意識が覚醒し、まず目に入ったのは満天の星空。
どうやら仰向けで寝ていたらしく、背中にはベッドというよりも土の柔らかさを感じた。
身体を起こし辺りを見渡す。街灯の灯りはあるが、どういうわけか建物の窓から漏れる明かりだとか、そういうものはなかった。
電気が無いわけではないようだが、人の住んでいる気配を感じない…少し、冷や汗。
まさか、と思い首に手を当てる。ヒンヤリとした感触があった。よくよく見れば、側にはデイパック。
夢だとは思っていたが、どうやら夢ではなかったらしい。

「Oh My God…」

顔に手を当て、自らの不幸を…いや、自分の事ではない。夢という第一の希望が絶たれてしまった事を嘆いた。
まだだ。まだ可能性はある。
確かアラキ(日本人くせー)の説明では名簿がデイパックの中にあるはずだ。それを確認すれば…
デイパックの中から名簿を探り当て、街灯の下で載せられた名前を確認する。
あるはずがない、見間違いのはずだ。なんせ『トシ』だから。
そんな第二の希望も絶たれてしまう。探していた名前が、そこにはあったのだから。


顔に手を当て、今度は空を見上げ、嘆く。

「Oh My God…」

男、ジョセフ・ジョースター。こんな訳の分からないゲームに自分が巻き込まれた事よりも、
愛妻のスージーQが巻き込まれたことに何よりもショックを覚えていた。

(あの謎の広間で突然起こった爆発。その閃光で見えたスージーQの顔。見間違いと思いたかったわい…)

すぐさま行動に移すべきなのだろうが、どうしても気になることがあり再び名簿を、今度はじっくり確認する。

ジョージ・ジョースター1世ジョナサン・ジョースターウィル・A・ツェペリ
やはり、おかしい。ご先祖様や、忘れられぬ親友の祖父の名が載っている。タチの悪いジョークだろうか。

エリナ・ペンドルトンロバート・E・O・スピードワゴン
これまたおかしい。確かに死去したはずなのに。まさか死んだ者が蘇ったのか?何のために?
だがそれよりも、気になるものは…


ギリッ、と奥歯を噛み締める。あってはならぬ名が、載っていた。
まさか承太郎が仕留めそこなったのだろうか。有り得ない話ではない。それほどまでに、ディオの執念は侮れない。
だとすれば今度こそは、間違いのなく、完全に…息の根を止める。
覚悟を決めつつ名簿を読み進める。


親友の名が載っていた。これで死者の名前は6つ目か。正直な所…本当に生きているのなら、会って話したいという気持ちはある。
それはシーザーだけではなく、実際に見たことはないジョナサン、ジョージ、ツェペリにも言える事なのだが…

「これは、死者への冒涜じゃ…っ!」

そう、死んだ者を蘇らせる等冒涜でしかない。ジョークだろうが、偽者だろうが、許せる話ではない。
同姓同名ならしょうがないからパンチ一発で許してやろう。そう思っていると…

ストレイツォ、サンタナ、ワムウ、エシディシカーズ

ドバッと、汗が出てきたような気がした。

「まぁ、そうじゃな。死んだ者を蘇らせて戦わせるなんておかしな事するんじゃ。これくらいのゲストは欠かせないのじゃろう、うん」

もう、慣れた。笑顔で空を見上げる。

「物には限度があるじゃろアラキ ̄ ̄ ̄ ̄Z__ィッッ!!!」

なんかもう考えるのが嫌になってきた。名簿を見れば見るほど暗い気持ちが募る。
というかもうどんどん先に進めよう。半ば投げやりな気持ちで更に読み進める。


何人目だろうか、死んだはずの名前は。だんだんこの名簿が疑わしくなってきた。
もしかしたらこうやって困惑させる事が目的なんじゃないだろうか、とさえ思えてくる。
正直もう誰の名前があっても驚く気はジョセフにはなかったが、最後の最後、油断した。

