柊家の長女・いのりが出張先から帰宅したのは土曜日の朝。早朝ではないが、商店の多くはまだ店開きをしていないという頃合である。
自室で荷解きし、洗濯物を脱衣所に持って行ったところ、そこで見慣れたつかさの服と、見慣れぬボロボロの服を見つけたのであった。
両親の部屋へ行ってみる。影も形もなし。
まつり……まだ帰宅せず。
かがみ……なぜか不在。
そしてつかさの部屋。
つかさのベッドには、巨大な何かが寝ているようだった。布団がものすごく膨らんでいる。
つかさ、ちょっと見ない間に突然太ったわね……。なんて思いながらめくってみると、下着姿のつかさが下着姿の女の子と抱き合って寝ていた。見覚えがないわけではないその子は、どうやらつかさの同じクラスメートのようである。
いのりが立ち尽くしていると、その友達の方がもぞもぞと半身を起こし、「眼鏡眼鏡」と枕元を漁る。そしていのりの姿を認めると、
「あ、お帰りなさいませ」
と頭を下げてからハッとする。
「あ……家族でもない私が、こんなこと言うのは変でしょうか?」
「ううん、全然OK。それより、何があったの?」
「ええとですね……」
いのりは注意深く友達―みゆきの表情を観察した。
曰く、カレーを食べた後眠い体を押して入浴したが、寝巻きを着ける前に二人とも力尽きたとのこと。スキンケアもせずに寝てしまったのかと聞きかけて、やめた。若いって素晴らしい。
みゆきの言う事はどうやら嘘ではないようだ、といのりの観察眼は告げていた。
「そうなんだ。最初はてっきり喧嘩でもしたのかと思ったわ」
「そんな事はしません。ずっと仲良しですよ」
これはある種の誘導尋問である。
「だよね。そもそも、つかさがそんなに強いとは思えないし」
狼の群れを向こうに回して戦った名残と言われても納得してしまいそうなほどボロボロだった脱衣所の服を思い出し、いのりはそう言った。
「失礼ながら、それも違います」
みゆきは首を傾げてきっぱりと言う。豊か過ぎる胸がぷるんと揺れる。
「つかささんは強い方です。カレーと一緒に待っていてくれたのですから」
「ふ~ん」
よく分からないが興味を惹かれる話である。朝食でも食べながら聞かせてもらうとしようと思った。
「朝食の用意するね。パンでいい?」
「あ、私にやらせてください。ご馳走になってばかりで―」
ベッドを出ようとするみゆきを、つかさの腕が捕まえて押し倒した。
「ゆきちゃ~ん、もっとぉ」
もちろん、「もっとカレーを食べよう」という意味であるのだが、いのりに言わせると、この時のつかさは妹ながらゾッとするほど色っぽかったという。
自室で荷解きし、洗濯物を脱衣所に持って行ったところ、そこで見慣れたつかさの服と、見慣れぬボロボロの服を見つけたのであった。
両親の部屋へ行ってみる。影も形もなし。
まつり……まだ帰宅せず。
かがみ……なぜか不在。
そしてつかさの部屋。
つかさのベッドには、巨大な何かが寝ているようだった。布団がものすごく膨らんでいる。
つかさ、ちょっと見ない間に突然太ったわね……。なんて思いながらめくってみると、下着姿のつかさが下着姿の女の子と抱き合って寝ていた。見覚えがないわけではないその子は、どうやらつかさの同じクラスメートのようである。
いのりが立ち尽くしていると、その友達の方がもぞもぞと半身を起こし、「眼鏡眼鏡」と枕元を漁る。そしていのりの姿を認めると、
「あ、お帰りなさいませ」
と頭を下げてからハッとする。
「あ……家族でもない私が、こんなこと言うのは変でしょうか?」
「ううん、全然OK。それより、何があったの?」
「ええとですね……」
いのりは注意深く友達―みゆきの表情を観察した。
曰く、カレーを食べた後眠い体を押して入浴したが、寝巻きを着ける前に二人とも力尽きたとのこと。スキンケアもせずに寝てしまったのかと聞きかけて、やめた。若いって素晴らしい。
みゆきの言う事はどうやら嘘ではないようだ、といのりの観察眼は告げていた。
「そうなんだ。最初はてっきり喧嘩でもしたのかと思ったわ」
「そんな事はしません。ずっと仲良しですよ」
これはある種の誘導尋問である。
「だよね。そもそも、つかさがそんなに強いとは思えないし」
狼の群れを向こうに回して戦った名残と言われても納得してしまいそうなほどボロボロだった脱衣所の服を思い出し、いのりはそう言った。
「失礼ながら、それも違います」
みゆきは首を傾げてきっぱりと言う。豊か過ぎる胸がぷるんと揺れる。
「つかささんは強い方です。カレーと一緒に待っていてくれたのですから」
「ふ~ん」
よく分からないが興味を惹かれる話である。朝食でも食べながら聞かせてもらうとしようと思った。
「朝食の用意するね。パンでいい?」
「あ、私にやらせてください。ご馳走になってばかりで―」
ベッドを出ようとするみゆきを、つかさの腕が捕まえて押し倒した。
「ゆきちゃ~ん、もっとぉ」
もちろん、「もっとカレーを食べよう」という意味であるのだが、いのりに言わせると、この時のつかさは妹ながらゾッとするほど色っぽかったという。
