Miyuki-side
ああ、そうでした……私は昨日つかささんのお部屋にお泊まりしたんですよね。
今日はたしか土曜日。学校はお休みでした。ゆっくりと上半身を起こし、時刻を確認します。
早朝6時半。つかささんは未だ眠りの中のようです。昨日の夜はあれだけ……疲れたのだから当然ですね。
昇りたての朝日が窓から差し込みます。リビングに降りればつかささんのご両親が朝食の準備でもしているのでしょう。
私はどうしましょう。二度寝というのも難しいですし……早起きもこういうときに困りますね。
「つかささん……」
小さな寝息を立てるつかささんにそっと近付き、その愛くるしい寝顔を確認します。
ああ……胸にズキューンときますね。小さなお口、キュートなお鼻、少しはれぼったい瞼……はれぼったい?
(つかささん……泣いていたのでしょうか?)
もしかして、昨日の、その……行為の最中に? 私の……私の名前を、呼びながら……。
思い出して、私は顔が熱くなるのを感じました。昨晩のつかささんの声、あれは私に向けられていたもの……。
本当は喜ぶべきことのはずなのですが、頭の中で整理が追いつきません。
(と、いうことは……私とつかささんは、その、両想いと考えてよろしいのでしょうか……)
だとすれば私は、どのようにしてつかささんに想いを伝えればいいのでしょう。受け入れる気ならありますのに。
再びつかささんの寝顔に視線を移します。少しの力で壊れそうなくらい、小さくてか弱くて、いとおしいその寝顔。
胸の奥が強く締めつけられてたまらなくなり、私はため息をひとつ零しました。
なぜ、つかささんは泣いたのでしょうか。怖い夢を見た……ということはなさそうです。
お恥ずかしながら、私もつかささんのことを想っては、時折……ひとりでいたすようなこともあるのですが、
感極まってくると涙腺が緩むということは度々あります。しかし、瞼が腫れるほど泣く事はありません。
かがみさんがいないので、寂しさが抑えきれなかったのだとしたら……私は自分を呪うしかありません。
こんなに近くにいながら、つかささんが小さな胸に抱く寂しさを癒すことができなかったのですから。
(つかささん……私ならいつでもそばにいます。寂しがらせたりなんか、絶対にしません。約束します。
私じゃダメですか? つかささんのあの言葉が本当なら、私にあなたの寂しさを紛らわせてくれませんか?)
もし、あのときのつかささんの言葉が……私のことを好きだと言ってくれたあの言葉が……。
勢いで出てしまっただけの言葉なら、寂しさのあまりに出ただけの言葉なら……。
私はそれでも構わないと思いました。つかささんの寂しさを、一緒に抱えてあげるだけの存在でもいいんです。
(苦しいです、つかささん)
つかささんを包むシーツをつまんで、強く握りました。涙腺がまた緩くなってきたみたいです。
つかささんを起こさないように、その胸に顔を押し付けました。なぜか私まで寂しくなってきたみたいです。
(ごめんなさい、つかささん。私まで、つかささんに頼って寂しさを紛らわせようとしてしまっています)
愛する人が傍にいても、たまらなく寂しくなる事もあるようですね。シーツが私の涙を吸っていきます。
だとすれば……つかささんは私を想って泣いてくれたのでしょうか。あの言葉通りに私を好いてくれていたのなら、
今の私と同じ寂しさで泣いてくれていたのでしょうか。それは、私に都合のいい勘違いなのでしょうか……。
(こういうとき泉さんならどうするんでしょう。きっと、自分に正直に、愛しい人に甘えるんでしょうね。
かがみさんなら……できるだけ我慢して、ふとしたときに泉さんに思いっきり甘えてきそうですね。
お二人とも羨ましい限りです。私にも、それくらいの勇気や、行動力が、つかささんに対してあったなら……)
そういえばあの二人、昨日はついに……なのでしょうか。私は二人に失礼だと思い、その考えを振り払います。
やがてシーツから顔を起こすと、私は少し残っていた涙を拭い、つかささんのお部屋から出ました。
リビングにいるつかささんのご両親に、何かお手伝いできることがあればと思ったのです。
つかささんの寝顔をいつまでも見ていると、切なさで潰れそうなので……。
今日はたしか土曜日。学校はお休みでした。ゆっくりと上半身を起こし、時刻を確認します。
早朝6時半。つかささんは未だ眠りの中のようです。昨日の夜はあれだけ……疲れたのだから当然ですね。
昇りたての朝日が窓から差し込みます。リビングに降りればつかささんのご両親が朝食の準備でもしているのでしょう。
私はどうしましょう。二度寝というのも難しいですし……早起きもこういうときに困りますね。
「つかささん……」
小さな寝息を立てるつかささんにそっと近付き、その愛くるしい寝顔を確認します。
ああ……胸にズキューンときますね。小さなお口、キュートなお鼻、少しはれぼったい瞼……はれぼったい?
(つかささん……泣いていたのでしょうか?)
もしかして、昨日の、その……行為の最中に? 私の……私の名前を、呼びながら……。
思い出して、私は顔が熱くなるのを感じました。昨晩のつかささんの声、あれは私に向けられていたもの……。
本当は喜ぶべきことのはずなのですが、頭の中で整理が追いつきません。
(と、いうことは……私とつかささんは、その、両想いと考えてよろしいのでしょうか……)
だとすれば私は、どのようにしてつかささんに想いを伝えればいいのでしょう。受け入れる気ならありますのに。
再びつかささんの寝顔に視線を移します。少しの力で壊れそうなくらい、小さくてか弱くて、いとおしいその寝顔。
胸の奥が強く締めつけられてたまらなくなり、私はため息をひとつ零しました。
なぜ、つかささんは泣いたのでしょうか。怖い夢を見た……ということはなさそうです。
お恥ずかしながら、私もつかささんのことを想っては、時折……ひとりでいたすようなこともあるのですが、
感極まってくると涙腺が緩むということは度々あります。しかし、瞼が腫れるほど泣く事はありません。
かがみさんがいないので、寂しさが抑えきれなかったのだとしたら……私は自分を呪うしかありません。
こんなに近くにいながら、つかささんが小さな胸に抱く寂しさを癒すことができなかったのですから。
(つかささん……私ならいつでもそばにいます。寂しがらせたりなんか、絶対にしません。約束します。
私じゃダメですか? つかささんのあの言葉が本当なら、私にあなたの寂しさを紛らわせてくれませんか?)
