アットウィキロゴ
kairakunoza @ ウィキ
掲示板 掲示板 ページ検索 ページ検索 メニュー メニュー

kairakunoza @ ウィキ

狂った歯車は壊れゆく

最終更新:

Bot(ページ名リンク)

- view
だれでも歓迎! 編集
自分が薄っぺらい存在に思える。
ゆーちゃんからの好意を認識しながらも受け止めれずに、
そのまま体を素通りしている感覚がするから。
無意識ではなく意識的に、だけど。
それでも好意をくれるゆーちゃんは強いと思うし……
でも言葉にはしないゆーちゃんをとても脆く感じる。

私はどうしたいんだろう?
何がしたいんだろう?

そんな簡単な事すら分からない。
でも太陽は昇ってくる。時間は進む。空は雨を降らしている。
思いつきで、いつもの起床時間より早い時間を指している目覚まし時計の針を逆回転させた。
ちょうど二週させたところで、自分がバカバカしくなって止める。
この時計の時間は一日戻ったけど、こんな事をしたって時間は遡れないのに。
昨日に戻れたって、ゆーちゃんの感情がどうなると言う訳じゃない。
私にタイムリープは無理だ。事態が悪くなるだけに決まってる。
それに現実に起こった事を……
ゆーちゃんが私に向けてくれている感情をなかった事にするなんて考えがおこがましいんだ。
悩み過ぎで頭の中が沸騰しそうになり、切り換える為に毛布をはね退けてベッドから跳び起きた。
床が足に噛み付いてるような冷たさに少しだけ頭がしゃんとする。
顔を洗おうと洗面所に向かう途中、すでに制服に着替えたゆーちゃんが家を出ようとしていた。

「あれ、ゆーちゃん?」

自分でも驚くほど、いつもと変わらない声だった。
でも悩んでいる姿なんて姉として見せたくないから普通の対応が出来たのはいい事だ。
ゆーちゃんはこっちを振り向いて
少しだけ間があった気がするけど「おはよう」と普通に挨拶してくれた。

「……行ってきます」

でもすぐに前を向きなおし玄関を開けた。
開いた玄関から雨の音が家の中に侵入してくる。
たいした雨じゃないけど、ゆーちゃんが傘も持たずに
そのまま学校へ行こうとしたから慌てて追いかけた。

「ゆ、ゆーちゃん!! 傘忘れてる!!」

傘立てから咄嗟に取ったのは白いビニール傘。
家を出た瞬間に湿った冷たい空気が纏わりついてきた。寒い。
慌てすぎて靴も引っ掛けずに家を出たから足が痛い。
寒すぎてなのか、小石のせいかも分からない。
ゆーちゃんに傘を手渡す。触れた手の温度は私よりずっと冷たかった。

「……ごめんね、お姉ちゃん。ありがと」

雨が降っているせいで、朝だけど辺りは暗い。だからゆーちゃんの顔がはっきりと見えない。
顔を近づけて顔色を確かめようとしたけれど、手をぎゅっと握り締められて動きが止まってしまった。
その間に手を離され、目の前で傘を開かれてゆーちゃんの顔が見えなくなる。
白いのじゃなくて透明の渡せばよかったと思っても遅い。
顔色をちゃんと確かめる事は出来なかったけど「具合悪い?」と尋ねた。
聞かなくたって分かったけど、どんな返事がくるか分かってたけど尋ねた。

「大丈夫、だから」

予想通りの返事の後、ゆーちゃんは私の返事も聞かずに早足で家から離れていく。
止めるべきだと、姉としての私が叫んだ。
確実にゆーちゃんは無理してる。今日は大丈夫だとしても、休ませなかったら絶対明日熱を出す。
この予想は自信があった。自信と言うより確信に近い。
でも呼び止められなかった。いや、動こうと思えば今から走ってゆーちゃんに追いつけるだろう。
無理矢理連れて帰ってきて寝かせる事だって出来る。
なのにどうして私は動けない?動かない?

