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The 2nd Season:Blue Summer

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だれでも歓迎! 編集
季節には、色がある。
夏は青。空と海の色。
「平静」と「孤独」の色。


 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


 私の心に色があるのなら、きっとそれは濃い青だと思う。

 丁度、月夜に静まる海のような、深くて暗いネイビーブルー。

 その夏の日にひとりで見た海は、絶望的なまでに、広くて。

 ああ、この海を全て埋めるには──どれだけの砂が必要なのだろうか?


 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


 旅行を三日後に控えた、夏の夜

 私の感触を感じて、こなたはまどろみから目覚めたようだ。
 私の顔が僅か数ミリ先にあるのと、唇が触れ合っているのを理解したこなたは、ほんの一瞬、憂いを秘めた瞳になり、その後──

 瞼を閉じて、唇を開く。


 その優しさが、痛い。



─ The 2nd season:Blue Summer ─



 こなたが開いてくれた唇の中を、舌で探る。
 どこかに無いか。こなたから私への愛情が、どこかに──
 こなたの舌が、それを邪魔する。
 私の舌と絡まって、まるでこれ以上探るな、とでも言うように──

 暗い部屋を、湿った音が満たす。徐々に乱れた息遣いが、それに被さり、ふたりを覆う。
 ようやく離れた唇の間に、銀糸が光る。月光を受け、きらきらと。
 ぷつっ、とそれが切れる度、私はいつも切なくなる。なぜならそれが切れるとき、決まってこなたが呟くから。

「かがみ──」

 私の名を。ただ、呟くだけだから──

 その後に続く言葉は何?
──聞きたくない。
 聞きたくないから、言わせない。再び唇を重ねて、小振りな胸の膨らみに、指を這わせる。

 その名に込めた心は何?
──知っている。
 私に辱められながら、こなたは別の人間のことを想っている。
 私が抱いているこの子は、

 私の妹のことが、好き。


 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


 かがみの右手が、私の胸を弄っている。
 私の服を捲りあげ、フロントホックのブラを外されて、直接。

 さわさわと、滑るように触っていた手が、胸の先の突起物に引っ掛かって、私の身体にぴりっと電気が走る。
「ふぁ…ん、はっ─」
 自分が声を出していると気付くのに、しばらくかかった。かがみの指はそこだけを、くりくりと抓っている。

 いつの間にか、かがみの左手が私のハーフパンツの中に滑り込んできて、下着の上から敏感なそこを撫でられる。
 くちゅ、という湿った音で、濡れているんだと気付いた。

 さっきまでうとうとしてたせいか、この快感のせいか──
 私の頭はぼーっとして、何も考えることができない。

 いや、違う──言い訳だ、そんなの。
 こうやってかがみにされている間、何も考えなくなったのは、最初から。

 だって、そうじゃないと、かがみの唇を、舌を、指を受け入れることなんて、できやしない。

 だって私は──つかさのことが、好きだから。


 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


「柊? おーいひいらぎー」

 運転席の黒井先生が、しきりに助手席のお姉ちゃんを呼んでる。
 でもお姉ちゃんはなんだか上の空で、頬杖をついて窓の外を眺めてる。

 なんか最近のお姉ちゃん、いつもこんな感じで、ちょっと寂しい。

 私は後部座席からちょっと身を乗り出して、お姉ちゃんの肩を叩いてみた。

「ん……、なに? つかさ」
「もーお姉ちゃん、さっきから先生が呼んでるの、気付いてないの?」

 え、と一言だけ漏らして、お姉ちゃんは急いで先生のほうに向き直った。先生もちょっと苦笑い。

「なんや柊、悩み事かー?」
「え?いえ──」

 お姉ちゃんは少し考えて、なんだか白状するみたいに
「そう……ですね。ちょっと──悩み事が」
と、答えた。

「良かったら、センセが相談乗ったるでー? ……あ、地図から目ぇだけ、離さんといてな」

 私は浮かしていた腰をシートに戻して、さっきのお姉ちゃんみたいに頬杖をついてみた。
 ──なんだか締まらないな。らしくないよね。

 頬杖はやめて、首だけ動かして外を見る。すぐ側をビリジアンが後方に流れて、ずっと向こうにウルトラマリンブルーが輝いている。

 綺麗だな。素直にそう思った。お姉ちゃんがこの景色を頬杖ついて見てるのは、すごく絵になってたな。

 そういえば、ウルトラマリンって海の色じゃないってゆきちゃんが言ってたっけ。ラピスラズリっていう宝石の色
で、それが海の彼方から渡来したからウルトラマリンって呼ばれるようになった──って去年聞いた。

