『強くてニューゲーム』――という言葉がある。

元々はRPGだかのクリア後特典で、一度クリアした状態でもう一度最初から遊べるというものだが……
この『強くて』は一体何が強いんだろうか。考えたことはあるかい?

思うにこの『強い』のは、何も強力な魔法が使えるとか、優秀な武器を装備してるとかいうことではないと思うんだ。
――や、君らに前に話した強者の定義とはそりゃあ違うよ。まあ聞けって、重要なのは次だ。

俺はね、“知っていること”こそが『強い』んだと思う。
ここでこういう敵が出てきて、この洞窟にはどんなアイテムが落ちていて。
用がない――そうだな、大体街の入口にいて地名を教えてくれるような――そういう連中には声すらかけない。知ってるんだから。

と、ここまで話したところで――今回の登場人物たちは、そういう『用のない』……言い換えれば“知らない”連中だ。
時は日暮れ、場所は倒壊した空条邸からやや離れた民家。それじゃ、始めよう。


●●●


「それで、仗助くんたちは?」
屋内の安全を確かめ、リビングに各々が陣取ったのち、最初に口を開いたのは広瀬康一。その内容は至極当然。
その他の面々も似たようなセリフを投げかける。
落ち着いたら話す、そういったきりここまで無言を通し続けたその顔に対して少々の不信感を抱きながら全員が黙ったところで、やっと噴上が……答えを知る者が、口を開く。

「……行っちまったよ。
 あぁ――いや、話が前後するが、シーラっつったな、割と元気そうでなによりだ」
「えぇ、おかげさまで。
 ……で、そのお礼も言いたかったのよ。行っちまった、ってどこに?」
名前を出されたシーラEが挨拶と同時に、これもまた全員が聞きたがっているであろう言葉を代弁する。

「先祖代々の因縁を晴らすんだとさ」
今度は即答した噴上の、ともすれば開き直ったかのようなその言い草に何人かが顔をしかめる。
――だけではなかった。どしどしと足音を立てながら歩み寄り、噴上の胸ぐらをつかんで引きずり起こしたエルメェスの額には青筋が浮かんでいる。
「で?それで黙って見送っちまったのかよ、そこは『俺を倒してから行け』とかいうセリフを吐くところだったんじゃあねーのかッ!アァ!?」
「――面と向かって足でまといだと言われちゃあ仕方ねえだろ」
噴上も怯まずその瞳をまっすぐ見つめ返す。いや、睨み返すと行ったほうが差し支えないだろう。それほどまでに二人の間の空気は尖っていた。

「二人共落ち着け――俺も色々言いたいことはあるが、まずは彼の言い分を聞こう。全て聞いてから文句なりなんなり言えばいい。このままでは話が進まないぞ」
マウンテン・ティムが割って入らなければどうなっていたことか。舌打ちをしながらも手を離すエルメェスを見て安堵する康一。シーラも似たような表情だった。

「……で?改めて聞かせてみろ、お前があいつらを見送る羽目になった理由を、全員が納得いくように」
彼らを宥めるついでに穏やかな口調でティムが噴上を促す。噴上は軽く咳払いをし、ゆっくりと、しかし確実に語り始めた。


●●●


「じゃ、じゃあ今から急げば仗助くん達に追いつけるんだね?」

自分の話が終わったとアピールするように一息ついた噴上を確認しまっさきに口を開いたのは、やはり広瀬康一だった。
よほど友人のことが心配なのだろう。自分自身の不甲斐なさを悔いているのだろう。
そして――彼はこの同胞たちがすぐに賛成し、奮起してくれると信じて疑わなかった。それゆえに、

「俺は反対だ」

と、今まで静かだったのが不思議なくらいにダンマリを決め込んでいたシュトロハイムの一声を咄嗟に理解できずにいた。
そして、それを見かねてか、康一が次の疑問を口にする前に言葉を繋ぐ。

「いいか、俺はキサマらよりも柱の男、そして吸血鬼については良く知っている。
 無論、その過程で石仮面のことも知り得たし、それを被り吸血鬼となったディオという男、そしてその関係者、すなわちジョースターの一族のことも調べ上げた」
「なるほど。だったら尚更加勢してやったほうがいいんじゃあねーのか?俺だって黙ってあいつらを行かせちまったこと、後悔してるんだからよ、こう見えて」
そういう噴上を手で制しシュトロハイムが続けた。
「いいか、彼らはこの殺し合いの場に連れてこられる前――いや、それよりもさらに以前。
 俺の知るジョジョ、つまりジョセフから見ても50年来の、さらに言うならジョセフの祖父ジョナサン、さらにその父のジョージからの長く深い因縁がある」

