熱いお茶が美味しい季節になってきた。
柊家の縁側でつかさと二人、いれたての煎茶をすすりながら、こなたはそんなことを考える。
「秋だねぇ」
「秋だねー」
取り立てて実のない会話。それでもコミュニケーションはしっかり成立していた。
涼しい風に吹かれて、金木犀の香りがほのかに漂っている。見上げれば、高い空にうっすらとうろこ雲が浮いている。
言葉通りに秋な景色を眺めながら、こなたとつかさは何をするでもなくお茶をすすっていた。
「……あんたら二人見てると、時間がゆっくりになったように感じるわ」
居間に腰掛けているかがみが、そんな二人の様子を見ながら呆れたように呟く。
「かがみも一緒に時間をゆっくりにしない?」
「遠慮しとく」
「つれないなぁ。たまにはかがみもまったりしようよ」
「たまにはいいかもしれないけどね。あんたらは普段からのんびりしすぎ。特に最近。テスト近いから逃げたいのは分かるけど、しっかりしなさいよ。もう高三なんだから」
「……秋だねぇ」
「秋だねー」
(うわっ、素でスルーしやがった)
そこまで嫌なことを考えたくないのか、と突っ込む前にちょっと感心してしまうかがみだった。
「秋といえば……」
ふとこなたが話題を転換した。
「色々と乾燥するようになってきたね」
「あ、そうだね。晴れた日はお洗濯物がよく乾くよ」
「お洗濯物ならいいけど、どうも最近唇が乾いて荒れてきてねぇ……」
自分の唇に指先を当てながら、少し憂鬱そうなこなた。
「こなちゃん、リップとか使ってないの?」
「うん。そういうのあんまり使ったことない。つかさはどうしてるの?」
「私はよくお姉ちゃんの借りたりするかな。前に自分で買ったの無くしちゃって……」
「ふむ……やっぱり使うと違う?」
「うん、全然違うよ。それに舌で舐めたりすると、余計に荒れるっていうし」
「なるほどねぇ」
不意にこなたは手を伸ばした。指先をつかさの唇に、無造作に当てる。
「確かに、あんまり荒れてないね」
「でしょ」
つかさはこなたの行為を普通に受け入れていた。が、かがみはこなたの頓着の無さとつかさの天然ぶりを、渋い顔で見ていた。
(唇の状態なんて触らなくても見れば分かるでしょうが……)
そんなかがみの心の声を知ってか知らずか、
「私なんてガサガサで、あんまり大きく口開けたら裂けちゃいそうだよ。ほら」
「あーホントだ。唇ちょっとガサガサしてるね」
つかさまでこなたの唇に指を当てて直接確認などしている。
柊家の縁側でつかさと二人、いれたての煎茶をすすりながら、こなたはそんなことを考える。
「秋だねぇ」
「秋だねー」
取り立てて実のない会話。それでもコミュニケーションはしっかり成立していた。
涼しい風に吹かれて、金木犀の香りがほのかに漂っている。見上げれば、高い空にうっすらとうろこ雲が浮いている。
言葉通りに秋な景色を眺めながら、こなたとつかさは何をするでもなくお茶をすすっていた。
「……あんたら二人見てると、時間がゆっくりになったように感じるわ」
居間に腰掛けているかがみが、そんな二人の様子を見ながら呆れたように呟く。
「かがみも一緒に時間をゆっくりにしない?」
「遠慮しとく」
「つれないなぁ。たまにはかがみもまったりしようよ」
「たまにはいいかもしれないけどね。あんたらは普段からのんびりしすぎ。特に最近。テスト近いから逃げたいのは分かるけど、しっかりしなさいよ。もう高三なんだから」
「……秋だねぇ」
「秋だねー」
(うわっ、素でスルーしやがった)
そこまで嫌なことを考えたくないのか、と突っ込む前にちょっと感心してしまうかがみだった。
「秋といえば……」
ふとこなたが話題を転換した。
「色々と乾燥するようになってきたね」
「あ、そうだね。晴れた日はお洗濯物がよく乾くよ」
「お洗濯物ならいいけど、どうも最近唇が乾いて荒れてきてねぇ……」
自分の唇に指先を当てながら、少し憂鬱そうなこなた。
「こなちゃん、リップとか使ってないの?」
「うん。そういうのあんまり使ったことない。つかさはどうしてるの?」
「私はよくお姉ちゃんの借りたりするかな。前に自分で買ったの無くしちゃって……」
「ふむ……やっぱり使うと違う?」
「うん、全然違うよ。それに舌で舐めたりすると、余計に荒れるっていうし」
「なるほどねぇ」
不意にこなたは手を伸ばした。指先をつかさの唇に、無造作に当てる。
「確かに、あんまり荒れてないね」
「でしょ」
つかさはこなたの行為を普通に受け入れていた。が、かがみはこなたの頓着の無さとつかさの天然ぶりを、渋い顔で見ていた。
(唇の状態なんて触らなくても見れば分かるでしょうが……)
そんなかがみの心の声を知ってか知らずか、
「私なんてガサガサで、あんまり大きく口開けたら裂けちゃいそうだよ。ほら」
「あーホントだ。唇ちょっとガサガサしてるね」
つかさまでこなたの唇に指を当てて直接確認などしている。
「あんたらねぇ……唇なんて人にペタペタ触らせる所じゃないでしょうが」
「ん? かがみもしてほしいの?」
「誰がそんなことを言っとるか!」
「まあ、それはさておき」
こなたは縁側からかがみの傍まで歩み寄った。
「かがみ、私にもリップ貸して」
気軽な調子でそう頼んだが、
「悪いけど断る。自分で買って」
かがみの返事はすげなかった。
「えー。つかさには貸してるのに?」
「つかさは妹だからよ」
「差別だ……」
