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残し物-妹

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私は今さっきまで、休日の醍醐味と称して昼風呂を満喫していた所だ。
これは朝や夜の肌寒い時間帯でなく、気温の適度な昼の間に湯を浴びる事で湯冷めの心配を解消でき
また何より、白昼堂々というのは至極気分が良い。
こなたも一緒にどうかと誘ったのだけど、奇しくも顔面に枕を投げつけられてしまった。
であるから、1人寂しく身体に湯気を纏い
タオルを頭に、風呂場から出て来たのだけれど……。


「……はぅ~…」

「………」

部屋ではつかさとこたながご対面の様子だった。


─────


「えっと…あのね?私はお姉ちゃんに会いに来たんだけど」

「………」

「その、何処にいるのかなーって……」

「………」

端から傍観する私に気付く事なく、戸惑うつかさと無言のこなたの対話(?)は続けられる。
時たま目を >< こんな風にして参ってしまう我が妹に対し
こなたは変わらず、猫がムッとしたような口をして一言も発しない。
ましてや微動だにしない所を見ると、彼女はわざと困らせようとしているのではとさえ思えてくる。
どちらにしろ、つかさは己と相当相性の悪い人物と鉢合わせてしまったようだ。

「あ……もしかして、コレお人形なのかな。」

ポツリと呟いた。
前略、本気ですかつかささん。
そんな肉感優れた等身大の人形なんて過去幾数年見た事は無いし
何よりそんな物を所持している私はかなりアブナイ奴になりそうだ。
まったく、日本で冗談なんて流行らないわよつかさ。
なんて内心でフォローを入れてやりつつ、二人の様子を見守っていると…


「わ、すごく良く出来てるよぉ。」

こなたは頭をなでなでされていた。
おのれ、そこに直れつかさ。

私は何故か嫉妬しつつ、そろそろ声を掛けてやろうと部屋に踏み入った。

「つか──」


「こーゆーお人形って、ちゃんとついてるのかな…」


直後。こなたの投げた枕と、私の放ったタオルの鞭が
つかさの顔面を直撃していた。



─────


「えへへ、ごめんねお姉ちゃん…。」

若干の照れを見せつつ、頬を描いて苦笑うつかさ。
今は小さなテーブルを私とつかさとこなたの三人で囲み、各々の目前にはティーカップが置かれている。

「私はいいけど、こなたにもちゃんと謝りなさいよ。」

「うん。ごめんね、こなたちゃん」


この子は本当にこなたを人形だと勘違いしていたらしく
枕を投げつけられてまずびっくり。
視界に映るこなたが動いていて二度ビックリしたらしい。
肩で息を切り、若干の赤面を見せていたこなた曰く

「人間の雌は想像以上に下劣」

とのこと。
現在つかさにニコニコと詫びを入れられたこなたは、私の方を見上げて服の袖をちょいちょいと引っ張っている。

「大丈夫よ、この子は妹のつかさ。
出身は当然私と同じ埼玉だけど、こっちには調理師として出てきてるのよ」

よろしくね~、とつかさ。
簡単な紹介を呑み込むと、こなたも軽く会釈した。

「この子は泉こなた。
えっと…上司の子供さんなんだけど、まぁ訳あって私が預かってるのよ」

こちらは取り敢えず出任せで済ませておいた。
どこの子かも知れない家出少女をかくまっているなんて事が広まれば、世間体は勿論よろしくないだろう。
身内とあれど、大事を取って話さないでおこうとは密かに決めていた事だった。


「それでつかさ、今日はどうしたのよ。」

ここでようやく訪問者の用件を尋ねるまでに至ると、該当者はカップを倒しそうな勢いで腰を起こした。

「そっ、そうだよお姉ちゃん。
こっちに越してから全然家に帰って無いって聞いたから、心配して来たんだけど…」

つかさはじっと私の顔を見た。
その血色でも伺っているのか、目は何処か探るような形をしている。
恐らくは私の、主に食生活を危惧して駆けつけてきてくれたのだろう。
いくつになっても私を気にかけてくれる妹の存在は有難いと思った。

「大丈夫だって。仕事がちょっと忙しくて帰れないだけよ」

手をひらひらとさせてたしなめるが、目前の妹は府に落ちない様子。

「でも、三食インスタントで済ませてりしてない?
お姉ちゃん料理出来ないし…」

やはり心配の種はそこか……って、一言多いわよ。
まるで出来ない訳じゃない、あまり美味しく作れないだけだ。
そしてバリエーションも極めて少ない…と、コレはやっぱり出来ないようなものか。
1人ひっそりとため息をつくも、実は今回つかさの心配する事態は既に脱していた。

「それがさ、手料理作ってくれる人見つけちゃったのよねー。」


「……!!!」



……あれ?つかさが真っ白になって硬直してしまった。
口をポカンと開けたまま、今にも何処かにヒビが入りそうだ。

「そそそ、それそれれってオト、おお男の…ひ…!」

「いや……まぁ、この子なんだけどね」

私は左側に座るこなたの頭に、軽く手をぽんぽんと乗せて示す。
この子を部屋に置いた翌日の出来事以来、朝夕と昼のお弁当まで任せてしまっている現状だ。


「……!!!!!!」


と、つかさの背景に稲妻が走った気がした。

えらい驚きようだけど、こんなちびっ子がマトモに料理作れるなんて聞いたら誰でも驚くわよね。
いや、もしや驚きの対称は子供に家事を一任している私だろうか。



とにかく、様子が著しく異常な妹に何か声を掛けようとすると
彼女は不意に、その場を素早く立ち上がった。

「お……」

「お?」

「……お姉ちゃんのばかぁぁぁ~!!」

そして近所迷惑も顧みない程のシャウトを放つと、彼女は何故か泣きながら部屋を飛び出してしまったのだ。

「なっ! つ、つか──…」

「………。」

引き止めようと咄嗟に出した右手は宙に孤立し、それはそれは寂しいものだった。
突然走り去った妹、絶えずムッスリ猫のこなた。
求めても誰も状況を説明してくれない現状故、私はただ呆然とするのみに時間を費やした。


─────


夜もお風呂に入った私は、現在ホカホカになってベッドの上で仰向けだ。
といっても寝るわけではなく、溜まっていたラノベを刻々と消化している。
今日は来客もあって疲れたし、そろそろ仕事に備えて切り上げようかな。
などと片手間に考えていると、辿って思い出すのは
結局何をしに来たのか、我が妹つかさの事だった。

「ハァ……ま、何かの聞き間違いかもね。
つかさが私をバカだなんて──」

「……どーかな。」

隣に寝転び、私の広げる文庫本を見上げるこなたが呟く。
私のブカブカパジャマを纏って、それが布団のようでもあった。
皮肉るその口はほくそ笑むでもなく、やはりムッとした猫の口だ。

可愛い奴め。と撫でてやると、顔面に枕をぶつけられた。













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