もし、あのときのつかささんの言葉が……私のことを好きだと言ってくれたあの言葉が……。
勢いで出てしまっただけの言葉なら、寂しさのあまりに出ただけの言葉なら……。
私はそれでも構わないと思いました。つかささんの寂しさを、一緒に抱えてあげるだけの存在でもいいんです。
(苦しいです、つかささん)
つかささんを包むシーツをつまんで、強く握りました。涙腺がまた緩くなってきたみたいです。
つかささんを起こさないように、その胸に顔を押し付けました。なぜか私まで寂しくなってきたみたいです。
(ごめんなさい、つかささん。私まで、つかささんに頼って寂しさを紛らわせようとしてしまっています)
愛する人が傍にいても、たまらなく寂しくなる事もあるようですね。シーツが私の涙を吸っていきます。
だとすれば……つかささんは私を想って泣いてくれたのでしょうか。あの言葉通りに私を好いてくれていたのなら、
今の私と同じ寂しさで泣いてくれていたのでしょうか。それは、私に都合のいい勘違いなのでしょうか……。
(こういうとき泉さんならどうするんでしょう。きっと、自分に正直に、愛しい人に甘えるんでしょうね。
かがみさんなら……できるだけ我慢して、ふとしたときに泉さんに思いっきり甘えてきそうですね。
お二人とも羨ましい限りです。私にも、それくらいの勇気や、行動力が、つかささんに対してあったなら……)
そういえばあの二人、昨日はついに……なのでしょうか。私は二人に失礼だと思い、その考えを振り払います。
やがてシーツから顔を起こすと、私は少し残っていた涙を拭い、つかささんのお部屋から出ました。
リビングにいるつかささんのご両親に、何かお手伝いできることがあればと思ったのです。
つかささんの寝顔をいつまでも見ていると、切なさで潰れそうなので……。
*
Tsukasa-side
「ふぇ……」
目を覚ました。枕もとの時計を見ると、朝の8時半だった。一瞬「遅刻!」と思ったけれど、そういえば土曜日。
それからゆっくりと昨日の記憶が戻ってきて、私はシーツを頭からかぶった。それからゆっくりと、ベッドの下を見る。
ゆきちゃんはいなかった。布団はしっかりとたたんであって、さすがは早起き……って私が遅いんだけど。
(やだな……起きたくない。いつまでも寝ていたかったのに……)
それは、いつものように私がねぼすけだからじゃなかった。起きて、ゆきちゃんに会わせる顔がなかったから。
きっと昨日のあれは、全部ゆきちゃんに聞かれてた。はしたない声も、ずっと胸に秘めていた本当の気持ちも……。
そもそも、ゆきちゃんが隣にいるのにあんなことをしてしまった私のせいだ。ゆきちゃんに、イヤらしい女の子だと思われちゃったんだ。
ううん、思われたんじゃない。私はきっと、イヤらしい女の子なんだ。ゆきちゃんに嫌われても仕方ないようなことをしたんだから。
(……やだ)
ゆきちゃんに嫌われても仕方ない? 本当に? 私の中で、仕方ないなんて言葉じゃ片付けられない事だった。
(……いやだよ、嫌われたくないよ。ゆきちゃんと離れるのなんて、絶対イヤだよ)
たとえ私がゆきちゃんに想いを打ち明けて、それで二人が気まずくなる事があっても、離れ離れにはならないようにしてあげるって、
こなちゃんは電話で言っていたけど、こんなことで嫌われちゃったら、こなちゃんやお姉ちゃんがいくらフォローしても無理。
私だって、自分の事を考えてそんなことをされたら……驚くし、ちょっとイヤだなって思う。それが好きな人なら別だけど……。
(私、どうすればいいのかな……辛いよ、お姉ちゃん、こなちゃん、助けてよ……)
もしも今顔を合わせたら、ゆきちゃんはどんな顔をするんだろう。ゆきちゃんは優しいから、そんなにイヤそうな顔はしないはず。
でも、戸惑ったような顔しちゃうんだろうな。それから私のことをちょっと避けるような感じで、口数も少なくなって……。
そんなことを考えるほどに、私は私を責めたい気持ちになった。人を叩いた事の無い私でも、もし目の前に私がいたらきっと叩いてる。
(ゆきちゃん、嫌いにならないで……たくさん謝るから、もう二度としないから、お願いだから……)
私はシーツに身体をくるんだまま、枕に顔を押しつけて、そんな言葉を唱えていた。ちゃんとゆきちゃんの前で、口にすればいいのに。
歯医者が怖いね、と何気ない話をすることも、もう無くなってしまうなんて私には耐えられなかったから……。
昨日の、私の髪を撫でたあの手が、ゆきちゃんが布団に入るあの音が、寝入り端で聞いた幻聴だったら、気のせいだったらよかったのに。
そんなことを考えてたら、ふと……ひとつの疑問が生まれた。
(どうしてゆきちゃんは……私の髪を撫でたの?)
隣であんなことを……しかも、自分のことを考えながらされたはずなのに、どうして私をあやすように、慰めるように、
あんなに優しい手つきで、私のことを撫でてくれたんだろう。私のことを、汚いとか思わなかった? 触るのもイヤだとか、考えてない?
(私が疲れてるように見えたから、眠りやすいように撫でてくれたのかな……?)
だとしたらゆきちゃんは、私のことを嫌いにならなかった? それとも、混乱してふいに出た行動? ゆきちゃんは優しいから?
ますます私の頭の中はこんがらがって……でもそれは、ほんの少し希望を持たせてくれて、もしかしたらぬか喜びなのかもしれないけど。
(ゆきちゃんって、あのとき実は寝ぼけてました……とかじゃないよね)
そんなことを考える余裕が、ようやく出てきた。あのとき頭を撫でられた、あの感触。傷付けないように優しく触れてくれたかのような。
好きだった。図々しいかもしれないけど、これからもああいう風に私のことを撫でてほしかった。叶わない願いなんだけど……。
(……逃げてちゃダメだよね)
私はシーツを脱いで、がばっと上半身を起こした。時刻は8時45分。あんまり寝ていると、ゆきちゃんが帰ってしまう。
(こんな大事な事まで、寝逃げに走っちゃダメだよね。……こなちゃんが応援してくれているんだから!)
嫌われるのは怖い。けど、いつまでも逃げていられるわけじゃないし、嫌われそうなら私も頑張って、ゆきちゃんの信頼を取り戻したい。
私って単純だと思った。ほんのちょっと嫌われていない可能性ができただけで、ここまで前向きになれちゃうなんて、笑っちゃうくらい。
(想いを伝えるのは難しいけど、こなちゃんだって、お姉ちゃんだって頑張ったんだよ? だったら今度は……私が頑張らなきゃ!)
目を覚ました。枕もとの時計を見ると、朝の8時半だった。一瞬「遅刻!」と思ったけれど、そういえば土曜日。
それからゆっくりと昨日の記憶が戻ってきて、私はシーツを頭からかぶった。それからゆっくりと、ベッドの下を見る。
ゆきちゃんはいなかった。布団はしっかりとたたんであって、さすがは早起き……って私が遅いんだけど。
(やだな……起きたくない。いつまでも寝ていたかったのに……)
それは、いつものように私がねぼすけだからじゃなかった。起きて、ゆきちゃんに会わせる顔がなかったから。
きっと昨日のあれは、全部ゆきちゃんに聞かれてた。はしたない声も、ずっと胸に秘めていた本当の気持ちも……。
そもそも、ゆきちゃんが隣にいるのにあんなことをしてしまった私のせいだ。ゆきちゃんに、イヤらしい女の子だと思われちゃったんだ。
ううん、思われたんじゃない。私はきっと、イヤらしい女の子なんだ。ゆきちゃんに嫌われても仕方ないようなことをしたんだから。
(……やだ)
ゆきちゃんに嫌われても仕方ない? 本当に? 私の中で、仕方ないなんて言葉じゃ片付けられない事だった。
(……いやだよ、嫌われたくないよ。ゆきちゃんと離れるのなんて、絶対イヤだよ)
たとえ私がゆきちゃんに想いを打ち明けて、それで二人が気まずくなる事があっても、離れ離れにはならないようにしてあげるって、
こなちゃんは電話で言っていたけど、こんなことで嫌われちゃったら、こなちゃんやお姉ちゃんがいくらフォローしても無理。
私だって、自分の事を考えてそんなことをされたら……驚くし、ちょっとイヤだなって思う。それが好きな人なら別だけど……。
(私、どうすればいいのかな……辛いよ、お姉ちゃん、こなちゃん、助けてよ……)
もしも今顔を合わせたら、ゆきちゃんはどんな顔をするんだろう。ゆきちゃんは優しいから、そんなにイヤそうな顔はしないはず。
でも、戸惑ったような顔しちゃうんだろうな。それから私のことをちょっと避けるような感じで、口数も少なくなって……。
そんなことを考えるほどに、私は私を責めたい気持ちになった。人を叩いた事の無い私でも、もし目の前に私がいたらきっと叩いてる。
(ゆきちゃん、嫌いにならないで……たくさん謝るから、もう二度としないから、お願いだから……)
私はシーツに身体をくるんだまま、枕に顔を押しつけて、そんな言葉を唱えていた。ちゃんとゆきちゃんの前で、口にすればいいのに。
歯医者が怖いね、と何気ない話をすることも、もう無くなってしまうなんて私には耐えられなかったから……。
昨日の、私の髪を撫でたあの手が、ゆきちゃんが布団に入るあの音が、寝入り端で聞いた幻聴だったら、気のせいだったらよかったのに。
そんなことを考えてたら、ふと……ひとつの疑問が生まれた。
(どうしてゆきちゃんは……私の髪を撫でたの?)