「だからアイツ等だけで決着つけさせてやれってか、それは流石に考え方が古臭すぎやしないか?ナチのおっさんよ」
凄んだのはシーラだった。康一も慌てて口を開く。
「そ、そうですよシュトロハイムさん。それでもし仗助くん達が殺されでもしたら、僕らが見殺しにしたようなものじゃあないですかッ
 そうでしょう?そうですよねッみんなッ!?」

ぐるりと仲間たちの顔を見回し、最後に康一と目があったのはマウンテン・ティムだ。
その強い眼差しに答えを求められたように感じてゆっくりと吐き出す。

「康一くん――

 残念だが、今回ばかりは俺もシュトロハイムと同意見だ。彼らの戦いに水を差すわけにはいかない」
その意外な一言にシュトロハイム以外の全員が目を見開く。

「君らの気持ちはよくわかる。普段の俺なら力づくでもシュトロハイムを説得しただろう。
 だがね……因縁だとか仇討ちだとか、そいったものは、当人同士でしか決着をつけられないものなのさ」
「仇討ちか――確かに、それは自分の運命に決着をつけるためにある。そうだな、アタシらが邪魔するのはナンセンスって訳か」
「言われてみれば――あたしたちはジョースター家ってもん、何も知らないもんな。そんな連中に宿敵を倒されても、勝った気はしないだろうな」
「そんなッ!エルメェスさんまで何言い出すんですかッ!?シーラさんもッ」

すがるような気持ちで噴上を振り返る康一。
その顔はさらに青ざめることになる。

「……すまねぇ、康一。ここまで言われちまったら俺にも何も言い返せねえ。
 それに――分からんでもねぇ、って部分もある。
 もし、もしも……アケミやレイコ、ヨシエに関わることだったら俺も誰にも邪魔されたくはねぇ、と思う。何も知らねぇ奴が口出すんじゃあねぇってな」


●●●


ついに孤立してしまった康一。
泣き出しそうな顔のまま玄関の方へ駆け出す。自分ひとりでも向かおうという覚悟がその背中に見て取れた。

だが、その肩を掴んで離さないものが一人、他ならぬシュトロハイムである。

「は、離して下さいよッ!僕だけで行きますからッ!あなた達がそんな薄情な人たちだったとは思いませんでしたよ!」

「落ち着け康一。

 ――『栄光の代価』という書の中でピット・ファイターのカマールという男がこういう言葉を残している。
 『真の強さは行動の中にある。そう思わん奴を弱虫野郎というんだ』とな」

「あなたに言われたくないですよッ!行動しようとしないあなたなんかにはッ」

ブンと手を振りほどく勢いのまま振り返った康一の目に飛び込んできたのは、先程までとはうって変わって穏やかな表情のシュトロハイムだった。
その口角が釣り上がる。それはいつもの不敵なシュトロハイムの表情。
「誰が行動を起こさんと言った?なぁお前たちィッ!?」

その一言から先はあっという間だった。全員が矢継ぎ早に言葉を発する。

「そうだ康一くん。俺たちは行かないとは一言も言っていないぞ」とティム。
「そうそう、行き先こそ違うがな」とエルメェス。
「ああ。俺たちに出来ることをしてやろうぜ」と噴上。
「まっ、そういうことよ。動きたくてウズウズしてるのはあなただけじゃあないのよ」最後にシーラEが付け加えた。

「で、でも出来ることって一体……」
あまりの展開の速さに目を回す康一がゴニョゴニョと呟いた。もちろん答えを用意していないシュトロハイムではない。

「いい着眼点じゃあないか康一ィッ!
 だが分からんか!彼らの決着に水を差そうとしてるのは“我々だけじゃあない”のだよオォッ!」
「いちいちうっせーな、相変わらず」
エルメェスが茶化す。同時に噴上が懐から何かを取り出した。

「ま、そういうこった。例えば――こいつみたいにな。
 さっきまでこのトランプ、足生えてたんだぜ。スタンドだろーな。間違いなく」

その言葉にぴくりと反応したのは勿論シーラ。
「どこで拾ったの?その『ハートの4』のカード。
 でも――まあ、あのクソならやりかねないわ。
 彼らの戦いに……大げさに言えば人生に、マヨネーズとシロップをぶっかけてグチャグチャに混ぜるような真似をね」


●●●


……ここから先は、全員のセリフが簡単に想像できるだろ?