昼が近付きただお・みき夫妻が帰宅を果たすと、みゆきとつかさは、カレーの一部を小さな鍋に移して泉家へと向かった。
そこでは奇妙な事にかがみが病床に臥し、こなたがその世話をしていた。
「いやー、参ったよ。かがみにキスされそうになって」
ちっとも困った様子もなくこなたが言う。
「なっ、私があんたにされそうになったんでしょ!」
かがみが剥きになって反論しようとする。
しばらくそのやり取りを眺めていたみゆきが、やがてこうまとめる。
「つまりどちらもキスを試みたものの、どちらも未遂だったと」
「残念ながらそうなっちゃうね」
「残念じゃないわよ。全く……死んだふりなんかして。私は昔の熊か」
分かりにくいが熊に死んだふりは通用しないという認識が広まる前の、という意味である。
「真に受けちゃうかがみん萌え」
「う゛……」
「―と、かがみが赤面するのはいいとして」
こなたは赤い風船みたいになってしまったつかさとみゆきに目を向け、からかうように言う。。
「二人には刺激が強すぎるかな?」
「……」
「……」
無論そんなのではなく、未遂に留まらなかった昨晩の我と我が身を思い出しての事である。
幸か不幸か、成実夫妻という目撃者がいた事を二人は知らない。
そこでは奇妙な事にかがみが病床に臥し、こなたがその世話をしていた。
「いやー、参ったよ。かがみにキスされそうになって」
ちっとも困った様子もなくこなたが言う。
「なっ、私があんたにされそうになったんでしょ!」
かがみが剥きになって反論しようとする。
しばらくそのやり取りを眺めていたみゆきが、やがてこうまとめる。
「つまりどちらもキスを試みたものの、どちらも未遂だったと」
「残念ながらそうなっちゃうね」
「残念じゃないわよ。全く……死んだふりなんかして。私は昔の熊か」
分かりにくいが熊に死んだふりは通用しないという認識が広まる前の、という意味である。
「真に受けちゃうかがみん萌え」
「う゛……」
「―と、かがみが赤面するのはいいとして」
こなたは赤い風船みたいになってしまったつかさとみゆきに目を向け、からかうように言う。。
「二人には刺激が強すぎるかな?」
「……」
「……」
無論そんなのではなく、未遂に留まらなかった昨晩の我と我が身を思い出しての事である。
幸か不幸か、成実夫妻という目撃者がいた事を二人は知らない。
帰宅の途についたみゆきが泉家を出たところで、帰宅寸前のそうじろうに出くわした。
「お帰りなさいませ」
いのりの時と同じ挨拶をするが、反応はまた特殊だった。
「『ご主人様(はあと)』を付け加えて欲しいなあ……」
それはそれで失礼に当たるのではないか、なんて懸念は彼に対しては無用である。
「ていうか帰っちゃうの?」
「はい、お邪魔しました」
丁寧に頭を下げると、そうじろうは心底残念そうに言う。
「帰っちゃうんだ……」
「はあ、お名残惜しいですが……」
一緒に過ごしたわけでもないのにこう言うのはおかしいでしょうかなんて思いつつ、みゆきは慰めるように付け加える。
「でも、かがみさんとつかささんがまだいらっしゃいますよ」
「巫女さんコスで?」
「いえ、普段着ですけど」
「なんだ……」
「かがみさんが体調を崩されてしまって……」
「お医者さんしてる、と?」
そうじろうは目を輝かせる。
「いえ、看病を―」
「うぉーい、お父さんも混ぜろ~。お父さんも『先生』だぞ~」
そうじろうは盛りのついたウサギみたいに飛び跳ねながら、泉家へと入って行ったしまった。
「お帰りなさいませ」
いのりの時と同じ挨拶をするが、反応はまた特殊だった。
「『ご主人様(はあと)』を付け加えて欲しいなあ……」
それはそれで失礼に当たるのではないか、なんて懸念は彼に対しては無用である。
「ていうか帰っちゃうの?」
「はい、お邪魔しました」
丁寧に頭を下げると、そうじろうは心底残念そうに言う。
「帰っちゃうんだ……」
「はあ、お名残惜しいですが……」
一緒に過ごしたわけでもないのにこう言うのはおかしいでしょうかなんて思いつつ、みゆきは慰めるように付け加える。
「でも、かがみさんとつかささんがまだいらっしゃいますよ」
「巫女さんコスで?」
「いえ、普段着ですけど」
「なんだ……」
「かがみさんが体調を崩されてしまって……」
「お医者さんしてる、と?」
そうじろうは目を輝かせる。
「いえ、看病を―」
「うぉーい、お父さんも混ぜろ~。お父さんも『先生』だぞ~」
そうじろうは盛りのついたウサギみたいに飛び跳ねながら、泉家へと入って行ったしまった。
高良家でも異変が起きていた。
病床に臥していたはずのみなみが、ベッドから起き上がれないゆかりとゆたかの世話を焼いていたのである。風邪が伝染ったのかと思ったが、そうではない。
「脚痛ーい。立てなーい。今日一日おねむさんで良い?」
それは分かるとして、ゆたかをギューギューと抱き締めて離さないのは何故なのだろうか?
