4.
困ったのは服装だった。
制服だったらともかく、私が『飛ばされる』前の日は休日で、私服を着ていた。
まぁ、この時代から見れば稜桜の制服は結構派手なので目立つかも知れないけど。
制服だったらともかく、私が『飛ばされる』前の日は休日で、私服を着ていた。
まぁ、この時代から見れば稜桜の制服は結構派手なので目立つかも知れないけど。
私はお母さんに似て寒さには強いので、今の格好ではちっとも寒くない。
珍しくスカートじゃなくてパンツにしているしね。
ただ、明らかに着ている服装が当時の基準とはかけ離れており、さっきから周りの視線が気になってしょうがない。
はじめは無視していたのだけれど、これも段々限界に達してきた。
珍しくスカートじゃなくてパンツにしているしね。
ただ、明らかに着ている服装が当時の基準とはかけ離れており、さっきから周りの視線が気になってしょうがない。
はじめは無視していたのだけれど、これも段々限界に達してきた。
そんなことを考えつつ、これからどうしようかと考えていると、突然携帯電話が着信した。
まず、つかさや友達からでは無いことは確かだ。
というか、この時代で携帯電話が鳴ること自体がおかしい。
携帯電話のバイブレータはすぐに鳴りやんだ。どうやらメールのようだ。
「コレ」を人前に出すのは些か抵抗があったので、私は公衆トイレの個室へ駆け込んで、その中で開いた。
まず、つかさや友達からでは無いことは確かだ。
というか、この時代で携帯電話が鳴ること自体がおかしい。
携帯電話のバイブレータはすぐに鳴りやんだ。どうやらメールのようだ。
「コレ」を人前に出すのは些か抵抗があったので、私は公衆トイレの個室へ駆け込んで、その中で開いた。
送り主は、不明。
だが、誰が送ったかは大体想像が付く。
メールの内容はこうだった。
だが、誰が送ったかは大体想像が付く。
メールの内容はこうだった。
本文:
大垣夜行に乗車せよ。
乗車券は西口の第三ロッカー、213番にあり。
大垣夜行に乗車せよ。
乗車券は西口の第三ロッカー、213番にあり。
ちょうど今いるトイレは、新幹線側、つまり西口にある。
私は使ってもいないトイレの水をわざと流し、手まで洗う演技までしてトイレを出た。
ちょっとわざとらしかったかな?
私は使ってもいないトイレの水をわざと流し、手まで洗う演技までしてトイレを出た。
ちょっとわざとらしかったかな?
小田原駅西口、建物自体は変わらぬ新幹線側の入口に第三ロッカーはあった。
駅舎の外れにあるこのロッカーは、滅多に人が通らない所にあるため、それはそれは不気味だった。
そのくせ、ホームとは対照的に無駄に照明が明るく、不気味さを更に増長させた。
213番のロッカーは鍵が刺さったまま。つまり、「空いている」状態だった。
私に何らかの方法でメールを送りつけた『主』はちょっとアホだと思う。
誰かが閉めちゃったらどうするのよ。
駅舎の外れにあるこのロッカーは、滅多に人が通らない所にあるため、それはそれは不気味だった。
そのくせ、ホームとは対照的に無駄に照明が明るく、不気味さを更に増長させた。
213番のロッカーは鍵が刺さったまま。つまり、「空いている」状態だった。
私に何らかの方法でメールを送りつけた『主』はちょっとアホだと思う。
誰かが閉めちゃったらどうするのよ。
誰も居ないことを確認し、ロッカーを開ける。
そこには怪しげな茶封筒と鍵が置かれていた。
本当、誰かに持って行かれたらどうするつもりなのよ。
私を利用するならもっと上手く利用しなさいよね。
そこには怪しげな茶封筒と鍵が置かれていた。
本当、誰かに持って行かれたらどうするつもりなのよ。
私を利用するならもっと上手く利用しなさいよね。
茶封筒の中身は、案の定、乗車券が入っていた。
現代の磁気シートが貼られたものではなく、ただの厚紙で出来た乗車券。
券面には『小田原→米原』と書かれていた。
米原に行かせるのなら新幹線を使えばいいのに。終電はまだでしょ?
