- 27.思い込もう!
「ではかがみ、『もう一度』尋ねましょう」
天使の声が耳に届く。
その言葉は、全ての始まりだった。
『私』という始まり。
この朧な世界の、始まり。
その言葉と一緒に……開いた。
0の世界の、扉が。
天使の声が耳に届く。
その言葉は、全ての始まりだった。
『私』という始まり。
この朧な世界の、始まり。
その言葉と一緒に……開いた。
0の世界の、扉が。
「あっ」
聞き覚えのある可愛らしい声が、耳に届いた。
それに反応して、部屋に居た別の女性が顔をあげる。
「……どうか、した?」
「あっ、えと。そのっ」
その女性に聞かれ、目の前に居た少女が慌てる。
「いいわよ、ゆたかちゃん。どうせ見えないんだから」
その言葉に応じて、ゆたかちゃんが首を縦に振る。
そしてもう一人の女性に、慌てて言い訳しだす。
「な、何でもないよっ。みなみちゃん」
「……そう」
ゆたかちゃんの言葉に、視線を戻す。
ここはみなみちゃんの家。
だけど彼女に、私が見えることはない。
今はそんな存在なんだから、仕方がない。
「……あいつは?」
「?」
と、一度疑問符を顔に浮かべるゆたかちゃん。
でもすぐに該当する人物を思い出す。
まぁ、他に居ないしね。
「上?」
声を出せばまたややこしい事になると思ったのか、笑顔で天井を指差す。
上……ああ、屋根の上か。
そういや一緒にそこで一晩過ごした覚えもあったっけ。
今では良い? 思い出ね。
「ありがと、また顔出すから」
その言葉に笑顔で返礼するゆたかちゃん。
その彼女を背に、天井を抜けて上に向かう。
そして空が見えたのと同時だった。
透き通るような……『彼女』の声が耳に届いたのは。
「待っていましたよ、かがみ」
「……」
彼女の笑顔が輝く。
小鳥と戯れているその姿は、天使と言っても相違ない。
「もう一度会えた事を……嬉しく思います」
「……うん、ありがと」
私も、と付け加えようとして口を閉じる。
恥ずかしくて、言えなかっただけ。
「ゆたかちゃんは……上手くやってる?」
「……はい、昨日で3000を超えましたよ」
「そう、良かった」
少しずつでいいんだ。
焦る必要なんてない。
……だって誰も、ゆたかちゃんを殺してなかったんだから。
だから安心して、生き返ればいい。
そうすれば彼女には、平穏な日々が戻ってくる。
そう……『彼女には』。
「かがみは、大丈夫ですか?」
「……」
その言葉が優しさに溢れていて、心が温まる。
やっぱり、凄いんだな。と心で笑う。
彼女の笑顔は、全てを包む笑顔。
その前では、天使なんて言葉も失礼なのかもしれない。
「ここに居るという事は……会ったんですね、『彼女』に」
「……ええ、今さっきね」
天使の言う『彼女』。
それが誰かなんて……決まってる。
だってこいつは、全部を知ってるんだから。
「『みゆき』は今は、こなたと一緒……全部警察に伝えるって」
その全部を警察が信じるとは限らない。
残るのは、みゆきが現場に居たという事実だけかもしれない。
それでもみゆきも決めたんだ。
いつか、こなたが決めたように……前に進むことを。
あの二人なら大丈夫よ。
きっと……仲良くやっていける。
確かに対照的だけど……親友なんて、そんなものよ。
「みゆきから聞いたわ、全部……何が起きたのか」
「……そうですか」
少し、天使の表情が憂う。
彼女は頑なに、私から真実を遠ざけてきた。
でも、その理由は……私のためだった。
真実は私には、残酷すぎたから。
その重さに、命を投げようとしてしまうから。
それでももう……全てを知ってしまった。
だから、立ち向かうしかない。
「私はみゆきの事は信じてる……だから、全部本当だと思ってる」
「……」
ゆたかちゃんは誰にも殺されなかった。
ただの事故。
偶然の産んだ……悲劇。
「でも、『ありえない』」
この単語を、私が使う日が来るなんて思いもしなかった。
つかさの言葉。
みゆきの言葉。
それを、繰り返す。
「私が自分から死を選んだなんて、ありえない……あんた、言ったわよね?」
いつかの言葉を繰り返す。
つかさの、最後の瞬間。
天使が繰り返した言葉を。
「自ら死を選ぶ事は、罪……だからつかさには、生き返るチャンスは与えられなかった」
ゆたかちゃんとつかさ。
その二人の存在が……一つの矛盾を生み出す。
……私、だ。
みゆきは見た。
私が自ら、身を投げる瞬間を。
それはつまり……つかさと、同じだ。
「そうです、それは大罪……生命の輪廻を崩す、愚行」
ようやく天使が、口を開いた。
悲しそうな……辛い表情だった。
「生命には、無限の樹形図がある……幾億の可能性がある。それを彼女は自らの傲慢で、引き裂いた」
それが、自ら死を選ぶという事。
自分にある可能性の全てを、無に還す愚行。
だから、おかしい。
それが……全てを狂わせる。
「じゃあ私は、どうなるの?」
「……」
みゆきは確かに見たと言った。
私の体が、勝手に横断歩道に身を投げたのを。
目の前で……一番、近くで。
でもそれが、自殺であるはずがない。
それを『私の存在が証明している』。
みゆきは言った。
私はみゆきより先に横断歩道についた、と。
その止まってる状態から、どうやれば横断歩道に身を投げると思う?