「好きな人が、いるんですけど」

 記憶の中を漂っていた私を、一気に現実に引き戻した、お姉ちゃんの一言。

 ──え……?

 お姉ちゃんの、好きな人?


 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


「姉さん、今年もよろしくねー」
「引率兼運転、よろしくお願いします」
「いやぁ、せっかくの休みも旦那がいないと暇だからさ。まかせたまへー」

 去年に引き続き、同じ海へ1泊の小旅行をすることになりました。
 私と泉さんは成実さんの運転で向かっているところです。後ろからは黒井先生の車が着いて来て──ないですね。
「大丈夫でしょ、かがみ……がナビやってるだろうから」

 泉さんは最近、かがみさんの名前を呼ぶとき、ほんの少し声色が陰ります。
「いざ行かん!マリンブルーの海へー!」とおどけて見せる姿も、なんだか痛々しい。

「ふふ、マリンブルーはあまり綺麗な青ではないんですよ」
「へ? そうなの?」
「ええ、濃い緑みの青でして、これは元々ヨーロッパ諸国の海軍の制服に使われた色なので、マリンブルーと呼ばれるようになったんです」

 泉さんと成実さんの「へー」という感嘆の声を聞きながら、ふと、あることに思い当たりました。
 それは泉さんがマリンブルーについての勘違いをしていたように。
──私も、泉さんとかがみさんの関係を、なにか勘違いしていたのではないのでしょうか?

 思い返してみると、最近の泉さんとかがみさんの間には、なにか距離があるような気がします。
 そういえば、今朝も泉さんはかがみさんを黒井先生のナビ役にして、自分はすぐに成実さんの車に乗り込んでしま
いました。

 なんでもない行動に見えましたが、今こうして考えると──

「………」

 窓の向こうに光る海を見つめている泉さんの横顔を、ちらりと盗み見てみます。
 その横顔は、なんだかひどく物哀しそうで──

 泉さんは去年の海に、今何を見ているのでしょうか?


 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


「……難儀なもんやなぁ、柊の姉も」

 太陽は傾き、オレンジ色に染まる海。
 砂浜を歩くお姉ちゃんとこなちゃんを見つめながら、黒井先生が呟いた。

「恋愛っちゅーもんは思春期の女の特権やけど、あのパターンは正直、キツいで」

 ここに来る途中の車内で、お姉ちゃんが告白した胸の内。

「……泉、かぁ。しかもなんや、泉は他に好きな人間がおる、──やったな?」

 それは、お姉ちゃんはこなちゃんが好きだ、ということ。でもこなちゃんは、お姉ちゃんじゃない、他の人が好き
だということ──

「ウチは女同士の恋愛、否定する気は無いけどな? ……一方通行の恋っちゅーのは、想う方も想われる方も、キツ
いもんやで」

 ──先生?
 それは、私も一緒なんです。

 私は……お姉ちゃんのことが、好き。

 でもお姉ちゃんは、こなちゃんのことが好き……

 知りたくなんか、なかったよ。


 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


「綺麗、だね」
 夕陽の落ちる海。スカーレットと群青色のグラデーションが、キラキラと輝いている。
 それを見つめながら、隣を歩くかがみに、囁く。
「……そうね」
 ゆい姉さんとみゆきさんは、先に寄った旅館でくつろいでるはず。
 少し離れた防波堤では、つかさと黒井先生がふたりで何か話してるみたい。
 今、この砂浜で、私はかがみとふたりっきり。

 かがみは今、何を考えてるんだろう?

