…いる。確かにいる。
そして、見られてる。さっきからずっと、わしの背中を射抜くように。もっともそれが誰かは見当がついてるんじゃが…今更振り向くのはどうも気が向かんのう…。
チラッ
…案の定ディアボロ君と目がばっちり合ってしもうた。適当に笑顔を向けてみるも…
「…」
まるで変化なし…。
ディアボロ君のあの目。あれはいやな目じゃな…。
今までどんな時も能天気に、楽観的に生きてきたわしもやる時はやることをやってきたんじゃが、その過程で何度も絶望を味わったもんじゃ。それでもあそこまで酷い「目」はしてなかったじゃろ…。
なんと言うか、鬱病人というかのう?仕方なくこの世に生きてるというか、まさに無気力という言葉がぴったりというか…。こう、瞳に力が無いんじゃな。死んだ魚みたいなのう…。
「あ~…ディアボロ君。体調は大丈夫かね?疲れてるならそろそろ休憩をとってもかまわないんじゃが…」
「大丈夫だ、ジョセフ」
「そ、そうか…頼もしい言葉じゃな、わしなんかもう年じゃからこんな運動でもこの老兵の体には染みるわい」

そうは言っても波紋の呼吸を絶えずしてるおかげで実際疲れなんてまるでないんじゃがな。こんな物騒な場所じゃ、油断はしてはならん。
それに仮にディアボロ君がスタンド使いである可能性もあるとなると、これまた『ハーミットパープル』を隠すのには気を使うわい。

「………無理はしないほうがいいぞ。今日のジョセフ、なれない運動で心臓麻痺なんてなったら…」
「…?なんか言ったかのう?」
「いや、なんでもない…」
どうも彼はマイナス思考みたいじゃな。なんとナァーく空気が重いもう。仕方ない、ここは一発わしのあれで流れを変えて…


「まぁ、あれじゃのう。“疲れ”がたまったらお風呂に“漬かれ”、なんちゃって!!」

  •  ・ ・ ・ ・ ・・・・・・・・・

シーン


「…」
「ナハハハハハ、ハハハ……」


…柄にもなく嫌な汗だ止まらないぞ、ジョセフ・ジョースターッ!!
Oh,my god!このわしのギャグが通じないとは…。どんなくだらないギャグでも承太郎も花京院もなんらかのリアクションをとってくれたのに、ディアボロ君は…ッ!
気まずいのう、さすがの百戦錬磨のわしでもこの空気はどうにもできない…。仮に今、もう一度ギャグを放ったら「滑る」のは確実ッ!そう、コーラを飲んだらゲップが出るぐらい確実じゃ!
自分が滑るとわかっててギャグを放つ馬鹿者はいるか?いなぁーいッ!

「…」
そんな目で見ないでくれ、ディアボロ君!まるでわしが口汚い言葉で罵ったかのように冷たい目で見てくる…。なんて冷たい目なんじゃ、わしは悪いことは一切してないというのに…。
そもそもわしは君を気遣って故の行動だったのに、これじゃわしが悪いみたいな感じじゃないか!
断じてそうじゃないぞ!うん、たとえ寒いギャグを言おうが、それは善意あっての行動じゃからな、決してわしは悪くない!
うん、間違いない…多分。

「ジョセフ」
「な、なんじゃ?」
「目的地が見えてきた」
彼が指差したほうを見ると、わしたちの最初の目的地 E-7のネアポリス駅が見えていた。



◇   ◆   ◇



一方そのころホルマジオは―――
どうやらやっと目的地についたみてぇだな。え~っと確か駅に向かう、って言ってたな…。頼むから駅に誰かいてくれよなぁ…。この二人、意外に隙がねぇぜ。
ディアボロはなんか底が知れねぇな。なるべく地味に過ごそうとする臭いがプンプンするぜ…。なんか吐かせるにはえらく骨が折れそうだぜ。ま、俺のスタンドは拷問には向いてるからな、なんとかなるだろう。

それより注意するのがこのジョセフってじーさんだ。ただの老人キン肉マンってわけじゃねーな、こいつは。動きにキレがあるし、結構な距離歩いたってーのに息一つ乱れてねぇぜ。周りへの警戒心も高いし、こいつはどことなく修羅場を何回も潜ってきた凄みがあるぜ。
…しょうがねーなぁ~~支給品を確認するのはまた後にするか。別に急いだってどーもなんねーし、バレちまったら本末転倒ってやつだぜ。


……それにしても


ゥエップ…人のポケットん中に長くいるとこんなにも揺れが酷いなんて………。



◇   ◆   ◇



う~ん…と、これは飲料水?ペットポドルだな多分。紙切れが数枚、そーいや名簿と地図があるって言ってたな…。多分それだん。それじゃ、これは…?いや、これは…?
くそ、やっぱこんな暗い中で手探りで中身を確認するなんて不可能だぜ…。かといってこんなことに俺のスタンドは使いたくねぇし、なによりまだ億泰と承太郎がいるかも…。
もういっその事デイバッグごと引っ繰り返したほうがいいな…でも音を聞きつけて人が来たら……。
くそっ、弱気になるな、音石明ッ!!こんなんでびびってるようじゃ優勝するなんて不可能だぞ!!

