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時間の問題

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だれでも歓迎! 編集
 時の流れ。
 足掻いてももがいても冷酷に過ぎ行く、決して止まる事のない存在。
 それは時に、色々な事を錆びつかせてしまう。





 時間の問題





「ふ~、さっぱり」
 お風呂上り、冷蔵庫から冷たい飲み物を取り出す、タオルを頭に掛けたこなたが言った。
「かがみもいるよね?」
「おー……」
 私は力なく返事をした。欲しいという事は伝わったらしく、こなたがガラスのコップを二つと麦茶を持ってくるのが横目で確認出来た。
 情けない事に私は長湯でのぼせてしまったらしい。お風呂から上がって、頭にタオルを巻いたままソファーに寝転がって天井と睨めっこをしている。
 こなたは平気だったのに何故だろう。ぼんやりとした意識の中考えても明確な答えなんて得られるわけがなかった。
「やっぱりかがみんはえっちなんだねぇ」
 朱に染まった顔を見られてこなたに言われた事を思い出す。真っ向から否定できないのが悔しいやら別に良いような。
 頭が回らなくなって思考を停止する。これ以上脳を働かせても疲れるだけだ。
「お待たせ~」
 こなたが近くのテーブルに持っていたものを置いた。液体が注がれているのが音という情報で聴覚から伝わってくる。
「かがみ、飲める?」
 麦茶が入ったコップを手に取ったこなたが私の顔を上から覗き込んだ。
「ん~……」
 正直に言うと飲ませて貰いたい。面倒だからという理由の他にもやましい思いがあるような気もしたが無視を決め込む。
「……飲ませてくれる?」
 試しに言ってみた。慣れないと痛感しながらも媚びるような声を出すとこなたは少し反応して肩を揺らした。
 そして顔を赤面しながら頷く。心の中の私が踊り出した。
 この体勢ではやり難いだろうとソファーに手をつき上半身を起こすと、こなたは口にお茶を含んだ。
 こなたも喉乾いてたのかなと思ったのも束の間、肩を掴まれて私の思考は吹き飛んだ。
「こ、こな―――」
 私がこなたを呼ぶ行為は中断された。
 視界がこなたのみになったから。
 一瞬何をされたのか理解出来なかったけれど、伝わってきたこなたの柔らかい唇の感触が私に現状を教えてくれた。
 こなたにキスされていると。
 何故急にしたのかという疑問が浮かんできたのと冷えた液体が私の口内に潤いをくれたのはほぼ同時。刹那、前者は遥か遠くの忘却の地へと追いやられる。
 ちょ、こなたさん、飲ませてくれるってそういう方法ッスか。コップを口元まで持ってきてくれるものばかりだと思っていた私は完全に不意をつかれてしまった。
 こなたはこなたで恥ずかしいのか、いつの間にか目を瞑っている。
 私はそんなこなたを、温もりを感じながらずっと見ていた。