隣であんなことを……しかも、自分のことを考えながらされたはずなのに、どうして私をあやすように、慰めるように、
あんなに優しい手つきで、私のことを撫でてくれたんだろう。私のことを、汚いとか思わなかった? 触るのもイヤだとか、考えてない?
(私が疲れてるように見えたから、眠りやすいように撫でてくれたのかな……?)
だとしたらゆきちゃんは、私のことを嫌いにならなかった? それとも、混乱してふいに出た行動? ゆきちゃんは優しいから?
ますます私の頭の中はこんがらがって……でもそれは、ほんの少し希望を持たせてくれて、もしかしたらぬか喜びなのかもしれないけど。
(ゆきちゃんって、あのとき実は寝ぼけてました……とかじゃないよね)
そんなことを考える余裕が、ようやく出てきた。あのとき頭を撫でられた、あの感触。傷付けないように優しく触れてくれたかのような。
好きだった。図々しいかもしれないけど、これからもああいう風に私のことを撫でてほしかった。叶わない願いなんだけど……。
(……逃げてちゃダメだよね)
私はシーツを脱いで、がばっと上半身を起こした。時刻は8時45分。あんまり寝ていると、ゆきちゃんが帰ってしまう。
(こんな大事な事まで、寝逃げに走っちゃダメだよね。……こなちゃんが応援してくれているんだから!)
嫌われるのは怖い。けど、いつまでも逃げていられるわけじゃないし、嫌われそうなら私も頑張って、ゆきちゃんの信頼を取り戻したい。
私って単純だと思った。ほんのちょっと嫌われていない可能性ができただけで、ここまで前向きになれちゃうなんて、笑っちゃうくらい。
(想いを伝えるのは難しいけど、こなちゃんだって、お姉ちゃんだって頑張ったんだよ? だったら今度は……私が頑張らなきゃ!)
*
Miyuki-side
つかささんはまだ起きていないみたいです。つかささんのお母さんと一緒に朝食を作り、すでにみなさんお召し上がりになりました。
つかささんのお姉さん……いのりお姉さんが「起こしてくるよ」とは言ってくれましたが、昨日の事もあったので疲れてるだろうと思い、
いえ、まだ寝かせてあげてくださいとお願いしました。それまでの間に世間話などをして、時刻は8時50分を回りました。
「ゆ、ゆきちゃん、おはよー」
「えっ、あ……おはようございます、つかささん」
パジャマ姿のつかささんがリビングへと起きてきました。あまり起きぬけといった感じがしないのは気のせいでしょうか。
私はできるだけ自然な笑顔で返事を返しました。大丈夫、不安定なこの感情は、悟られてはいないみたいです。
「えへへ……ごめんね、ずっと寝ちゃってて」
「いえ、気になさらないでください。せっかくの休日ですしね」
「でも、ゆきちゃんが泊まりに来てるのに、なんだか悪いよ~……」
「そうよつかさ。みゆきちゃんなんか早起きしてご飯作るの手伝ってくれたんだからね。あなたもそのくらい、できるようにしなさい」
つかささんのお母さんが、呆れた顔で言いました。それから私に向かって「本当にごめんなさいねえ」と。
「うう~……自分でお弁当きちんと作ってるから、いいかなーって……」
「つかささん、料理はお上手ですからね」
「ゆきちゃん、ご飯作ってくれたの? お客さんなんだから、もっとゆっくりしてってもよかったのに……」
「いえいえ、他のお宅の台所を触れる機会もそんなにありませんし、むしろ楽しかったですよ」
「みゆきちゃん、お料理すごく上手で、今日なんかバルサミコ酢を使った……何かを作ってくれたのよ? レシピ教えてもらっちゃった」
「バルサミコ酢を使った……何かは割と簡単にできるので、忙しい朝型には最適ですね」
「うわぁ、楽しみだよ! ゆきちゃんの作ったバルサミコ酢を使った……何か!」
そんなに喜んでもらえると、私もお手伝いの甲斐があったというものです。昨日はつかささんのグラタンを堪能させていただきましたし。
「みゆきちゃんは本当に、物腰も柔らかくて、上品で、どこにお嫁に出しても恥ずかしくない女の子ね」
「そ、そんなことは……」
急に褒められてしまって、私は赤面したままかぶりを振りました。少しばかり褒め過ぎです……。
「本当、私に息子がいたらこんな子をお嫁にしたいくらい。この際娘でもいいからもらってくれないかしら。つかさとかいかが?」
「「えっ!!!!!」」
私とつかささんの声が見事にユニゾンしました。二人揃って頭のてっぺんまで真っ赤になって……。
「も、もう! お母さん変な事言わないでよ!」
「冗談に決まってるじゃないの」
「ううー……どんだけ~……」
私は返す言葉も無く、ふふふと笑っていました。冷静を装ってはいましたが、心臓はすでにはちきれんばかりの早鐘で……。
内心、『つかささんのお母さん公認!』とも思いましたが、そんなわけはなく……とりあえず、今だけは勝手に浮かれててもいいですよね?
(つかささんは私の嫁……いえ、私はつかささんの嫁?)
つかささんのお母さんは割と、お冗談がお好きなようです。柊家の台所に立って、いろんな知識を得る事もできました。
(これらは是非、『つかささん情報』に記入すべきですね)
私は「お手洗いお借りします」と告げると、トイレへと向かいました。トイレのドアを閉めると、メモ帳を取るためポケットに手を……。
……何もありません。たしか今朝、パジャマから昨日のお洋服に着替えて、たしかポケットには常にメモ帳を入れるようにしていて……。
同時に、全身の血の気が引く音が聞こえ……たような気分になりました。先程よりもさらに早く、心臓がドクンドクンと鳴っています。
(……落とした? この家のどこかに、あのメモ帳を?)
つかささんのお姉さん……いのりお姉さんが「起こしてくるよ」とは言ってくれましたが、昨日の事もあったので疲れてるだろうと思い、
いえ、まだ寝かせてあげてくださいとお願いしました。それまでの間に世間話などをして、時刻は8時50分を回りました。
「ゆ、ゆきちゃん、おはよー」
「えっ、あ……おはようございます、つかささん」
パジャマ姿のつかささんがリビングへと起きてきました。あまり起きぬけといった感じがしないのは気のせいでしょうか。
私はできるだけ自然な笑顔で返事を返しました。大丈夫、不安定なこの感情は、悟られてはいないみたいです。
「えへへ……ごめんね、ずっと寝ちゃってて」
「いえ、気になさらないでください。せっかくの休日ですしね」
「でも、ゆきちゃんが泊まりに来てるのに、なんだか悪いよ~……」
「そうよつかさ。みゆきちゃんなんか早起きしてご飯作るの手伝ってくれたんだからね。あなたもそのくらい、できるようにしなさい」
つかささんのお母さんが、呆れた顔で言いました。それから私に向かって「本当にごめんなさいねえ」と。
「うう~……自分でお弁当きちんと作ってるから、いいかなーって……」
「つかささん、料理はお上手ですからね」
「ゆきちゃん、ご飯作ってくれたの? お客さんなんだから、もっとゆっくりしてってもよかったのに……」
「いえいえ、他のお宅の台所を触れる機会もそんなにありませんし、むしろ楽しかったですよ」
「みゆきちゃん、お料理すごく上手で、今日なんかバルサミコ酢を使った……何かを作ってくれたのよ? レシピ教えてもらっちゃった」
「バルサミコ酢を使った……何かは割と簡単にできるので、忙しい朝型には最適ですね」
「うわぁ、楽しみだよ! ゆきちゃんの作ったバルサミコ酢を使った……何か!」
そんなに喜んでもらえると、私もお手伝いの甲斐があったというものです。昨日はつかささんのグラタンを堪能させていただきましたし。
「みゆきちゃんは本当に、物腰も柔らかくて、上品で、どこにお嫁に出しても恥ずかしくない女の子ね」
「そ、そんなことは……」
急に褒められてしまって、私は赤面したままかぶりを振りました。少しばかり褒め過ぎです……。
「本当、私に息子がいたらこんな子をお嫁にしたいくらい。この際娘でもいいからもらってくれないかしら。つかさとかいかが?」
「「えっ!!!!!」」
私とつかささんの声が見事にユニゾンしました。二人揃って頭のてっぺんまで真っ赤になって……。
「も、もう! お母さん変な事言わないでよ!」
「冗談に決まってるじゃないの」
「ううー……どんだけ~……」
私は返す言葉も無く、ふふふと笑っていました。冷静を装ってはいましたが、心臓はすでにはちきれんばかりの早鐘で……。
内心、『つかささんのお母さん公認!』とも思いましたが、そんなわけはなく……とりあえず、今だけは勝手に浮かれててもいいですよね?