ガサッ ボトダゴタァッ―

…これはペットボトルだな。中に入ってるのはただの飲料水…か?毒だったらどうしよう…。懐中電灯に鉛筆と紙、時計も入ってるのか、気が利くぜ、荒木のやつ。
お、名簿があるな。
いるいる…知れた名前がいくつかあるな。東方仗助空条承太郎に虹村億泰、広瀬康一などなど。それに…どこかで見たような名前がいくつかあるなぁ…。
仗助ん家に入ったときか?承太郎のホテルに盗聴しに行ったとき…だったかな?とにかくスタンド使いには注意しねーとまずいな…。

おっと、俺がさっき会ったブンブーンのおっさんとミセス・ロビンスンの名前もあるからこの名簿はたぶん本物だな。
方位磁石と地図…ここはE-7のネアポリス駅か。いや、それよりこれって杜王町の地図じゃねーか?いやいや、明らかにそうだろ…。
でもそんなことはどうでもいい。荒木が杜王町出身だろうが、杜王町ひとつ作り上げるほどのスタンド使いだろうが、今の俺にとっちゃもっと大事なことがある…。
武器!武器がなくっちゃ今の俺は参加者から見たら絶好の獲物だぜ…。武器、武器、武器…。

ってあれ…?うそだろ?デイバッグの中身は…あれ、もうなんもないの?いやいやいやいや、そんなわけ無いでしょ、落ち着け俺。
食料にパン数個だろ、ペットボトルに入った飲料水だろ、懐中電灯に地図に鉛筆と紙、方位磁石と時計、名簿、それに紙切れ…。
…冷静になれ、パニックになるな。とりあえずバッグの中身はこれだけだ。これは確実、事実俺自身がこうやって確認したんだから間違いない。
問題はその中で不自然すぎるひとつのもの、この折りたたまれた紙だ。…おいおい、怪しすぎだろこれ、常識的に考えて…。
しかもこれたしかブンブーンのおっさんがなんでも収録できる紙って言ってたような…。つまり、これには支給品が収録されてるって考えて間違いねぇよな?

…でも開けると危険って言ってなかったっけな?

スタンドも使えない、長年のギターに対する打ち込みで運動不足で体力は無い、命の次に大事なこの指を痛めまいとどんな時も喧嘩を避けてきた…。
そう、今の俺にはこの紙しか残されてない…。この中の支給品が武器じゃなかったら、俺はおしまいだ…。

ドキドキ…ドックン、ドックン、ドックン、ドックン―――臆するな、俺。

今の俺にはこれしかないんだッ!やるしかないぞ、音石明ッ!!腹くくれッ!!

ゴクリ…

ゆっくり、慎重に…。震えるな、俺の指…!何かあってもすぐ逃げれるようにして、よし、開くぞ…。1、2の3、で行くぞ。

フゥー…
いくぞ、1、2の さ「ちょっとそこの君、だ「うわぁぁああああああああ!」



   ◆



背中にかけられた手を振り解くと目の前に筋肉隆々のおっさん、後ろには俺のことを睨み付ける不気味なオーラを漂わせる男。
あ、俺死んだ。

「いや、驚かせてすまない。落ち着いて話し聞いてくれ、なにもわしらは君を取って食おうってわけじゃない。わしらは君の味方じゃ」
ああ、もうだめだ。今俺はここで殺されるんだ…。もう抵抗できねぇよ…最後に叶うなら、1曲だけギターが引きたかったな…
「デイバッグを広げて、顔中に汗を浮かべて難しそうな顔をしてたんでのう、きっと君はゲームに乗ってないと思ったんじゃが…違うのかな?」
ギターを抱えて舞台で死ぬ、そんなことを期待してたのに、夢見てたのに…ああ、やっぱり盗みとか殺しには手出すんじゃなかった…きっとこれは天罰なんだ…って、え?
「もちろんわしらはゲームに乗ってない。むしろこのゲームをぶっ壊そうと仲間を探してるんじゃ」