いじけて畳の上に指で「の」の字を書くこなた。その様子にかがみは少し慌てて弁解する。
「差別とかじゃなくて、単純に抵抗が少ないだけよ。妹と間接キスしても別に何でもないでしょ」
そういうのに反応する人種もいると思われるが。身近な例だと田村さんとか田村さんとか田村さんとか。
「私と間接キスするのが嫌なわけだね?」
「そういう問題じゃ……いやまあ、確かにそういうことなのかな。別にこなたが嫌ってわけじゃないのよ。分かってると思うけど」
「ふむ……なるほど」
事情を了解したのか、こなたは何度か繰り返し頷く。かがみは軽く胸をなで下ろした。
「ねえかがみ」
ホッとしていたかがみが呼びかけに応えて顔を上げた瞬間、
ちゅ
と漫画のような効果音を立てて、こなたの唇がかがみのそれに重ねられていた。
ふわりと柔らかいかがみの唇の感触に、こなたは自分の唇が荒れているのが改めて分かる。かがみの方はというと、感触がどうとか考えてる余裕はなかったが。
すぐ離れた。キスしていたのは、時間にすれば三秒にも満たない。
「~っ△@¥×☆!?」
「どったの? 声にならない声上げて」
かがみは金魚みたいに顔を赤くして口をパクパクさせている。
「なっ、なっ、なっ……」
「ナイトメア? 確かにネウロのOPはちょっと――」
「違うわっ! 何すんのよいきなり!?」
唇を袖で拭いながら、完熟トマトみたいに真っ赤になったかがみが怒鳴った。
「間接キスがダメなら本キスならOKかと」
「どういう発想だよ!? そもそも唇の荒れをどうにかするって主旨からずれてるだろ!!」
「あ、そっか。失敗失敗♪」
頭を掻きながら「テヘ☆」と舌を出すこなた。無論、そんなことでかがみがごまかせるはずもない。呼吸を荒げ、今にも掴みかからんばかりに肩を怒らせている。
「まあ、そう怒らないでよかがみ。お陰で良いこと思いついたよ。リップを借りなくても済む方法」
「……どんな?」
「まずかがみがリップを塗って、その後キスすることで間接的に私にリップを塗るというインド人もびっくりな画期的手法――」
「だ・れ・が・す・る・か――――っっ!!!」
秋の空高く、かがみの突っ込みがこだました。
「ん? かがみもしてほしいの?」
「誰がそんなことを言っとるか!」
「まあ、それはさておき」
こなたは縁側からかがみの傍まで歩み寄った。
「かがみ、私にもリップ貸して」
気軽な調子でそう頼んだが、
「悪いけど断る。自分で買って」
かがみの返事はすげなかった。
「えー。つかさには貸してるのに?」
「つかさは妹だからよ」
「差別だ……」
いじけて畳の上に指で「の」の字を書くこなた。その様子にかがみは少し慌てて弁解する。
「差別とかじゃなくて、単純に抵抗が少ないだけよ。妹と間接キスしても別に何でもないでしょ」
そういうのに反応する人種もいると思われるが。身近な例だと田村さんとか田村さんとか田村さんとか。
「私と間接キスするのが嫌なわけだね?」
「そういう問題じゃ……いやまあ、確かにそういうことなのかな。別にこなたが嫌ってわけじゃないのよ。分かってると思うけど」
「ふむ……なるほど」
事情を了解したのか、こなたは何度か繰り返し頷く。かがみは軽く胸をなで下ろした。
「ねえかがみ」
ホッとしていたかがみが呼びかけに応えて顔を上げた瞬間、
ちゅ
と漫画のような効果音を立てて、こなたの唇がかがみのそれに重ねられていた。
ふわりと柔らかいかがみの唇の感触に、こなたは自分の唇が荒れているのが改めて分かる。かがみの方はというと、感触がどうとか考えてる余裕はなかったが。
すぐ離れた。キスしていたのは、時間にすれば三秒にも満たない。
「~っ△@¥×☆!?」
「どったの? 声にならない声上げて」
かがみは金魚みたいに顔を赤くして口をパクパクさせている。
「なっ、なっ、なっ……」
「ナイトメア? 確かにネウロのOPはちょっと――」
「違うわっ! 何すんのよいきなり!?」
唇を袖で拭いながら、完熟トマトみたいに真っ赤になったかがみが怒鳴った。
「間接キスがダメなら本キスならOKかと」
「どういう発想だよ!? そもそも唇の荒れをどうにかするって主旨からずれてるだろ!!」
「あ、そっか。失敗失敗♪」
頭を掻きながら「テヘ☆」と舌を出すこなた。無論、そんなことでかがみがごまかせるはずもない。呼吸を荒げ、今にも掴みかからんばかりに肩を怒らせている。
「まあ、そう怒らないでよかがみ。お陰で良いこと思いついたよ。リップを借りなくても済む方法」
「……どんな?」
「まずかがみがリップを塗って、その後キスすることで間接的に私にリップを塗るというインド人もびっくりな画期的手法――」
「だ・れ・が・す・る・か――――っっ!!!」
秋の空高く、かがみの突っ込みがこだました。
ツンのかがみにくちびる寄せりゃ、くちびる熱し安芸の宮島三泊四日
こなた
こなた
おわり
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- 私もこなたと同じ事やったなぁw立場は逆だったけどw -- 名無しさん (2009-03-28 22:01:04)
- あなたの秋の描写は
心が暖まります。 -- 無垢無垢 (2008-12-17 04:25:41) - なんかいいなあ、、、。ほのぼのする。
ひじょーにGJ! -- 将来ニートになるかも (2007-10-18 21:38:30)