kairakunoza @ ウィキ

Lucky☆Stars!

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だれでも歓迎! 編集
→「いい」
 「よくない」

「う~むむむ…」
PCの画面の前で、私は柄にも無く腕組みをして唸っていた。
画面に映し出されているのは、ゲームのとある選択肢。
…夏に18禁版が出るという事で、積みゲー状態だったオリジナル版を
消化しちゃおうと思い立ってプレイして最後のシナリオまで辿り着いたんだけど…

「個別シナリオの出来が今までと比べて少し見劣りしてたからちょっとガックシしてたけど…
 やっぱメインライターさんの『引退作品』だからか、このシナリオは凄かったなぁ…」
主人公を含めた男の子4人と、その中の兄貴分の妹を入れた5人の幼馴染グループ。
だけど、メインヒロインである兄貴分の妹は極度の対人恐怖症になってしまい
兄貴分も完全に自分の殻に閉じこもってしまっていた。そんな中で主人公は
何とかしてもう一度5人一緒に遊べるようにと懸命に努力し、ついにそれを実現させる。

…そんな矢先に兄貴分から聞かされた「世界の秘密」。
修学旅行でのバス転落事故で生き残った主人公とメインヒロインを「強くする」ために
作り上げられた「虚構世界」だという事を聞かされ、消え行く3人の思いを汲んで
事故現場から逃げる事で何とか生き延びる事が出来た主人公とメインヒロイン。
2人で生きる事を決意した姿の後に、兄貴分のものと思しき満足げな言葉が出て…
冒頭の選択肢へと続いていくという状況なのである。

「友情かぁ…」
机に突っ伏す姿勢でPCの画面を見ながら、ふと呟く。
このゲームの主人公達程の長い付き合いではないけれど…
あたしとかがみ達、ゆーちゃんとみなみちゃん達…そして少し前から
本格的に友達と言える仲になったと思えるみさきちと峰岸さん。
この10人の友情だって、決して負けてはいないと私は思っている。

でも…
もしもかがみ達が、あたしを助ける為に自分を犠牲にするとしたら
果たしてあたしはそれを受け入れられるだろうか?
かがみ達がいなかったら、あたしのこれからの人生は
物凄くつまらない物になってしまう事は想像に難くない。
だけど、かがみ達の思いを無視して自分の命を捨てる事が
かがみ達の為になるとも到底思えない。
じゃあ、どうすれば…?

そんな事をぼんやりと考えているうちに、あたしはそのまま机の上で眠ってしまった。


「ん…」
目が覚めて最初に目に飛び込んできたのは、見慣れない天井だった。
顔を左に向けると、点滴の管が見える。
少しづつはっきりしてくる意識の中で、あたしは記憶を遡っていく。

―桜藤祭でのチアダンス無事成功を祝っての、10人+黒井先生での小旅行。
―その時に乗ったバスが急カーブを曲がり切れずに、崖下に転落。
―幸運にも軽症で済んだ黒井先生が、近くにいたあたしとゆーちゃんを救出してくれた。
―事故現場から離れた場所に運んでもらい、再び救出に向かおうとする黒井先生。
―それと同時に聞こえた、爆発音。

「あ…お姉ちゃん、起きたんだ」
ゆーちゃんの声に、あたしは思考を中断させて反対側を向く。
「ゆーちゃん…怪我は?」
「私は、そんなに怪我してなかったみたい」
「そっか…」
「お姉ちゃん、凄く長く寝てたから…心配だったんだよ」
「ごめんね、ゆーちゃん…心配させちゃって」
「ううん、謝らなくていいよ。無事だったんだから…」
私の詫びの言葉に、ゆーちゃんは頭を振ってそう返した。

「お姉ちゃん」
「何?」
「お姉ちゃんが起きる前に、黒井先生とお話したんだ」
「うん」
「他のみんなはどうだったんですかって、聞いたんだ」
「…何て言ってたの?」
「…何も言わなかった」
「…そっか」
ゆーちゃんの言葉と、記憶の中の爆発音が重なる。
そして…あたしは、一つの決意をする。


「ゆーちゃん」
「何? お姉ちゃん」
「あたしは、ゆーちゃんを守って生きるよ」
「え…? いきなり、どうしたの?」
「決意表明…かな」
ゆーちゃんは戸惑っていたけど、あたしは言葉を続けた。

「何が起こっても、あたしはゆーちゃんの傍に居る」
「どんな事があっても、ゆーちゃんの手を引いていく」
「だから、安心していいよ…ゆーちゃん」
さっきの言葉通りに、決意を込めて。
しっかり伝えようと、丁寧に告げた。

「お姉ちゃんなら…いいな」
「お姉ちゃんがいれば、私はこれからも生きていけると思うよ」
「だから…いなくなっちゃ、やだよ?」
「うん、約束するよ」
「だから…強く生きよう、二人で」
「…うん」
ゆーちゃんは小さな声で、だけどしっかりとした返事を返した。

「ねえ、お姉ちゃん」
「どったの? ゆーちゃん」
「…ベッドに入っていい? 一緒に寝たいんだ」
「お安い御用だよ、さぁさぁ入って来たまへー」
まだ完全ではないけれど、いつもの調子に近付けてあたしは言葉を返した。



「ん…」
ゆーちゃんがベッドに入って来て、しばらくすると二人とも寝てしまって。
しばらくして再び目が覚めると、病室は闇に包まれていた。
(長いこと寝てたって、ゆーちゃん言ってたしなぁ…)
そんな事を思いつつ、私は隣にいるゆーちゃんに目を向けた。

