「ヤ…ヤバかった! 今のはマジでヤバかったッ!」


上方から迫る手榴弾を察知した億泰は、既に6発目のカプセルに掴みかかっている『ザ・ハンド』の肩を踏み台にして、本体自らが手榴弾を空中キャッチ、爆発前にそのまま中空に投げ捨てることで間一髪の回避をしていた。
億泰を仕留めそこなったことで、あからさまな舌打ちをするフーゴ。
バックステップで再び『ザ・ハンド』の射程距離外まで間合いを広げると、懐からもう一発の手榴弾を取り出し、億泰に見せつけるように右手に握りしめる。


「まったく本当にしぶとい男だな、君は……。
まあいい、手榴弾は『まだ』ある…… 次こそは間違いなく仕留めてやるよ……
行けッ! 『ヘイズ』ッ!!!」
『うごあォァ――――――――ッ!!』

フーゴは手榴弾のピンに指をかけたまま、『パープル・ヘイズ』の拳から再びカプセルを射出させた。



――――わかった―――――6発だ―――――

一方、億泰は今の攻防を観察して、『パープル・ヘイズ』の弱点を一つ発見していた。


奴のスタンドはウイルスのカプセルを1発ずつしか撃ってきていない。
もし大量に何発も撃ってこられるのだとしたら、『ハンド』で捌ききれないほどの連射をすればいいからだ。
それができないということは、カプセルを一つ生み出すにはそれなりの時間がかかる。
『スター・プラチナ』が連続して時を止められないのと同じように、奴の『パープル・ヘイズ』もカプセルを一つ使えば、新しいカプセルを作るのに僅かな時間がかかる。
1発ずつ撃つことで、作り出すカプセルに時間差が生まれ、弾切れを防いでいるということだ。
問題は、カプセルの数……
さっきは右拳からのカプセルを3発さばき、次に左拳からの3発目のカプセルと同時に手榴弾を放ってきやがった。
俺が手榴弾を回避した直後に7発目のカプセルを撃たれていたら、今度こそ回避しきれずにウイルスを浴びていただろう。
奴は7発目を撃たなかったんじゃあなく、撃てなかったんだ。
『パープル・ヘイズ』は右拳に3発、左拳にも3発、計6発のカプセルしか同時に作り出すことはできない、そういうことか!



それさえわかればこっちのものだ、と、いつになく聡明な億泰は再びフーゴとの距離を詰めにかかる。
『パープル・ヘイズ』が右腕をかざす。

1発目ッ!!
2発目ッ!!
3発目ッ!!

先ほどと同じように、向かい来るカプセルを『ザ・ハンド』で華麗に処理していく。
右のカプセルを3発とも撃ち終えた『パープル・ヘイズ』が次に左腕の拳を億泰に向ける。
そして、左拳から4発目のカプセルが射出されようとする直前―――


「今だァァッ!! 『ザ・ハンド』ッ!!!」

突き出された『ヘイズ』の左拳の目の前の空間を『ザ・ハンド』の右腕が空振る。
そして、削り取られた空間に吸い寄せられるように、『ヘイズ』の左拳に備えられた3つのカプセルをすべて吸い寄せる。
そして、『ハンド』の掌をひるがえし、3つのカプセルすべてを消し去った。

「なァ―――」


よしッ!! フーゴの攻撃のリズムが狂ったッ!!
左拳を掲げた瞬間にカプセルを引き寄せ、すべて消滅させる。
1発ずつ撃ちこんでくる予定だったフーゴは5発目、6発目のカプセルで俺を足止めすることができなくなった。
右手の1発目のカプセルが復活するまでにはまだ数秒かかる。
カプセル2発分の時間の猶予が、フーゴを丸裸にした。

『パープル・ヘイズ』のウイルスを使いきってしまったフーゴは、焦ったような手つきでその手に握る手榴弾を投げつける。
今度は山なりの放物線ではなく、億泰に向かって直球だ。
だが――