 隣のかがみの横顔を、ちらりと、見てみる。
 ラベンダーの長いツインテールがさらさらと風に流れて、その一本一本が夕陽を受けて、まるで海のようにキラキ
ラと輝いている。

 綺麗だと、思った。
 だけど、愛しいとは、思えない。

「ねぇ、かがみ──」
 言ってはいけないと、わかっていた。
 言ってしまえば、多少なりとも、私たちの関係が壊れてしまうことは確実だと、わかっていたのに。
 それでもなぜか、言わずにいられなかった。

「私たちって、なんなのかな?」


 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


 お手洗いから自分に割り当てられた部屋へ帰る道すがら、私はふたりの友人についての考えを巡らせていました。

 あの車内で感じたことは、私の中で少しずつ、確信になりつつあります。

 ──泉さんとかがみさんの関係。

 入浴の際、夕飯の席、就寝前の一時。……その全てで、私は泉さんとかがみさんの一挙手一投足を見逃すまいと、
お二人の様子を窺っていました。

 友人を監視するようで、あまりいい気はしないのですが……それでも気になってしまって。

 結果として、お二人の間には、去年とは違う──何か溝のようなものが、存在するような気がします。

「──あ、」

 ──旅館の階段の側、自販機コーナーのベンチ。
 そこに見知った顔を見つけて、少し抜けた声を出してしまいました。

「──泉さん、眠れないんですか?」

 部屋を出る際に確認した時計は、日付が変わったことを示していたはずです。

 泉さんは浴衣の袖で、ぐしっ、と目元を拭い、
「ああ、みゆきさんかぁ」

 赤くなった瞳を、無理矢理、笑みの形に変えて──私に向けました。


……


「……みゆきさん。私、どうすればいいんだろ……?」

 泉さんが話し始めて、どれくらい時間が経ったのでしょうか。
 真っ暗な旅館の片隅のベンチに、私たちは座っています。明かりは向かいの自販機だけ。
 自販機の静かな唸りの他に聞こえるのは、泉さんの押し殺した嗚咽。

 泉さんは、全て話してくれました。泉さんとかがみさんの、今の関係。……それから、泉さんの気持ち。

 私は、何も言うことができずに……隣で声を殺して泣く小さな身体を、抱きすくめる事しかできませんでした。

 泉さんの涙は、何を想って流れているのでしょうか。

 かがみさんの気持ちに応えてあげられないこと。つかささんを想う気持ち。つかささんを想いながら、かがみさん
に身体を明け渡してしまったことの罪悪感……

 私の腕の中で震える小さな身体は、かがみさんとつかささんの間で、押し潰されそうになってしまっている──

「──もう……わかんないよっ……」

 泉さんが微かに、でも確かに……そう小さく叫ぶのが、聞こえました。


 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


 掛け時計の短針が、2時を指した。
 月明りの照らす暗い和室の窓際に腰掛けて、穏やかな海を眺める。
 ──静かだな、とふと思う。秒針の動く音と、つかさの静かな寝息しか聞こえない。
 去年の騒がしさを懐かしみながら、空の布団に目を落とす。

