恐らくオレはジャイロ・ツェペリにやられて落馬した(どうやったのかはまだよく分からないがチョヤッの針が俺に飛んできた)
その傷が今残っていないのは嬉しいが、ここはどこだ?我が愛馬『エル・コンドル・パサ』は無事なはずなのに見当たらない。そもそもここはどこだ?ここはあの砂漠じゃあないのか?
わけが分からない。向かって前方には灰色の見たこともないような変な建物?も建ってるし…まあそれは置いておいてだ。あの『荒木』とか言う奴が言ってた殺し合いって何だ?
「……まさかッ!」
ここで一つの仮説が浮かぶ。あの時チョヤッを全弾喰らってあのまま死んだんじゃあないのかと。
この場所は差し詰め地獄か天国か?殺し合いで敗者をサボテンにくくりつけて晒し者にする。そんな辺鄙な村の生まれだから信じちゃあいなかったが、まさか本当にあの世があるとはな。
だが、だとしたら何で殺しあわなきゃならない?もう死んでいるはずだろう?それが第二の疑問だ。
それが本当だとしたら警戒をしなきゃあいけないだろう。
手元に置いてあったバックのようなものの中を確認する。中には水の入った変な容器や、変な形のパン(千切ってみて食物繊維を確認し、ようやくパンと気付けるほど変だった)。
そして折りたたまれた無地の紙と名簿、まず名簿を確認して俺は驚愕する。
「ジョージ・ジョースター…ウィル・A・ツェペリ……
ディオ・ブランドー…」こいつらは参加者であるDio、ジョニィ・ジョースター、ジャイロ・ツェペリは別人なのか?それとも関係者や偽名……?
それに1位通過の『
サンドマン』!?さらに名簿を見渡すと
ベンジャミン・ブンブーンや
マウンテン・ティム…
オエコモバと言った面々が軒を連ねる。
確か全員参加者のはずだ…優勝候補の奴ら、1stステージで好成績を残した奴らが多い…ひょっとしてこいつらも砂漠にやられちまったのか?
俺の頭に思い浮かんだのは、「この状況でレースに戻れるならばどんなに幸運だろうかと言うこと」だ。荒木は元の世界に戻れるとも言っていた。
「最高だッ!このレースでオレの前を走る奴はいねえッ!!」
仗助にやられて、スタンドをボロボロにされたオレは、何とか意識を維持できていて、奴らを欺き船にまで行くつもりだったんだが気がついたら俺は、なんかよく分からんおどろおどろしいコスプレ男を、壁に隠れて見ていた。
「最高だッ!このレースで俺の前を走る奴はいねえッ!!」
こいつ…マジに荒木とか言ってた奴の『殺し合い』に乗ったのか!?『殺し合い』をレースに置き換えているのか?マジにヤバイ……!『チリ・ペッパー』が今現在半壊状態
(半壊状態じゃないとしても「電力」を使い切っちまってほとんど力が残ってない今の状態じゃあ勝ち目ねえだろう)
ゴミのにおいの立ち込めるレンガの建物の中でじっと息を潜める。暗さのおかげでバレずに済んでるんだ…奴がこちらに来る前に移動したいところだが……
「オイ何やってんだテメエ」
「うわああぁあっ」思わず後退りし、危機感からか『スタンド』を発言してしまった。相変わらずボロボロではあったが、眩い電光が臭いゴミ捨て場を照らした。電光はすぐに消えはしたものの、それによって完全にオレ自身の存在は露呈した。
「ピーピー騒ぐんじゃあねえよ。何も捕って食おうってんじゃあねえんだからよぉ」
その言葉を発したのは、マジにオレを捕って食うんじゃあないかってなくらいおっかねえ面のオッさんだ。今はサマーシーズンも近づく時期だってのに妙に厚手の服装。顎に埋め込んだ鉄の塊?みたいなの。
コスプレ男もそうだがこいつら見るからに怪しすぎんぞ!怪しむなと言いたさげなんだけど怪しまない方がおかしいっつーのッ!