(つかささんは私の嫁……いえ、私はつかささんの嫁?)
つかささんのお母さんは割と、お冗談がお好きなようです。柊家の台所に立って、いろんな知識を得る事もできました。
(これらは是非、『つかささん情報』に記入すべきですね)
私は「お手洗いお借りします」と告げると、トイレへと向かいました。トイレのドアを閉めると、メモ帳を取るためポケットに手を……。
……何もありません。たしか今朝、パジャマから昨日のお洋服に着替えて、たしかポケットには常にメモ帳を入れるようにしていて……。
同時に、全身の血の気が引く音が聞こえ……たような気分になりました。先程よりもさらに早く、心臓がドクンドクンと鳴っています。
(……落とした? この家のどこかに、あのメモ帳を?)
*
Tsukasa-side
ゆきちゃんの作ったバルサミコ酢を使った……何かはとても美味しかった。なんていうか、ゆきちゃんのように優しい味わいだった。
身はとても柔らかくて、でも歯ごたえがあって、味は甘からず、辛からず、さっぱりしながらコクが……って、よくわかんないや。
(朝からゆきちゃんの作ったご飯を食べられるなんて、幸せ~)
食卓には、私の分だけ朝食が並んでいた。みんなもう食べちゃってたみたい。私の目の前には、ゆきちゃんが座っている。
トイレを出たばかりのゆきちゃんは、なんだか浮かない顔をしていて、なにか落ち着かないようにそわそわ……。
お腹でも痛いのかな? 便秘気味だとか、月のものが始まっちゃったとか……それとも、私がゆきちゃんのお料理を食べているから?
「おいしいよ、ゆきちゃん♪」
「あ、ありがとうございます……」
「ゆきちゃん……お腹痛いの? なんだかずっとそわそわして……」
「あっ……いえ、なんでもありません。お気になさらないでください」
「……?」
ゆきちゃんはいつもの笑顔を私に返してくれた。
変なゆきちゃん。何かあったのかな……って思ったとき、私はすっかり頭から消え去っていた事を思い出した。
(もしかして、昨日の夜のこと……?)
私のお箸が止まった。ゆきちゃんはそのことを思い出して、私になんて言葉をかけてあげようか考えてるのかな?
これは私の勘だから、あまりあてにはならないケド……ゆきちゃんは私が心配していたより、私のことを嫌ってないように思えた。
でもゆきちゃんはしっかりと、私が『好き』って言ったのを聞いてたんだよね。こんなにそわそわするのも無理無くて……。
それに気がつけば、食卓のあるリビングには二人きりで、お姉ちゃん二人は外出、お父さんは休日出勤、お母さんはお洗濯。
お互いに、どうしても意識しちゃうに決まってる。私は止めていたお箸を動かして、朝ご飯の残りをちょっと無理めに平らげた。
「ゆ、ゆきちゃん!」
「は、はい! ……なんでしょう?」
「あ、あのね……」
「は、はい……」
「……きょ、今日、お休みだし、どこかいこっか?」
違うのに~……私が言いたかったのかこんなことじゃなくて、昨日のことなのに。でも、時間はまだまだあるからいいよね?
だけど私は、そこでゆきちゃんが断ってきたらどうしようかまでは予想してなかった。もしかしたら、ゆきちゃん帰っちゃうかも……。
「きょ、今日ですか? そうですね、お天気もいいですし……あっ、でも……」
「でも?」
「いえ、その……はい、あの、そうですね! あっ、でもつかささん、お勉強のほうは……」
「あっ! そっかぁ、そうだよね……」
そういえば昨日、してなかった。もうすぐテストも近いのに。それにしてもさすがゆきちゃん。私なんか完全に忘れちゃってたよ。
……って、そうじゃないよね。一緒に遊ぼうって誘ったのを、流されたのかもしれないんだし……やっぱり避けられてるのかな。
「じゃあ、ゆきちゃんはおうちに帰ってお勉強しないといけないよね……」
「え、ええ……あ、いえ、そうですつかささん。よかったら一緒にお勉強しませんか?」
その言葉に、私はばっと顔を上げた。真っ暗な底無し沼に落ちているところを、急に引き上げられたような気持ち。
一緒に? ゆきちゃん、一緒にお勉強してくれるの? 私のこと、避けてないの? まだ一緒にいてもいいの? いてくれるの?
「で、でも、ゆきちゃんはいいの? 私、お勉強の足ひっぱっちゃうかもだし、それに……」
「いえ、お気になさらないでください。つかささんの教科書と筆記用具を貸していただければ、こちらでもできますし……」
「ありがと……ゆきちゃん、ありがとっ!」
天にも昇る気持ち。とりあえずゆきちゃんには嫌われてないってことがわかった。朝食、ゆっくり味わって食べればよかった。
あとは、タイミング。本当に大切な事を伝えるタイミングと、私の勇気だけ。
身はとても柔らかくて、でも歯ごたえがあって、味は甘からず、辛からず、さっぱりしながらコクが……って、よくわかんないや。
(朝からゆきちゃんの作ったご飯を食べられるなんて、幸せ~)
食卓には、私の分だけ朝食が並んでいた。みんなもう食べちゃってたみたい。私の目の前には、ゆきちゃんが座っている。
トイレを出たばかりのゆきちゃんは、なんだか浮かない顔をしていて、なにか落ち着かないようにそわそわ……。
お腹でも痛いのかな? 便秘気味だとか、月のものが始まっちゃったとか……それとも、私がゆきちゃんのお料理を食べているから?
「おいしいよ、ゆきちゃん♪」
「あ、ありがとうございます……」
「ゆきちゃん……お腹痛いの? なんだかずっとそわそわして……」
「あっ……いえ、なんでもありません。お気になさらないでください」
「……?」
ゆきちゃんはいつもの笑顔を私に返してくれた。
変なゆきちゃん。何かあったのかな……って思ったとき、私はすっかり頭から消え去っていた事を思い出した。
(もしかして、昨日の夜のこと……?)
私のお箸が止まった。ゆきちゃんはそのことを思い出して、私になんて言葉をかけてあげようか考えてるのかな?
これは私の勘だから、あまりあてにはならないケド……ゆきちゃんは私が心配していたより、私のことを嫌ってないように思えた。
でもゆきちゃんはしっかりと、私が『好き』って言ったのを聞いてたんだよね。こんなにそわそわするのも無理無くて……。
それに気がつけば、食卓のあるリビングには二人きりで、お姉ちゃん二人は外出、お父さんは休日出勤、お母さんはお洗濯。
お互いに、どうしても意識しちゃうに決まってる。私は止めていたお箸を動かして、朝ご飯の残りをちょっと無理めに平らげた。
「ゆ、ゆきちゃん!」
「は、はい! ……なんでしょう?」
「あ、あのね……」
「は、はい……」
「……きょ、今日、お休みだし、どこかいこっか?」
違うのに~……私が言いたかったのかこんなことじゃなくて、昨日のことなのに。でも、時間はまだまだあるからいいよね?