「お、おばさん。私は立てますから」
ゆたかは脱出を試みるが、そんな彼女をゆかりは殊更ギューギューするのである。
「ゆたかちゃんと一緒がいいの」
「やーん」
溺れるようにもがくゆたか。止めに入ったほうがいいだろうかなんて思っていると、みなみがみゆきの服をそっと引っ張る。
「何でしょう?」
「あの実は……」
今日はまだチェリーの散歩に行ってないという。そこで……。
「私が代わりに散歩を、ですか?」
「……はい」
みなみが怖いくらい真剣に肯くので、みゆきは追及しなかった。
みなみは、見張ってなければいけないのである。
病床に臥していたはずのみなみが、ベッドから起き上がれないゆかりとゆたかの世話を焼いていたのである。風邪が伝染ったのかと思ったが、そうではない。
「脚痛ーい。立てなーい。今日一日おねむさんで良い?」
それは分かるとして、ゆたかをギューギューと抱き締めて離さないのは何故なのだろうか?
「お、おばさん。私は立てますから」
ゆたかは脱出を試みるが、そんな彼女をゆかりは殊更ギューギューするのである。
「ゆたかちゃんと一緒がいいの」
「やーん」
溺れるようにもがくゆたか。止めに入ったほうがいいだろうかなんて思っていると、みなみがみゆきの服をそっと引っ張る。
「何でしょう?」
「あの実は……」
今日はまだチェリーの散歩に行ってないという。そこで……。
「私が代わりに散歩を、ですか?」
「……はい」
みなみが怖いくらい真剣に肯くので、みゆきは追及しなかった。
みなみは、見張ってなければいけないのである。
ハーネスで繋いだチェリーとともに高良家を出て100歩ほど歩いたところで、なにやら見覚えのある高級外車が走ってくるのが見えた。
「みゆきちゃーん」
岩崎夫人が顔を出し、手を振っている。
「おかえりなさいませ」
「ただいま~」
「楽しめましたか?」
「うん♪ お土産いっぱいよ~」
「あ、ありがとうございます」
「すぐに届けるわね~」
「一休みさせてくれよ~」
これは岩崎氏の抗議。
「ダーメ。みなみがお世話になったんだから」
今はむしろゆかりがみなみの世話になっている状態である。でも、土産と聞けばゆかりは起き出すだろう。
みゆきはチェリーと並んで立って、岩崎氏の車庫入れを見守っていた。
「みゆきちゃーん」
岩崎夫人が顔を出し、手を振っている。
「おかえりなさいませ」
「ただいま~」
「楽しめましたか?」
「うん♪ お土産いっぱいよ~」
「あ、ありがとうございます」
「すぐに届けるわね~」
「一休みさせてくれよ~」
これは岩崎氏の抗議。
「ダーメ。みなみがお世話になったんだから」
今はむしろゆかりがみなみの世話になっている状態である。でも、土産と聞けばゆかりは起き出すだろう。
みゆきはチェリーと並んで立って、岩崎氏の車庫入れを見守っていた。
「おかえりなさい」
そう呟いたみゆきに、チェリーは不審そうな顔を向ける。それを察したみゆきは、チェリーの頭を撫でながら言った。
「日常が帰ってきました」
「ワウ……」
チェリーは不服そうに鼻を鳴らす。彼女にしてみれば岩崎邸で寝起きし、みなみに散歩に連れて行ってもらうってこそ日常である。
「そうですね。でも、もうすぐですよ」
見ると、たくさんの土産を抱えた岩崎夫妻が、道を渡って高良家に入って行くところだった。
「日常が帰ってきました」
「ワウ……」
チェリーは不服そうに鼻を鳴らす。彼女にしてみれば岩崎邸で寝起きし、みなみに散歩に連れて行ってもらうってこそ日常である。
「そうですね。でも、もうすぐですよ」
見ると、たくさんの土産を抱えた岩崎夫妻が、道を渡って高良家に入って行くところだった。
おわり
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- このシリーズめちゃめちゃ面白かったです!!つかゆき、こなかが、みなゆたの黄金の3カップルの話展開が何よりのグッジョブw 次回作を楽しみにしてます。この後日談でも嬉しいですがw。 -- 名無しさん (2008-10-21 21:19:13)