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Sunny day

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匿名ユーザー

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「……いい天気だねー」
「……そうだね~」
ある秋の日の昼下がりの柊家。その居間で、泉こなたと柊つかさは、テレビの
天気予報を見ていた。

「明日の埼玉県東部の天気は、曇り。昼過ぎから雨が降るでしょう。
予想最高気温は……」

「明日が雨なんて、信じられないよねー」
「そうだね~」
窓から燦々と降り注ぐ太陽の光を浴びながら、二人はのほほんとした声を出した。
ちなみに、いつもならもう一人、つかさの双子の姉、柊かがみも一緒にいるのだが、
今日は同クラスの日下部みさおの家に行っている。
今この家にいるのは、先述の二人と――

「お待たせー、お姉ちゃん、つかさ先輩!」
「あ、ゆーちゃん。お疲れー……おおっ、おいしそうなクッキーだねー」
「あ、ホントだ~」
キッチンからいろいろな種類のクッキーを持ってきたのは、こなたの従妹の小早川ゆたか。
最近、ゆたかはつかさにお菓子作りを教えてもらっていて、メキメキと腕を上げている。

「そ、そうですか?」
そんな中で、今日ゆたかはつかさのアドバイスなしで、初めて一人でのクッキー作りに
挑戦したのである。

「じゃあ早速食べてみますか」
「うん、そうだね」
「ど、どうぞ、お手柔らかに……」
ゆたかは少し緊張しているようだ。

「あはは、ゆたかちゃん、そこまで緊張しなくてもいいよ」
「で、でも、おいしくなかったら……」
「大丈夫だよ」
そう言うと、つかさはその手作りクッキーを一つ摘んで、口の中に放り込んだ。

「はむはむ……うん、とってもおいしいよ!」
「ほ、本当ですか?」
「うん。ほら、こなちゃんもゆたかちゃんも食べてみて」
そう言って、つかさはもう一つクッキーを摘んだ。
「はら、早くしないと、私が全部食べちゃうよ!」

「じゃあ早速……うおっ、めちゃくちゃおいしい!」
「はむ……うん、おいしいです!」
こなたとゆたかもそれぞれクッキーを口に運び、思い思いの感想を述べた。

「これは…もうつかさを超えたんじゃないか!?」
「えっ……」
「そ、そんなことないよぅ!」
こなたの予想外の言葉に、つかさは絶句、ゆたかは反論をした。

「冗談じょーだん」
「もう、お姉ちゃんったら……」
「……でも、確かにゆたかちゃんのクッキー、とてもおいしかったよ」
「……つかさ先輩に褒められると、とても嬉しいです」
率直な感想を述べるつかさに、少し顔を赤らめるゆたか。
「何? ゆーちゃん。私が褒めても嬉しくないの?」
そこに挙げ足取りをするこなた。

「そ、そういう訳じゃ……」
「嘘うそ。それにしてもゆーちゃん、ホントにつかさと仲良くなったよねー」
「そ、そうかな……」
「うんうん、仲良し姉妹って感じで」
自分の言った言葉を聞いて顔を赤らめる二人に、「いやー、萌えるねー」と呟くこなた。
そんなゆったりとした空気の中、三人はクッキーを食べ終わった。


「これから何する?」
「うーん……」
「そうだ! せっかく天気がいいんだから、縁側でゆったりしない?」
「あー、それはいいかもね」
「縁側、ですか?」
つかさの提案にこなたは同意し、ゆたかは頭にはてなマークを乗っけた。

「うん。こういう暖かい日に縁側に出ると、とっても気持ちがいいんだ~」
「特に寝っ転がるとねー。どうする? ゆーちゃん」
「…………」
ゆたかはしばらく考えた後、
「はい! ご一緒させてください!」
と答えた。

「じゃあ移動しよっか」
こなたが立って、それにつかさとゆたかが続く。
三人は縁側に出て、そのままこなた、つかさ、ゆたかの順に並び、
一斉に仰向けになって寝転んだ。

「……あー、やっぱりここは気持ちいいねー」
「……そうだね~」
「……はい。本当に、気持ちがいいです」
思い思いの感想を述べる三人。縁側にはぽかぽかと、初秋の陽気が漂っていた。

「……こう気持ちがいいと、お昼寝したくなるよねー」
ふと、こなたが静寂を破ってこう呟いた。
「「…………」」
しかし、返事は返ってこない。

「……つかさ? ゆーちゃん?」
こなたは不思議に思って、起き上がって二人を見てみると、
「……ムニャ……」
「……すぅ……」
二人ともしっかり目を瞑って、夢の中に入っている事がわかった。

「ありゃりゃ。……先を越されちゃったか」
そう呟いたこなたは、もう一度仰向けになって寝転がり、目を瞑った。そしてこの
ぽかぽか陽気に意識を乗せて、自らも夢の世界へ、深く深く沈んでいった――