東方…

いや、違う。夜空を見上げ、思いなおす。

「違う。東(あずま)じゃ。東 方助とかそんな名前じゃ。うん、きっとそう」

もう一度見直す。東ですよね、東。

『東方』

ドバッと、汗が噴出してきた。もしかしたら今までで一番の量かもしれない。

「いやいや、東方って言ってもあれじゃ。知らない人。うん、よく見る姓じゃしの…



 んなわけあるかーっ!Oh My God!」

ムンクの叫びのように両手を頬に当て、絶叫する。

「なんてこった。まさか、これはバチですか、天罰ですかぁーーっ!?」

まさかここで懐かしの東方の姓を見るとは。しかもここにはスージーQがいる。ヤバイ、マジでヤバイ。

しかし何故朋子の名前が―

「いや、まてよ…」

改めて見直す。東方…朋子ではなく、仗助。これは誰のことか?

「よく考えるんじゃ…雑巾絞りのように、記憶を搾り出せジョセフ・ジョースター…
 朋子には兄弟はいなかったはず。とすると親?いや、確か良平とかいう名前だったような」

朋子が話していないだけ、というだけで兄弟かもしれないが、何か違う気がする。
もしかして、もしかしてだが…『仕込んじゃったか』?
いやいや、冷静に考えろ。『仕込んだ』可能性は、ある。だがそうだとしてもまだ4~5歳の子供のはず。
そんな子供をこの殺し合いの場に連れて来てどうする?子供の死ぬ所見てーとかいう野郎なのかもしれないが。

(いやいやいやいや、何か見落としてる。死者の名前が載ってたり浮気した相手の血縁者?と思われる名前があったりで混乱している。
 見落としているのはなんだ?考えろ、考えるんじゃジョセフ・ジョースター…)

そもそもこの名簿を見た切っ掛けはスージーQだ。あの暗闇で見たスージーQは…『若く』なかったか?
よくよく考えるとこの名簿の並びもおかしい。
あいうえお順というわけでもなければ肉親を集めてるとか、そういうわけでもない。誕生日順とかでもないはずだ。
もしかしたらもしかしたらだが…この並びは――

「時代、か?」

時代を超えて、集めてきたのか?この参加者を。それならば死者も参加させる事ができるだろう。死ぬ直前にでも連れて来ればいいだけの話なのだから。
スージーQの顔を見なければ、ディオの『世界』を目の当たりにして、時を操るスタンドの存在を知らなければ…この発想は出来なかったかもしれない。
否、できるはずがない。誰がこんな事を思いつける?それならまだ死者を蘇らせるとか、偽者と片付けたほうが手っ取り早い。
時を操れるというのなら、空条承太郎の名がずれ込んでいるのも頷ける。だが、それはつまり…

「この承太郎は…わしの知る承太郎ではない!恐らくは、何年後からかきた『未来の承太郎』のはずっ!」

名簿を信じれば、の話ではあるが。そう考えていくと更に下にある空条徐倫という名前。
もしかしたら承太郎の…

「…どっちじゃろう?十中八九、女の子とは思うが…男の子の可能性もあるのかのぉ」

これはら全て、最初の部屋で見たスージーQの顔、ディオの『世界』、そして名簿に載っている死者の名前。
これらから推測したにすぎず確証等ない。一番手っ取り早いのは…

「信頼できる相手…そうじゃな、まずは承太郎あたりと合流して、確認してみることにしよう」

名簿から得られる情報は得た。ジョセフは名簿をデイパックに仕舞おうとして、中身を確認していなかった事を思い出す。
中から出てきたのは「食料」「飲料水」「懐中電灯」「地図」 「鉛筆と紙」「方位磁石」「時計」そして「名簿」。以上だ。
支給品の確認を終え、全てを仕舞いこむ。さて、次にすべき事は…

「『隠者の紫』!」

紫色のイバラを右手から発現させ、自分の首輪へと巻き付ける。内部の構造を調べるためだ。

(首輪には隙間は…ないな。喉もとの部分に様々な機能が備わっているようじゃな…
 残りの部分には…爆弾のようなものが仕掛けられておるな。仮にだが首輪の一部を削り取ろうとしても爆発するような仕組みというわけか)