簡単だ……誰かが、突き飛ばせばいい。
見えない、誰か。
……そんな存在が居る?
居るはずがないと、思う?
いいや、『居る』。
それは……一番身近に、居るんだ。
「そういう事なんでしょ? だから、『私がここに居る』」
それが、真実。
私の……最後の答え。
「……かがみ」
そこでようやく天使が口を開いた。
交じり合う視線に、鼓動が揺れる。
「貴方はやはり凄い……何度絶望の淵に落ちても、誰かを信じて……その頭を上げる」
その表情の奥の悲しみが、私には見えた気がした。
「……いいでしょう、かがみ。これから私は真実だけを語る事を誓います」
「教えて、くれるの?」
「ええ、ですが……どうか最後まで、心折れぬように」
心臓が暴れだす。
天使の一言一言がゆっくりと、私に溶けていく。
ううん、でも逃げちゃ駄目。
私は知るんだ……本当の事を。
「そうですね……少しずつ、振り返りましょう。まずは、ゆたかの事件から」
「ゆたかちゃんは、本当に事故……よね?」
少し緊張したのは確かだ。
もしそれが嘘なら……私はまた、誰かを疑わなければいけない。
「ええ、『小早川ゆたかの事故に彼女の意思は関係なかった』」
少し胸の奥の靄が晴れた。
彼女の言葉が、ゆっくりと私の中の氷を溶かしていく。
「悲しい偶然……その一つが、全てを狂わせた」
その一つがなければ、全ては上手く行ったのかもしれない。
突き飛ばされたのが見間違いだったのが分かれば、そのまま事故となったはずだ。
だってゆたかちゃんは信じた。
私が自ら、身を投げたという事実を。
それが……真実になるはずだった。
「それは本当は、『ありえない事』でした……本来なら起こり得るはずのない事」
「……詳しく、聞かせて」
ありえない……か。
でもそれがありえてる矛盾。
それはどこか、私の事件にも通じる所がある。
「稀に……極めて稀に『それ』は起こります」
「稀に?」
「消えるはずのない命、零れるはずのない生命……それを掬い上げるのが、私の仕事です」
ゆたかちゃんのそれは、私のそれにも該当するはずだ。
私だって、掬い上げられた。
彼女が……掬い上げてくれた。
「その意味が、分かりますか?」
「……ええ、少しね」
用は、こういう事でしょ?
あの日あの場所にゆたかちゃんが『居るはずがなかった』。
つまり……そういう事。
「ゆたかちゃんが事故にあったのは、私の所為……そう言いたいんでしょ?」
「……そうです」
本当は自分の家で、もう寝ている頃合だ。
それなのにそんな公園に深夜に居たのはどうして?
それは……私の所為だ。
「貴方の事件があったから、ゆたかはあそこに居た……だから本来はありえないはずだった」
「じゃあつまり」
バラバラだったピースがはまっていく。
完成したはずのパズル。
でもそこには、全てのピースは存在しなかった。
だから、完成するはずがない。
「私の事件も……ありえなかった」
「……」
返答がない。
これが、答えだったんだ。
みゆきの見たもの。
つかさの見たもの。
ゆたかちゃんの見たもの。
もう、ここまでくればそれしかない。
天使の言葉も、それを否定しない。
「そういう事なんでしょ? 私を殺そうとしたのは……」
みゆきは見た。
私が横断歩道に飛び込むのを。
それはまるで、見えない何かに突き飛ばされたかのようだったって。
全ての犯人。
私を殺そうとした誰か。
それはつまり……。
「私と同じ、『ありえない』存在」
あの時現場には、私が居た。
つかさが居た、みゆきが居た。
だけどきっと居たんだ……『もう一人』。
それは、誰にも見えない。
誰も存在に気がつかない。
だから、『ありえない』。
「教えて……そいつは、誰なの?」
天使を見る。
睨むような目つきで。
とうとうここまで来たんだ。
全ての答えが、今ここに……ある。
「かがみ」
天使の言葉に、心臓が暴れだす。
「言いましたね? 私は真実しか言わないと」
「ええ、聞いたわ」
「そして言いましたね? ……心、折れぬようにと」
「……覚悟、してるわ」
大丈夫。
受け入れて見せる。
その答えの全てを……絶対。
「もう一度聞くわ」
口調をきつくし、自分を奮い立たせる。
これが、答え。
私の……真実。
「私を殺したのは、誰?」
天使の唇の動きが、嫌にゆっくりだった。
スローモーションのその世界の中で。
ゆっくりと天使の言葉が……耳に届いた。
聞き覚えのある可愛らしい声が、耳に届いた。
それに反応して、部屋に居た別の女性が顔をあげる。
「……どうか、した?」
「あっ、えと。そのっ」
その女性に聞かれ、目の前に居た少女が慌てる。
「いいわよ、ゆたかちゃん。どうせ見えないんだから」