 こなたの布団。その隣のみゆきの布団も同じく空。

 布団から目を離し、再び海を見つめる。
 そうしてしばらく眺めていた暗い海も、私に眠気を与えてはくれなかった。

「──こなた」

 その名を呟くのは、もう何度目だろう。

 こなたが、足りない。

 いくら名前を呼んでみても、瞳を見つめていても、髪に触れても、唇を合わせても──
 私には、こなたが足りない。

 ──最初に、こなたと身体を重ねたのはいつだったっけ。
「……んっ」

 ──梅雨の季節だった。あの時までは、普通の女友達として付き合えていた。
「──ん、はぁ、…あっ」

 告白の返事をもらえないことに、私は苛立っていた。その苛立ちの一方、こなたが欲しいという気持ちも膨れ
上がっていた。
「……んんっ」

 その日、それは限界を越え──私は気付くと、こなたの唇を奪っていた。
「ああっ、……こ、なた……ぁっ」

 こなたは拒否をしなかった。──きっとそれは、こなたの優しさ。
「ひゃ、あぁ、……こなた、こな、たっ」

 私は弱い。その優しさに負けて、こなたを──蹂躙することを、覚えてしまった。
「あっ、あぁん……はあっ」




 ──濡れた指先を、自らの秘所から抜く。月光を浴びて、私の液体に濡れた指が、妖しく輝く。

 壊れているな、と思った。──すぐ側では、つかさも寝ているのに。

 冷えていく脳味噌が、夕方のこなたの言葉を私に突き付ける。
 その言葉が、頭から離れない。──思い出したくなんか、ないのに。

『私たちって、なんなのかな?』

 こなたはどんな答えを期待していたのだろう。
 私は、その問いに答えることはできなかった。

 友達、──いや、親友?
 違う。それはあの日……桜吹雪の日までのこと。
 恋人、──彼女?
 それも違う。こなたはそうは思っていない。こなたは私のことを見てはいない……

 それなら、何?
 わからない。

 私にとって、こなたは何?
 ──好きな人。手に入れたいもの。

 こなたにとって、私は何?
 ──友達? ……そう思ってくれてるのかな。そうだといいな──
 私、嫌われててもおかしくないから。

 違う。逃げるな。……こなたにとって、私は──

 好きなひとの、双子の姉。

「……つかさ」

 とても穏やかな寝顔。その顔を見ながら、自分が何かを呟くのを、私は気付かなかった。──いや、気付かない
振りをした。

「なんで……あんたなのよ」

 掛け時計の短針が、3時を指した。


 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


「ん……あれ、」
 目覚めると、誰かの腕の中だった。
「おはようございます、泉さん」
「みゆきさん? えっと……あ、そっか」
 あのまま寝ちゃったのか。
 窓から差す光が、朝の訪れを知らせている。
「みゆきさん、ごめんね」
「──謝らないでください、泉さん」

 一晩中、抱き締めてくれて疲れてるはずなのに……優しい人だ。

「ありがとう」
「……はい」
 こんな、弱い私の話を、ちゃんと受け止めてくれてありがとう。

「みゆきさん?」
「はい」
 ──あとひとつだけ、我儘言ってもいいかな?

「もう少しだけ……こうしてもらってて、いい?」
「……ええ、もちろん」
 優しくて暖かい、腕の中。
 私はそこで、またちょっとだけ、泣いた。





 結局、みゆきさんは一睡もしてなかったみたいで、今はパラソルの影で横になってる。何故かかがみも気分が優れ
ないみたいで、顔にタオルを掛けて一緒に寝転んでいる。
 うう、ごめんねみゆきさん。……ゆい姉さんに黒井先生、みゆきさんのことお願いね。


「気持ちいーね、つかさ」
「そだねー」

 浮輪でぷかぷか浮かびながら、隣のつかさの顔を見る。可愛いな、って思う。

 それと同時に、罪悪感の針がちくりと胸を刺す。つかさに対するものなのか、かがみに対してなのかは、判然と
しないけど。

「ゆきちゃんもお姉ちゃんも残念だね、せっかく海に来てるのに」
 つかさが、砂浜のパラソルの影を見つめながら呟く。

「そうだね。……でも──」

 言いかけた私を、つかさが振り向いて見つめる。──あちゃー、口が滑った。

「あ、なんでもないよ」
 言える訳ないじゃん。つかさとふたりきりになれて良かった、なんて。


「こなちゃん」
 浮輪にお尻だけ入れて、寝そべるように空を見上げていると、浮輪に掴まっていたつかさが話しかけてきた。

「んー? どったのつかさ?」
 肌を妬く太陽の熱と、足と手を冷やす海水の温度差が心地良い。

 お姉ちゃんね、こなちゃんのことが好きなんだって。

「え?」
 思わず聞き返していた。

「ここに来る途中、車の中でね、聞いたの。お姉ちゃんはこなちゃんのこと、好きなんだって」

 ──そうか。聞いちゃったんだ。
「……へぇ、そっか」
「あんまりびっくりしないんだね、こなちゃん」

 つかさの顔を見る。……いつもの、私の大好きな、笑顔。

「うん、実はね……知ってた」
「そうなんだ。……ねぇ、こなちゃん」

 なんでだろう。なんだか、尋問されてる気分。

「こなちゃんの好きな人って、誰?」
 ──そうきたか。

 どうしよう、言っちゃおうかな……
『私の好きな人は、あなたです』──言っちゃえば、楽になるのかな?