「どらァァ!!!」

カプセルを失ったフーゴが苦し紛れに手榴弾を放ってくることなど予想の範囲内。
さっきみたいに『カプセルと同時』でない限り、爆発前に俺の『ザ・ハンド』でカンタンにかき消すことができる。
そしてこの距離なら手榴弾を消すと同時にフーゴ本体を『ハンド』の射程内に引きずりこめる。



かつて億泰の頭がここまで冴えていたことがあっただろうか?
『ザ・ハンド』の掌が投げつけられた手榴弾を消滅させる。
そして、引き寄せられたフーゴ本体に向かって、再び『ザ・ハンド』の掌を振りかざす。

「今度こそ終わりだッ!! くたばれッ!! フー――」






問題があったとすれば――――


「ゴッ―― ふッ………」


億泰の胸に、小さな鉛の弾が貫通した。
何をされたかもわからぬまま、膝を付きそのまま地面に倒れる億泰。
スタンドを発現させることもままならず、そのまま気を失ってしまった…。


「―――――ァァんてなァッ!!!」

戦いに勝利したフーゴが、邪悪な笑みを浮かべる。
億泰の胸元を貫いたのは、フーゴのポケットにまだ残っていたリボルバー式拳銃の予備弾薬。
撃ち出したのは、いまだ新しいカプセルを精製しきれていない『パープル・ヘイズ』の右腕。
かつて承太郎と仗助の二人が『虫食い』と呼ばれるスタンド使いの鼠を『狩り(ハンティング)』したときに用いたものと同じ攻撃方法である。
『ザ・ハンド』の掌が手榴弾を消し去った直後、手榴弾と同じ軌道に弾丸がはじき飛ばされる。
スタンドの破壊力Aを誇る『パープル・ヘイズ』から撃ち出された弾丸。
それが『ザ・ハンド』によって削り取られた空間によりさらに加速度的にスピードを増し、億泰の胸を貫いた。
『スター・プラチナ』でもない限り、この超スピードを受け止めることは不可能である。



一つ目の手榴弾で仕留めきれなかったときから、次の攻撃方法は『これ』と決めていた。
どんなド低能だろうと、僕のウイルスカプセルの数に限界があることはそのうち気づく。
最後の手榴弾をあらかじめ見せつけておいたのも、一つ目がばれた以上、隠し持って変に警戒されるより相手の動きが読みやすくなるから。
また、カプセルを使いきらされてしまったことと手榴弾を投げつけることで、オクヤスの注意は『パープル・ヘイズ』のヴィジョンから『僕本体』へと移る。
そして丸裸になったように見せることで、精密動作の苦手な『ヘイズ』でも弾を外さない距離まで接近してきてくれる。

ウイルスカプセルは囮……
手榴弾も囮……


すべてフーゴの計算通り。

億泰に問題があったとすれば、フーゴがそれ以上に頭の切れるIQ152の天才であったことだ。


「さて……即死は免れたようだな…… 心臓を撃ち抜けば一撃だったんだが、まあ『ヘイズ』にしちゃあ上出来か」

気絶した億泰に歩み寄り、『パープル・ヘイズ』の拳を振り上げる。
当然、ウイルスカプセルはすべて復活済みだ。


「とどめだッ! オクヤスッ!!!」


「波紋疾走(オーバードライヴ)ッ!!!!」


『パープル・ヘイズ』の拳が振り下ろさせるより早く、突然現れた大男の金色に光る右腕がフーゴに炸裂した。
波紋による呼吸と鍛え抜かれた身体によって驚異的な速さでの全力疾走。
フーゴを殴りとばしたその男は気絶している億泰に声をかけた。


「待たせたなッ!!」







露伴が目撃していた通り、銃創は確かにシーザーの背中、心臓の位置に作られていた。
だがよく観察してみると、心臓を撃ち抜かれたにしてはシーザーの出血量は比較的少なかった。
銃弾は心臓に達していなかった。
皮膚を貫いた数ミリの地点…心臓の手前で銃弾は止まっていた。
『くっつく波紋』と『はじく波紋』……
以前に見たシーザーの記憶を思い出す……
撃たれる瞬間、シーザーは咄嗟に波紋で防御をしていた。
『はじく波紋』の力は間一髪のところでシーザーの致命傷を防いでいたのである。