………

―俺、助かった…?……俺、助かった!
腰が抜けてその場にヘナヘナと座り込んじまったぜ…。俺、ほんとについてた…ありがと、神様。
後ろから見られてたんだぜ?真後ろ。銃なんか持ってたら、一撃ズガンで俺死んでたんだぜ?レンガでもあったら後ろからガオンで俺死んでたぜ?
なのに死んでない。ほんとによかった…。
「おっと、まだ自己紹介をしてなかったのう。後ろにいるこっちが…」
「……」
「…?」
「……ディアボロだ」
ピンクの髪の毛で、服…か、これ?刺青か?ギターか、ドラムでも持たせればロックコンサートのバンドの一員みたいな格好してやがる。楽器には触れたこともなさそうなツラしてるがな。
まぁよくわからないけど、とりあえず俺から見たらこのディアボロって奴は気にくわねぇな。なんか不気味なオーラを纏ってやがるぜ…。
「そしてわしの名前は…」
それに比べてこのおっさん、こいつは好感が持てる。自信に満ちてる顔、きらきら子供みてーな好奇心溢れる瞳、鍛え抜かれた肉体…。
安心感つーか、リーダーシップつーかあんたについてけば大丈夫って感じがムンムンするぜ~!

「ジョセフ・ジョースター」
「なぁにいいぃーーーーーーーッ?!」



   ◆



神様、俺のことがそんなに嫌いですかーーッ?!おいおい、嘘だろ。まるで仕組まれたみたいじゃねーか!
そんなにこの俺を過酷な運命に突き落として楽しいいですかーーーッ?!
「え…今、なんて言ったんッスか?もっかい言ってくれませんか?俺、今聞き逃したみたいで…」
「ジョセフ・ジョースター、ジョセフ・ジョースターじゃよ。ちなみにイギリス生まれじゃ」

聞き間違いじゃなかったよ、チクショオォーーーーッ!!
アメリカからこの俺を探しに来た承太郎のじいさん、その人。…つまり俺が必死で殺そうとしていた相手じゃねーかッ!
なんてこったい、こんなタイミングが悪ぃの良ぃのかわかんねー、こんな時に会うなんて…ッ!
「ちなみに趣味はコミック集めじゃ。君は東洋系の顔してるから、コミックにはずいぶん詳しいんじゃないか、うん?」

…………あれ?

おかしいぞ、確か承太郎が言ってたはずだぜ。億泰のバイクのバッテリーの中で確かに聞いたぞ、この俺の耳は。
確かジョセフ・ジョースターは…
80代で、総入れ歯で、ボケ始めてて、足腰が弱くて杖を突いてて、手術もしてたはず だよな。
つまり…

わかった、わかったぜ…そうか、そういうことか…。
「映画も好きじゃな。もちろん今の若者が音楽を愛すようにわしも音楽を愛してる!ビートルズの“Get Back”がお気に入りじゃな!」

つまりこいつは 偽 名 だ!嘘をついてやがる、間違いねぇ!

何も知らない参加者に偽名を名乗り、情報を聞きだす。そしてデイバッグの中身も奪い取る。そうやって行動する二人組みだったのか!
「…もしもぉ~し、ノックしてもしもぉ~し。ねぇ、聞いとるか~い?」
くそ、なんてやつだ…。でもよぉ~それなら俺にも考えがあるぜ?
「あ、はい、大丈夫です。すみません、いきなり殺し合いに巻き込まれてあんた達が始めてあった人だったんで…」
「わかるよ、当然じゃな」
くそっ、偽善者ぶりやがって!この俺を利用しようといこうたってそうはいかねぇぜ?
「それで、君の名前はなんというのかな?」
「仗助、東方仗助ッス」


……………


「なぁにいいぃーーーーーーーッ?!」



◇   ◆   ◇



―ピンポンパンポン
え~駅にいる参加者皆さんに連絡です。あと15分で列車が発車しま~す。忘れ物と命に気をつけてご乗車くださ~い。





【E-7 ネアポリス駅構内/1日目 黎明】
【子持ちのおっさんコンビ~ポケットの中には小さいお兄さん~ チキンの音楽家添え】

【ディアボロ】
[時間軸]:レクイエムジョルノに殺された後
[状態]:健康。だけど目が死んでる。
[装備]:なし
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
基本行動方針:とにかく生き残り平穏な生活を送る。
1.ジョルノには絶対殺されたくない。
2.自分の顔と過去の二つを知っている人物は始末する。
3.とりあえずはジョセフに協力。でも無理はしない。
4.自分の過去に関するボロは絶対に出さない。
5.普通に死ねるならそれでもいいや。でもなぶり殺しは勘弁。苦しまないように殺して欲しい。
6.なるべく名前は言いたくないんだが…