だけど私は、そこでゆきちゃんが断ってきたらどうしようかまでは予想してなかった。もしかしたら、ゆきちゃん帰っちゃうかも……。
「きょ、今日ですか? そうですね、お天気もいいですし……あっ、でも……」
「でも?」
「いえ、その……はい、あの、そうですね! あっ、でもつかささん、お勉強のほうは……」
「あっ! そっかぁ、そうだよね……」
そういえば昨日、してなかった。もうすぐテストも近いのに。それにしてもさすがゆきちゃん。私なんか完全に忘れちゃってたよ。
……って、そうじゃないよね。一緒に遊ぼうって誘ったのを、流されたのかもしれないんだし……やっぱり避けられてるのかな。
「じゃあ、ゆきちゃんはおうちに帰ってお勉強しないといけないよね……」
「え、ええ……あ、いえ、そうですつかささん。よかったら一緒にお勉強しませんか?」
その言葉に、私はばっと顔を上げた。真っ暗な底無し沼に落ちているところを、急に引き上げられたような気持ち。
一緒に? ゆきちゃん、一緒にお勉強してくれるの? 私のこと、避けてないの? まだ一緒にいてもいいの? いてくれるの?
「で、でも、ゆきちゃんはいいの? 私、お勉強の足ひっぱっちゃうかもだし、それに……」
「いえ、お気になさらないでください。つかささんの教科書と筆記用具を貸していただければ、こちらでもできますし……」
「ありがと……ゆきちゃん、ありがとっ!」
天にも昇る気持ち。とりあえずゆきちゃんには嫌われてないってことがわかった。朝食、ゆっくり味わって食べればよかった。
あとは、タイミング。本当に大切な事を伝えるタイミングと、私の勇気だけ。
*
Miyuki-side
つかささん達にバレないように、私はしっかりと家中を凝視していました。どこかに、私のメモ帳が落ちているはずです。
あれをもし、つかささんに見られていたらと思うと……つかささんが嫌悪の表情で私を見つめるシーンが容易に想像できます。
せっかく両思いなのかも知れないとわかったのに、すべてが台無しになってしまいます。
運良くそれがつかささんではなく、つかささんのご家族の方に見られてしまったとしても……。
大事な家族がその友達に、しかも同性の友達に、ストーカーまがいのことをされているだなんて知られたら……。
「ゆきちゃん……お腹痛いの? なんだかずっとそわそわして……」
「あっ……いえ、なんでもありません。お気になさらないでください」
「……?」
どうやらだいぶ挙動不審になってしまっていたようです。つかささんでも気付いてしまうくらい(つかささん、ごめんなさい)、
私は動揺を隠しきれていないのでしょうか? つかささんはお箸を止めて、なんだか不安そうな顔をしていました。
おそらく、つかささんはメモ帳をまだ見ていないはずです。だとすれば、まだこの家のどこかにメモ帳は……。
つかささんは朝食を急いで食べると、私を外出に誘いました。お休みですし、それは当たり前の事なのかもしれません。
しかし、私はこの家を離れるわけには行きませんでした。迷惑な話かもしれませんが、アレを見つけるまでは……。
「いえ、その……はい、あの、そうですね! あっ、でもつかささん、お勉強のほうは……」
「あっ! そっかぁ、そうだよね……」
つかささんは露骨に落ち込んだ顔をしました。ああ、ごめんなさいつかささん。私もできればつかささんと遊びたいんですよ?
こういうのをKYというのでしょうか、せっかくのお休みなんですから、ちょっとくらい一緒に遊んでもよかった筈です……。
「じゃあ、ゆきちゃんはおうちに帰ってお勉強しないといけないよね……」
「え、ええ……あ、いえ、そうですつかささん。よかったら一緒にお勉強しませんか?」
我ながら名案だと思いました。これなら、私は柊家にまだ居続けることができます。メモ帳を探す猶予が生まれます。
つかささんに断られたらどうしようかと思いましたが、「ありがと……ゆきちゃん、ありがとっ!」と素晴らしい笑顔で言われ、
私はあやうく昇天するところでした。愛らしいです、可愛すぎます。一緒に勉強できるのを、そこまで喜んでもらえるなんて。
もっとも私が、保身のために出した提案なのです。つかささん、ごめんなさい。でも私も一緒に勉強できて幸せです。
「じゃあ、私準備しちゃうね!」
「あ、私もお手伝いします」
「お勉強って苦手だけどね……ゆきちゃんと一緒ならきっと楽しいかも~」
「私もです。楽しすぎて、集中できないように気をつけないとですね」
私達はうふふあははと笑いあって……そのすごく和んでいる空気に対し、急に気恥ずかしくなりました。
今、二人揃ってちょっと恥ずかしい事を口にしていたような……いえ、単なる友達として、ですよね。でも両想いですし……。
万が一つかささんと私が結ばれることがあって……もしそうなったのなら、先程のような会話をいつものようにするのでしょうか。
お互いの何気ない言葉に笑い合って……それはあの昼食の時間のときとはまた違う空気があって、二人は頬を染めて……だばだば。
「私、数学でちょっとわからないところがあって……ゆきちゃん、よかったらちょっとだけ教えてもらえる?」
「ええ、わかる範囲でしたら……私も少し、英語のほうに不安がありまして……」
「う、それは助けてあげられないかも……」
ああ……つかささんつかささんつかさsんつつtかkkつかt……勉強があまりお得意でない所も可愛らしいです……。
私達はつかささんのお部屋に向かうと、テーブルと教科書、二人分のノートと筆記用具を用意しました。
「それでは、まずはつかささんが苦手なところを一緒に考えながら解いていきましょう」
「うん、よろしくお願いします、ゆきちゃん先生♪」
あ、だめです、血圧がアがってシんでしまいマス……。なんとか耐えきって、とりあえず勉強は始まりました。
そのほのぼのとした空気に少しばかりあやうく、メモ帳の存在を忘れるところでしたけれど……。
あれをもし、つかささんに見られていたらと思うと……つかささんが嫌悪の表情で私を見つめるシーンが容易に想像できます。
せっかく両思いなのかも知れないとわかったのに、すべてが台無しになってしまいます。
運良くそれがつかささんではなく、つかささんのご家族の方に見られてしまったとしても……。
大事な家族がその友達に、しかも同性の友達に、ストーカーまがいのことをされているだなんて知られたら……。
「ゆきちゃん……お腹痛いの? なんだかずっとそわそわして……」
「あっ……いえ、なんでもありません。お気になさらないでください」
「……?」
どうやらだいぶ挙動不審になってしまっていたようです。つかささんでも気付いてしまうくらい(つかささん、ごめんなさい)、
私は動揺を隠しきれていないのでしょうか? つかささんはお箸を止めて、なんだか不安そうな顔をしていました。
おそらく、つかささんはメモ帳をまだ見ていないはずです。だとすれば、まだこの家のどこかにメモ帳は……。
つかささんは朝食を急いで食べると、私を外出に誘いました。お休みですし、それは当たり前の事なのかもしれません。
しかし、私はこの家を離れるわけには行きませんでした。迷惑な話かもしれませんが、アレを見つけるまでは……。
「いえ、その……はい、あの、そうですね! あっ、でもつかささん、お勉強のほうは……」
「あっ! そっかぁ、そうだよね……」
つかささんは露骨に落ち込んだ顔をしました。ああ、ごめんなさいつかささん。私もできればつかささんと遊びたいんですよ?