ミセス・ロビンスン…コスプレ男?いや、体つきは明らかに男だから男でいいんだろ。
男の名前はミセス・ロビンスン…オッさんや俺と距離を取りつつ、ゆっくり口を開く。
「アンタは『ブンブーン一家』のベンジャミン・ブンブーンだったな…9位フィニッシュのアンタが18位のオレを称えるのは全く耳に心地よくないんだがな」
「そりゃあすまねえなぁ……まあ回りくどい聞き方はする気はねえよ…お前さんは『荒木』の言う殺し合いに乗ったのかい?」
オレを全く寄せ付けず二人の会話は続く。
「いいや……」
まあこの答えが返ってくるのが当然といえば当然だった。
「ハイ私はゲームに乗っています。今すぐブッ殺してやるよぉおおおおあばばばばば」何て言って相手に向かってみろ。相手がかなり強いスタンド使いだったり、強力な武器を持ってたりしたらどうする?自殺行為も甚だしいだろ。
今のオレはスタンド使いじゃあない奴にも勝てる気がしないのに、そんな危険を冒すきにはなれないぜ。
「まあそういうだろうと思ったぜ…オイ、ちぢくれボーズッ!」
「ぎえっ!?」突然背中を蹴られる感触に俺は襲われた。蹴ったのは後ろに立つブンブーンとか言うオッさん。
「テメエ名前は?テメエも参加者だろ?首輪付いてるしよ…」
「あ…ああ……!
音石明ってんだ…」
「オトイシ…か……それにしてもひょろい野郎だなぁオイッ!!L.A.よりも情けねえ面だぜッ!!」
L.A.って誰だよッ!だがそうツッコむのは多分危険だろうからやめておいた。
「まあそうと分かったら荷物を全部一度確認させな…使えるのがあったらオレが預からせてもらうぜ…協力する意思があるんならできるはずだがよ…」
突然のブンブーンのオッさんの言葉に、オレは面食らった。このオッさんは俺たちを「仲間に引き込もうとしているッ!?」
だがロビンスンはあくまで平静を維持した上で、その場を動かない。だんだん暗闇に目が慣れてきてロビンスンの周りが先ほどよりもよく見えるようになってきた。
奴がいるのは細かい砂埃が立ち込め、足元にたくさん細かいゴミがある場所。
そう思った刹那の後に、銃弾を発射するような耳を劈く音と共に、前方から何かが飛んできた。
「…………何だァ?……今の音……」
そう思ったのもつかの間のこと、続々と同じような発射音がロビンスンの位置からこちらに飛来してくるのだッ!
「チョヤッと同じ要領だ……散らばっていたゴミくずや木材の破片を我が眼孔内の『虫』による『高速の飛行風圧』により飛ばした……若干威力や精度は落ちるがこの程度のズレは大した問題ではないぞぉぉおおおおおお」
ロビンスンは思ったよりも早く反旗を翻した。いや、もともとブンブーンのオッさんに付くなんて一言も言ってなかったしこれも当然といえば当然。
『チリ・ペッパー』が使い物にならない今オレはそれを躱すしかなかったが、ブンブーンのオッさんには一直線に飛んでゆく。
だが、オッさんは平静を保った上で『サタデー・ナイト・フィーバー』の『ジョン・トラボルタ』を髣髴させるように右手を天高く突き上げた。まるで天高く聳え立つミラーボールを指差すようにだ。
するとどうだろう。バケツやらさびた鉄板やら千切れたパイプやらが突然飛んできてオッさんの前に『整列』し、ズギャガガガガガガと全ての弾丸をはじき落とした。その時オッさんの背後にはトカゲに似たようなスタンドヴィジョンも見ることができた。
オッさんはまず間違いなくスタンド使い…そして「ミセス・ロビンスン」も…
『虫』を用いた攻撃は、見事に全弾弾き飛ばされた。なぜ『鉄板やバケツ』が奴の前に立ちふさがり、奴を護ったのか?明らかにバケツや鉄板の方からこちらに飛んできた。そして木片やゴミくずを残さずはじき落とした………!
一瞬見えたトカゲのようなおぞましい像は何か…奴と関係があるのか…?
不気味さと恐怖を同時に覚えた俺は『虫』をとりあえずはしまった。
「ワシぁ心が広い…お前さんがもう攻撃しないってんならこっちもお前を殺さない……こっちとしてもお前さんの能力は重宝しそうだしなぁッ…オイちぢくれボーズッ!」
「は…はいッ!?」突然の怒号にオトイシという男は酷く面食らったようだった。
「テメエが調べろッ!変な気を起こしてもワシが不意打ち喰らわねーようになッ」
それは彼にとって死刑宣告のようなもので、彼は肩を落とし酷く落胆した。だが落胆したのは彼だけではない。足元に『虫の風圧』で飛ばせる塵芥が全くないオレにとってもそれは同じだった。
「オイ…バックパック渡しな……!」やや嫌そうな口調でオトイシはオレからバックパックを取り上げる。
そしてオトイシは中身を一つ一つ、取り出して地面に置いてゆく。
紙、水の入った容器、パン、名簿…
「何なんだ……?この紙…」そこでやはり彼は、オレが疑問に思ったがあえて開かなかった『紙』にたどり着く。すぐに開けるような浅い包装を、彼は躊躇なく開こうと手を掛ける。
「何やってやがるちぢくれボーズッ!何手間取って……」
結局ベンジャミン・ブンブーンもこちらにまで足を運んでいた。そして紙を凝視すると、中が少しだけ見えた。
中にあるのは…『銃弾ッ!?』
「その紙を開くんじゃあねえぇぇええええぇ」突然のベンジャミンの咆哮は、オトイシを怯ませ、彼はすぐに紙を手放した。
「あの銃弾……こりゃあマジか!?ありゃあアンドレの…」
彼は突然困惑した。チラっとだがあの銃弾血液が付着してるようにも見えたぞ…これは単なる殺人事件か……?それとももっと上位に位置する高尚な何かなのか……?