だって、ゆーちゃんが望んでいるのは姉としての心配じゃないから

ゆーちゃんの事が好きなら、もしくはゆーちゃをが言葉にしてくれたら覚悟を決める事が出来る。
一人で覚悟を決める事が出来ない臆病な私は、家に入って玄関を閉めた。



カチャ、と開けたのはゆーちゃんの部屋。
ここに入るのも久しぶりだ。えっと、最後に入ったのは夏休み前だ。
部屋のレイアウトは変わる筈もないけど、一点だけ変わっているところがあった。
ベッドの上に座っているウサギのぬいぐるみ。
夏休み前に入った時はこんなのなかった。多分押し入れに入れてたんだろうけど。
何か懐かしい気がするなと思ってぬいぐるみを持ち上げた。
……ああ、これは私が何年も前にゆーちゃんにあげたぬいぐるみだ。
一人でゲーセンに行って、UFOキャッチャーで取ってゆーちゃんに渡しに行ったっけ。
そうした理由なんて全然ない。ただ、見た瞬間に渡したいと思ったから。
ゆーちゃんは絶対に気に入ってくれると思ったから。

「まだ持ってくれてたんだ……」

気に入ってくれるとは思っていた。でも、こんなに長い間持ってくれるなんて思ってなかった。
実家に置いてたっていいだろうに。ここにまで持ってくる物じゃないはずなのに。
持ってきてくれた理由は……私があげた物だからだろうか。
これを渡した時から、ゆーちゃんは私の事を……好きだったん、だろうか。

「なんで、私なのさ」

表現しがたい感情が浮かんできて、叫びたくなって。
衝動を抑えるためにぬいぐるみを抱きしめて、呟いた。
数秒息を止めて、ただ抱きしめる。
ゆーちゃんを受け入れて、こんな風にゆーちゃんを抱きしめたら何もかも丸く収まるのに。
それが出来ない今の私はぬいぐるみを抱きしめた。




「おはよ、お父さん」
「今日は早いな。……お、ゆーちゃんは?」

確かにゆーちゃんより私の方が先にお父さんに挨拶するなんてあまりないけど。
いきなりそれを聞かれて、鋭い何かが胸に刺さる。

「先に行ったよ」

痛みは無視して、トーストが置いてある場所に座る。
早く食べて学校に行こう。

「え、早過ぎないか?」
「……みなみちゃんと一緒に行く約束してたんだって」

嘘をついてしまった。
胸だけじゃなくて、嘘を言ってしまった喉も針で突付かれているような痛みがする。
その痛みを中和するためにトーストを飲み込んだ。
お父さんはこっちの心内は知らずに相槌を打って何かを用意している。

「そうだ。今回は締め切り前に原稿書き終わったから、ちょっと自分から担当さんに渡してくる。
 遅くなるかもしれないから晩飯はいらん。こなたとゆーちゃんの分だけでいいぞ」
「……そっか」

何でこうタイミングがばっちりなのかな。普段締め切りに追われるのに。
でも行かないでほしいとか言えずに頷いた。
胃に朝食を詰め込んで、バタバタと用意をする。
お父さんも忙しそうだったから深い会話をせずにすんだ。
その点はラッキーだったのかもしれない。

「行ってきまーす」





学校でかがみ、つかさ、みゆきさんと話すのがすごく楽だった。
別の私が話しているような変な感覚があったけど、難しい事を考えなくてすんでいる気がした。
昼休み、買って来たチョココロネをぱくつきながら三人の会話を聞く。

「ゆきちゃん、風邪は大丈夫なの?」
「ええ。少しだるいのは残ってますが。それよりも母が心配です」
「みゆきのお母さん、うつっちゃったの?」
「看病してくれていたんですが、その時に多分……」
「今日お見舞い行こうかってこなちゃんと話してたんだよ。ね、こなちゃん」

……こなちゃん?
つかさの声だ。
あ、私呼ばれてるんだ。

「うん。お見舞い行くよ」
「ありがとうございます。でもみなみさんのお母さんが様子を見に来てくれているので大丈夫ですよ。
 学校が終わったらみなみさんも来てくれると言っていましたから。それより、泉さん……」