その言葉に応じて、ゆたかちゃんが首を縦に振る。
そしてもう一人の女性に、慌てて言い訳しだす。
「な、何でもないよっ。みなみちゃん」
「……そう」
ゆたかちゃんの言葉に、視線を戻す。
ここはみなみちゃんの家。
だけど彼女に、私が見えることはない。
今はそんな存在なんだから、仕方がない。
「……あいつは?」
「?」
と、一度疑問符を顔に浮かべるゆたかちゃん。
でもすぐに該当する人物を思い出す。
まぁ、他に居ないしね。
「上?」
声を出せばまたややこしい事になると思ったのか、笑顔で天井を指差す。
上……ああ、屋根の上か。
そういや一緒にそこで一晩過ごした覚えもあったっけ。
今では良い? 思い出ね。
「ありがと、また顔出すから」
その言葉に笑顔で返礼するゆたかちゃん。
その彼女を背に、天井を抜けて上に向かう。
そして空が見えたのと同時だった。
透き通るような……『彼女』の声が耳に届いたのは。
「待っていましたよ、かがみ」
「……」
彼女の笑顔が輝く。
小鳥と戯れているその姿は、天使と言っても相違ない。
「もう一度会えた事を……嬉しく思います」
「……うん、ありがと」
私も、と付け加えようとして口を閉じる。
恥ずかしくて、言えなかっただけ。
「ゆたかちゃんは……上手くやってる?」
「……はい、昨日で3000を超えましたよ」
「そう、良かった」
少しずつでいいんだ。
焦る必要なんてない。
……だって誰も、ゆたかちゃんを殺してなかったんだから。
だから安心して、生き返ればいい。
そうすれば彼女には、平穏な日々が戻ってくる。
そう……『彼女には』。
「かがみは、大丈夫ですか?」
「……」
その言葉が優しさに溢れていて、心が温まる。
やっぱり、凄いんだな。と心で笑う。
彼女の笑顔は、全てを包む笑顔。
その前では、天使なんて言葉も失礼なのかもしれない。
「ここに居るという事は……会ったんですね、『彼女』に」
「……ええ、今さっきね」
天使の言う『彼女』。
それが誰かなんて……決まってる。
だってこいつは、全部を知ってるんだから。
「『みゆき』は今は、こなたと一緒……全部警察に伝えるって」
その全部を警察が信じるとは限らない。
残るのは、みゆきが現場に居たという事実だけかもしれない。
それでもみゆきも決めたんだ。
いつか、こなたが決めたように……前に進むことを。
あの二人なら大丈夫よ。
きっと……仲良くやっていける。
確かに対照的だけど……親友なんて、そんなものよ。
「みゆきから聞いたわ、全部……何が起きたのか」
「……そうですか」
少し、天使の表情が憂う。
彼女は頑なに、私から真実を遠ざけてきた。
でも、その理由は……私のためだった。
真実は私には、残酷すぎたから。
その重さに、命を投げようとしてしまうから。
それでももう……全てを知ってしまった。
だから、立ち向かうしかない。
「私はみゆきの事は信じてる……だから、全部本当だと思ってる」
「……」
ゆたかちゃんは誰にも殺されなかった。
ただの事故。
偶然の産んだ……悲劇。
「でも、『ありえない』」
この単語を、私が使う日が来るなんて思いもしなかった。
つかさの言葉。
みゆきの言葉。
それを、繰り返す。
「私が自分から死を選んだなんて、ありえない……あんた、言ったわよね?」
いつかの言葉を繰り返す。
つかさの、最後の瞬間。
天使が繰り返した言葉を。
「自ら死を選ぶ事は、罪……だからつかさには、生き返るチャンスは与えられなかった」
ゆたかちゃんとつかさ。
その二人の存在が……一つの矛盾を生み出す。
……私、だ。
みゆきは見た。
私が自ら、身を投げる瞬間を。
それはつまり……つかさと、同じだ。
「そうです、それは大罪……生命の輪廻を崩す、愚行」
ようやく天使が、口を開いた。
悲しそうな……辛い表情だった。
「生命には、無限の樹形図がある……幾億の可能性がある。それを彼女は自らの傲慢で、引き裂いた」
それが、自ら死を選ぶという事。
自分にある可能性の全てを、無に還す愚行。
だから、おかしい。
それが……全てを狂わせる。
「じゃあ私は、どうなるの?」
「……」
みゆきは確かに見たと言った。
私の体が、勝手に横断歩道に身を投げたのを。
目の前で……一番、近くで。
でもそれが、自殺であるはずがない。
それを『私の存在が証明している』。
みゆきは言った。
私はみゆきより先に横断歩道についた、と。
その止まってる状態から、どうやれば横断歩道に身を投げると思う?
簡単だ……誰かが、突き飛ばせばいい。
見えない、誰か。
……そんな存在が居る?
居るはずがないと、思う?