こういうのをKYというのでしょうか、せっかくのお休みなんですから、ちょっとくらい一緒に遊んでもよかった筈です……。
「じゃあ、ゆきちゃんはおうちに帰ってお勉強しないといけないよね……」
「え、ええ……あ、いえ、そうですつかささん。よかったら一緒にお勉強しませんか?」
我ながら名案だと思いました。これなら、私は柊家にまだ居続けることができます。メモ帳を探す猶予が生まれます。
つかささんに断られたらどうしようかと思いましたが、「ありがと……ゆきちゃん、ありがとっ!」と素晴らしい笑顔で言われ、
私はあやうく昇天するところでした。愛らしいです、可愛すぎます。一緒に勉強できるのを、そこまで喜んでもらえるなんて。
もっとも私が、保身のために出した提案なのです。つかささん、ごめんなさい。でも私も一緒に勉強できて幸せです。
「じゃあ、私準備しちゃうね!」
「あ、私もお手伝いします」
「お勉強って苦手だけどね……ゆきちゃんと一緒ならきっと楽しいかも~」
「私もです。楽しすぎて、集中できないように気をつけないとですね」
私達はうふふあははと笑いあって……そのすごく和んでいる空気に対し、急に気恥ずかしくなりました。
今、二人揃ってちょっと恥ずかしい事を口にしていたような……いえ、単なる友達として、ですよね。でも両想いですし……。
万が一つかささんと私が結ばれることがあって……もしそうなったのなら、先程のような会話をいつものようにするのでしょうか。
お互いの何気ない言葉に笑い合って……それはあの昼食の時間のときとはまた違う空気があって、二人は頬を染めて……だばだば。
「私、数学でちょっとわからないところがあって……ゆきちゃん、よかったらちょっとだけ教えてもらえる?」
「ええ、わかる範囲でしたら……私も少し、英語のほうに不安がありまして……」
「う、それは助けてあげられないかも……」
ああ……つかささんつかささんつかさsんつつtかkkつかt……勉強があまりお得意でない所も可愛らしいです……。
私達はつかささんのお部屋に向かうと、テーブルと教科書、二人分のノートと筆記用具を用意しました。
「それでは、まずはつかささんが苦手なところを一緒に考えながら解いていきましょう」
「うん、よろしくお願いします、ゆきちゃん先生♪」
あ、だめです、血圧がアがってシんでしまいマス……。なんとか耐えきって、とりあえず勉強は始まりました。
そのほのぼのとした空気に少しばかりあやうく、メモ帳の存在を忘れるところでしたけれど……。
*
Tsukasa-side
お勉強をしている間、ゆきちゃんは何度かくらくらとしていたみたい。本当に大丈夫かな?
ゆきちゃんは驚くほど教えるのが上手で、私もなんとかだけどついていけて、教え方の節々にゆきちゃんの優しさを感じた。
なにより、ゆきちゃんの声を聞きながらだと、どうしてもそれを聞きたくなるから、一つも聞き飛ばすことがないし、
ゆきちゃんの声をさらに聞きたくて、私は必要以上に何度も質問して……ゆきちゃんの迷惑になっていたかも。
「……それでここのBrsmks=dndk^120にこの公式を代入したようなフリをして、ここがこうなるわけです」
「あ、そっかぁ。う~ん……うん! 覚えた! ……と思う」
「つかささんはわからないところを中途半端にせずにきちんと質問していただくので、教えるほうも助かります」
「そうなの?」
「ええ、わからない部分を残したまま次に移ると、どうしても躓いてしまいますし」
えへへ……だって、ゆきちゃんの声、もっといっぱい聞きたいし……。
「ごめんね。ゆきちゃんのお勉強、全然はかどってなくて……」
「いえ、いいんですよ。私も復習のつもりでいますし、教える側に立つのも十分勉強になりますしね」
ゆきちゃんってば、やっぱり優しいよ~……『それに……つかささん……近付け……密着……』とか呟いてたけど……。
「次からはひとりでできる……と思う……」
「なにかわからないことがあったら、何でも聞いてくださいね」
じゃあ……ゆきちゃんの気持ちが知りたいな。そんなことを考えて、私はひとりで勝手に顔を真っ赤にした。
勉強も大事だけど、私には昨日の事を聞くことと、自分の気持ちを告白するっていう大事な仕事が残ってる。
告白って、今まで想像したことなんてなかったけど、もしもするんだったらロマンチックなところかなって思ってた。
自分の部屋で勉強中に……なんてことになっちゃうかもしれないなんて、全然思ってなかった。
せっかくゆきちゃんが教えてくれたんだから、きちんと勉強に集中しないといけないのに、いざ告白の事を考えていると、
どうしても心臓がバクバクいって、教科書の文字を追うことが出来なかった。ゆきちゃんはゆきちゃんで、まだそわそわしてる。
「ゆきちゃん……」
「はい、何ですか?」
「……ううん、なんでもない」
やっぱり何度決意を固めてみても、土壇場で尻すぼみになっちゃう。こなちゃんのエールを何度も頭の中で再生してみる。
今日の朝の反応や一緒に勉強してくれることから考えても、ゆきちゃんは私の想いを聞いても、嫌ってはくれないはず。
……私の気持ちは昨日のうちにとっくにバレちゃってるんだけど……。
だから私は必要以上に怖がらずに、想いを打ち明けてもいいはず。ゆきちゃんは迷惑に思うかもしれないけど……。
それとも、もしかしたらゆきちゃんも、私のこと受け入れていいと思ってる? 私の勘違いとか、そうじゃなく?
(ねぇ、ゆきちゃん。そうなの?)
ゆきちゃんは聞こえるか聞こえないかの小さなため息をひとつ吐くと、ペンをノートに走らせていた。
座りっぱなしでお尻が痛い。何気なく座り方を帰ると、ポケットに何か感触がした。中に何か入ってるって、ようやく気付いた。
あ……そういえば昨日、ゆきちゃんのメモ帳拾ったんだっけ……たくさんの私が詰まった、ちょっと嬉しいメモ帳。
これ、ゆきちゃんに返さないとまずいよね。もしかしてさっきからそわそわしてたのも、これを探してたのかもしれないし。
「ね、これってゆきちゃんのだよね? 昨日拾っちゃって……遅れちゃったけど、返すね」
私はメモ帳をポケットから取り出すと、それを何気なくゆきちゃんの目の前に出した。
そのとき私は見ちゃったんだ……ゆきちゃんの顔が、一瞬で真っ青になっていくのを……。
ゆきちゃんは驚くほど教えるのが上手で、私もなんとかだけどついていけて、教え方の節々にゆきちゃんの優しさを感じた。
なにより、ゆきちゃんの声を聞きながらだと、どうしてもそれを聞きたくなるから、一つも聞き飛ばすことがないし、
ゆきちゃんの声をさらに聞きたくて、私は必要以上に何度も質問して……ゆきちゃんの迷惑になっていたかも。
「……それでここのBrsmks=dndk^120にこの公式を代入したようなフリをして、ここがこうなるわけです」
「あ、そっかぁ。う~ん……うん! 覚えた! ……と思う」
「つかささんはわからないところを中途半端にせずにきちんと質問していただくので、教えるほうも助かります」
「そうなの?」
「ええ、わからない部分を残したまま次に移ると、どうしても躓いてしまいますし」
えへへ……だって、ゆきちゃんの声、もっといっぱい聞きたいし……。
「ごめんね。ゆきちゃんのお勉強、全然はかどってなくて……」
「いえ、いいんですよ。私も復習のつもりでいますし、教える側に立つのも十分勉強になりますしね」
ゆきちゃんってば、やっぱり優しいよ~……『それに……つかささん……近付け……密着……』とか呟いてたけど……。
「次からはひとりでできる……と思う……」
「なにかわからないことがあったら、何でも聞いてくださいね」
じゃあ……ゆきちゃんの気持ちが知りたいな。そんなことを考えて、私はひとりで勝手に顔を真っ赤にした。
勉強も大事だけど、私には昨日の事を聞くことと、自分の気持ちを告白するっていう大事な仕事が残ってる。
告白って、今まで想像したことなんてなかったけど、もしもするんだったらロマンチックなところかなって思ってた。
自分の部屋で勉強中に……なんてことになっちゃうかもしれないなんて、全然思ってなかった。
せっかくゆきちゃんが教えてくれたんだから、きちんと勉強に集中しないといけないのに、いざ告白の事を考えていると、
どうしても心臓がバクバクいって、教科書の文字を追うことが出来なかった。ゆきちゃんはゆきちゃんで、まだそわそわしてる。
「ゆきちゃん……」
「はい、何ですか?」
「……ううん、なんでもない」
やっぱり何度決意を固めてみても、土壇場で尻すぼみになっちゃう。こなちゃんのエールを何度も頭の中で再生してみる。
今日の朝の反応や一緒に勉強してくれることから考えても、ゆきちゃんは私の想いを聞いても、嫌ってはくれないはず。
……私の気持ちは昨日のうちにとっくにバレちゃってるんだけど……。
だから私は必要以上に怖がらずに、想いを打ち明けてもいいはず。ゆきちゃんは迷惑に思うかもしれないけど……。
それとも、もしかしたらゆきちゃんも、私のこと受け入れていいと思ってる? 私の勘違いとか、そうじゃなく?