もしも隙間があれば花京院のスタンド等で解除できるのでは?とも思ったのだがそれも無理なようだ。
だが内部の構造はわかった。機械の知識がある者がいれば、地面にその構造を『隠者の紫』で描き表し、見せる事で解析する事も可能だろう。
もっとも、解析した所で解除できる保障はない。外枠をまったく傷つけず、内部だけを破壊するような、そんな神業は存在するはずがないのだから。
そうするとあとの可能性としては、首輪と首の間に強力な防護を施し、強引に外すか、或いは首輪から身体を抜けさせるか、か。
前者で思いつくのはあの黄色いゲルを身に纏った男のスタンド…あれならばもしかしたら首輪と首の僅かなスペースでも充分に防護できるのかもしれない。
後者は…正直柱の男達なら余裕でできそうな気がする。というか柱の男達やディオにとって首輪は無いも同然ではなかろうか…

首輪の考察もこんな所か。何にせよ今のままでは情報があまりにも少なすぎる。
時代を超えたのでは、という確証を得るためにも、首輪の解除方法を探るにしても…今は他の参加者と接触する必要がある。
デイパックを肩にさげ…とりあえずは近くて目立つ場所へと向かうべきだろう、と判断し辺りを見渡す。

「とりあえず近いのは…あの教会かの」

目的地を教会へと決めたジョセフはしっかりとした歩調で歩き出した――

          *   *   *

ピッツァを食べ終えた俺はとりあえずの行動方針を決め、動き出す。
こうしてる間にも内心怯えている。突然飛行機が落下してきて…

――今日のディアボロ。飛行機墜落に巻き込まれて死亡――

なんて事になるのかもしれないのだから。というかそういう死に方もした気がする。
もしや、と思い腹に手を当てる。まさか、ピッツァに毒が仕込まれていて…

――今日のディアボロ。ピッツァを食べて死亡――

ありえる。いや、落ち着け…今回はいつもより生存時間が長い。今回は特別なのだろう。
嫌な思考をなんとか断ち切ろうとするが、それでも心は晴れない。
絶望的なほどにディアボロの心はボロボロだった。それほどまでに、死というのは辛い。

(もうそろそろ普通に死にたい…)

ふらふらとした足取りで教会の中を歩く。死ぬのは怖いが、生きたいが、死ねるなら死にたい。
矛盾だらけの思考。扉の前までくるのに随分と時間が掛かったのはそういう精神状況もあるのだろうか。
この扉を開ければ戦場。そう思うと中々開けられない、が。

「ここで何もしないでいると…

――今日のディアボロ。鬱になって自殺――

 なんてことになりかねない…外の空気を吸おう…」

扉を押し込んで…動かない。

「ば、ばかなっ!?」

両手で押し込むが、開かない。開きそうなのだが、まるで反対側に何かあるかのように扉は開かれない。

「ま、まさか

――今日のディアボロ。教会の中で餓死――

 という死に方か!?い、嫌だ、いっそ普通に殺してくれ!頼むから、殺してくれー!」

願いが通じたのか、扉は唐突に開かれた。
力一杯押していたためそのまま飛び出すようになって、思わず転倒してしまった。
幸い『偶然道路に突起物があってその突起物が転倒したディアボロの腹部を…』とかいう展開にはならなかった。
地面に伏せ、コンクリートの冷たさと、空気の冷たさ、潮の匂い、腹部や膝に感じる転倒した際の痛み、全てを噛み締める様に味わう。

(俺は、間違いなく…生きているんだ…幻なんかじゃなく、現実に…)

それら全てがありがたかった。生きている事を実感させてくれた。
思わず、涙してしまう。随分弱くなったものだと自分でも思うが、涙は止まらない。

「あー…その、大丈夫かのぉ?」

その声は自分の後ろの方から聞こえた。思わず首をあげ振り向くと、若々しく逞しい老人が立っていた。

          *   *   *

教会へと辿り付き、ジョセフはまず、ぐるっと周りを一周してみた。
正面の大きな扉以外に出入り口があるかないか、の確認の為だ。
結論から言えば出入り口は3箇所あった。正面と裏口が2つの計3箇所。
身を潜めるには持ってこいと言える場所かもしれない、つまり――