気が付けば、みんな私の方を向いていた。
何でそんな心配そうな表情で見てるのさ。
こっちみんな……って言ってもかがみぐらいにしかネタ通じないだろうなぁ。

「こなた、大丈夫? 何か今日駅であった時から変よ?」
「そうかな。ただの寝不足だよ」

私は心配される必要はない。
その心配はゆーちゃんにかけるべきなんだ。私なんかじゃなくて。

「こなちゃん、何かあった?」

つかさは二人とは少し違う視線だった。事情を知ってるからかな。
真剣な表情にありがたさと罪悪感を感じる。
そんな事はないだろうけど、責められているような気がして。

「……ねぇ、みんなに聞きたい事があるんだ」

チョココロネを袋に入れなおす。
ちょっと食欲湧かないや。

「聞きたい事?」
「うん。大切な人が崖から落ちそうになってる。でも、その人は助けを求めない。
 私が手を貸したとしても、一緒に落ちる事は明白。
 もし落ちてしまえばそこは海で……死にはしないけどどこか遠いところに流されてしまう。
 そんな場合どうすればいい?
 助けを求められてないから見捨てる? それとも一緒に落ちる事を受け入れる?」

もちろん『遠い所』と言うのは比喩表現。
気持ちと言うか、何と言うか。
言い方は正しくないかもしれないけど、正常な一本道から外れた所。
今居る道を反れるわけじゃない。
本来の場所から道一本分ずれた一本道。
そこに居場所が移動するだけ、ただそれだけの事なんだけども。
同性の血縁者との恋愛をこんな表現するなんて、私は酷いのかもしれない。……今更な事だ。

「それは当然助けるんじゃないの?」

かがみが卵焼きを箸で挟んだまま答えてくれた。

「海に落ちるとしても?」
「だって大切な人でしょ? 頭で考えるより行動しない?」
「かがみは、優しいね」
「はぁっ!?」

私のセリフに驚いたかがみが弁当箱の中に卵焼きを落とした。
いやいや、正直な気持ちだよ。前から思ってるよ。
顔赤くする必要はないと思う。

「泉さん、自分も落ちずに助ける方法はないんですか?」
「あるかもしれないけど……思いつかないだけ」

みゆきさんなら思いつくのかな。私とは頭の回転の速さ違うし。
だけど、何かみんな思いの外真剣に考えてくれてる。
なにそれ? って反応でも良かったのに。

「ごめんごめん、昼休み終わっちゃうから早く食べよ!」

チョコの甘さをお茶で流し込む。
私の変わり身を不思議に思いながらも、かがみとみゆきさんは再び弁当を食べ始めた。
つかさの表情だけが、ずっと変わらなかった。



「それじゃ、私クラスに戻るから」
「待ったねーかがみ」

後何分かで昼休み終了という時間になった。
かがみが教室に戻って、みゆきさんも席に戻る。
つかさだけが残っていた。
私のさっきの表現で何かを感じ取ったのかも知れない。

「こなちゃん」
「何?」
「こなちゃんは……どこかに行ったりしないよね?」
「どうして?」

つかさはじっとこっちを見ていた視線を下へ外した。
言葉を探しているように、何度も瞬きをする。

「さっきの話を聞いて、不安になったから」

凄く真剣に心配してくれてるのは分かった。
私だってつかさから相談されたら心配するけど。
でも、友達だからってここまで……泣きそうになるまで心配してくれるのかな。
って言うのは考えすぎかな。

「うん。行かないよ」
「本当に?」

嫌に念押しをしてくるつかさに、私は出来るだけ笑顔で頷いた。
段々と強くなっている雨の音を聞きながら、私をここまで心配してくれる友達に最大限の笑顔で。


「どこにも行かない」





今はまだ、そのつもりはない。














コメントフォーム

名前:
コメント:
  • 禁断の恋は燃え上がるな~ -- 名無しさん (2008-04-29 15:14:51)
  • 自分の他にも続編wktkしてる人が結構いるのがおもしろいw
    -- 名無しさん (2007-12-09 22:14:53)
  • このシリーズを見ていると、タイトルも作品の一部だなと痛感します。
    -- 名無しさん (2007-12-08 02:14:25)
  • 続きキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!! -- 名無しさん (2007-12-07 19:33:11)

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
記事メニュー
最近更新されたスレッド
ウィキ募集バナー