私は乗車券にツッコミを入れつつ、それを茶封筒に戻した。
鍵は財布の中に入れて第三ロッカーを後にした。
現代の磁気シートが貼られたものではなく、ただの厚紙で出来た乗車券。
券面には『小田原→米原』と書かれていた。
米原に行かせるのなら新幹線を使えばいいのに。終電はまだでしょ?
私は乗車券にツッコミを入れつつ、それを茶封筒に戻した。
鍵は財布の中に入れて第三ロッカーを後にした。
恐怖心は意外と無かった。
この時の私は、何故か、ワクワクしていた。
この時の私は、何故か、ワクワクしていた。
「お腹、減ったわね」
時計は9時を廻ったところ。まだラーメン屋くらいなら空いているかしら?
私は再び東側の地下街にあるラーメン屋さんへと向かった。
何故地下街か?
それは、この時代の小田原駅は駅を貫く自由通路が無いため、
反対側へ行くには駅の外にある地下道を通らねばならないからだ。
正直面倒だった。乗車券も東口のロッカーに入れて欲しかった。
時計は9時を廻ったところ。まだラーメン屋くらいなら空いているかしら?
私は再び東側の地下街にあるラーメン屋さんへと向かった。
何故地下街か?
それは、この時代の小田原駅は駅を貫く自由通路が無いため、
反対側へ行くには駅の外にある地下道を通らねばならないからだ。
正直面倒だった。乗車券も東口のロッカーに入れて欲しかった。
『大垣夜行』という列車は、東京と大垣を結ぶ夜行快速列車だ。
私は鉄道趣味は無いので詳しくも無いし、興味も無いので今の今までどんな列車かは分からなかったが、
それはそれは色々な意味で凄い列車だった。
私は鉄道趣味は無いので詳しくも無いし、興味も無いので今の今までどんな列車かは分からなかったが、
それはそれは色々な意味で凄い列車だった。
深夜0時を過ぎて、日付が変わった。
帰宅ラッシュもとっくに過ぎており、ホームも、改札口も、駅前も、人通りが少なくなってきた。
しかし、国鉄東海道線の下りホームは逆に人がどんどん増えている。
皆コンパクトなリュックサックやボストンバッグを手に持って、
ある人は立ったまま、ある人はうろうろしながら、ある人は地べたに座ったまま、列車の到着を待つ。
大体予想が付いた。
「みんな、大垣夜行に乗るつもりなのね」
そうひとりごちて、私も皆と同じく列車の到着を待っていた。
帰宅ラッシュもとっくに過ぎており、ホームも、改札口も、駅前も、人通りが少なくなってきた。
しかし、国鉄東海道線の下りホームは逆に人がどんどん増えている。
皆コンパクトなリュックサックやボストンバッグを手に持って、
ある人は立ったまま、ある人はうろうろしながら、ある人は地べたに座ったまま、列車の到着を待つ。
大体予想が付いた。
「みんな、大垣夜行に乗るつもりなのね」
そうひとりごちて、私も皆と同じく列車の到着を待っていた。
『大垣夜行ただいま到着致します。危険ですから白線より内側に下がってください』
アナウンスの後、オレンジと緑色に塗装された、どこか懐かしい列車がホームに滑り込んできた。
しかし、車内の様子を見て私は愕然とした。
アナウンスの後、オレンジと緑色に塗装された、どこか懐かしい列車がホームに滑り込んできた。
しかし、車内の様子を見て私は愕然とした。
「嘘でしょ………」
初めての鉄道旅行。
『現代』へ戻るための鉄道旅行。
その第一列車はあまりにもカオスな状態となっていた。
初めての鉄道旅行。
『現代』へ戻るための鉄道旅行。
その第一列車はあまりにもカオスな状態となっていた。
私も含め、多くの乗客が文字通り詰め込まれると、笛の合図と共に扉が閉まる。
かくて、私は小田原の地を離れた。
かくて、私は小田原の地を離れた。
車内は文字通りのカオス状態だった。
この際、サイズに乏しい胸が触られようが何されようが文句は言いまい。
(わざと触った奴は問答無用で死刑だけど)
私はひたすらトートバッグと怪しげな紙袋を守ることで精一杯だった。
この際、サイズに乏しい胸が触られようが何されようが文句は言いまい。
(わざと触った奴は問答無用で死刑だけど)
私はひたすらトートバッグと怪しげな紙袋を守ることで精一杯だった。
『ご乗車ありがとうございます。大垣行き、快速列車です。
車内は大変混雑しております。ご迷惑をお掛けします。』
本当に迷惑だわ!!