【ジョセフ・ジョースター】
[時間軸]:DIO討伐後、日本に帰る飛行機の中。
[状態]:健康。
[装備]:なし
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
基本行動方針:必ず生きて脱出する。打倒アラキ!
0.な、なぁにいいいぃーーーーーーーッ?!
1.承太郎、シーザー、リサリサ、アヴドゥル、花京院辺りと合流して自分の推測について話し合いたい。
2.スージーQ、ジョージ、ジョナサン、ツェペリ、エリナ、スピードワゴン、仗助、徐倫は見つけ次第保護する。
3.勿論それ以外の殺し合いに乗っていない参加者達も護る。或いは協力していく。
4.ディオや柱の男達は見逃せない。ストレイツォに関してはリサリサの育ての親でもあるし保留したいが…
5.ディアボロにちょっと戸惑い。自殺をしそうで怖い。
6.機械に詳しい人間がいたら『隠者の紫』で首輪の内部構造を描き、解析してもらう。
7.正直な所スージーQと仗助はなるべく会わせたくない(スージーQに自分が殺されかねない。ばれるとは思わないがねっ!)
[備考]
※参加者達は時代を超えて集められたのでは?と推測しています(ディアボロにはまだ話していません)
※首輪を『隠者の紫』で調べましたが機械には疎いので詳しい事はわかりません。分かった事といえば隙間がまったく無いという事くらい。
※1で挙げた面子はジョセフが聡明と判断した面子なだけで別にポルナレフが信用できないというわけではありません。
※ポケットの中のホルマジオには気づいていません。
※波紋の呼吸を絶えず行っています。その影響である程度の運動なら息ひとつ乱れません。

【ホルマジオ】
[時間軸]:ナランチャ追跡の為車に潜んでいた時。
[状態]:健康。小さくなってジョセフのケツポケットの中に潜んでいます。 軽い酔いと吐き気
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、万年筆、ローストビーフサンドイッチ、不明支給品×3(本来はジョセフの物。ホルマジオ、ジョセフ共に未確認)
[思考・状況]
基本行動方針:ボスの正体を突き止め、殺す。自由になってみせる。
0.オエッ…気持ち悪…
1.とりあえず今はポケットの中で機を窺う。
2.ディアボロはボスの親衛隊の可能性アリ。チャンスがあれば『拷問』してみせる。
3.トリッシュ、ティッツァーノチョコラータの三名からもボスの情報を引き出したい。
4.もしもジョセフが仲間を攻撃しようとすれば容赦はしない。
[備考]
※首輪も小さくなっています。首輪だけ大きくすることは…可能かもしれないけど、ねぇ?
サーレーは名前だけは知っていますが顔は知りません。
※死者とか時代とかほざくジョセフは頭が少しおかしいと思っています。

【音石明】
[時間軸]:チリ・ペッパーが海に落ちた直後
[スタンド]:レッド・ホット・チリペッパー(姿形は完全修復。しかし激しく動いたら消滅するレベル→JC34巻の黒ずんだ状態)
[状態]:健康、
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品 ×1
[思考・状況]基本行動方針:優勝狙い
1.あれ、もしや知り合いだったの?!
2. とりあえず仲間が欲しい
3.これからもどこかで少しづつ充電したいが、電線に潜ったりパワーを極端に使うのは自粛
4.サンタナ怖いよサンタナ
5.電線が所々繋がっていないのに電気が流れているこの町は何なんだッ!? あやしすぎて怖えー!
[備考]
※バトルロワイアルの会場には電気は通っているようです。
しかし様々な時代の土地が無理やり合体しているために、電線がつながっていなかったりと不思議な状態になっているようです。 スタンドが電線に潜ったら、どうなるかわかりません。(音石は電線から放電された電気を吸収しただけです)
※ミセス・ロビンスンをスタンド使いだと思っています




※放送は荒木の声の録音です。残り15分で電車が出発するようです。




投下順で読む


時系列順で読む


キャラを追って読む

28:過去が来る! ジョセフ・ジョースター 91:線路は続くよ、どこまでも
28:過去が来る! ホルマジオ 91:線路は続くよ、どこまでも
28:過去が来る! ディアボロ 91:線路は続くよ、どこまでも
60:おかしな3人 音石明 91:線路は続くよ、どこまでも

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最終更新:2009年09月14日 16:32