(待ち伏せがあるかもしれん、ということじゃ)

しかし開いて見なければわからない。正面から堂々と教会へと入ることにする。
扉を押して、開かない。少し力を込めるが、開かない。

(鍵か何かされてるのか?いや、違うのぉ。この感触は…)

両手でグッと押してみる。開きそうなのだが、開かない。
これはつまり鍵とかよりももっと単純な…

(反対側から押されておるな)

そう判断するのが妥当だろう。とするとここでスッと横にでも避ければ案外引っかかるかもしれない。

(こうして意地でも入れてくれそうに無い所を見ると…恐らくは戦闘能力が低い参加者と判断するわい。
 こうして扉越しに話しかけても下手に刺激を与えるだけ。顔をあわせてじっくりと…)

――…頼むから、殺してくれー!――

扉越しに聞こえたその言葉に思わずギョッとしてジョセフは飛びのいた。
教会の開かずの扉は開かれ、中から網目の服を着たピンク髪の男が飛び出し、こけた。
できれば、関わりたくないような容姿と雰囲気だ。静かに、悟られないように教会から離れようとする。が…

男が泣いていた。転んだのがそんなに痛かったのだろうか?その涙が、ジョセフの判断を変えた。

(ふぅー…まぁ、しょうがないか)

「あー…その、大丈夫かのぉ?」

男は驚愕の表情でこちらに振り向く。疲れきった顔で、肉体とは裏腹にとても老いて見えた。

「痛かったかの?いやー、こちらももう少し気を使うべきだったかな」

頬をポリポリと掻きつつも、ジョセフは一応警戒は緩めない。外見ではわからないが、服の下では『隠者の紫』で全身をガードしている。
しかしその心配も杞憂に終わりそうだった。男は涙を拭うと立ち上がり、身体の汚れを落としながら話しかけてきた。

「あぁ、いや…いいんだ。こちらも気づかなかったのが悪かったんだ。…反対側から押されていただけか、馬鹿馬鹿しい…」
「まったくじゃな。お互いいい歳こいて、馬鹿馬鹿しい真似をしたものだ」

そう話しつつも男からは視線を外さない。言葉にも気をつける。何しろまったく未知数の相手なのだから、警戒するに越した事はない。
だが、なんというか男からは覇気を感じられなかった。というより、生気が。別に吸血鬼ってわけではなさそうだが…

「見苦しい所を見せてすまなかったな…。で?きさ…いや、あんたは『乗った』のか?このゲームに」
「随分と直球じゃな…。わしは『乗って』おらんよ。君の方はどうなのかね?」
「俺は、正直な所を言えば『どうでもいい』。とりあえず生き残れればそれでいい。
 あー、ただ、もしも殺したいっていうのなら一思いに頼む。じわじわと死ぬのは何度も経験したがやはりつらいんだ。一撃で死ぬ方が楽でいい」

まぁ突然殺し合いと言われればそりゃ頭もおかしくなる。生き残りたいのに殺すなら殺せとは、矛盾もいいとこだ。
だが少なくとも『乗って』は、いない。それならば一緒にいても問題はないかもしれない。

「そんな簡単に死ぬとか言うもんじゃないぞ。わしだって何度死ぬ思いをしたか…飛行機墜落だって一度や二度じゃないし本気で死に掛けた事もある。
 だが死に掛けた度に思うが、やっぱり生きてるというのはいいもんじゃよ」
「俺は本当に何度も死んだんだけどな…」