車内は大変混雑しております。ご迷惑をお掛けします。』
本当に迷惑だわ!!
列車は2つドアの車両で、客室とデッキは壁と扉で仕切られていた。
客室は全てボックス席で、どうやら旅行用の電車らしい。
ボックス席は既に満杯で、座席と座席との間の通路も旅行客で埋まっていた。
デッキ付近もさながら都内の通勤電車状態で、明らかに定員オーバー。
座ることなど許されぬ状態であり、全員立ったままであるかと言えばそうでもない。
流石に大垣駅まで立ったまま寝るのは苦痛なため、それぞれが譲り合って立ったり座ったりしている。
私はこの時代へ来て、改めて「人間の温かさ」を実感した。
私も先ほど、大学生とおぼしきお兄さんに「どうぞ」と言われ、床に座らさせて貰った。
しばらくしたら代わってあげよう。
客室は全てボックス席で、どうやら旅行用の電車らしい。
ボックス席は既に満杯で、座席と座席との間の通路も旅行客で埋まっていた。
デッキ付近もさながら都内の通勤電車状態で、明らかに定員オーバー。
座ることなど許されぬ状態であり、全員立ったままであるかと言えばそうでもない。
流石に大垣駅まで立ったまま寝るのは苦痛なため、それぞれが譲り合って立ったり座ったりしている。
私はこの時代へ来て、改めて「人間の温かさ」を実感した。
私も先ほど、大学生とおぼしきお兄さんに「どうぞ」と言われ、床に座らさせて貰った。
しばらくしたら代わってあげよう。
窮屈なデッキで体を荷物ごと丸めて座っていると、私の大嫌いな臭いが漂ってきた。
煙草だ。
客室との扉は開いたままになっているので、客室内から煙草の煙が流れ込んできたのだ。
平成時代に生まれ、平成時代で育った私にとって、電車の中で煙草を吸うことなど、信じがたい行いだ。
時代が時代とは言え、せめて空いている時か駅で吸ってもらいたかった。
煙草だ。
客室との扉は開いたままになっているので、客室内から煙草の煙が流れ込んできたのだ。
平成時代に生まれ、平成時代で育った私にとって、電車の中で煙草を吸うことなど、信じがたい行いだ。
時代が時代とは言え、せめて空いている時か駅で吸ってもらいたかった。
『───終点、大垣には6時59分、終点大垣には6時59分に到着します。
大垣駅到着の後、この列車はこのまま美濃赤坂行きとなります。』
大垣駅到着の後、この列車はこのまま美濃赤坂行きとなります。』
間.
春日部駅の賑わいが別のベクトルで大きくなっていた。
改札口が大混雑しており、メガホンを持った駅員がしきりに大宮からJRに乗る様、大声でアナウンスをしている。
「兄貴ー、これじゃ帰れねーぞ」
「参ったな。何とかならないかな」
改札口が大混雑しており、メガホンを持った駅員がしきりに大宮からJRに乗る様、大声でアナウンスをしている。
「兄貴ー、これじゃ帰れねーぞ」
「参ったな。何とかならないかな」
おれと妹のみさおは、駅前のロータリにて身動きひとつとれない駅の様子を観察しながら話し合っていた。
しばらくの沈黙の後、みさおがこう切り出した。
「なんとなくだけどさ」
「ん?」
「なんとなくだけどさ」
「ん?」
「私、さっきから嫌~な予感がするんだ」
予感……か。
「どんな予感だ?」
「何かさ、でっけー事故とか起きててさ、人が…」
そこでみさおの言葉が詰まった。
「兄貴………………」
「どんな予感だ?」
「何かさ、でっけー事故とか起きててさ、人が…」
そこでみさおの言葉が詰まった。
「兄貴………………」
「……………ちょっと、何があったか訊いてみようぜ」