要するに『横槍入れるなんて無粋な真似は俺らがさせんッ!』ってことさ。
知らない奴らは知らない奴らなりに――彼らの誇りを守ろうとし、それこそが自分たちのやるべきことだと、そう言ったのさ。

もちろん行動も早い。シーラがムーロロに関する情報を可能な限り話して情報を共有。
スタンドそのものと言っていいトランプカードがあるから匂いの追跡は容易。

そこに罠があろうが何があろうが、目的はただ一つ!ってところだ。


――強くてニューゲームの話に戻るけど、つまりはそういう事なのさ。
勇者は勇者。表舞台で華々しく戦う。
かと言って、相手にされない連中が何もしないわけじゃあない。
彼らには彼らの戦いがある。王には王の……料理人には料理人の……


俺だってそうさ――君らが聞きに来てくれれば、いつでも話をしてあげよう――


【E-4北東部 民家 / 1日目 夕方】

【チーム名:新生・HEROES

ルドル・フォン・シュトロハイム
[能力]:サイボーグとしての武器の数々
[時間軸]:JOJOとカーズの戦いの助太刀に向かっている最中
[状態]:健康
[装備]:ゲルマン民族の最高知能の結晶にして誇りである肉体
[道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)、ドルドのライフル(5/5、予備弾薬15発)
[思考・状況]
基本行動方針:バトル・ロワイアルの破壊
0.ジョジョとDIOの因縁に水を差すトランプ使いは俺たちが倒す!
1.柱の男だけが脅威ではないのか…?

【広瀬康一】
[スタンド]:『エコーズ act1』 → 『エコーズ act2』
[時間軸]:コミックス31巻終了時
[状態]:健康(ほぼ回復しました)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×2(食料1、パン1、水ボトル1/3消費)、ランダム支給品1(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いには乗らない
0.仗助くん達とDIOの因縁に水を差すトランプ使いは僕たちが倒す!
1.色々考えるのはとりあえず後回し!仲間たちと共に戦って『成長』する
2.協力者を集める

噴上裕也
[スタンド]:『ハイウェイ・スター』
[時間軸]:四部終了後
[状態]:健康
[装備]:トンプソン機関銃(残弾数 90%)
[道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)、ランダム支給品1(確認済)、破れたハートの4
[思考・状況]
基本行動方針:生きて杜王町に帰るため、打倒主催を目指す
0.仗助たちとDIOの因縁に水を差すトランプ使いは俺らがぶっ飛ばす!
1.トランプの匂いの元=ムーロロの下へ向かう
2.協力者を集める

エルメェス・コステロ
[スタンド]:『キッス』
[時間軸]:スポーツ・マックス戦直前
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いには乗らない
0.ジョジョ一族とDIOの因縁に水を差すトランプ使いはアタシたちが倒す!
1.運命への決着は誰も邪魔することはできない……
2.F・F……いや、今はよそう

【マウンテン・ティム】
[スタンド]:『オー! ロンサム・ミー』
[時間軸]:ブラックモアに『上』に立たれた直後
[状態]:健康(回復しました)
[装備]:ポコロコの投げ縄、琢馬の投げナイフ×2本、ゴーストライダー・イン・ザ・スカイ
[道具]:基本支給品×2(食料1、水ボトル少し消費)、ランダム支給品1(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いに乗る気、一切なし。打倒主催者
0.ジョジョたちとDIOの因縁に水を差すトランプ使いは俺たちが倒す!
1.協力者を探す

※自分の能力+承太郎の能力で首輪が外せないか?と考えています。ただ万一の事があるのでまだ試す気にはなっていません

【シーラE】
[スタンド]:『ヴードゥー・チャイルド』
[時間軸]:開始前、ボスとしてのジョルノと対面後
[状態]:痛み(軽度~中度に回復)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式×3(食料1、水ボトル少し消費)、ランダム支給品1~2(確認済み/武器ではない/シ―ラEのもの)
[思考・状況]
基本行動方針:ジョルノ様の仇を討つ
0.ジョースター家とDIOの因縁に水を差すムーロロ、アタシが落とし前をつける!
1.このまま皆で一緒にいれば、ジョルノ様に会えるかも?

※ジョセフと仗助により傷自体は完璧に治されました
※参加者の中で直接の面識があるのは、暗殺チーム、ミスタ、ムーロロです
※元親衛隊所属なので、フーゴ含む護衛チームや他の5部メンバーの知識はあるかもしれません

【チーム全体の備考】
全員がカンノーロ・ムーロロについての知識をシーラから聞き、情報を共有しました。
(参戦時期の都合上シーラも全てを知っているわけではないので、外見と名前、トランプを使うらしい情報チーム、という程度です)
チーム全体の行動方針として、噴上の能力を頼りにムーロロのもとに到達するのが第一目的です。


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前話 登場キャラクター 次話
168:Trace ルドル・フォン・シュトロハイム 184:さようなら、ヒーローたち
168:Trace 広瀬康一 184:さようなら、ヒーローたち
168:Trace 噴上裕也 184:さようなら、ヒーローたち
168:Trace エルメェス・コステロ 184:さようなら、ヒーローたち
168:Trace マウンテン・ティム 184:さようなら、ヒーローたち
168:Trace シーラE 184:さようなら、ヒーローたち

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最終更新:2015年09月09日 21:39