いいや、『居る』。
それは……一番身近に、居るんだ。
「そういう事なんでしょ? だから、『私がここに居る』」
それが、真実。
私の……最後の答え。
「……かがみ」
そこでようやく天使が口を開いた。
交じり合う視線に、鼓動が揺れる。
「貴方はやはり凄い……何度絶望の淵に落ちても、誰かを信じて……その頭を上げる」
その表情の奥の悲しみが、私には見えた気がした。
「……いいでしょう、かがみ。これから私は真実だけを語る事を誓います」
「教えて、くれるの?」
「ええ、ですが……どうか最後まで、心折れぬように」
心臓が暴れだす。
天使の一言一言がゆっくりと、私に溶けていく。
ううん、でも逃げちゃ駄目。
私は知るんだ……本当の事を。
「そうですね……少しずつ、振り返りましょう。まずは、ゆたかの事件から」
「ゆたかちゃんは、本当に事故……よね?」
少し緊張したのは確かだ。
もしそれが嘘なら……私はまた、誰かを疑わなければいけない。
「ええ、『小早川ゆたかの事故に彼女の意思は関係なかった』」
少し胸の奥の靄が晴れた。
彼女の言葉が、ゆっくりと私の中の氷を溶かしていく。
「悲しい偶然……その一つが、全てを狂わせた」
その一つがなければ、全ては上手く行ったのかもしれない。
突き飛ばされたのが見間違いだったのが分かれば、そのまま事故となったはずだ。
だってゆたかちゃんは信じた。
私が自ら、身を投げたという事実を。
それが……真実になるはずだった。
「それは本当は、『ありえない事』でした……本来なら起こり得るはずのない事」
「……詳しく、聞かせて」
ありえない……か。
でもそれがありえてる矛盾。
それはどこか、私の事件にも通じる所がある。
「稀に……極めて稀に『それ』は起こります」
「稀に?」
「消えるはずのない命、零れるはずのない生命……それを掬い上げるのが、私の仕事です」
ゆたかちゃんのそれは、私のそれにも該当するはずだ。
私だって、掬い上げられた。
彼女が……掬い上げてくれた。
「その意味が、分かりますか?」
「……ええ、少しね」
用は、こういう事でしょ?
あの日あの場所にゆたかちゃんが『居るはずがなかった』。
つまり……そういう事。
「ゆたかちゃんが事故にあったのは、私の所為……そう言いたいんでしょ?」
「……そうです」
本当は自分の家で、もう寝ている頃合だ。
それなのにそんな公園に深夜に居たのはどうして?
それは……私の所為だ。
「貴方の事件があったから、ゆたかはあそこに居た……だから本来はありえないはずだった」
「じゃあつまり」
バラバラだったピースがはまっていく。
完成したはずのパズル。
でもそこには、全てのピースは存在しなかった。
だから、完成するはずがない。
「私の事件も……ありえなかった」
「……」
返答がない。
これが、答えだったんだ。
みゆきの見たもの。
つかさの見たもの。
ゆたかちゃんの見たもの。
もう、ここまでくればそれしかない。
天使の言葉も、それを否定しない。
「そういう事なんでしょ? 私を殺そうとしたのは……」
みゆきは見た。
私が横断歩道に飛び込むのを。
それはまるで、見えない何かに突き飛ばされたかのようだったって。
全ての犯人。
私を殺そうとした誰か。
それはつまり……。
「私と同じ、『ありえない』存在」
あの時現場には、私が居た。
つかさが居た、みゆきが居た。
だけどきっと居たんだ……『もう一人』。
それは、誰にも見えない。
誰も存在に気がつかない。
だから、『ありえない』。
「教えて……そいつは、誰なの?」
天使を見る。
睨むような目つきで。
とうとうここまで来たんだ。
全ての答えが、今ここに……ある。
「かがみ」
天使の言葉に、心臓が暴れだす。
「言いましたね? 私は真実しか言わないと」
「ええ、聞いたわ」
「そして言いましたね? ……心、折れぬようにと」
「……覚悟、してるわ」
大丈夫。
受け入れて見せる。
その答えの全てを……絶対。
「もう一度聞くわ」
口調をきつくし、自分を奮い立たせる。
これが、答え。
私の……真実。
「私を殺したのは、誰?」
天使の唇の動きが、嫌にゆっくりだった。
スローモーションのその世界の中で。
ゆっくりと天使の言葉が……耳に届いた。
「『そんな人は、存在しません』」
その言葉はまるで、閃光だった。
雷のように私の体を駆け回っては、私の鼓動を暴れさせる。
「『柊かがみは自らの意思で死を選んだ』、これが……全ての真実です」
「なっ……」
脳が揺れる。
言葉が口から外に出て行かない。
そんな馬鹿な、と心が笑う。
でも天使の表情は……その全てを打ち砕く。
「そ、そんなはずない!」
ようやく口から出た声が、辺りに響く。
それじゃあ、だって……見たまま。
みゆきの言葉が、そのまま。
「だって、あんた言ったじゃない……自ら死を選んだ人間に、生き返るチャンスは与えられないって!」
「……」
そうだ。
私は今ここで存在してる。
それこそが、天使の言葉と矛盾してる。
そう、『私はここに居る』!