男はそう呟くと地面にどさっと座り込み、虚ろな目をして何かを考えて…いや、考える事すら放棄していそうだった。

「まぁともかくじゃ!生き残りたいんじゃろ?それならわしと一緒にこないか?
 わしには頼りになる仲間が大勢いる!もちろん、わしだって頼りになるぞ!」

男は虚ろなままの目でこちら見上げてくる。
何か、とんでもなく暗い目をしているが、ここで目を逸らしてはいけないと感じ、ジョセフはそのまま男と目を合わせる。

「俺を…仲間に?配下になれと言うのか…?この俺に…?」

言葉だけなら、まるで怒りをあらわにしたように聞こえるが、実際にはほとんど無関心なままの気の抜けたような声だった。

「配下じゃない、仲間だ。まぁ、実を言えばわしはちょいとばかし護りたい人が多くてのぉ。
 正直わし一人では手が足りそうにない。だから、お前さんにも力を貸して欲しいんじゃ。
 お前さんは生き残りたいから、わしと組む。わしは、護りたい人を護る為の手助けが欲しい。ギブアンドテイクというやつじゃな」

そうやって話を聞いている間も男の目は変わらない。死んだままだ。あれ?もしかして説得失敗?
だがそんなジョセフの心配を余所に男は再び立ち上がり――

「いいだろう。だが、俺は自分の身しか護らん。それでいいのなら一緒に行動してやる」
「オッケーオッケーじゃ。交渉成立というわけだな。わしは、ジョセフ・ジョースター。君は…えーっと」

ジョセフは右手を差し出しながら男の名前を尋ねる。

「…ディアボロだ。よろしく、ジョセフ」

ディアボロは右手を差し出し、軽く握手をしてくれた。そうしている間も、目は死んでいたが…

          *   *   *

正直に言おう。顔を見られても『始末しなければ』そう思えなかった自分を俺は嘆く。
それほどまでに俺の心はボロボロなのだろうか。いや、自分の事だ、わかりきっている。

(俺の心はボロボロだ…)

もはや『帝王』の誇りも何も無い。ただ『生き残りたい』という、理由もない足掻き。
それでいながら楽に死にたいと考えているんだから、自分でも反吐が出るほど弱い足掻きだと思う。
『ドッピオ』という仮面はもう必要ない…というか、下手にトラブルの元を作りたくない。
そうだ、俺はもう一度やり直す。やり直して…平穏のまま過ごしてみせる。
平穏を勝ち取るための最終的なゴールは即ちこのゲームからの脱出。だが、それ以前にしなければならないことがある。

(トリッシュ…それにジョルノ、ブチャラティ、ミスタ、アバッキオ。
 あと『俺の顔』と『俺の過去』を結びつける事ができるのは…リゾットくらいか。
 俺は平穏に暮らしたい…だから、いちいち騒ぎそうなお前達は邪魔なんだよ)

過去と決別し、平穏に生きるために自分の顔と過去を知る者は消さなくてはならない。
過去だけ知っているならいい。ようは俺がボロを出さなければいいだけの事だから。
顔だけ知っているのも別にいい。顔だけからどう過去を割り出す?あの道端で会った占い師のような才能を持つ者がいる可能性は否定できないが…

(それならそいつも始末すればいいだけの事だ…)

過去と決別し、やり直すために…ディアボロは歩く。死という絶望を何度も味わった男が望む物は『平穏』
その『平穏』を手に入れるための、最後のチャンスを必ず掴む為に、ディアボロは歩く。
目は相変わらず死んでいる。心も死んでいる。だが、『平穏』を手に入れるという『欲望』だけはギラギラと光っていた――


――唐突だが、このゲームが開始された頃…つまり参加者達がこの地へと放り出された頃まで、時を遡ろう――


俺は自分の幸運に感謝したぜ。
まぁ最初は殺し合いだかなんだか訳の分からん事に巻き込まれた事に腹を立てたが…
こうして『未だ目覚めぬ参加者を俺がいち早く見つけられた』んだからよぉー!