 液体が全てこなたの口から私の口へと移っても、私達はそのまま唇を触れ合わせていた。
「んっ……」
 先程浴室で深い快楽の泉に溺れたはずなのに、こなたが舌を伸ばして私を求めてきた。熱を帯びた息や少しくすぐったい前髪が私の欲情を更に煽る。
 いつもは私がこなたに舌を絡めていっていたから、こなたが積極的に舌を伸ばしてくるのがとても嬉しかった。
 私も応えるように、火傷しそうなほど熱を持ったこなたの舌を手に入れようと探し求める。
「あふっ……」
 舌が触れ合った瞬間、微弱な電流が私を駆け抜けた。
 もっとこなたが欲しくなって、私はこなたの後頭部に手を回して身体を引き寄せた。
「ふえっ?」
 それがいきなりだったからか、中腰になっていたこなたはバランスを崩して私に倒れ掛かってきた。
「えっ?」
 唐突に凭れ掛かってきたのは良かったのだが、一気に全体重の支持を任されてしまうと焦ってしまう。
「わあっ!」
「きゃっ!」
 私はソファーからずり落ちて床に背中を打ち付けてしまった。鋭い激痛が全身に走る。
 そしてこなたは私に被さるように倒れ込んでいた。
 こんな場面でもおいしいシチュだとかこの後の展開を考えてしまう私は大分こなたに毒されてきたのだろうか。それとも私の本能なのか。
「も、もう、いきなり引っ張らないでよ」
 こなたは膨れて批判めいた事を口にするが顔は笑っていた。何だかんだ言って普段とは立場が逆のこの体勢が良いのだろうか。
「こなたこそ、いきなりキスしてくるなんて吃驚するじゃない」
 私が反論するとこなたは急にばつが悪そうな顔になった。
「も、もしかして嫌だった?」
 不安そうに聞いてくるこなた。
 確かに驚きはしたが大好きな人からの口付けなのだ。嬉しくないはずがない。
「もう、そんなわけないでしょ」
 こなたの頭を抱きしめた手で優しく撫でてやると、途端にこなたの顔が一転して明るいものへと変わっていった。
「えへへ、かがみ大好きっ」
 そう言って満面の笑みを浮かべるこなたに私の中で何かが外れた。
「よし、じゃあ続きするか」
「わわっ!ちょっと待って!」
 懲りずにこなたの顔を引き寄せる私と慌てて顔を染め上げるこなた。
 そしてお互いの唇が再び触れ合ったその時―――
 リビングのドアが何者かの手によって開かれた。
「ふー、やっと原稿届け終わったよー。疲れた……」
 入ってきたのはそうじろうおじさんだと声でわかる。
「なぁ……」
 時は止まり、語尾だけがむなしく静寂の空間に響いた。

「……そうか」
 今まで一言も喋らずに私達の話を聞いていたおじさんが確認するように呟いた。
 愛し合っている最中を見られたのを切っ掛けに、私達の関係を打ち明ける事にした。元々近い内に話そうと思っていたからこちらとしても好都合だった。
「二人は付き合っていたのか……」
 おじさんの顔は何処か納得がいったような、それでいていきなり突きつけられた事実に全く動じていないようだった。
「お父さん、驚かないの?」
 私も気になっていた事をこなたが尋ねた。
「何が?」
「いや、女同士で付き合ってる事とか……」
「色んな文化が交じり合った社会になってるんだ。そうそう珍しい事じゃないさ」
 おじさんは笑って言った。
「要はストパニとかマリ見てに毒されたって事だよね」
「はは……」
 こっそりと私に耳打ちしてくるこなたに曖昧に笑う。
 つかさ達もそうだったが、やはり身近にいる者の変化には例え些細な事でも気付くものなのだろう。おじさんももしかしたら確信していたのかもしれない。
「ひょっとすると……気付いてましたか?」
「二人の間に何かフラグが立ったって事ぐらいはね」
 返答を聞いてやはりこの二人は親子なんだなと思い知らされた。真面目な話をしているのに何処か笑っていてマニアックな単語を使ってくる。
「反対されないんですか?」
 あっさりと言葉が口から出て自分でも驚いた。
「ああ、二人も中途半端な覚悟じゃないはずだからな。ただ……」
 おじさんの顔が激変した。穏やかな雰囲気は消え去り、父親の威厳と風格を備えた真剣な目つきになる。
「これは俺からの一つだけの願いだ」
 おじさんはこなたを見て次に私を見ると、最後に私達二人を同時に見据えた。
「絶対に逃げ出すな」
 凛とした声が張り詰めた空気を伝わって波を作った。おじさんの思いがこれでもかというほど表れる。
 こなたを手放すわけなんてない―――
 心の中では幾らでも誓えるのに、雰囲気や空気に圧倒されている所為か口に出す事は憚られてしまった。
「……うん」
 沈黙に耐えかねたのか、こなたが頷いて小さく呟いた。深緑の瞳には計り知れない熱意が溢れんばかりに漲っている。
「……はい」
 私も目に闘志を燃やし、力強く頷いた。
「うむ」
 おじさんは満足げに頷くと立ち上がった。
「そろそろ飯にしようか。二人もまだだろう?」
「あ、今から作るよ」
 こなたも続いて席を外し椅子の背凭れに掛けてあったエプロンを手に取った。
「お父さんが危ないから裸エプロンは止めるよ?」
「あ、うん」
 私の遅い返事を待たずにエプロンを着用し始めているこなた。『いるから』ではなく『危ないから』とこなたは言ったが、そこは触れてはいけないような気がして私は台所へ向かうこなたの背中を見送った。
 切断音や流水音等料理に関する様々な音を聞きながら机に頬杖をついていると、おじさんが私の真向かいの椅子に腰を掛けた。
「こなたをよろしく頼むよ」
 そう言うなりおじさんは頭を深々と下げた。
「あ、い、いえ」
 焦っていたのかまともな返事も出来ず、取り敢えず私は同じように目線を机に落とした。
 顔を上げるとおじさんと目が合って笑いかけられたから私も微笑を返す。
「そう言えばこなた、ゆーちゃんは?」
 顔だけ台所へと向けておじさんが少し声を大きく叫ぶ。
「友達の家に泊まりに行ってるよー」
「おお、そうか」
 おじさんはこなたの声を聞いて向き直ると腕組みをした。
「近い内にゆーちゃんにも話さないとなぁ」
「そうですね……」
 こなたの従姉妹のゆたかちゃんはどう言った反応をするのだろうか。
 丁度料理が運ばれてきたので、私は一旦小難しい考えを止め楽しく食事を取る事に専念した。