だから、『私が自殺のはずがない』!!!
「かがみ……一つ、質問をしましょう」
「なっ……」
はぐらかさないで、と怒鳴ろうとした声が止まる。
天使の視線が私を貫き……制止したから。
「私は言いましたね? 人は、生を定義出来る存在だと」
「……え、ええ」
病院で天使が教えてくれた。
生きる事の……意味。
不意にその言葉が蘇る。
「そしてこうも言いました……人は、死を定義出来る存在だと」
他の動物は、そんな面倒なことはしない。
人だけが生きることに意味を求め……死ぬことすらも、意味を持たせる。
「ですがもう一つ……人が定義するものがあります」
「な、何……なの?」
声が震えて、裏返った。
何だろう……肌がピリピリと痛む。
胃液が逆流して、心臓が暴れだす。
「かがみ、貴方は……」
雷のように私の体を駆け回っては、私の鼓動を暴れさせる。
「『柊かがみは自らの意思で死を選んだ』、これが……全ての真実です」
「なっ……」
脳が揺れる。
言葉が口から外に出て行かない。
そんな馬鹿な、と心が笑う。
でも天使の表情は……その全てを打ち砕く。
「そ、そんなはずない!」
ようやく口から出た声が、辺りに響く。
それじゃあ、だって……見たまま。
みゆきの言葉が、そのまま。
「だって、あんた言ったじゃない……自ら死を選んだ人間に、生き返るチャンスは与えられないって!」
「……」
そうだ。
私は今ここで存在してる。
それこそが、天使の言葉と矛盾してる。
そう、『私はここに居る』!
だから、『私が自殺のはずがない』!!!
「かがみ……一つ、質問をしましょう」
「なっ……」
はぐらかさないで、と怒鳴ろうとした声が止まる。
天使の視線が私を貫き……制止したから。
「私は言いましたね? 人は、生を定義出来る存在だと」
「……え、ええ」
病院で天使が教えてくれた。
生きる事の……意味。
不意にその言葉が蘇る。
「そしてこうも言いました……人は、死を定義出来る存在だと」
他の動物は、そんな面倒なことはしない。
人だけが生きることに意味を求め……死ぬことすらも、意味を持たせる。
「ですがもう一つ……人が定義するものがあります」
「な、何……なの?」
声が震えて、裏返った。
何だろう……肌がピリピリと痛む。
胃液が逆流して、心臓が暴れだす。
「かがみ、貴方は……」
世界が、反転した。
その天使の『質問』の意味が、分からなかったからじゃない。
理解出来なかったからでもない。
その答えの意味が……私を打ち砕いたから。
「えっ……あっ」
「誰かが言いましたか?」
天使が言葉を続ける。
何……言ってるの?
そんなはず、ないよ。
だって、私は……。
「貴方を『見て』、誰かが貴方を『そうだ』と言いましたか?」
そんな事、無理に決まってる。
不可能に決まってる。
そう、それこそ……『ありえない』。
「貴方は言いましたね? 事故の日の記憶は、曖昧だと」
「そ、う……だけど」
自分でも理由なんか分からなかった。
だけどその日の記憶は、何時も擬音から始まる。
不協和音の羅列……その最初に、私は確かに聞いた。
私を突き飛ばす音を。
「ゆたかは、覚えていますよ」
「えっ……」
「ゆたかは覚えています。その日、何をして……どんな最後を迎えたのかも」
もう一度、心臓が跳ねた。
先程の天使の質問が、鎖となって私を縛り上げる。
「そ、それが……何だって言うのよ」
「貴方は、覚えていない……そうですね?」
「そうよ、それが何!?」
確かにその日の記憶は、ほとんどないに等しい。
それが何なの?
私がただ、忘れてるだけじゃないの!?
そんな違いに、意味なんかあるはずがない!
「では、その……『前の日』はどうですか?」
前?
その一日前?
そ、そんなの簡単よ。
朝起きて、学校に行って……それで。
……それで?
「貴方はその日が、『その日だけが曖昧だと思い込んでいる』。本当に……そうですか?」
思い込んでる?
そ、そんなはずない!
だって、確かに曖昧じゃない!
朝何をやってたのかすら、つかさたちと何を話してたのかすら覚えてない。
そう、みゆきが居た事すら覚えてなかったのに!!!
「それは思い出せないからじゃありません」
「なっ……にを」
吐気がする。
眩暈がする。
天使の一言一言が、私の心に釘を刺していく。
呪いの五寸釘は少しずつ少しずつ……私の心を蝕む。
「そんなもの……存在しないからです」
「嘘っ!!」
思わず叫んだ。
何よ、それ。
何よソレ。
何なのよ……それ!
そんなはずない、そんなはずない、そんなはずない、そんなはずない!
「人は生を定義します、死を定義します。そしてもう一つ……」
天使の言葉の全てが、一つの事実を指す。
その事実。
「『自分』を、定義する」
それを、信じろって?
そんな妄言……信じろって?