帽子を被り随分とがっしりした体系のじじぃだ。
さっそく『リトル・フィート』でこいつの首を掻っ切ってやろうと思ったが、それでこの幸運を使い切るのは勿体ねぇ!
手始めに近くに放置されていたデイパックを漁る事にした。恐らく、いや、間違いなくこのじじぃに支給されたものだろう。
そこから頂戴するのは『折り畳まれた紙』3つ。これだけだが、これさえあれば充分だ。
こいつの中にはどういう原理か知らねーが(まぁ多分スタンドだろう)変わったものが入っている。
それは『万年筆』だったり『ローストビーフサンドイッチ』だったりするんだが、まぁともかく便利?な物が入っているはずなんだ。
何で知ってるかって?自分の分を開けたからに決まってんだろ?しょうがねぇーなぁ~。
その場で開けて確認したい所だったがじじぃが起き出したんでな、俺はすぐさま行動に移したわけよ。

何って?言ったろ?『それでこの幸運を使い切るのは勿体ねぇ』ってな!
『リトル・フィート』で俺と俺の分のデイパックを小さくしてじじぃのケツポケットの中に入り込んだのさ!
何?仰向けでじじぃは寝てたはず?強引に入ったんだよ、強引に。しょうがねぇーなぁ~。
しばらくすると案の定じじぃは起き出して、それからブツブツ喋った後デイパックを調べ始めたみてーだったな。
ま…頑張んなよ。俺はてめーの特別な支給品は丸ごと頂戴したんだし、ついでだからお前についていってやんよ…
どこの誰殺そうが、護ろうが関係ねー…
だが、俺の仲間を攻撃しようとすれば俺はすぐさまお前を『リトル・フィート』で切り裂き、仲間を陰から援護する!
まぁ後はトリッシュだな。トリッシュと接触してくれれば俺としては万々歳だ。隙を見て戴くぜ。

それにしても、だ。この名簿にあるティッツァーノチョコラータ、ディアボロってのは…誰だ?
他の奴らは知っている。後の知らない奴らは少し離れた所に記載されてるから関係ねー…
だが、この3人は俺たちの近くにその名が載せられている。これは、どういうことだ?

まず有り得るのは俺の知らない暗殺チームの補充要員…ソルベとジェラート、2人の穴を埋める要員だな。
だが…それなら俺が知らないってのは、おかしいだろう。それに補充要員にしては補充が遅すぎるし、そもそも3人だ。数が違う。
あとはまぁ、サーレーみてーにそこらのゴロツキって可能性はあるな。流石の俺も全員の名前は把握できてねーし。
まぁ、そうは言いつつ多分これじゃねーか?って予想はついてんだけどな…

この3人は、多分ボスの親衛隊だ。

噂程度にしか聞いた事がないが、間違いなく親衛隊は存在しているだろう。俺たちのようにボスに反旗を翻す者を粛清するためとかほざいてよー。
親衛隊なら、或いはボスの居場所を知っているのでは?
まぁボスの事だ。あまり期待はできねーがそれでも俺たち以上に何かボスの事について知っているはずだ。
トリッシュか…或いはこの3人。見つけ次第『拷問』してやるぜ…覚悟しときなよ…

…そうしてじじぃのポケットに潜む事数分。じじぃは誰かと接触したようだ。話の流れからして同行するらしい。

「オッケーオッケーじゃ。交渉成立というわけだな。わしは、ジョセフ・ジョースター。君は…えーっと」

(なるほど、このじじぃはジョセフ・ジョースターか…ジョースターってのは結構名簿に載っていたな。
 護るとか言ってたが…ちと、しんどいんじゃねーのか?そいつら全員護りきるのはよー)

俺がじじぃの事を哀れに思っていた時だ。じじぃと同行する男の名を聞いて俺は本当に自分の幸運に感謝したね!