(ねぇ、ゆきちゃん。そうなの?)
ゆきちゃんは聞こえるか聞こえないかの小さなため息をひとつ吐くと、ペンをノートに走らせていた。
座りっぱなしでお尻が痛い。何気なく座り方を帰ると、ポケットに何か感触がした。中に何か入ってるって、ようやく気付いた。
あ……そういえば昨日、ゆきちゃんのメモ帳拾ったんだっけ……たくさんの私が詰まった、ちょっと嬉しいメモ帳。
これ、ゆきちゃんに返さないとまずいよね。もしかしてさっきからそわそわしてたのも、これを探してたのかもしれないし。
「ね、これってゆきちゃんのだよね? 昨日拾っちゃって……遅れちゃったけど、返すね」
私はメモ帳をポケットから取り出すと、それを何気なくゆきちゃんの目の前に出した。
そのとき私は見ちゃったんだ……ゆきちゃんの顔が、一瞬で真っ青になっていくのを……。
*
Miyuki-side
気がつけば私は……つかささんの手からメモ帳を強引に取り上げてました。
(どうして!? どうしてつかささんがこれを……!)
そのメモ帳を隠すように、私はつかささんに背を向けてかがみこみ……全身から嫌な汗が吹き出るのを感じました。
つかささんが差し出したそれには、たしかに書いてありました。私の文字で、『つかささん情報』と。
(よりによってつかささんが……一番見られたくない人なのに……)
私はつかささんの顔を直視する事が出来ず、背を向けたままメモ帳を強く握りました。唇はふるふると震え……。
「あ、ゆきちゃん、その……」
「つ、つかささん……」
「う、はい……」
「その……中は覗きましたか?」
しばらく沈黙が流れて、つかささんは大きく頭を下げ、大声で答えました。
「ごめんなさいっ! いけないことだとは思ってたんだけど、私の名前が書いてあったから、我慢ができなくて……!
すぐに返そうと思ってたんだけど、うっかり忘れちゃってて……ごめんね、軽蔑しちゃうよね、本当にごめんなさい!」
「ど、どこまで……」
「え?」
「どこまで見たんですか……」
「……たぶん、全部」
この家に来て、何度顔を赤くした事でしょう。しかし、今この瞬間が一番、私の顔が真っ赤になったのかもしれません。
見られてしまいました。よりによってつかささんに、一番知られたくない私の姿を、全て見られてしまいました。
(恥ずかしい……! つかささんに嫌われて……こんな私の本性を……つかささんはずっと知ってたなんて……!)
もう何も考えられなくなりました。つかささんはきっと、私のことを気持ち悪いと思っていることでしょう。
このメモ帳をつかささんがいつ読んだのかはわかりませんが、朝からずっと私の前で、平気そうなフリをして……。
こういうときはきちんと、たとえ許してもらう事はなくても、相手の目を見て謝らなければいけません。
しかし私は、目から溢れる物を堪える事ができずに、つかささんに背を向けたまま口にする事しか出来ませんでした。
「つかささん、ごめんなさい! つかささんに黙って、こんな恐ろしい、気持ちの悪いことをしていてごめんなさい!
私、つかささんのことが好きで……つかささんのことを少しでも多く知りたくて、それでこんな出過ぎた真似を……!
もう二度としませんから許してください! これは全部破いて捨てますから、嫌いになってもいいですから……!」
自分の知識欲を、生まれて初めて呪った瞬間でした。こんな風に生まれた自分を、殺してしまいたい気持ちになっています。
「ゆ、ゆきちゃん……」
つかささんはよろよろと近付くと、私の頭をそっと抱きかかえました。私の嗚咽に混じり、もうひとつのすすり泣く声……。
それでも私は顔を上げて、つかささんをきちんと見つめる事が出来ません。愛する人が、泣いているというのに……。
「お願い、ゆきちゃん、泣かないで……気持ち悪いだなんて思ってないよ、破ったりしなくてもいいから泣かないで……。
嫌いになったりしないから……ゆきちゃんの知られたくないこと、勝手に覗いちゃってごめんね。本当にごめんね」
「本当ですか? 嫌いになっちゃいませんか? 気持ち悪いって、思わないですか?」
「ホントだよ。だから泣かないで……私、あんなにたくさん私の事知られてるなんて思わなかったから驚いちゃったけど、
こんなに知ってくれて嬉しいって思っちゃった。あんなに私の事知りたいと思ってる人が、しかもゆきちゃんで……」
つかささんは優しすぎます。こんな私にも温かい言葉をかけてくれるだなんて。それだけで私は、赦しを得た気分になりました。
「そ、それにね……おあいこなんだよ? 私達」
「おあいこですか……?」
私はまだ顔を上げず、つかささんの胸に頭を預けたままでしたが、つかささんが小さく深呼吸したことはわかりました。
「ゆきちゃんも私の……は、恥ずかしいところ見ちゃったでしょ……?」
(どうして!? どうしてつかささんがこれを……!)
そのメモ帳を隠すように、私はつかささんに背を向けてかがみこみ……全身から嫌な汗が吹き出るのを感じました。
つかささんが差し出したそれには、たしかに書いてありました。私の文字で、『つかささん情報』と。
(よりによってつかささんが……一番見られたくない人なのに……)
私はつかささんの顔を直視する事が出来ず、背を向けたままメモ帳を強く握りました。唇はふるふると震え……。
「あ、ゆきちゃん、その……」
「つ、つかささん……」
「う、はい……」
「その……中は覗きましたか?」
しばらく沈黙が流れて、つかささんは大きく頭を下げ、大声で答えました。
「ごめんなさいっ! いけないことだとは思ってたんだけど、私の名前が書いてあったから、我慢ができなくて……!
すぐに返そうと思ってたんだけど、うっかり忘れちゃってて……ごめんね、軽蔑しちゃうよね、本当にごめんなさい!」
「ど、どこまで……」
「え?」
「どこまで見たんですか……」
「……たぶん、全部」
この家に来て、何度顔を赤くした事でしょう。しかし、今この瞬間が一番、私の顔が真っ赤になったのかもしれません。
見られてしまいました。よりによってつかささんに、一番知られたくない私の姿を、全て見られてしまいました。
(恥ずかしい……! つかささんに嫌われて……こんな私の本性を……つかささんはずっと知ってたなんて……!)
もう何も考えられなくなりました。つかささんはきっと、私のことを気持ち悪いと思っていることでしょう。
このメモ帳をつかささんがいつ読んだのかはわかりませんが、朝からずっと私の前で、平気そうなフリをして……。
こういうときはきちんと、たとえ許してもらう事はなくても、相手の目を見て謝らなければいけません。
しかし私は、目から溢れる物を堪える事ができずに、つかささんに背を向けたまま口にする事しか出来ませんでした。
「つかささん、ごめんなさい! つかささんに黙って、こんな恐ろしい、気持ちの悪いことをしていてごめんなさい!
私、つかささんのことが好きで……つかささんのことを少しでも多く知りたくて、それでこんな出過ぎた真似を……!
