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飛龍の槍・本編04

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匿名ユーザー

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―――浅い!
予想より浅い角度でビームが入る。
「イチッ、ゼロォッ!!」
プログラムによるフォームは自分の理想フォームだが、書籍プログラム。大きなズレに対する修正は不可能だ。
反射したビームは玉砕黒天をかすめ、地上の廃倉庫へと着弾する。
『よりによって槍のところに!?でえぇーいっ!』
『槍のところに!?槍は無事なの!?』
「槍は……!?」
射撃が効かないと気付いたのか、大漁犬が噛みついてくる。
カメラを拡大し、穴の空いた工場を追尾しながら回避行動をとる。
煙が晴れ、飛龍の槍の黄色い本体が見える。
「あれは―――無事よ!飛龍の槍は無事!」
『よかった!先輩、第二射いけます!』
「いや、待って!」

大漁犬が飛びかかってきていた。
左の足先に噛みつかれ、脚部クッション用オイルが血のように飛び散る。それが大漁犬の顔にかかる。
「くッ!!」
足首ごと切り放し、テニス・ドゥエチルアーのつかで大漁犬の頭に追撃を加える。
足首と大漁犬がオイルの軌跡を残して加速しつつ墜落する。だがそれに呼応してシーソーのように左右から別の大漁犬が飛びかかり、捕獲ネットを放出する。
―――不味い!
ネットで捕えて私もろとも自由落下する気だ。
脚部クッションを失わせたのは布石か。クッション無しでこの高さから落ちれば、リニアシートなど意味をなさない。
背筋が凍る。が、その危機は回避された。
「大空……」

目の前に重装甲の機体が剣を手に、光の筋を発しながら舞っていた。
通信機からいくつもの声が流れる。
『グレースちゃん、無事!?心配したのよ!』
『後で真っ赤な炎の花を咲かせてあげますわ』
『私たちが槍を取ってまいりますから、曙さんは援護してくださいませ!』
『アイヤー、グレースがいないとやること多すぎて大変アルよ~』
「ありがとう。でも動きが鈍いわ、いける?私の代わりには誰が乗っていて?」
『乗ってるわけないじゃない!グレースちゃんがこっちにいるってわかってたんだから!』
―――心臓の鼓動を聞いた気がした。
「それでも乗せなさい!まったく……援護するわ!雷砂、ちょっと高めに出して!」
そう言って、地上の状況を見る。
鳴砂先輩も戦っているのだろう、地上を走る色とりどりのビームが鮮やかだ。
それを目の端に捕えながら、バーニアを吹かして機体を大漁犬の届かない高さまで上昇させる。
大空の蒼い影が遠ざかっていくのが見える。

『先輩、嬉しそう……嫉妬しちゃうな~。発射します!』
「何をバカなこと言ってるの!」
蒼穹のビームが地上からの対空ビームをかき消しながら近づく。
「はっ!」
最高の角度!
微妙なズレくらい想定内。『3』のスイッチを押してパターンを選択し、そしていつものタイミング通りにレバーを押し込む。
スマッシュのフォームで反射されたビームは、斜め左下、玉砕黒天へと真っ直ぐに伸び、
しかし別の巨大なビームで打ち消された。
『『飛龍の槍!?』』
一射目で廃倉庫にあいた穴から槍先が見える。
それを辿っていくと、さっきの絶衝機が4本の腕で飛龍の槍を固定していた。
私は唖然として、しばらく機体を操ることを忘れてしまった。
その一瞬の自由落下の中で狙撃されなかったのは、不幸中の幸いだったのだろう。
機体を立て直し、通信機に冷静に声をかける。
「レイナ!大空に移るわ、来て!雷砂!次の発射までの時間は!?」『了解!すぐ行くわよ!』
『あと50秒程度です!』
双方ともに快活な返事で満足する。

さっきから敵の攻撃がこちらに集中している。さっきから飛び続けているためバーニアもオーバーヒートしかけていて、ろくに回避ができない。
「しまった!」
テニス・ドゥエチルアーに噛みつかれる。高度が下がっていたのだ。
リフレクト・フィールドに歪みがおこり、ラケットのジェネレータから電撃が走る。
手首が大漁犬の重さに耐えきれなくなり、ミシミシと軋みをあげる。
油断した隙にさらに1匹、脚にも噛みつかれる。ザバーの機体はバーニアの推力に逆らってゆっくりと下降していく。
警告で真っ赤に染まるコクピットの中、レーダーが真下に音竹の接近を感知し、警告音で知らせる。

「思惑通りとは悔しいけど!」
テニス・ドゥエチルアーを手放す。
大漁犬とともに飛龍の槍への唯一ともいえる対抗手段が落ちていく。
機体一機分軽くなったザバーは一瞬上昇に転じるが、落ちていく大漁犬が捕獲ネットを放ったため、再び下降する。
バーニアを切るとともに腰の重斬刀を抜き、3機分の重さを刀身にのせて真下の音竹に兜割りを放つ。
音竹の頭が割れ、重斬刀がくいこんでいく。
音竹のフレームをくだく強い反動が肩を通してコクピットまで伝わり、シートがガタガタと揺れる。
負荷に耐えきれなくなった手首は弾け飛び、ザバーの腕が音竹の肩に突き刺さる。

『あと10秒!』
突然、雷砂の悲鳴が聞こえる。
いや、さっきまでは熱くなっていて意識に届かなかったのか。
自分の夢中さを反省し、辺りの状況を調べる。
「―――あっ」
しまった。
大空はここまであと30秒はかかる。
鳴砂先輩はまだ槍まで辿り着けそうにない。
雷砂の援護は敵の対空砲火を抑えるので限界だ。
そして発射直前である飛龍の槍は―――こちらを狙っている。
捕獲ネットに絡み捕られ、しかもテニス・ドゥエチルアーを失ったこの私のジンガクセイザバーを。
槍先にエネルギーの集中が見える。
『先輩ぃーっ!』
雷砂の悲鳴に爆音が上書きされ、せっかくの雷砂の声が途中から聞こえなくなる。

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