「…ディアボロだ。よろしく、ジョセフ」

ディアボロ!探そうと思っていた4人のうちの一人!同行まで漕ぎ着けたじじぃに感謝だぜ、おかげでディアボロに逃げられないで済む!
なんとか隙ができねーもんかなー…隙を見てディアボロを『小さく』して拷問してやりたいんだが…
だがまぁ、会話の内容から考えるとこのディアボロってのは大したことはなさそうだな。情報にも期待できそーにねーが…
まぁ、いい。なんだかわからんが幸運が降って沸いたように俺の元へ転がり込んでくる。
こういう時は焦らないもんだ…俺は慌てる必要はねぇ、ゆっくりと観察させてもらうぜ、ディアボロ…



ホルマジオはポケットの中でじっと息を潜め、機を窺う事にした。
確かに、幸運ではある。探し人が向こうからやってきてくれたのだから…

――だが、果たしてこれは幸運と言えるのだろうか?ホルマジオは自分で思っている以上に…近づきすぎている――


【E-9 サン・ジョルジョ・マジョーレ島の教会/1日目 深夜】

【■子持ちのおっさんコンビ~ポケットの中には小さいお兄さん入り~】

【ディアボロ】
[時間軸]:レクイエムジョルノに殺された後
[状態]:健康。だけど目が死んでる。
[装備]:なし
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
基本行動方針:とにかく生き残り平穏な生活を送る。
1.ジョルノには絶対殺されたくない。
2.自分の顔と過去の二つを知っている人物は始末する。
3.とりあえずはジョセフに協力。でも無理はしない。
4.自分の過去に関するボロは絶対に出さない。
5.普通に死ねるならそれでもいいや。でもなぶり殺しは勘弁。苦しまないように殺して欲しい。

【ジョセフ・ジョースター】
[時間軸]:DIO討伐後、日本に帰る飛行機の中。
[状態]:健康。
[装備]:なし
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
基本行動方針:必ず生きて脱出する。打倒アラキ!
1.承太郎、シーザー、リサリサ、アヴドゥル、花京院辺りと合流して自分の推測について話し合いたい。
2.スージーQ、ジョージ、ジョナサン、ツェペリ、エリナ、スピードワゴン、仗助、徐倫は見つけ次第保護する。
3.勿論それ以外の殺し合いに乗っていない参加者達も護る。或いは協力していく。
4.ディオや柱の男達は見逃せない。ストレイツォに関してはリサリサの育ての親でもあるし保留したいが…
5.ディアボロにちょっと戸惑い。自殺をしそうで怖い。
6.機械に詳しい人間がいたら『隠者の紫』で首輪の内部構造を描き、解析してもらう。
7.正直な所スージーQと仗助はなるべく会わせたくない(スージーQに自分が殺されかねない。ばれるとは思わないがねっ!)

※参加者達は時代を超えて集められたのでは?と推測しています(ディアボロにはまだ話していません)
※首輪を『隠者の紫』で調べましたが機械には疎いので詳しい事はわかりません。分かった事といえば隙間がまったく無いという事くらい。
※1で挙げた面子はジョセフが聡明と判断した面子なだけで別にポルナレフが信用できないというわけではありません。
※ポケットの中のホルマジオには気づいていません。

【ホルマジオ】
[時間軸]:ナランチャ追跡の為車に潜んでいた時。
[状態]:健康。小さくなってジョセフのケツポケットの中に潜んでいます。
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、万年筆(体温計とは間違えそうにない)、ローストビーフサンドイッチ(美味そう)、不明支給品3(本来はジョセフの物。ホルマジオ、ジョセフ共に未確認)
[思考・状況]
基本行動方針:ボスの正体を突き止め、殺す。自由になってみせる。
1.とりあえず今はポケットの中で機を窺う。
2.ディアボロはボスの親衛隊の可能性アリ。チャンスがあれば『拷問』してみせる。
3.トリッシュ、ティッツァーノ、チョコラータ。こいつらからもボスの情報を引き出したい。
4.もしもジョセフが仲間を攻撃しようとすれば容赦はしない。

※首輪も小さくなっています。首輪だけ大きくすることは…可能かもしれないけど、ねぇ?
※サーレーは名前だけは知っていますが顔は知りません。
※死者とか時代とかほざくジョセフは頭が少しおかしいと思っています。

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ジョセフ・ジョースター 71:Trouble is
ホルマジオ 71:Trouble is
10:ディアボロの大冒険 ディアボロ 71:Trouble is

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最終更新:2008年09月16日 21:38