「ではかがみ、『もう一度』尋ねましょう」
天使の声が耳に届く。
その言葉は、全ての始まりだった。
『私』という始まり。
この朧な世界の、始まり。
その言葉と一緒に……開いた。
0の世界の、扉が。
その天使の『質問』の意味が、分からなかったからじゃない。
理解出来なかったからでもない。
その答えの意味が……私を打ち砕いたから。
「えっ……あっ」
「誰かが言いましたか?」
天使が言葉を続ける。
何……言ってるの?
そんなはず、ないよ。
だって、私は……。
「貴方を『見て』、誰かが貴方を『そうだ』と言いましたか?」
そんな事、無理に決まってる。
不可能に決まってる。
そう、それこそ……『ありえない』。
「貴方は言いましたね? 事故の日の記憶は、曖昧だと」
「そ、う……だけど」
自分でも理由なんか分からなかった。
だけどその日の記憶は、何時も擬音から始まる。
不協和音の羅列……その最初に、私は確かに聞いた。
私を突き飛ばす音を。
「ゆたかは、覚えていますよ」
「えっ……」
「ゆたかは覚えています。その日、何をして……どんな最後を迎えたのかも」
もう一度、心臓が跳ねた。
先程の天使の質問が、鎖となって私を縛り上げる。
「そ、それが……何だって言うのよ」
「貴方は、覚えていない……そうですね?」
「そうよ、それが何!?」
確かにその日の記憶は、ほとんどないに等しい。
それが何なの?
私がただ、忘れてるだけじゃないの!?
そんな違いに、意味なんかあるはずがない!
「では、その……『前の日』はどうですか?」
前?
その一日前?
そ、そんなの簡単よ。
朝起きて、学校に行って……それで。
……それで?
「貴方はその日が、『その日だけが曖昧だと思い込んでいる』。本当に……そうですか?」
思い込んでる?
そ、そんなはずない!
だって、確かに曖昧じゃない!
朝何をやってたのかすら、つかさたちと何を話してたのかすら覚えてない。
そう、みゆきが居た事すら覚えてなかったのに!!!
「それは思い出せないからじゃありません」
「なっ……にを」
吐気がする。
眩暈がする。
天使の一言一言が、私の心に釘を刺していく。
呪いの五寸釘は少しずつ少しずつ……私の心を蝕む。
「そんなもの……存在しないからです」
「嘘っ!!」
思わず叫んだ。
何よ、それ。
何よソレ。
何なのよ……それ!
そんなはずない、そんなはずない、そんなはずない、そんなはずない!
「人は生を定義します、死を定義します。そしてもう一つ……」
天使の言葉の全てが、一つの事実を指す。
その事実。
「『自分』を、定義する」
それを、信じろって?
そんな妄言……信じろって?
「ではかがみ、『もう一度』尋ねましょう」
天使の声が耳に届く。
その言葉は、全ての始まりだった。
『私』という始まり。
この朧な世界の、始まり。
その言葉と一緒に……開いた。
0の世界の、扉が。
「貴方は、自分の名前が言えますか?」
ヒイラギカガミハミズカラノイシデシヲエランダ
ミズカラシヲエランダモノニ、チャンスハアタエラレナイ
ジャア、
ジャアワタシハ……
ミズカラシヲエランダモノニ、チャンスハアタエラレナイ
ジャア、
ジャアワタシハ……
「誰かが貴方を見て、言いましたか? 貴方が、『柊かがみ』だと」
天使が言葉を繰り返していく。
そんなの……無理。
無理に、決まってる。
だって私は、朧。
誰の眼にも見えない……哀れな存在。
私を唯一知覚するのは二人。
でもこなたも、ゆたかちゃんも……そのどちらも、本当の私を知らない。
「そ、んなわけ……ない。私は……」
言葉が続かない。
真実という言葉が私の首を締めていく。
「貴方はあの日、自分を『柊かがみ』だと定義した……だから貴方は自分を『柊かがみ』だと思い込んでいた」
「嘘……そんなの嘘!」
私が私じゃない?
そんなの、認めない……ううん、認められない!
「私は覚えてるわ! 皆のこと……つかさやみゆきの事だって覚えてる!」
お母さんにお父さん。
まつり姉さんにいのり姉さん。
日下部に峰岸に、他のクラスの皆だって!
それが……それが全部、嘘なはずがない!!
「それは、貴方の記憶ではない……それもまた、貴方が『自分のものだと思い込んでいる』だけ」
「なっ……」
天使の言葉が、私の淡い願いを砕いていく。
「それは本当の『柊かがみ』……彼女のもの」
「だから、そんなの……っ」
「仮初の記憶は、曖昧でしかありません……だから貴方には思い出せない」
「そ……んな……っ」
体が崩れる。
私が覚えているもの。
それは、事故の日の……数分だけ。
それ以外は?
その前は、何をしていたの?
朝は、何を食べたの?
何の授業を受けたの?
