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自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

1 序章

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大陸の東の果ての洋上に浮かぶ弧状列島を支配するドーラ帝国の帝都、アザマの中心には天に向かって伸びる巨大な塔がある。
この塔は「天樹の塔」と呼ばれ、遥か昔の過ぎ去りし第3期文明時代の終わりごろに建設され推定200年以上のも長い間、帝都に存在し続けている。
その高さは旧尺法で約630メルトル、新尺法では1663ドラコルと計測され、未だこの過去の文明の被造物を超える建物はこの世に存在しない。
塔を支える骨組みの殆どはとっくの昔に赤錆びていて、建造当時の美しさは文献の中にしか無いが、名前のとおり天に届くか、と思うほどの塔の大きさはその威容を自身の重量と共に保持し続けていた。
だがその天樹の塔が200年も経過しても劣化・風化によって倒壊しないのは、塔自体の構造材の特別な強さによるものではない。
この塔に支部を構えている大陸魔術士学院、別名を魔術士ギルドと呼ばれる組織の構成員である魔術士たちの知恵と労力の結晶たる、第4期文明時代の発掘技術である「魔法」の成果により、食い止められているのだ。
その魔術士学院の研究室は、地上350メルトルの位置にある展望フロアに置かれていた。

「先月末に大陸北方にて発生したエーテル嵐のドーラ本土上空への到達は計算では遅くとも明晩、予想されるエーテル係数は4.1。
 今月の日照率や春の作物への影響はさほど大きくはないでしょう。 天候も先々月に比べれば安定する見通しです」
「さすがに冬も過ぎ、去年よりは春の到来は早いようだな。
しかし、こうエーテルの飛散が少なすぎてもドラゴン、特に野生種は活力を得られず飢えて人里を襲うようになる。
軍用や民間の家畜種も機嫌が悪くなり、竜便の運用にも影響が出る。 特に、大陸の学院との研究書簡のやり取りが滞る。
良し悪しだ」

エーテル気象学科の研究主任の地位にある魔術士は、部下の報告に耳を傾けながら資料に眼を通す。
塔の頂上に設置されたエーテル検出器は遥か上空を行くエーテル嵐の気流を検知し、それの大気に与える影響を調べ報告するのがこの研究室の仕事だ。
定例報告書には、その他にもドーラ各地から寄せられた様々なエーテルと気象への影響を調べたデータが記載されている。
彼は一旦暖かい湯気の立ち上る黒茶のカップに手を伸ばしかけ、めくった資料の項目と数値の中に気になるものを見つけて手を戻した。
さらに、資料のページを二枚、三枚とめくる。

「大青洋沖に局所エーテル渦の検知……? 係数12.7、位置は沖合い約130キロメルトル、海底約200メルトル以下……? なんだこれは?」
(注…新尺法は旧尺法に比べてキリが悪く不便なので、官用公式文書を除いて一般的には旧尺法が未だに使われ続けている)

「はい、東部旧クリル領沿岸の支所にて変異生物の研究を行っていた魔術士学院生が偶然エーテル渦の検出を行い、沖に船を出して発生源を測定したものです。
おそらく誤検出でしょう。 そのような位置に、魔法を発生させるときと同等の係数のエーテル渦が自然に顕現することはまずありません。
発生源の周辺に重度エーテル汚染を受けた物質か、土地があるならともかく……海底ですよ?」

部下の魔術士は笑って主任の問いにそう答えるが、主任は誤検出と言う言葉で納得はしなかった。
さらに、資料の詳細に眼を通す。
最初にエーテルを検知したのは陸地、浜辺での事。
海に近づくと検知が強まり、離れると弱まる事から発生源は海にあると判断したため、船を調達して沖に出た。
エーテル係数の計測は沖合い80キロメルトル、100キロメルトルの位置でも測定した数値が掲載されており、それぞれ10.2と11.4だった。
さらに、130キロメルトルの位置でも、船上での計測値は12.7だったが、海中4mに潜っての計測値が15.5、船の高さ4mのマスト先端での計測値が10.5になっている部分を見て主任の額に汗が流れた。
すぐさま資料を横に置き、硯から筆を取るとその辺の白紙の紙に数字を書き込んで計算を始める。
部下は主任の様子に最初は唖然として、何を血相を変えて計算を始めたのか、と思って居たが、その式と数列が進むごとに彼も顔色を変え始めた。

お「係数の数値が距離比例していくならば、発生源に近づくに従ってそのエーテル係数の大きさは増えていく。
そして、陸地から検出でき、さらに130キロメルトルもの沖合いまで進んだという事、
さらにさらに、高さでも係数が変化、それもこれだけ大きな振れ幅があったと言う事は、エーテル渦の形状は平面的な円ではなく球体、いや凸レンズ状!
報告者は単純に高さ比例から発生源を海底だとしたが、発生源は海底ではない。
海底よりもさらに下! 本当の発生源は……海底下約20キロメルトル以上だ……!
この、半径が130キロメルトル、半径だけで130キロメルトルに達する広大すぎる範囲全てがエーテル渦……!
予想される中心地でのエーテル係数は史上最大規模……いや、第4期文明を滅ぼした超巨大エーテル嵐、『大災厄』にも匹敵する!!
こんな規模のエーテル渦が、魔法として発動を開始したら……!?」

一心不乱に紙の上に筆を走らせ計算数値を見つめていた主任が顔を上げ、青ざめた顔を同じく部下とともに見合わせた。
主任も部下も、自分の体が震えているのがわかる。 エーテルは魔法を発動させるパワーソースであり、それ自体がエネルギーの奔流だ。
その目に直接見えないエネルギーが物理的現象として物質に影響を与える状態を魔法という。
大きな魔法を使うには、大きなエーテルの力が要る。
エーテルを水の力に例えるならば、岩を押し流すには川が洪水を起こす規模のエネルギーが必要となる。
それが堤防などの手段によって氾濫を抑えられるならば問題は無い。
制御されたエーテルの洪水を魔法と呼び、魔法を発動させるエーテルは通常、ダムのように何らかの手段で蓄積され、留められている。
魔法とはそのダムの水を任意に放出するのに等しい。 では、制御が不可能なほどのエーテルの大氾濫は、どうなるのか?
少なくとも、報告書と主任の計算結果によればダムの大きさは半径130キロメルトル、深さ20キロメルトルという超巨大な規模で、その全てにエーテルが満杯になって、しかもいつ決壊するかわからない。
つまり、予想される事態は、エーテルの暴走による大災害。 それも空前規模の大災害という計算結果に、二人は震えが止まらなかった。
いや、彼らの体だけでなく机や、その上にある黒茶のカップもカタカタと震えていた。
……そうではない。 部屋全体が震え、少しずつ大きく揺れるようになっていた。
魔術士学院のフロアが、天樹の塔全体が揺れる巨大な地震が帝都を襲ったのは、その数秒後の事だった。




同日、同時刻。
ドーラ列島が存在する惑星とは異なる宇宙、異なる世界のどこかにある別の惑星の、やはり似たような大陸の東の果てにある弧状列島が大震災に見舞われた。
後に、超時空転移大震災と呼ばれる事になる、一連の災害、そして苦難の始まりである。

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