「……こなちゃん」

「…むにゃ…後五分…」

「こなちゃん、起きて」

「…うーん…」

「――こなちゃん!」

「うおっ!?」

がんっ

「ぐおっ!?」「きゃあ!」

ごつっ

「はうっ!?」「ひゃう!」

傾いて赤みの増した太陽の下、二つの鈍い音が空に響いた。
「な、なんだなんだ?」
とこなたが側頭部を擦りながら辺りを見渡すと、
「ううっ……」
「はうぅ……」
目の前でおでこと後頭部を押さえるという奇妙なポーズをとっているつかさと、
その後ろでおでこだけを押さえているゆたかが目に入った。

こなたはこの光景を見て、すぐに何があったのかを理解した。
つまり、横寝になったこなたが起き上がった時に、こなたの側頭部とつかさのおでこが
ぶつかり、それにびっくりして後ろにのけぞったつかさの後頭部と、つかさの後ろで
様子を見ていたゆたかのおでことがぶつかり、今に至る、という訳である。

「……いろいろとツッコみたいけど、ひとついいかな?」
少しげんなりした顔で、こなたはつかさに尋ねた。
「ううっ……何? こなちゃん」
つかさはまだ痛むのか、いまだに変な格好で頭を擦りながら、こなたに返事をした。

「何で私の耳元で叫んだの?」
「え? だ、だって、こなちゃん、呼んでもなかなか起きてくれなかったから……」
「だったらゆすって起こせばいいじゃん!」
「やったけど、起きてくれなかったよ? 反応はしてくれたけど、仰向けから
横寝になるだけだったし……」
「むぅ、つかさのくせに、生意気だぞ!」
「えぇー! そ、そんな事言われても……」
こなたがネタを挟みながら文句を言い、つかさがおどおどしながらも弁解をする。
見た目は喧嘩している様にも見えそうだけど、二人とも笑みをこぼしながら
このやり取りを続けている。


「……いいなあ」


そんな二人を見て、ゆたかは羨ましそうに呟いた。

「ん、どうしたの? ゆたかちゃん」
「いえ、ただ、いいなあ、って思って」
「え、な、何が?」
「何と言うか……お姉ちゃんとつかさ先輩の、何だかほのぼのとした感じが
とても、その、お友達なんだなぁ、って感じがして、いいなあって……」
ゆたかはそう言って、羨ましそうな表情で二人を見つめた。

「そっか。じゃあ……」
「……えっ?」
すると突然、つかさは左手をゆたかの前に差し出した。

「えっと……どういう事ですか?」
「握手、しよう! お友達のしるし!」
「ええっ!?」
つかさの言葉に、羨ましそうだったゆたかの表情が、驚きに変わった。

「だって、ゆたかちゃんも私達と一緒でほのぼのとしてるし、それに、お菓子を
一緒に作ったり、一緒にお喋りをしたり、もう十分仲良しだと私は思うよ?
だから、私とゆたかちゃんは友達! ねっ?」

つかさが笑顔でそう話すと、ゆたかは少し顔を赤らめて
「……ありがとう、ございます」
と言って、自らの左手を差し出した。それを見たつかさはゆたかの手を握り、
「これで友達だね」
と、本当に嬉しそうな顔で言った。

「これからよろしくお願いします…つかささん!」
「うん。よろしくね、ゆたかちゃん!」
「誰かが見てる中でお互いの友情を確かめ合う純粋な女の子二人……
うーん、萌えるシチュだねー」
「あっ……」
「はうぅ……」
と、さっきから黙りこくっていたこなたの言葉に、今度はつかさとゆたかが
顔を真っ赤にして沈黙してしまった。そして二人は向き合って、
ふふっ、と、恥ずかしそうに、そして楽しそうに、お互いの赤くなった顔を見て
笑い合った。





「……はあ……どうしたのかと思ったら……」
夕方、みさおの家から帰ってきたかがみが見たものは、縁側で仲良く並んで
すやすやと眠る、つかさ達三人の姿だった。

「……道理で誰も玄関に来ない訳だわ」
三人は、両手をお腹の上に乗せて仰向けになって寝ているつかさを中心に、
左側にこなた、右側にゆたかが横向きに丸まっていた。そして、三人とも
気持ちよさそうに眠り続けている。

「ゆたかちゃんまで……これがこなたの言ってた「小」の字ってやつか?」
少し呆れた様にかがみは呟いた。

「……テレビもつけっ放しだし……」
そう言って、かがみはテレビの方に目を移した。そのチャンネルでは、ちょうど
天気予報が始まったところだった。

「……確か明日って、あまり天気よくないのよね」
そう言うと、かがみは再び眠っているつかさ達の方に目を向け、それから視線を
空の方へと移した。

「……こいつらを見てると、そんなこと信じられなくなってくるわね」
だんだんオレンジ色に染まっていく空を見つめながら、かがみは外の空気と
眠っている三人を比べ、そう呟いた。




――明日の埼玉県東部の天気は、晴れ。
今日と同じ様に、一日中、過ごしやすいいい天気になるでしょう――








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  • 原作と遜色ない、完成度! -- チャムチロ (2012-10-26 07:37:00)
  • 素敵な作品を読ませて頂き、ありがとうございます。
    ほのぼのとして凄く良かったです。
    接点は少ないけれど、つかさとゆーちゃんは相性がよさそうですね。
    -- 名無しさん (2009-07-20 22:54:12)

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