 夕食を終えて私達はこなたの自室に入った。
「さて、寝るまで何しようかなっと」
 そう言いながらパソコンの電源を入れるこなた。
「パソコンする気満々じゃない」
 私の的確なツッコミをこなたは華麗にスルー。
「私は放置ってわけね……」
「たまには放置プレイも良いもんだよ」
「黙れ」
 即座に反応してみるもののやはりスルー。私はこれ以上言っても無駄だと判断する。
「ごめんねー、いつも見て回ってるサイトに顔出したら終わるから」
「分かったわよ」
 納得した様子を見せると、こなたは再び画面と向き合ってしまう。溜息をつき私はこなたの部屋の詮索を開始する。
 今私が腰掛けている場所が、いつもこなたが寝ている魅惑のベッドだ。ただの就寝器具なのに、異様な魅力を放っているのは言うまでもなくこなたが使用しているからだろう。
 柊かがみの詮索、これにて終了。
 さて、潜り込みますかね。
「……かがみ、何してんの?」
 こなたの声で別離した空間から元の世界へと引き戻される。
 私は毛布を被って枕に顔を埋めパジャマの上から三番目と四番目のボタンを外していた。
 ええ、自分でも何してたか分かりませんよ。
「まぁ良いや」
 自分のベッド荒らされてても良いのか。
「もう終わったの?」
「うん」
 こなたにすれば驚くべき速さだろう。本当にサイトを見て回っただけのようだ。
「かがみ、私があげた指輪持ってる?」
「ああ、鞄の中」
 こなたの質問に私は部屋の隅に置いていた鞄を指差した。
「ちょっと出してきて」
「?うん……」
 何が目的なのかさっぱりだったが、私は言われた通りにベッドから降りて鞄から喫茶店で受け取った指輪を取り出す。
 それを持ってこなたの元に戻ると、こなたはベッドの上で頭から薄い布団を掛け、待機していた。
「来て来て」
 私はこなたの促すままに傍へ移動する。すると布団が私にも分け与えられた。
 白い生地にふわりと包まれこなたとの距離が一気に近くなる。
 こなたも指輪を手に持っていた。
 そして私の手を取り、薬指に嵌める。
「ほら、かがみも」
 今度は自ら手を差し出して倣うよう私に言ってくる。
「えへへ、雰囲気出るでしょ?」
 こなたはそう言って目を閉じた。
「病める時も、貧しい時も、道がない時も、胸がない時も……」
 その光景がとても微笑ましくて、私は思わずツッコミを入れ忘れてしまった。
 まぁ、こなたらしいっちゃこなたらしいわね。
 私は少し笑みを浮かべてこなたの手に自分の手をそっと添えた。
「ずっと一緒よ、こなた……」
 こなたの細い指に指輪を通すと、顔を上げたこなたと目線が合った。
 そのまま―――私達は吸い寄せられるように、小鳥がついばむような自然な口付けを交わした。






 交錯する気持ちに続く









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  • イチャイチャパラダイスwww -- 名無しさん (2010-08-09 16:59:26)
  • らぶらぶですね -- 名無しさん (2010-06-09 15:08:22)

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