アンドレの磁力を操る能力が持続してるとしたら危ないところだった…あの包み紙を開けたら内臓が千切れ飛んでいたぜッ
あの紙は今開いちゃあいけねえ、そんな気がしてオトイシの近くにまで直接行って正解だったぜ。
あのちぢくれボーズのことだ。オレが止めなきゃ開いていた。
「いいかちぢくれボーズ……テメエの支給品もどうせここれらのラインナップと同じようなものだ…だが紙は違う……どう言うわけかこの紙…なんでも収納できるらしい…だが今は開くなよッ いざというときに開くんだッ!分かったなッ!?」
ボーズはワシを恐れていて、今言ったことを分かっているだろうが、念には念を入れ、さらに深く釘を刺しておいた。釘は深く刺せばさすほど抜けにくい…抜けにくいことによって生じる『よくねー事』もあるが、今はそういうことは考えるつもりはない。
今湧き上がるのは荒木に対する憎悪だ…アンドレもL.A.も殺し合いに参加しちゃあいないが、アンドレの能力が発動してる…これから予測できることは二つある。
①「荒木がアンドレの能力を使っている」
②「アンドレが荒木に監禁され、能力を使わされている」
考え付くのは②だった。②が考え付くから、荒木の奴に対する憎悪も一塩だった
「紙はワシが預かるぞッ!『協力者』ならそれくらい当然じゃろッ」
半ば強引に話を収めたワシは、オトイシの前に立ちふさがり、やや威圧するように質問をする。
「お前もさっきワシと同じような能力を出した見たが……やはりアレもワシのと似たようなものなのか?」
「……『スタンド』のことか……?」
「『スタンド』だぁ?この像のことを『スタンド』と言うのかッ?」
「………んああそうだ…アンタやアンタも…同じような能力の使い手だろう?」
「……ああ…」オトイシのその問いに、ロビンスンは多少詰まったようだった。
「まあいいわい。お前らとてワシにこの場で殺されたくはあるまい?じゃあワシについて来い。荒木の奴をブチ殺してさっさともとの世界に戻るぞッ!」
全員の思想は、未だ一つではない。果たして一つになるのか。それは誰にも分かる「はずがない」。
【E-6 ゴミ捨て場/一日目・深夜】
【ベンジャミン・ブンブーン】
[時間軸]:ジョニィに足を切られる前(4巻)
[スタンド]:名称不明(鉄を操る能力)
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品(アンドレの血痕付きの銃弾)
[思考・状況]基本行動方針:荒木の野郎を殺してレースに戻る
1.ロビンスンとオトイシを利用するつもり
2.アンドレを救出する
[備考]アンドレの血痕付きの銃弾。
ミセス・ロビンスンの支給品(現在はベンジャミンが所持)。血痕はまだ新鮮。
生物や物体に付着させることで相手に強力な磁力を帯びさせられます。
アンドレからどれだけ離れていても能力は持続するように荒木によって改ざんされています。
紙から出さない限り使えません。
【音石明】
[時間軸]:チリ・ペッパーが海に落ちた直後
[スタンド]:レッド・ホット・チリペッパー(ほとんど戦えない状態)
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品
[思考・状況]基本行動方針:生き残る
1.死にたくない
2.ミセス・ロビンスンをスタンド使いだと思っています
3.チャンスがあれば民家に立ち寄ってパワーを充電をしたい
【ミセス・ロビンスン】
[時間軸]:チョヤッを全弾喰らって落馬した直後
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品
[思考・状況]基本行動方針:優勝してレースに戻る
1.ベンジャミン、オトイシを利用する
2.戦闘は彼らに任せるつもり
3.サンドマンやマウンテン・ティムなどの優勝候補を率先的に潰す
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最終更新:2008年08月13日 13:21