それは……その、一日だけだと『思い込んでいた』。
だけど違う。
……思い出せない。
当たり前だと享受していた、日常さえも。
普通に暮らしていた、毎日さえも。
どうして気がつかなかったんだろう。
私にはそのどれもが……なかったんだ。
「もう一度言います」
天使の言葉にもう、反論は出来なかった。
体が……記憶が、心が。
その全てがそれを……受け入れる。
「貴方は……『柊かがみ』では、ありません」
いつから、涙が零れたのかも分からない。
無意識に零れたそれを拭うことも出来なくて……私は立ち尽くす。
そして言葉が……自然と口から漏れた。
「じゃあ」
天使の辛そうな表情を覚えてる。
私の顔は、どんなだったんだろう。
そんなのを気にする事すら……忘れてた。
「じゃあ私は……誰なの?」
「……」
天使の両腕が、私に伸びた。
包んでくれた両腕は、つかさの最後を思い出させた。
つかさの……私の、妹の。
でもそれは、違ってた。
私のじゃ……なかった。
私は、誰なんだろう。
何のために今まで、生きてきたんだろう。
生きて? ううん、何がしたかったんだろう。
こんな体になってまで。
柊かがみのフリをしてまで。
……ねぇ、教えてよ。
「『かがみ』」
天使の声が、頭に響く。
重なる体から響く声がゆっくりと、私に溶けていく。
でもそれは、私に向けての言葉じゃなかったんだ。
私がただ自分を、『柊かがみ』だと呼んだ。
それにただ……習っただけ。
天使の両腕は、暖かくて好きだった。
お母さんを……思い出したから。
でもそのお母さんですら、偶像。
私の中にある……『柊かがみ』の、もの。
私はただそれを、真似ただけ。
「貴方の中には、『柊かがみ』のものしかない。それは事実」
じゃあ、私は?
私は……何なの?
私のものは……何処にあるの?
そんなの、ない。
そう……何も、ない。
それは本当に『0』。
私は『0』。
ただの、空虚な存在でしか……なかったんだ。
「ですが一つだけ……あるはずです」
「……っ」
天使の言葉が、私を貫く。
その暖かさに……また涙が零れた。
「……な、に?」
「分かりませんか? それは貴方が『柊かがみ』でない事とは、関係ありません」
柊かがみとは、関係ない?
そんなものが……私の中にあるの?
それがもしあるなら……それは、他の誰でもない。
……私のものだ。
「お願い……教えて」
「……」
涙で歪んだ視界が、天使の笑顔で満たされた。
彼女は私の涙を指で拭いてから、言った。
「かがみ、これが私に出来る……最後の手助け」
そしてもう一度強く、抱きしめてくれた。
「これが、『最後』の質問です」
重なり合った体。
その耳元で、天使が囁く。
私の……『私だけ』の言葉を。
「『泉こなた』のことが……好きですか?」
「……っ」
暖かさが、胸の奥に溢れる。
彼女の顔が、私の中に溢れたから。
それは、暖かくて……愛しくて。
……そうだ。
この気持ちは、関係ない。
いくら私が『柊かがみ』を名乗っても、関係ない。
彼女に……こなたに接してきたのはいつも、『私』だった。
だから、だから……。
この、溢れる気持ちは……私の、『私だけのもの』なんだ。
「うん……『好き』」
涙で上手く、笑えなかった。
一つ、あったんだ。
0の私にも、唯一つ。
こなたが……居た。
『私も』
「えっ……」
声が、聞こえた気がした。
ううん、それは声だけど……声じゃない。
だけど確かに、聞こえた。
……伝わった。
私の胸の奥から……こなたを、通して。
『私も……好きだよ』
そっか。
共有……してるんだっけ。
「……かがみ」
その時だ。
天使の声が、遠くなった気がした。
ううん、気の所為じゃない。
本当に……遠く。
抱きしめてくれた暖かさが、冷たくなっていく。
不安にかられ、眼を開けた。
「……お疲れ様でした」
その声と一緒に……天使の笑顔が。
その全てが……消えた。
ううん、天使だけじゃない。
私の目の前にあったものは、全て……。
そしてまるで違う風景の中には、『居た』。
何処か見覚えのある……『女性』が。
天使が言葉を繰り返していく。
そんなの……無理。
無理に、決まってる。
だって私は、朧。
誰の眼にも見えない……哀れな存在。
私を唯一知覚するのは二人。
でもこなたも、ゆたかちゃんも……そのどちらも、本当の私を知らない。
「そ、んなわけ……ない。私は……」
言葉が続かない。
真実という言葉が私の首を締めていく。
「貴方はあの日、自分を『柊かがみ』だと定義した……だから貴方は自分を『柊かがみ』だと思い込んでいた」
「嘘……そんなの嘘!」
私が私じゃない?
そんなの、認めない……ううん、認められない!
「私は覚えてるわ! 皆のこと……つかさやみゆきの事だって覚えてる!」
お母さんにお父さん。
まつり姉さんにいのり姉さん。
日下部に峰岸に、他のクラスの皆だって!
それが……それが全部、嘘なはずがない!!
「それは、貴方の記憶ではない……それもまた、貴方が『自分のものだと思い込んでいる』だけ」
「なっ……」
天使の言葉が、私の淡い願いを砕いていく。
「それは本当の『柊かがみ』……彼女のもの」
「だから、そんなの……っ」
「仮初の記憶は、曖昧でしかありません……だから貴方には思い出せない」
「そ……んな……っ」
体が崩れる。
私が覚えているもの。
それは、事故の日の……数分だけ。
それ以外は?
