿三太郎と言える。

 そんなこんなで私は光物ばかり食べていた。レーンには白身から光物、赤身、
貝まで潤沢に流れていたので、特に注文することなく食べ続けた。がしかし、
ある時を境に急にサーモンだけが流れてきた。サーモンの大名行列である。私
はすぐにこの異常事態を察知した。「田中だ。」田中は私が光物だけ食べてい
ることを見て、先の復讐に出ようと考えたに違いない。厨房からサーモンを流
しまくっているのだ。なんと下劣な男であろうか。私は田中に負けるのが嫌だ
ったので、流れてくるさして好きでもないサーモンを食べ続けた。左にいた子
供は私を見て一緒にサーモンを取りまくっていた。大味なサーモンが好きな子
供は結構多い。おそらく彼は私をライバル視しているのであろうが、私の敵は
田中だ。

 ふと気づくと、私のカウンターには大量の皿が積んであった。私の全財産は
3000円であることを思い出し、サーモン戦争の幕を閉じることにした。
 会計を済ませようとレジに行くと、そこには田中がいた。田中は厨房でサー
モンを云々などというのは、私の妄想だった。よく考えてみると田中に非は何
も無いのである。田中はまじめな寿司職人であるのだ。私は自分の非を心の中
で恥じ、会計を済ませた。がしかし、レジに出た数字は5000円を超えていた。
私は寿司券をもらったことで寿司がタダであると心の中で思い込みすぎ、
3000円の限度額を忘れていたのだ。本日三回目の大馬鹿三太郎がここに現れた。
目の前にあるものは、冷酷な厳しい数字と、隣に立つ阿弥陀仏、田中様であっ
た。
 私は、友人も3000円分の寿司券があることを思い出し、友人に連絡を取った。
友人は「今9回表でいいところだからちょっと待ってて」と言って切った。寿
司屋のテレビでは3回表の様子が流れていた。

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