「…くすん…」
(ゆーちゃん、泣いてるの…?)
「…みなみちゃぁん…会いたいよぅ…寂しいよぅ…」
(…やっぱり、辛いんだね…ゆーちゃん)

そんなゆーちゃんの声を聞いているうちに、
あたしの脳裏にも大事な友人の姿が浮かんで来る。
(かがみ…)
ついついからかって、ムキになっていた姿。
体重が増えては凹んで泣いていた姿。
何だかんだ文句を言いながらも、呆れる事なくあたしに付き合ってくれていた姿。

(…うっ)
そんなかがみの姿を思い浮かべているうちに、あたしも涙が込み上げて来る。
隣にいるゆーちゃんの存在が、何とか声を上げて泣く事をこらえさせたけど。
涙はどうしようもなく溢れてきて、あたしは声を殺して一人で泣いていた。
(ふぐ…っ…ううっ…かがみ…かがみぃ…)

『二人で強く生きる』―その決意が揺れた訳ではないけれど。
ゆい姉さんやお父さん、黒井先生もいるけれど。
換えのきかない友人達を一度に失った悲しみを、今更ながらに強く感じてしまって。
涙に暮れながら、私の意識は再び闇に落ちていった。

『いいのよね…これで…』


「…よくないよっ!」
叫び声を上げながら、ガバッという擬音が見事に合いそうな体勢であたしは目を覚ました。
「あ…れ?」
間の抜けた声を上げながら、周りをキョロキョロと数度見渡し…PCの画面へと、目線を移す。
そこに移っていたのは、眠ってしまう前と同じ選択肢の画面。
「…」
その画面を見ながら、あたしはさっきまで見ていた夢を思い返す。

…友人達の思いが、2人を強くして生き残らせるためだとしても。
…換えのきかない友人達を失って生きる事に、意味があるとは思えない。
…例えどんなに困難であったとしても、全員が共に生きる道を選ぶべきだ。

頬を伝っていた涙を手で拭い。
しっかりと画面に向き合う姿勢で椅子に座り直し。
さっき跳ね起きた時に机から落ちたマウスを拾って。

 「いい」
→「よくない」

あたしは、困難なれど全員が共に生きる道を選んだ。


最後のエピソードである、主人公の心情風景を経て。
場面は再び、バスの転落事故現場へと移っていた。
「さすがにここまで来てバッドエンドじゃ泣くに泣けないし…攻略サイト見るか」
そう言いながらエクスプローラを立ち上げ、攻略サイトを検索する。
フローチャートをいちいち見返すのは手間なので、携帯に
正解の選択肢をメモして画面を再びゲームに切り替える。

緊迫感溢れるBGMに思わず緊張しながらも。
何度も何度も携帯の画面を見て正解の選択肢を選んで。
全員が無事に帰還するエピローグへと、辿り着いた。

トゥルーエンドで流れる、OPテーマの別バージョン。
音の感じや歌詞の一部分が異なっているだけなんだけど、
暖かさや希望が物凄く溢れた…全くの別物と言っていいものになっていた。

「あ…」
スタッフロールが終わり、タイトル画面に戻る。
小さい頃の主人公達だったのが、エピローグの最後に
全員で向かった海に変わっていたのを見て…
驚きと嬉しさの混じった、短い声を上げていた。


「よし、善は急げだ」
そう言いながら携帯を再び手にし、かがみに電話をかける。

「もしもし、かがみー? おはよー」
「こなた? どうしたの、休みにしては早いじゃない」
「ん、たまにはこういう事もあるのだよー」
「明日雨が降らなきゃいいけどね…それで、何の用?」
「ねーねー、かがみとつかさ今日暇かな?」
「そうね、あたしもつかさも特に用事はないけど…」
「じゃー海行こうよ、海ー」
「まだ夏には早いじゃないのよ」
「いやいや、別に泳ぎにって訳じゃないから問題ないのだよー」
「…またアニメかゲームに影響されたってのか?」
「うむ、その通り」
「堂々と言うなよ…まぁいいわ、付き合ってあげるわよ」
「ありがとーかがみん♪ あ、悪いけどみさきちと峰岸さんにも連絡とってくれないかな?」
「日下部と峰岸も? 珍しいわね…まぁ一応電話してみるけど、都合悪いかもしれないわよ」
「まぁとにかく連絡お願いねー、じゃみゆきさんにも電話するから切るねー」
「わかったわ、集合場所とか時間とか決まったらまた電話しなさいよ」
「らじゃったー、そんじゃまたねー」

ピッ

「さて次はみゆきさん…の前にゆーちゃんの都合聞いてみなみちゃんに電話してもらおうか、
 その後はひよりんとパティにも電話しなきゃだし…忙しくなるぞ~!!」




















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  • いまごろリトバスやってる私はこのネタバレに絶望した!
    作者は地獄の業火に焼かれるべきだと思う。
    導入部引用にしても、君って最低だっ! -- 名無しさん (2008-07-23 16:09:51)
  • このゲームやってみたいな -- 名無しさん (2008-05-21 18:28:55)
  • ネタバレだね -- 名無しさん (2008-05-21 10:53:06)
  • こなたがやってたゲーム=リトバスですか? -- 名無し (2008-05-21 09:49:43)

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