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0から始めよう! 6話

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  • 6.立ち直ろう!


 声を殺し、そっと中を覗き込む。
 部屋の中はシンとしていた。
 息が詰まりそうになるくらいの静けさに戸惑いながらも、ゆっくりと中を見回す。
 中には予想通り彼女が居た。
 ベッドに横になった状態のまま、聞こえてくるのは寝息。
 泣きつかれて寝ちゃったか……謝りたかったんだけどな。
「ん……」
 寝返りとともに、少し声が漏れる。
 涙と、一緒に。
 その涙を拭おうと伸ばした手が、空を切る。
 ……。
 そうだった、私は今は……そんな存在だったんだっけ。
 少し自嘲した後に、一息つく。
 そういえばゆっくりするのは初めてか、こんな体になってから。
 いきなりあんな抜けた天使が現れて、こんな子にとり憑けとか言われて……あはは、無茶苦茶ね。
 あの馬鹿な天使はギリギリ生きてるみたいな事言ってたけど、同じよ。
 ずっと眠ったまま、起きる事のない体。
 それじゃあ死んでるのと……同じ。
 ……。
 今頃ちょっと哀しさが溢れてきたみたい。
 視界が滲んでいくのが分かる。
 誰にも見えない私。
 誰にも知られない私。
 ……違ったか、今はこの子にだけ見えてるんだっけ?
 皆……どうしてるかな。
 お母さんにお父さん、姉さんたちにつかさも……最後に見たのはどんな顔だっけ。
 そうだ、病室の……私を囲んでるところ。
 器材の山に繋がれた家族を見るのは、どんな気持ちだろう。
 いつ目覚めるか分からない家族を待つのは、どんな気持ちだろう。
 弱いな、私。
 ちょっと一人になるだけで……もう、崩れそう。
 今まではあの、馬鹿天使が騒いでた所為。
 それに振り回されてる間は、何も考えなくて済んだのに。
 なんで今は居ないのよ……あの、間抜け天使。
 ……駄目だ。
 一度零れたらもう……止まらない。
 駄目、我慢しよう。
 だから駄目……だって。
「お母……さん」
「!」
 突然耳に届いた声に驚き、涙も引っ込む。
 漏れた声は……目の前の少女から。他には居ないんだ、そりゃそうよね。

「死んじゃ……嫌だよ」
「あ……」
 もう一度、彼女の涙が零れた。
 それが、私の家族と……重なる。
 居なくなる者。残される者。彼女の母親は前者……そして彼女は、後者。
 もし私が前者になるのならその後者は……皆になる。私の、家族の皆に。
 ……そしたらこんなに、悲しむのかな。苦しむのかな。
「か、かがみっ!」
「?」
 声に振り向くと、息を切らしたあの天使が居た、
「何よ、そんなに慌てて」
「えっいやっ、行くならちゃんと呼んでくださいよっ。一人じゃまだ……あぁえっと」
 そこまで言ってから、言葉を詰まらせる。
 ……。まったく、分かりにくいのよあんたは。説明も、そういうのも!
「馬鹿ね……大丈夫よ、一人でも」
「ふぇ?」
 どうやらずっと……気を遣われていたのか。
 すぐに居なくなっても良かったのに、律儀なやつ。
 どうりで付きまとってたわけね……まぁ、お礼なんて絶対言ってやらないけど。
「それより、ポイント使うから。触れるようにしてよ」
「え? あ、はい」
 手を伸ばし、少女の頬をなぞる。
 触れた頬と濡れた指からは、確かに感じる。少女の悲しみも、苦しみも。
「……」
「か、かがみ?」
 私の行動がよく理解できないらしく、首を傾げる。
 まったく、そんな事も分からないわけ? 相変わらず抜けてるわ。
「ねぇ」
 手に触れた涙を、指と指で確かめる。
 この涙をきっと、つかさも流す事になるのかもしれない。
 母さんや父さんや、姉さんたちも。そんなの……嫌。
「私……頑張るから」
 それはただ、ポイントを稼ぎたいからじゃない。
 まぁそりゃ5000TPなんて魅力的よ?
 でもそれ以上にこの子を……助けてあげたい。
 まだ会ったばっかりで、名前もロクに覚えてないようなこの子を。
 この苦しみから。この悲しみから。
 この……一人ぼっちの世界から。
 お節介?
 しょうがないでしょ、性分よ!
 まずはそうね、少しずつ……歩み寄っていこう。
 始めましょう……0の関係から、少しずつね。

  • 現在のTP:-294TP(↓)












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