とはいえ、シーザーが重傷であることには変わりない。
すぐに治療をしなければならないが、露伴に傷を治す能力は無い。
だが――――


「『ヘブンズ・ドアー』ッ――――ッ!!」

―――――『波紋の呼吸で傷を治療する』―――――


露伴は以前、シーザーから波紋での治療を受けていた。
露伴に波紋は使えない。
ならば、シーザー自身に自分の治療をさせればいい。

僅かながら呼吸ができているということは、波紋の呼吸に必要な『肺』は無事であるということ。
シーザーは気を失ってはいたが、『ヘブンズ・ドアー』に『命令』されたのなら『無意識的に』でも波紋の呼吸を行うことは可能だ。


じきに目を覚ましたシーザーは露伴に事情を聞かされ、すぐさま億泰の加勢へと走った。
治療の『命令』を書き込んだ時、同時に露伴は以前の命令を取り消していた。
これでシーザーは露伴の命を第一に考える必要が無くなり、億泰の助けに向かう事が出来た。

この時すでに億泰とはかなりの距離があり、正確な位置は分からなかったが、手榴弾の爆発音がシーザーを導いた。
そして、すんでのところで何とか億泰を助けることができたのだ。







「弾は貫通しているが、重要な臓器は外れている。命に別状はないな……」

シーザーは億泰の傷口に手を添え波紋を送り込む。
傷口は光を帯び、やがて塞がっていった。
しばらくすれば意識も取り戻すだろう。


「チッ……死に損ないめ…… 確かに心臓を撃ち抜いたはずなのに!!」


殺したはずの男が目の前に現れた。
それに、今見せたこいつの光る能力……強力な治癒能力でも持っていたのか?
……まあいい、どのみちオクヤスはしばらく目を覚まさないだろう。
あの『空間を削り取る能力』さえなければ、『パープル・ヘイズ』の敵ではない。

「勝つのはこのパンナコッタ・フーゴだッ!! 依然変わりなくッ!!」
『ぐああるルォァァアアア!!!!』

体勢を立て直したフーゴが『パープル・ヘイズ』でシーザーを攻撃する。
迎え撃とうとするシーザーに迫るその拳を―――――


「波紋疾走(オーバードライヴ)ッ!!!」


―――素手で払い除けるッ!!!
カプセルが炸裂し飛び出したウイルスは、シーザーの体に触れた瞬間―――
蒸発するように消えてしまった。


「なッ!!! 何だと――――――ッ!!!!」
「ずああぁぁぁッ!!!」

シーザーの拳がフーゴの顔面に炸裂する。
吹き飛ばされかなりのダメージを受けたフーゴだったが、それでも何とか立ち上がる。

「バ…馬鹿なッ!! 『ヘイズ』ッ!! こいつを殺せェッ!!!」

スタンドパワーを振りしきり、『パープル・ヘイズ』はカプセルを射出する。
そのカプセルをシーザーは素手で受け止め、握りつぶす。
ウイルスは、再びきれいさっぱり無くなってしまった。

「何故だッ!! 何故効かないッ!! 何故感染しないんだァ――ッ!!」

「残念ながらフーゴ…… シーザーにきみの能力は通用しないよ」

激昂するフーゴの問いの答えたのは、いつの間に現れたのか、シーザーに遅れて現場にかけつけた岸辺露伴だった。

「きみの『パープル・ヘイズ』のウイルスは光に弱いそうだね。ジョルノによれば、室内ライトの光ですら数十秒で殺菌されてしまうと……
その話を思い出し、そして思いついたんだよ…… 室内ライトですらそれなら、仮に『太陽に匹敵する光エネルギー』を与えてやれば、ウイルスを完全に無効化できるんじゃあないかってね……
『太陽と同等のエネルギー』をもつ、『波紋』の力ならね!」

露伴の仮説は当たっていた。
全身に『波紋エネルギー』を帯びたシーザーの体は『パープル・ヘイズ』のウイルスのパワーをはるかに凌駕していた。
『波紋』の前に、『パープル・ヘイズ』のウイルスは全くの無力!
無論、波紋でウイルスを無効化できることは、ここに来る前にウエストウッドの遺体に残ったウイルスで検証を終えている。