「まさか……お姉ちゃんじゃ、ないよね」
 つかさがどこか、心配そうに言う。

「それは違うよ。かがみのことは、好きだけど……でも、恋愛感情とは違う」
 これは本心。──罪悪感の針は、五寸釘くらいになってたけど。

「そっか、良かった」
 なにが良かったんだろう、もしかして──

「もし両想いだったらどうしようって思ってたの。……お姉ちゃんをこなちゃんに取られちゃったらどうしよう、って」

 そんな私の淡い期待をぶち壊す、つかさの言葉。

「……えっと、それって──どういうこと?」
 聞かない方が良かったと、すぐに思った。──思ったときにはもう、手遅れだったんだけど。

「うん、私ね、……お姉ちゃんのこと、好きだから」

 つかさとふたりで浮かんでいる海で、私はなぜか──
 孤独だと、思った。


 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ 


「お姉ちゃん、大丈夫?」

 パラソルの影から這い出して、砂浜に座っていたお姉ちゃんの横に座りながら、声を掛けてみた。

「ああ、つかさ……大丈夫よ、ちょっと寝不足なだけ」
 それは本当みたい。ちょっと寝たのが良かったのか、朝より顔色は良くなってて一安心。

「お姉ちゃん、泳がないの?」
「んー、今はいいわ。ちょっと海を眺めたい気分」
 良かった。しばらくふたりでいられるね。

 そうやってしばらく一緒に海を眺めていた。何も喋らなくても、こうやって隣にお姉ちゃんがいるだけで、幸せ。
「……綺麗だね、お姉ちゃん」
「……」
 ──あれ? お姉ちゃん?
 振り返ると、お姉ちゃんは──波打ち際で遊ぶ、こなちゃんとゆきちゃんの方をじっと見てた。

「お姉ちゃん?」
「……ん? どうしたの?」
 なんだか……私の胸の中に、モヤモヤしたものが出来てくるのがわかる。

「えっと……綺麗だね、って」
「……そうね」

 よく晴れた空と、澄んだ海。ずっと向こうに海と空の境界線。

「ねえ、お姉ちゃん」

 モヤモヤ。なに、これ。

「海と空の間には、何があるの?」
「なによいきなり。……知らないわよ、そんなの」

 モヤモヤが、だんだん大きくなっていく。

「……じゃあ、お姉ちゃん」

 なんで、こんなこと聞こうと思ったのかな?

「お姉ちゃんとこなちゃんの間には、何があるの?」

 お姉ちゃんは、答えなかった。


 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


 海へ向けて駆け出したつかさの背中。
 何故か、それはひどく幻想的に見えた。

 あの子がなぜ、あんなことを言い出したのかわからない。
 わからないけど……その言葉は私の胸の中に重く、響く。


 お姉ちゃんとこなちゃんの間には、何があるの?


 きっと、私はその答えを知っている。
 知っていながら、知らない振りをしている。

 たぶんそれは、海と空のような。

 触れているようで触れていない──水平線で交わっているようで、実のところどこまで行っても交わることはない、
そんな関係。

 たぶん私は、観測者。

 水平線だけを見て、あれが空と海の境界だと満足している、愚かな観測者。

 たぶん私は、海。

 何もかもを飲み込んで、それでも決して満たされることはない、獰猛で貪欲な海。

 そして、私は──


 つかさがもう帰る時間だと呼びにくるまで、私は曖昧なコバルトブルーの境界線を眺めていた。


 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


─ Next season:Autumn ─













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    続き頼みます -- 名無しさん (2008-01-23 00:10:09)
  • うわぁ!続きが気になりますね〜。
    -- 名無しさん (2008-01-14 00:32:51)
  • 続き待ってます! -- 名無しさん (2007-11-16 12:45:23)

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