その前は、何をしていたの?
朝は、何を食べたの?
何の授業を受けたの?
それは……その、一日だけだと『思い込んでいた』。
だけど違う。
……思い出せない。
当たり前だと享受していた、日常さえも。
普通に暮らしていた、毎日さえも。
どうして気がつかなかったんだろう。
私にはそのどれもが……なかったんだ。
「もう一度言います」
天使の言葉にもう、反論は出来なかった。
体が……記憶が、心が。
その全てがそれを……受け入れる。
「貴方は……『柊かがみ』では、ありません」
いつから、涙が零れたのかも分からない。
無意識に零れたそれを拭うことも出来なくて……私は立ち尽くす。
そして言葉が……自然と口から漏れた。
「じゃあ」
天使の辛そうな表情を覚えてる。
私の顔は、どんなだったんだろう。
そんなのを気にする事すら……忘れてた。
「じゃあ私は……誰なの?」
「……」
天使の両腕が、私に伸びた。
包んでくれた両腕は、つかさの最後を思い出させた。
つかさの……私の、妹の。
でもそれは、違ってた。
私のじゃ……なかった。
私は、誰なんだろう。
何のために今まで、生きてきたんだろう。
生きて? ううん、何がしたかったんだろう。
こんな体になってまで。
柊かがみのフリをしてまで。
……ねぇ、教えてよ。
「『かがみ』」
天使の声が、頭に響く。
重なる体から響く声がゆっくりと、私に溶けていく。
でもそれは、私に向けての言葉じゃなかったんだ。
私がただ自分を、『柊かがみ』だと呼んだ。
それにただ……習っただけ。
天使の両腕は、暖かくて好きだった。
お母さんを……思い出したから。
でもそのお母さんですら、偶像。
私の中にある……『柊かがみ』の、もの。
私はただそれを、真似ただけ。
「貴方の中には、『柊かがみ』のものしかない。それは事実」
じゃあ、私は?
私は……何なの?
私のものは……何処にあるの?
そんなの、ない。
そう……何も、ない。
それは本当に『0』。
私は『0』。
ただの、空虚な存在でしか……なかったんだ。
「ですが一つだけ……あるはずです」
「……っ」
天使の言葉が、私を貫く。
その暖かさに……また涙が零れた。
「……な、に?」
「分かりませんか? それは貴方が『柊かがみ』でない事とは、関係ありません」
柊かがみとは、関係ない?
そんなものが……私の中にあるの?
それがもしあるなら……それは、他の誰でもない。
……私のものだ。
「お願い……教えて」
「……」
涙で歪んだ視界が、天使の笑顔で満たされた。
彼女は私の涙を指で拭いてから、言った。
「かがみ、これが私に出来る……最後の手助け」
そしてもう一度強く、抱きしめてくれた。
「これが、『最後』の質問です」
重なり合った体。
その耳元で、天使が囁く。
私の……『私だけ』の言葉を。
「『泉こなた』のことが……好きですか?」
「……っ」
暖かさが、胸の奥に溢れる。
彼女の顔が、私の中に溢れたから。
それは、暖かくて……愛しくて。
……そうだ。
この気持ちは、関係ない。
いくら私が『柊かがみ』を名乗っても、関係ない。
彼女に……こなたに接してきたのはいつも、『私』だった。
だから、だから……。
この、溢れる気持ちは……私の、『私だけのもの』なんだ。
「うん……『好き』」
涙で上手く、笑えなかった。
一つ、あったんだ。
0の私にも、唯一つ。
こなたが……居た。
『私も』
「えっ……」
声が、聞こえた気がした。
ううん、それは声だけど……声じゃない。
だけど確かに、聞こえた。
……伝わった。
私の胸の奥から……こなたを、通して。
『私も……好きだよ』
そっか。
共有……してるんだっけ。
「……かがみ」
その時だ。
天使の声が、遠くなった気がした。
ううん、気の所為じゃない。
本当に……遠く。
抱きしめてくれた暖かさが、冷たくなっていく。
不安にかられ、眼を開けた。
「……お疲れ様でした」
その声と一緒に……天使の笑顔が。
その全てが……消えた。
ううん、天使だけじゃない。
私の目の前にあったものは、全て……。
そしてまるで違う風景の中には、『居た』。
何処か見覚えのある……『女性』が。
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- すんごい久しぶりに見てるけど、やっぱすげえわこれ…。
何回見ても泣きそうになる…。 -- 名無しさん (2008-10-13 13:03:54) - ちょwww鳥肌が止まんねぇwwwwwなんだこの神SSはwwwwwwwwwww -- 名無しさん (2008-05-08 21:06:45)
- お、落ち着くんだ! そ、素数を数えるんだ!
続きが気になってしょうがないです -- 名無しさん (2008-02-26 11:45:28) - 何なんだ、、、、何なんだ、これは!?
-- 名無しさん (2008-02-20 00:12:25) - 続きが気になります -- 名無しさん (2008-02-19 05:04:25)