もう二度としませんから許してください! これは全部破いて捨てますから、嫌いになってもいいですから……!」
自分の知識欲を、生まれて初めて呪った瞬間でした。こんな風に生まれた自分を、殺してしまいたい気持ちになっています。
「ゆ、ゆきちゃん……」
つかささんはよろよろと近付くと、私の頭をそっと抱きかかえました。私の嗚咽に混じり、もうひとつのすすり泣く声……。
それでも私は顔を上げて、つかささんをきちんと見つめる事が出来ません。愛する人が、泣いているというのに……。
「お願い、ゆきちゃん、泣かないで……気持ち悪いだなんて思ってないよ、破ったりしなくてもいいから泣かないで……。
嫌いになったりしないから……ゆきちゃんの知られたくないこと、勝手に覗いちゃってごめんね。本当にごめんね」
「本当ですか? 嫌いになっちゃいませんか? 気持ち悪いって、思わないですか?」
「ホントだよ。だから泣かないで……私、あんなにたくさん私の事知られてるなんて思わなかったから驚いちゃったけど、
こんなに知ってくれて嬉しいって思っちゃった。あんなに私の事知りたいと思ってる人が、しかもゆきちゃんで……」
つかささんは優しすぎます。こんな私にも温かい言葉をかけてくれるだなんて。それだけで私は、赦しを得た気分になりました。
「そ、それにね……おあいこなんだよ? 私達」
「おあいこですか……?」
私はまだ顔を上げず、つかささんの胸に頭を預けたままでしたが、つかささんが小さく深呼吸したことはわかりました。
「ゆきちゃんも私の……は、恥ずかしいところ見ちゃったでしょ……?」
*
Tsukasa-side
顔から火が出るくらい恥ずかしかった。だってもう知られちゃってるとはいえ、一人でしてたことを告白するんだもん……。
でも、私の大好きなゆきちゃんが、あのゆきちゃんが、泣きながら私に謝ってる。ゆきちゃんは何も悪くないのに。
ゆきちゃんは私のせいでたくさん恥ずかしい思いをしたのに。だから私も、恥ずかしい思いをしなくちゃいけないんだ。
「ゆきちゃん……昨日、見てたんだよね? 私が、その……ひ、ひとりでしてたところ」
「え……?」
ゆきちゃんがようやく顔を上げてくれた。眼鏡の奥の聡明な瞳は、今だけは強く潤んでいて、儚げに見えた。
「私がゆきちゃんの名前を呼んで……その……」
「わ、私が起きてたのを知ってたんですか……?」
「う、ううん! している間は知らなかったんだけど……ゆきちゃんが髪を撫でてくれたときに気付いちゃって……」
「あ……!」
ゆきちゃんは顔を真っ赤にしている。きっと私も同じはずだった。俯いたままスカートをぎゅっと握って、話し続ける。
「ゆきちゃんは寝ていると思ってたみたいだけど、私起きてて……それに、私がゆきちゃんのことを、その」
「つ、つかささん……」
「す、す……」
恥ずかしさはピークに達していた。たぶん、一人でしていたことを改めて告白した事より、ずっと恥ずかしい事だった。
『好き』の一言は私にとってすごく重く、勢いにまかせて言えてしまうかもって思ったけど、やっぱり怖くて。
「ゆきちゃんのこと、す……」
「つかささんっ!」
私は急に、強く抱き締められた。でも、全く苦しさや圧迫感を感じない、優しさと包容力に満ちた腕の強さで。
背中に回された、ゆきちゃんの両手。私のささやかな胸に押しつけられた、豊満で柔らかい感触。
「ありがとうございます。でも、もう大丈夫です。無理はしないで……続きは、私に言わせてください」
「ゆ、ゆきちゃ……」
「好きです、つかささん。世界中の誰よりも好きなんです。お願いですから、つかささんの全てを教えてください」
緊張が一瞬で全て解けていったのを感じた。やっぱりゆきちゃんの言葉が、私に一番の安心を与えてくれるんだ。
『好き』の一言は重い言葉だけど、好きな人から言われれば、とても嬉しい言葉で。私は胸の中に溢れる物を感じていた。
「ありがとう、ゆきちゃん……でも私、もう無理はしてないよ。今ならはっきりと言えちゃうんだから。
私も好きだよ、ゆきちゃん。ずっと言えなくてごめんね。ゆきちゃんに辛い思いをさせちゃって、ごめんね」
ゆきちゃんはさらに腕の力を強めて……ちょっと苦しいかな? 胸おっきいし。でも、全然イヤじゃない。
「どうしてなんでしょうね、私達は互いに想い合っていたはずですのに、ずいぶんすれ違っていました」
「あはは、おかしいね」
私達は落ち着くと、二人で並んで座ってベッドに背中をあずけたまま、勉強も忘れて寄り添い合っていた。
「ね、ゆきちゃん。聞きたい事があるんだけど……」
「はい、なんでしょう?」
「あのメモ帳、私以外の人の分もあるの?」
「あ……いえ、つかささんの分だけです。私が全てを知りたかった相手は、その、つかささんだけで……」
「私も。ゆきちゃんに、私のこともっとたくさん知ってほしいな。……だからね?」
私はゆきちゃんの目を、上目遣いでじっと見詰めた。それを口に出すにはすごく恥ずかしかったけど。
「ゆきちゃんのしたいように……私のことをたくさん調べてほしいな……?」
でも、私の大好きなゆきちゃんが、あのゆきちゃんが、泣きながら私に謝ってる。ゆきちゃんは何も悪くないのに。
ゆきちゃんは私のせいでたくさん恥ずかしい思いをしたのに。だから私も、恥ずかしい思いをしなくちゃいけないんだ。
「ゆきちゃん……昨日、見てたんだよね? 私が、その……ひ、ひとりでしてたところ」
「え……?」
ゆきちゃんがようやく顔を上げてくれた。眼鏡の奥の聡明な瞳は、今だけは強く潤んでいて、儚げに見えた。
「私がゆきちゃんの名前を呼んで……その……」
「わ、私が起きてたのを知ってたんですか……?」
「う、ううん! している間は知らなかったんだけど……ゆきちゃんが髪を撫でてくれたときに気付いちゃって……」
「あ……!」
ゆきちゃんは顔を真っ赤にしている。きっと私も同じはずだった。俯いたままスカートをぎゅっと握って、話し続ける。
「ゆきちゃんは寝ていると思ってたみたいだけど、私起きてて……それに、私がゆきちゃんのことを、その」
「つ、つかささん……」
「す、す……」
恥ずかしさはピークに達していた。たぶん、一人でしていたことを改めて告白した事より、ずっと恥ずかしい事だった。
『好き』の一言は私にとってすごく重く、勢いにまかせて言えてしまうかもって思ったけど、やっぱり怖くて。
「ゆきちゃんのこと、す……」
「つかささんっ!」
私は急に、強く抱き締められた。でも、全く苦しさや圧迫感を感じない、優しさと包容力に満ちた腕の強さで。
背中に回された、ゆきちゃんの両手。私のささやかな胸に押しつけられた、豊満で柔らかい感触。
「ありがとうございます。でも、もう大丈夫です。無理はしないで……続きは、私に言わせてください」
「ゆ、ゆきちゃ……」
「好きです、つかささん。世界中の誰よりも好きなんです。お願いですから、つかささんの全てを教えてください」
緊張が一瞬で全て解けていったのを感じた。やっぱりゆきちゃんの言葉が、私に一番の安心を与えてくれるんだ。
『好き』の一言は重い言葉だけど、好きな人から言われれば、とても嬉しい言葉で。私は胸の中に溢れる物を感じていた。
「ありがとう、ゆきちゃん……でも私、もう無理はしてないよ。今ならはっきりと言えちゃうんだから。
私も好きだよ、ゆきちゃん。ずっと言えなくてごめんね。ゆきちゃんに辛い思いをさせちゃって、ごめんね」
ゆきちゃんはさらに腕の力を強めて……ちょっと苦しいかな? 胸おっきいし。でも、全然イヤじゃない。
「どうしてなんでしょうね、私達は互いに想い合っていたはずですのに、ずいぶんすれ違っていました」
「あはは、おかしいね」
私達は落ち着くと、二人で並んで座ってベッドに背中をあずけたまま、勉強も忘れて寄り添い合っていた。
「ね、ゆきちゃん。聞きたい事があるんだけど……」
「はい、なんでしょう?」
「あのメモ帳、私以外の人の分もあるの?」
「あ……いえ、つかささんの分だけです。私が全てを知りたかった相手は、その、つかささんだけで……」
「私も。ゆきちゃんに、私のこともっとたくさん知ってほしいな。……だからね?」
私はゆきちゃんの目を、上目遣いでじっと見詰めた。それを口に出すにはすごく恥ずかしかったけど。
「ゆきちゃんのしたいように……私のことをたくさん調べてほしいな……?」
*
コメントフォーム
- 良いです、ものすごく良い作品です!
2人の気持ちが、お互いを強く想う
気持ちが伝わってきます!!! -- チャムチロ (2012-09-17 22:05:59)