「クソッ……そんな馬鹿な…… チクショオォォ――――!!!」

もはやただの我武者羅。
ウイルスが効かないならスタンドでの格闘だ、と、フーゴは『パープル・ヘイズ』で攻撃を仕掛ける。
しかし、そんなもの所詮は悪足掻きでしかない。

「遅えよッ! 『シャボンランチャ―――』ッ!!!」

中性洗剤を利用した、シーザーの必殺技に込められた『波紋』のスパークが炸裂する。
直撃受けたフーゴは火傷するような熱と強い電流を同時に浴びせられたような痛みを全身に受け、倒れる。
もはや敗北は確定的だった。



なんて奴だッ――― 『パープル・ヘイズ』のウイルスを無効化できる奴がいるなんて……
『波紋』だとッ? 『空間を削り取る能力』なんか比ではない。
この『波紋』は『ヘイズ』にとって天敵中の天敵ッ!!
100%勝ち目がないじゃあないかッ―――ッ


「シーザー! 気をつけろよッ!! まだ手榴弾を隠し持っているかもしれんッ」

僕にとどめを刺そうとするシーザーに、ロハンが注意を促す。
やはり、さっきの一つ目の手榴弾の爆発音を聞いていたか……
残念だな、二つで打ち止めだ、生憎もう持ってないよ……
苦しみながらも何とか立ち上がった僕とにらみ合ったまま、シーザーはジリジリと距離を詰めてくる。
どうにかして逃げるしかない。
僕が懐に手を突っ込むと、シーザーの表情に警戒の色が強まる。
手榴弾はもう無いが、『こいつ』でなんとか隙を作ることができれば……
そんなことを考えながらシーザーとのにらみ合いが続き、しばらくしたところ……


「露伴さん……? それに…… 億泰さん………?」


僕の背後から、少年の物と思われる声と、その気配が感じられた。

「来るな早人ッ!! 逃げろ――ッ!!!」

ロハンが叫ぶと同時に、僕は目を閉じて、懐で握りしめていた『それ』を地面に叩きつけた。
一瞬でもシーザーに、『それ』が手榴弾であると思わせればよかった。
『それ』は地面に達した瞬間、小さな炸裂音と激しい光を発生させた。






川尻早人エシディシに逃げられた後、吉良吉影を探し出し利用するため、住宅地を中心に当てもなく彷徨っていた。
そしてコロッセオの北部の住宅地のはずれに行き着き、そこで何かの爆発音が聞こえた。
フーゴが投げた一発目の手榴弾の音だ。
それを、吉良吉影の『キラー・クイーン』の爆発音だと勘違いした早人は、その音が聞こえた方角へ走った。
辿り着いた先にいたのは、向かい合う二人の外国人。
そして、自分の知り合いである岸辺露伴、倒れているのは虹村億泰だ。
とっさに露伴たちに声をかけたら、露伴から返ってきたのは「逃げろ」という叫び声……
次の瞬間、激しい光が目を襲い、そして……




「来るなァ!! 誰も来るなァァァァ――――!!!!」

視力が回復したシーザーたちが目にしたのは、川尻早人を羽交い絞めするように抱きかかえ、喉元にナイフを押し付けているフーゴの姿だった。
フーゴが炸裂させたのは、手榴弾ではなく閃光弾。
半日ほど前に二挺の拳銃と同時に荒木から特別支給されたものの最後の一発だ。
フーゴがまだ手榴弾を隠し持っているかもしれないという先入観があったシーザーは、炸裂する閃光弾にやや身をたじろがせた。
その僅かな隙をついて、フーゴはナランチャのナイフを取り出し、早人を人質に取ったのだ。


「動くなッ!! 全員動くなよッ!! 一歩でも近づきやがったら、この子供を殺すッ!!!」

まさに追い詰められた極悪人の姿。
フーゴに残された選択肢は、見ず知らずの小さな少年を盾にして逃げることだけだった。

「早人ォ――――ッ!!」
「貴様! その子を離せッ!! このクソったれの外道がァッ!!!」

ロハンとシーザーが叫んでいる。
『クソったれの外道』か…… まさに今の俺にお似合いの言葉だな。
見ず知らずの三人を奇襲し、皆殺しにすることで『けじめ』をつけるつもりだった。
そして、他の参加者たちをもすべて殺し、優勝するつもりだった。
それが、結局一人も殺せないまま返り討ちにあった。
ブチャラティたちにも見捨てられちまったみたいだし、挙句の果てには親友のナイフを武器にして、無力な子供を人質にして逃げようとしている。
こんな惨めな姿は無い。

「お兄さんッ!! 僕にかまわないでッ!! こいつを倒すんだッ!!」

拘束された早人が、依然フーゴとの睨み合いを続けるシーザーに向かって叫んだ。
焦ったフーゴは早人の首に回した左腕にさらに力を込め、声が出ないように締めつけた。
しかし、早人の勇気ある言葉は、逆にシーザーの動きを封じさせる結果となる。
この少年をこんなところで死なせてはいけない。
シーザーの心にそんな思いがよぎり、動きを完全に止められてしまった。
逃げ切れる、フーゴはそう確信した。





「早人から手を離せ……」

その時、フーゴの背後からさらに別の人物の声が聞こえた。
悪魔のような、しかしどこか優しさを帯びた低音。
その声が聞こえたと同時に、フーゴはナイフを持っていた右手首が、いつの間にか関節の逆方向に折り曲げられている事に気がついた。

「無事か、早人…… そして… ずいぶん早い再会になったな、フーゴ……」
「きッ―貴様はッ―――!!!」

そして次の瞬間、早人を拘束していた左腕も、肘のところから逆方向に折り曲げられていた。

「ぐわァァァァァァッッッ――――――」
ディアボロさんッッ!!」

痛みに絶叫するフーゴ。
そして、フーゴの腕から解放された早人が、その男の名を呼んだ。
手榴弾の爆音、加えて閃光弾の激しい光……
それらに導かれたのは早人だけではなかった。
ポルナレフの埋葬を終え、DIOの館を目指して北上していたこの男……
ディアボロもまた、この戦いの場に駆けつけたのだった。


こいつはッ――デスマスクの男ッ―――
ディアボロだと……!?
聞いたことのない名だ――!
やはり時を止める『空条承太郎』では無かったのか?
いや、さっき見せたこいつの能力は……
吉廣を奪われた時と同じだが… あの時は気が付かなかったが……
『時を止める』というより、『時を飛ばす』能力と言った方がしっくりくる。

「フーゴ…… 俺は貴様を逃がしはしない…… 貴様の引導は、必ず俺が渡してやると決めていた………」





『時を飛ばす』……そうだ、その表現が一番しっくりくる。
そして、この感覚…… 覚えがある……

『ジョルノ… すまないが水を取ってくれないか?』

そう、あの時だ。
この世界に連れてこられる直前。

『礼言ったっけ? ジョルノ… 言ってないよな。水取ってもらって……』

護衛の任務を終えて、ヴェネチアのマジョーレ島でブチャラティの帰りを待っていた時。

『何か…! 奇妙だ!! 何かわからないが…! 奇妙な雰囲気だッ!』

そして、このデスマスクの男は、僕のスタンド能力を知っていた。
ブチャラティたち、チームの仲間以外で僕の能力を知っている可能性がある者が、もう一人いたじゃあないか……!!

『たった今! 俺が『ボス』を『裏切った』からだッ!』





「ポルナレフの報いを受けろ―――」
「貴様ッ!! 組織のッ――――――」

『バルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバル……』

言い切ることなく、フーゴの意識はそこで途切れた。
すでに『パープル・ヘイズ』を発現させる力も残っていなかったフーゴに、ディアボロの『キング・クリムゾン』による怒涛のラッシュを防ぐ手立ては無かった。

「ヴァオールインフェルノ!!!(地獄に行け!!)」

突然の奇襲から始まった億泰・露伴・シーザーたちとフーゴの戦いは、激戦の末、早人・ディアボロの介入をもって、ここに終結した。






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最終更新:2010年11月08日 00:54